著者
富沢 元博 山本 出
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.91-98, 1993-02-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
18
被引用文献数
81 123

ツマグロヨコバイへの殺虫力, ミツバチ頭部のニコチン性アセチルコリンレセプター画分のα-ブンガロトキシン結合部位への結合親和性に関して, イミダクロプリドと19種の類縁化合物の化学構造活性相関をニコチノイドと比較した結果, これら二つのグループは結合部位, 必須化学構造部分 (3-ピリジルメチルアミノ) を同じくし, 化学構造活性相関も類似していることを認めた. ニコチノイドではアミノ窒素原子の塩基性が高く生体内でのイオン化度が高いのに対し, イミダクロプリド関連化合物ではこの窒素原子に部分正荷電を与える隣接電子吸引性基を有する特徴を示す.
著者
土屋 守克 伊藤 幸太 髙橋 誠一 坂上 貴之 眞邉 一近
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.71-78, 2021 (Released:2021-07-20)
参考文献数
29

目的:フライトナースのプレホスピタル・ケアを対象として,撮影された動画のオプティカルフローから算出した活動量(以下,動画活動量)を測定した上で,熟練者と初心者の相違について比較するとともに,機械学習による分類性能について検討することを目的とした.本研究の結果が明らかとなれば,臨床における教育や業務の省力化,効率化が期待できる.方法:熟練者および初心者フライトナースのべ30名を対象とした.対象者は,胸部にウェアラブルカメラを装着した上で業務に従事した.熟練者と初心者の分類のために機械学習および線形判別分析を行い,分類性能を検証した.結果:動画活動量のエントロピーの中央値は,熟練者のフライトナースが有意に低値であった.各分析方法における分類性能(適合率,再現率,F1値)は,サポートベクターマシンとランダムフォレストが高かった.結論:動画活動量のエントロピーが熟練性の指標となり得ること,エントロピーの経時的変化に対して機械学習を適用することにより,高い分類性能を示すことが明らかとなった.
著者
吉永 泰周 長野 史子 金子 高士 鵜飼 孝 吉村 篤利 尾崎 幸生 吉永 美穂 白石 千秋 中村 弘隆 藏本 明子 髙森 雄三 野口 惠司 山下 恭徳 泉 聡史 原 宜興
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.154-161, 2014 (Released:2014-05-07)
参考文献数
23

目的 : 歯周病原細菌と考えられている細菌群はグラム陰性菌であり, 進行した歯周炎患者の歯周ポケット内ではグラム陰性菌が優勢である. しかしながら, 歯肉炎や初期の歯周炎ではプラーク中の細菌はグラム陽性菌が優勢であるため, 歯周ポケット形成の初発時にはグラム陽性菌が大きな影響を与えると考えられる. われわれの過去の実験では, グラム陽性菌であるStaphylococcus aureusとグラム陰性菌であるAggregatibacter actinomycetemcomitansの菌体破砕物で感作したラットの歯肉溝に各菌体破砕物を滴下すると, 両細菌ともに強い歯周組織破壊を誘導した. しかし歯周組織の破壊が著しく, どちらがより強い影響を与えるかについての判断はできなかった. そこで本研究では, グラム陰性菌とグラム陽性菌の歯周組織破壊への影響を比較するために, より低濃度の菌体破砕物を用いて実験を行った. 材料と方法 : S. aureusとA. actinomycetemcomitansの菌体破砕物にて感作したラットと非感作ラットの歯肉溝内に, 12.5μg/μlの菌体破砕物を頻回滴下し, 病理組織学的に観察した. 無滴下のラットを対照群とした. 結果 : A. actinomycetemcomitans感作群では対照群と比較して統計学的に有意なアタッチメントロスの増加と歯槽骨レベルの減少を認めたが, S. aureus感作群およびA. actinomycetemcomitans非感作群ではみられなかった. 両細菌の感作群では免疫複合体の存在を示すC1qBの発現が接合上皮に観察されたが, 非感作群では認められなかった. 結論 : グラム陰性菌であるA. actinomycetemcomitansの菌体破砕物のほうが, グラム陽性菌であるS. aureusのそれよりも歯周組織破壊への影響が強いことが示唆された. また, 歯周組織の破壊には免疫複合体の形成も重要であることも改めて示唆された.
著者
今野 和 多田 早奈恵 LAOHASIRIWONG Wongsa PITAKSANURAT Somsak 韓 連熙 林 正幸 石橋 良信
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.172-183, 2017

アンケート調査は,洪水時における避難所での保健衛生への意識と行動,医療,健康状況などを知る目的に,タイ国コンケン地方の3つの村,計393人を対象に実施した.聞き取りは2014年に行い,回答は過去5年間の集計である.集計,解析の結果,健康に対して,村人のほとんどは医療保険に加入し,また,健康増進に心がけていた.洪水の期間には水虫,足白癬,結膜炎,低い割合での下痢症がみられ,レプトスピラ症は2件報告された.村人は伝統医療を重んじる傾向があるが,避難所には医師と看護師が巡回しており,医薬品も常備されていた.このような状況から重病患者はみられていない.<br>認識や考え方,実践を含む保健行動において,村人は一般に衛生に対して高い知識をもっていると考えられる.一方,死んだ動物の処分、下痢症の予防や眼病への備えのような概念については正しい知識を有しておらず,村人は病気に罹患する原因,知識の修得が必要である.<br>避難所における飲料水は,ボトルドウォーター,雨水,村落ごとにある小規模水道の水道水である.この水道水は高い割合で大腸菌群数(TCB)や糞便性大腸菌(FCB)が混入しており,残留塩素も検出されていない.TCBやFCBが検出されることは,腸内病原微生物の汚染を意味する.したがって,水源河川の汚濁の低減化に努めるとともに,村人は水道水の汚染問題を深刻に受け止める必要がある.さらに,洪水の水は食器類の洗浄,洗濯に使われており,衛生状況は劣悪である.<br>結論として,洪水期間中では,一般的な洪水時にみられる疾病を加味しても村人の健康状態は概ね良好であった.しかし,村落の小規模水道の浄化方法の徹底とともに,今後,衛生に関する知識と生活習慣の改善を求めていく必要性があることがアンケート調査から明らかになった
著者
Nao Shibata Hiromi Nyuzuki Sunao Sasaki Yohei Ogawa Masayasu Okada Keisuke Nagasaki
出版者
The Japan Endocrine Society
雑誌
Endocrine Journal (ISSN:09188959)
巻号頁・発行日
pp.EJ21-0117, (Released:2021-07-17)
被引用文献数
2

Human chorionic gonadotropin (hCG)-producing tumors cause peripheral precocious puberty (PP) in boys, but generally not in girls. Homology between LH and hCG activates the LH receptor in testicular Leydig cells, increases testosterone production, and causes virilization. However, since FSH action is required for follicle development, hCG action alone does not increase estradiol (E2) production and does not cause feminization. Only a few cases of peripheral PP with hCG tumors in girls have been reported. We describe the case of a 7-year-old Japanese girl with peripheral PP associated with an hCG-producing tumor. She had prolonged vomiting, loss of appetite, and Tanner stage III breast development. Although no apparent increase in growth rate, bone age was advanced at 9.8 years. Serum E2 was slightly elevated and LH and FSH were below the measurement sensitivity, and abdominal ultrasonography and computed tomography images showed no abnormal findings in the uterus or ovaries. Subsequently, she developed visual field disturbance and loss of consciousness, and brain magnetic resonance imaging revealed an intracranial tumor. Based on pathological findings and abnormally high serum hCG-β level (48,800 IU/L), intracranial choriocarcinoma was diagnosed. 2.5 months after the start of chemotherapy, the hCG-β level became almost negative and the breast development disappeared synchronously. Tissue immunostaining of the tumor showed strong positivity for aromatase and hCG, indicating that the choriocarcinoma cells themselves may have produced estrogen via aromatase. This unique case highlights the possibility that hCG-producing tumors can cause peripheral PP in girls as well as boys.
著者
山本 攻
出版者
Osaka Urban Living and Health Association
雑誌
生活衛生 (ISSN:05824176)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.178-184, 2007 (Released:2007-06-08)
参考文献数
13
被引用文献数
4

In about 1950, the surrounding coastal cities began to deposit in Osaka Bay the human excreta that could not be used or disposed of on land. In connection, researchers from the Osaka Municipal Hygienic Laboratory undertook a rapid survey of the state of pollution in the Bay and established that, while pollution was present in the sea disposal area, it was severer at the mouth of rivers. After the survey, the researchers joined the research committee chaired by Professor Miura of Kyoto University, which operated with the aid of the Scientific Experimental Research Fund of the Ministry of Education, and studied pollution in Osaka Bay, the effect of sea disposal on fish, the behavior of the deposited excreta in the sea, and the viability of E. coli in seawater.The present material was written to commemorate the work of the Hygienic Laboratory in the study of human excreta disposal in Osaka Bay. It consists of a history of human excreta treatment and disposal in Osaka City up to the beginning of sea disposal, related laws during the same period, the situation regarding sea disposal and pollution in the Bay, and the activities of a committee of Osaka Bay coastal cities set up to research human excreta disposal problems.
著者
來村 徳信 中條 亘 笹嶋 宗彦 師岡 友紀 辰巳 有紀子 荒尾 晴惠 溝口 理一郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.D-K94_1-16, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
32

For appropriate execution of human actions as a service, it is important to understand goals of the actions, which are usually implicit in the sequence-oriented process representations. CHARM (an abbreviation for Convincing Human Action Rationalized Model) has been proposed for representing such goals of the actions in a goal-oriented structure. It has been successfully applied for training novice nurses in a real hospital. Such a real-scale and general knowledge model, however, makes the learners difficult to understand which actions are important in a specific context such as a patient’s risk for complications. The goal of this research is to realize a context-adaptive knowledge structuring mechanism for emphasizing such actions that need special attention in a given context. As an extension of the CHARM framework, the authors have developed a general mechanism based on multi-goal action models and pathological mechanism models of abnormal phenomena. It has been implemented as a software system on tablet devices called CHARM Pad. We have also described knowledge models for the nursing domain, which include pathological mechanism models of complications with their risk factors. CHARM Pad with these models had been used by nursing students and evaluated by them through questionnaires. The result shows that CHARM Pad helped them understand the goals of nursing actions as well as finding of symptoms of complications context-adaptively.
著者
呉 恵卿
出版者
国際基督教大学
雑誌
教育研究 (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
no.61, pp.49-56, 2019-03

本稿では,民族学級が日本の公教育で施行,定着するまでの経緯について概観し,フィールド調査と民族学級関係者らとのインタビューを参考に,民族学級の現状について記述を行った。さらに,民族教育の場として民族学級が持つ限界と可能性についても考察を行った。在日コリアン児童にとって,民族学級が行われる「空間」に入る行為は,それ自体で新しい「民族」の世界へ進入することを意味する。子供たちは「本名」という新しい名前で互いを呼び合い,祖国と共有する歴史的遺産あるいは記憶を体験することによって新しい民族性に目覚めていく。アイデンティティの切り替えが行われる民族学級教室以外で本名を名乗る児童はいないことから,民族学級の成果に疑問を持つ視点も存在する。しかし,アイデンティティは可変的で複合的な性格を帯びている。児童の内面に吹き込まれた「民族」という種は,彼(女)らをめぐる様々な環境と相互作用しながら,アイデンティティの再構築に貢献することが期待される。
著者
山本 一彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.305-307, 1991

明治4年の廃藩置県, の時、現在の愛知県の区域は13の県に分かれており、旧藩の形態がなお残っていたが、明治5年になって名古屋県が額田県を吸収してようやく愛知県の原形が成立した。県の土木行政が実動しはじめるまでには更に数年を要したと見られる。明治8年には全国的に大巾な人事移動が行なわれ、当愛知県でも国貞廉平という人物が参事(現在の副知事)として名東県(現香川県)から転出してきた。彼は後に愛知県令(現知事)になるのであるがこの年同県から一人の若い土木技術者をスカウトしてきだ。名を黒川治悪(以下治愿という), といい、以後明治18年まで愛知県につとめた。わずか10年間ではあったが県令に昇進した国貞廉平の下で治愿は愛知県下の土木工事に多くの実績上げた。治愿の業績は「名古屋市史・人物編」始め県下のいくつかの市町村誌等に述べられているが、彼の足跡を知るうえで非常にユニークな情報源は現地に残る石碑である。彼の名とともに係った土木工事のことを刻んである石碑は広く県下19ケ所に現存している。その分布は岡崎市5、春日井市4、名古屋市・西尾市・犬山市各2、安城市・幸田町・弥富町・立田村各1である。建碑年は明治13年から大正8年に渡っており、文献上でしが確言忍できなかった1個を除き企て硯地で確認できた。多くは治水碑であり、中には頭部の欠落したものや台座が流失したとみられるものもあるが大半は良好に管理されている。また現在でも毎年田植の時期になると近辺の人々が集まり感謝の意を込めて彼の碑の前で頭を下げる祭事が行なわれているところもいくつか知られている。碑文を集めてみると、多くの場合建碑者は付近の村々の連名であり、内容はそれまでの劣悪な治水上の旧状がその土木工事を遍していかに改良されたかを記述しており、地元からみた当時の土木の事情をかいまみることができるのではないかと思う。
著者
高澤 一平 川人 宏次 横田 彩子 西村 芳興 市田 勝 新保 昌久 野口 康子 清水 堅吾 茂呂 悦子 落合 久美子 中山 鈴子 関野 敬太 繁在家 亮 鳥越 祐子 上木原 友佳 新藤 靖夫 苅尾 七臣 三澤 吉雄
出版者
自治医科大学
雑誌
自治医科大学紀要 (ISSN:1881252X)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.29-34, 2014

症例は51歳男性。感冒症状で発症し前医を受診した。心電図所見等から急性心筋梗塞を疑われ緊急冠動脈造影を施行されたが,有意病変を認めず急性心筋炎の診断で同日当院へ緊急搬送された。来院時循環虚脱状態であったため直ちに挿管し,経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support:PCPS)と大動脈内バルーンパンピングを導入した。3日間のPCPSによる呼吸循環補助にもかかわらず心不全,多臓器不全が進行したため,両心補助人工心臓(ventricular assist device: VAD)を導入した。以後,状態は安定し術後38日目に右心VADから離脱,術後64日目には血液透析からも離脱したが,左心機能は回復せず左心VADに依存する状態となった。術後7か月目に移植登録を行いVAD装着下での移植待機となったが,術後631日目(入院後634日目)に広範な脳出血で失った。本症例は当院で初めてのVAD導入患者であり,その治療過程で,担当医である心臓外科医,循環器内科医を中心として,CCU/病棟看護師,急性重症患者看護専門看護師,皮膚排泄ケア認定看護師,臨床工学士,理学療法士/理学作業士,精神科医/臨床心理士,社会福祉士,薬剤師,管理栄養士,感染制御部からなる治療チームが形成されてゆき,多業種間の垣根をこえたチーム医療の結果,長期生存を得ることができた。当院における今後の重症心不全治療の方針を具体化したという点で意義があると思われるので報告する。
著者
田中 孝明 内山 泰伸
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.556-560, 2012-08-05 (Released:2019-10-18)
参考文献数
18

フェルミ宇宙ガンマ線望遠鏡搭載のLarge Area Telescope (LAT)によるガンマ線観測は,パルサーのガンマ線放射機構超新星残骸における宇宙線加速,そしてダークマターの探索など多岐にわたる科学トピックについて新たな知見をもたらしている.LATによる最近の科学的成果のうち,特に高エネルギー宇宙物理のコミュニティを驚かせたものは,かに星雲と呼ばれるパルサー星雲で観測されたガンマ線フレアである.特に2011年4月に発生したフレアでは,ガンマ線強度が数時間という非常に短い時間スケールで1桁以上も増加した.この観測結果は,既成の粒子加速機構およびガンマ線放射機構では説明が困難であり,宇宙物理における新たな課題となっている.
著者
田中 良弘
出版者
一橋大学大学院法学研究科
雑誌
一橋法学 (ISSN:13470388)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.985-1016, 2015-11

Economic Criminal Law in Nazi Germany adopted "Ordnungsstrafe," the administrative penalties for violation of the order that authorized the administrative agencies to impose criminal punishments without going through the criminal procedure. Furthermore, Economic Criminal Law in Nazi Germany justified severe punishments including the death penalty for violation of economic laws, by making economic orders a legally protected interest. Today, it is not permissible to impose criminal punishments without criminal procedure, in terms of separation of the powers and due process. Furthermore, it is not permissible to impose criminal punishments in the name of protecting an order because such punishments would result in abuse of criminal punishments. On the other hand, the use of non-criminal penalties by administrative agencies might be an effective means to guarantee enforcement. In reality, the Administrative Offences Act (Ordnungswidrigkeitengesetz) of the Federal Republic of Germany originates from "Ordnungsstrafe."