著者
江口 聡 EGUCHI Satoshi
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.135-150, 2006-12

本稿では、しばしば倫理的に問題があるとされている「性的モノ化(客体化)」の問題を考察する。カントの『倫理学講義』に簡単に触れたあと、M. ヌスバウムの議論を検討する。続いて「モノ化」の(非)倫理性には哲学的な難問があり、「ポルノや売買春は女性をモノ化するから不正だ」というように簡単に言いきれるものではないこと、また、「自由な同意にもとづいたセックスにはまったく問題がない」とも言い切れないことを示したい。最後にセックスの哲学および倫理学の課題について触れる。In this paper, I shall consider the problem of "sexual objectification". I will examine Kant's position in his Lecture on Ethics and Martha Nussbaum's article "Objectification". I will try to show that "sexual objectification" contains many philosophical problems, and we can not simply insist that pornography and prostitution are wrong because they objectify women. Lastly I will comment upon the main subjects and the prospects of the philosophy and ethics of sex.
著者
ロッシャデソウザ ルシオマヌエル
出版者
東京外国語大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

本研究では、ポルトガル、メキシコなどに残る異端審問記録の分析を主におこなった。とりわけ、16世紀後半に日本に滞在したポルトガルのユダヤ系商人であるペレスという一家に関する記録を中心に分析し、そこから当時の長崎におけるコンベルソ商人のコミュニティの存在や、日本人を含む奴隷の生活などが明らかとなった。その成果を英語の単著で公刊した。さらに、ポルトガル人のアジア(とくに日本)における奴隷貿易について、複数の論文を刊行した。そこでは、16~17世紀の南欧語史料の分析をおこない、世界各地でおこなわれた日本人奴隷の取引に関する記録を紹介した。これらの研究の一部は日本語で出版される。
著者
山本 和弘
出版者
栃木県立美術館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

厚生芸術の基礎研究は,少子高齢化が進行する日本社会において芸術の社会的有用性を再確認し、人々の生まれながらにしてもつ「創造性」を資源として社会において開花させることを目的とする。具体的には「医療」と「芸術」の融合への要請とアール・ブリュット研究の世界的隆盛が同根であることを確認し、「アーティストのサバイバル 第一回実態調査2014」を実施し、アーティストの仕事と社会からの要請がミスマッチしている現状を数量的に明らかにし、その原因を芸術系大学のカリキュラム上の需要に対する過少供給に見出した。厚生芸術研究は少資源国の日本においては、創造的資本論という新たな社会的要請に応えるものとなる。
著者
石濱 友裕 久野 誉人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 = IPSJ Journal (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.2103-2108, 2013-08-15

本論文では,人気のあるペンシルパズル"Slitherlink"の解法について議論する.多くのパズルがそうであるように,SlitherlinkはNP完全であり,整数計画法を使って求解が可能である.このパズルが,これまでに知られている方法よりも簡潔に定式化でき,はるかに高速に解けることを紹介する.This paper addresses a solution to "Slitherlink", one of popular pencil puzzles. Like many other puzzles, Slitherlink is NP-complete and can be solved using integer programming. We show that the puzzle can be formulated more concisely and solved much faster than in the existing formulation.
著者
黒岩 将 安本 慶一 村田 佳洋 伊藤 実
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.47-56, 2013-03-12

合コン(お見合いパーティ)では,できるだけ多くのカップルを成立させたいという要求が発生する.本論文では,合コン結果から,カップルが成立しやすい男女の属性情報の組(好相性と呼ぶ)を,進化計算を用いて求めることで,理想的な合コンメンバ(合コン参加者名簿)を決定するシステムを提案する.提案システムでは,男女の属性情報の組を進化計算の解集団(初期個体群)としてシステムに持たせ,合コンでのカップル成否を解の評価値(適応度)としてフィードバックしながら,好相性を表現する準最適解集団の獲得を目指す.提案システムの実現には,複数の好相性の同時探索,様々な参加者による多数の合コンの実施が必要である.これらの課題を解決するため,進化計算の新しい選択法,過去の合コン結果の新たな解評価への再利用法を考案した.提案システムを評価するため,カップルになった男女の属性情報を解としてそのまま利用する比較手法を用意し,計算機シミュレーションにより比較を行った.結果,提案手法が,比較手法に比べて,半分の合コン実施回数で,約2倍のカップル成立数を達成できることを確認した.
著者
南部 陽一郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.2-8, 2002
参考文献数
4

<p>20年以上前のことだが, 私の生涯と仕事について物理学会誌に書いたことがある.^<1)>今回またこの機会を与えてくださった編集者の方々に前もって感謝の意を表します.さて私の昔の記事を読んでみたら, 1960年半ばごろまでの私の周りに起きたことごとを述べてあるので, 当然今回はその続編ということになる.しかし新しい読者を考慮し, また社会的背景をも含めたいと思って初めからやり直すことにした.</p>
著者
Yuko OCHIAI Yasumasa OTSUKA
出版者
National Institute of Occupational Safety and Health
雑誌
Industrial Health (ISSN:00198366)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.436-446, 2021-11-25 (Released:2022-10-01)
被引用文献数
4

Although an increasing number of studies on psychological safety at workplaces has been conducted in both western and eastern countries, there are few empirically validated measures in Japan. Our purpose was to investigate the validity and reliability of the Japanese version of the Psychological Safety Scale. Japanese workers were invited to participate in online surveys at baseline and at one-month follow-up (N=320). The Psychological Safety Scale was translated into Japanese according to international guidelines. Social support at workplace, work engagement, organization-based self-esteem, organizational justice, and job satisfaction were measured. Cronbach’s alphas and intra-class correlation coefficient (ICC) were examined for reliability, and its validity was tested by confirmatory factor analysis and correlational analyses. The results of the survey showed that respondents were 287 at baseline and 236 at follow-up. Cronbach’s alphas of the Psychological Safety Scale were 0.91 (baseline) and 0.88 (follow-up), and ICC was 0.87. Confirmatory factor analysis demonstrated a marginally acceptable fit. Overall, the Japanese Psychological Safety Scale had moderate to strong correlations with other scales. In conclusion, the Japanese version of the Psychological Safety Scale had acceptable levels of reliability and validity, and may be applicable for use in Japanese workers.
著者
Yi Su Yun Ling Yuyan Ma Lili Tao Qing Miao Qingfeng Shi Jue Pan Hongzhou Lu Bijie Hu
出版者
International Research and Cooperation Association for Bio & Socio-Sciences Advancement
雑誌
BioScience Trends (ISSN:18817815)
巻号頁・発行日
pp.2020.03340, (Released:2020-12-18)
参考文献数
22
被引用文献数
4

The aim of this study is to assess the efficacy of multiple treatments, especially hydroxychloroquine, used in different disease stages of coronavirus disease 2019 (COVID-19). All consecutive patients with COVID-19 admitted to Shanghai Public Health Clinical Center (Shanghai, China) between January 20, 2020, and April 30, 2020, were enrolled, and their clinical data were retrospectively collected. Binary logistic regression was used to screen the factors associated with disease aggravation, and multivariable analyses with the Cox proportional hazards model were used to estimate the effects of prognostic factors on the improvement time and PCR conversion days in throat swabs and stool swabs. A total of 616 patients, including 50 (8.11%) severe and 18 (2.92%) critical patients, were enrolled in our retrospective cohort study. The early use of hydroxychloroquine was a protective factor associated with disease aggravation (95% CI: 0.040-0.575, p = 0.006). Clinical improvement by 20 days was significantly different between patients with hydroxychloroquine used early and those with hydroxychloroquine not used (p = 0.016, 95% CI: 1.052-1.647). The median time to clinical improvement was 6 days in the hydroxychloroquine used early group, compared with 9 days in the without hydroxychloroquine used group and 8 days in the with hydroxychloroquine not used early group (p < 0.001). Hydroxychloroquine used early was associated with earlier PCR conversion in both throat swabs (HR = 1.558, p = 0.001) and stool swabs (HR = 1.400, p = 0.028). The use of hydroxychloroquine at an early stage is a potential therapeutic strategy for treating patients before irreversible severe respiratory complications occur. The early use of hydroxychloroquine decreased the improvement time and the duration of COVID-19 detection in throat and stool swabs.
著者
室伏 広治 山口 大輔
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

アスリートが高レベルのパフォーマンスを維持するためには、怪我なく長期間トレーニングを継続することが重要である。負荷の高いトレーニングを長時間続ける事により負傷につながるため、多くのエリートアスリートが現役を続けることが困難となる。申請者は、現役時代に腰や股関節などの負傷による困難を打開するため、「ハンマロビクスエクササイズ」を考案し, 負傷部位への過度な負担なくトレーニングの継続が可能となり、38歳でオリンピック銅メダルを獲得できた。本研究では表面筋電、3次元動作解析、フォースプレートを用いてハンマロビクスエクササイズの運動特徴を解明し、アスリートの傷害予防への効果を検討する。
著者
大森 啓太郎 増田 健一 阪口 雅弘 蕪木 由紀子 大野 耕一 辻本 元
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.851-853, 2002-09-25
参考文献数
13

農林水産省に犬のワクチン副反応として報告された311症例を症状別に分類した.狂犬病ワクチンにより副反応を起こした27症例においては消化器症状が最も多く(26%),次いで呼吸・循環器症状(22%),皮膚症状(11%)であった.狂犬病ワクチン以外の単価,混合ワクチンにより副反応を起こした284症例においては,皮膚症状が最も多く(53%),次いで消化器症状(16%),呼吸・循環器症状(14%)であった.311症例中,11症例(3.5%)においてワクチン副反応による死亡が認められた.
著者
石井 卓
出版者
成蹊大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

多変数非正則保型形式のフーリエ展開を記述するために、実半単純リー群上の球関数の研究を様々な場合に行った。これら球関数は偏微分方程式系によって特徴付けられる。表現論的手法によりその方程式系を導出することから始め、保型形式への応用に耐えうる形でその解の積分表示を求めた。さらに、保型L関数への応用として、これら球関数の積分変換である、ゼータ積分の無限素点における計算を実行し、L関数の関数等式、正則性という大域的な結果を得た。
著者
塩田 昌弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

フランスのレンヌ大学のFichouと共同研究を行い、2つの問題を解決した。1つは、解析的関数の芽の分類に関するある特異点理論の未解決問題。2つめは、 Milnor fiberに関する問題。1つの論文を発表し、1つの結果を書いている。またイギリスのマンチェスター大学Tressleと共同研究をし、1つの問題を解決した。問題はArtinの近似定理の位相的証明で、良く知られた予想問題である。その結果は今書いている。そのほか、兵庫教育大学の小池敏司氏と埼玉大学の福井敏純氏と特異点理論の共同研究をして、1つの論文を発表し、1つの結果を書いている。