著者
横田 晋大
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.15-22, 2017 (Released:2018-07-20)
参考文献数
78
被引用文献数
2

In this paper, the evolutionary roots of gender differences in aggressive behavior are presented. Previous studies in the field of social psychology have shown that men are more aggressive than women not only in interpersonal, but also in intergroup relationships. From an evolutionary psychological view, it is predicted that outgroup aggression is triggered by the psychological mechanisms adapted to intergroup conflict specified for males. However, social psychologists demonstrated that ingroup cooperation, but not outgroup aggression, was dominant in intergroup conflict situations in a laboratory experiment. On the other hand, in these days, some evidence in the field of cultural anthropology, ethnography, and bioarcheology have clearly shown that hunter-gatherer and forager males frequently engaged in war. I discuss whether intergroup conflict influences selection pressure on male aggressive behavior as a reproductive strategy to enhance fitness.
著者
曲亭主人 編
出版者
東京稗史出版社
巻号頁・発行日
vol.残編 巻之1,2, 1883
著者
宮内 哲
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.20-27, 2016-02-01 (Released:2017-03-01)
参考文献数
24

Hans Bergerがヒトの脳波の発見者であり, α波とβ波の名付け親であることはよく知られている。しかしそれ以上のことを知っている人は少ない。Bergerは脳と心の関連を解明するために脳血流を計測し, 脳温を計測し, そしてついに脳波を発見した。しかしそれは同時に, 脳波がアーチファクトかもしれないというBerger自身の, そして他の研究者からの疑念を晴らすための長くて困難な道への入口にすぎなかった。そして当時のドイツを席巻していたナチスとの関係に苦しみながら, ようやく栄光を掴んだにもかかわらず, 意に反して脳波研究をやめなくてはならなかった。Bergerの研究と生涯, 当時の社会や脳研究の実態を調べれば調べるほど, 単に脳波を発見した精神科医ではなく, まともな増幅器や記録装置がなかった時代に, 脳と心の関連を脳活動計測によって研究しようと苦闘した20世紀初頭の生理心理学者としての姿が浮かび上がってくる。その姿を三回に分けて紹介する。その1では, 脳波の研究を始める前にBergerが行った研究, それらの研究と脳波の研究との関連について述べる。その2では, Bergerが行った脳波の研究の詳細と, 脳波が当時の神経生理学に受け入れられなかった理由について考察する。その3では, 脳波が神経生理学や臨床医学に受け入れられていった過程と, その後のBerger, 特にナチスとの関係, 自殺の原因などについて述べる。
著者
沼崎 誠
出版者
首都大学東京
巻号頁・発行日
pp.1-291, 2012-03

ステレオタイプと偏見の機能-特にシステム正当化機能-と自己ステレオタイプ化に注目して,ジェンダー・システムの再生産過程における,ジェンダー・ステレオタイプと性役割的偏見の役割について実証的研究を行った.システム正当化機能に関しては現システムへの脅威や死すべき運命や異性愛が顕現化した状況で,自我正当化機能に関しては自尊心への脅威状況で,集団正当化機能に関しては特定の自己表象が活性化した状況で,ステレオタイプ化や偏見が強まることを見いだした.ジェンダー・システムを再生産の観点からこれら結果について考察した.
著者
越智 啓太 喜入 暁 甲斐 恵利奈 長沼 里美
出版者
法政大学文学部
雑誌
法政大学文学部紀要 = 法政大学文学部紀要 (ISSN:04412486)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.101-110, 2015-03-15

本研究では,女性に対する蔑視的な態度を測定する尺度を構成した。大学生カップルの男性のもつ女性蔑視的態度を測定し,女性蔑視的態度の構造およびこの傾向と他のパーソナリティ尺度の関連を分析した。また,女性蔑視的態度とカップル内における各種のハラスメントの頻度との関連を分析した。その結果,女性蔑視的な態度を含む尊大さに関する傾向があらゆるハラスメント行為を促進することが示唆された。
著者
上野 陽里
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.18, no.10, pp.629-633, 1976-10-30 (Released:2009-03-31)
参考文献数
29

トリチウムは主に水として天然にも多量に存在する。生体には呼吸器,皮膚,消化器を経て入り,水の新陳代謝系に沿って分布し,呼吸器,泌尿器,皮膚,消化器を経て排泄される。生体内各部からの排泄速度は等しくない。生体ではトリチウム水の生物学的濃縮はないと考えられている。個体全体からの排泄は,その速度によって3成分に分けられ,それらの半減期の長さは動物の種によって異なる。
著者
谷口 康浩
出版者
名古屋大学年代測定資料研究センター
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
no.16, pp.34-53, 2005-03

第17回名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計シンポジウム平成16(2004)年度報告 Proceedings of the 17th symposiumon Researches Using the Tandetron AMS System at Nagoya University in 2004\日時:平成17 (2005)年1月24日(月)、25日(火) 会場:名古屋大学シンポジオン Date:January 24th and 25th, 2005 Place:Nagoya University Symposion Hall
著者
池 俊介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.359-366, 2018 (Released:2018-06-12)
参考文献数
4
著者
林 洋一郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.46-57, 2012-09-20 (Released:2013-10-01)
参考文献数
37

本論文では,「正義・公正」について哲学に基づく規範的研究と組織行動や心理学に基づく経験的研究の双方を論じた.正義に関する規範研究と経験研究の双方を展望した結果,両者の関連性があまり強くないことが明らかにされた.さらに「規範的論議-経験的論議」そして「ミクロ-マクロ」というふたつの軸を組み合わせることによって今後の研究方向について議論した.
著者
若山 仁久 池田 拓 中島 逸男 平林 秀樹 春名 眞一
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.19-23, 2011 (Released:2012-02-15)
参考文献数
13

鼻腔異物は小児を中心とし, 日常診療でしばしば遭遇する疾患である。2005年1月から2010年8月までの過去5年8ヵ月間に当科を受診した小児の鼻腔異物症例は281症例であった。今回我々は年齢, 性別, 受診年, 受診月, 異物の形状・性質・大きさ, 合併症の有無などを検討した。症例の平均年齢は3.6歳 (SD±1.5歳) であり, 性差は認めなかった。異物の直径は平均8.6mm (SD±2.3mm) であった。気管異物や鼻中隔穿孔などの重篤な合併症を認める例はなかった。学童期以前の幼児には直径が6~12mmのものは鼻腔異物となる可能性が高く, 注意を要すると考えた。
著者
加藤 将 渥美 達也 小池 隆夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.10, pp.2401-2406, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
9

全身性エリテマトーデスの治療は従来からステロイド薬による非特異的な治療が中心であったが,近年,免疫抑制薬や生物学的製剤を用い,効果的で副作用の少ない治療が試みられている.全身性エリテマトーデスの関節炎の特徴は「非破壊性関節炎」と表現され,関節リウマチの「破壊性関節炎」とは多くの点で対照的である.このような対照的な病態を理解することは関節炎全般の診療をより深いものにすると考えられる.
著者
高後 裕 大竹 孝明
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.59-65, 2015 (Released:2015-12-07)
参考文献数
19
被引用文献数
2
著者
小野 有五
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.71-91, 2016-06-01 (Released:2016-08-03)
参考文献数
114

1990年,日本のなかでもっとも生存が脅かされている絶滅危機種,シマフクロウとの出会いを契機に,第四紀学の純粋な科学者であった研究者が研究者=活動者に変化していった過程を述べ,政策決定など社会との関係において科学者を区分したPielkeの四類型に基づいてそれを分析した.その結果,政策決定には関わろうとしない“純粋な科学者”や“科学の仲介者”から,自らをステイクホルダーとして政策決定に参与しようとする“論点主張者”,さらには“複数の政策の誠実な周旋者”に筆者自身の立ち位置が変化していったことが,千歳川放水路問題,二酸化炭素濃度の増加問題,高レベル放射性廃棄物の地層処分問題,原発問題の4つの環境問題において明らかとなった.原発問題については,特にその安全性に直接関わる活断層研究との関連を調べた結果,日本第四紀学会の複数の会員が,原発を規制する政府の委員会において,原発周辺の活断層の評価だけでなく,活断層の定義にも決定的な役割を演じていたことが明らかになった.このような事実は,とりわけ,2011年3月11日の福島第一原発の過酷事故以来,現在の日本社会における日本第四紀学会の重要性と責任の大きさを強く示唆している.日本第四紀学会は,3.11以前からの長年にわたる学会員と活断層評価との関わりについても明らかにするとともに,原発の安全性に関わる活断層やそのほかの自然のハザードについて,広くまた掘り下げた議論を行い,社会に対して日本第四紀学会としての“意見の束”を届けるべきであろう.
著者
森田 昌敏
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.1083-1096, 1981-11-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
73
被引用文献数
1 2

生体に取り込まれた金属は血流にのって移動し, いろいろな臓器に到達し, 様々な化学変化を受けながら, 一部は貯蔵 (あるいは蓄積) され, 残りは排泄されていく。吸収から始まる, これらの一連のプロセスは, 各種のフィードバック回路を内蔵した化学反応系であるが, その内容は非常に複雑精緻であり, 今日においても未解明の部分が多い。本稿では, 重金属の生体内での代謝を, 吸収, 輸送, 体内分布, 排泄にわけて記述した。重金属の代謝に関する研究は, 栄養学, 毒物学を中心とし, 分析化学や生化学のような基礎科学から臨床医学のような応用科学まで広い範囲の研究者によってなされてきており, その記述内容は著者のバックグランドによって, かなり左右される。ここでは科学者から見た代謝が書かれている。分析技術の最近の進歩についても若干触れている。
著者
森 裕紀子 五野 由佳理 及川 哲郎 小田口 浩 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.274-279, 2016 (Released:2016-11-22)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

群発頭痛の発作軽減に選奇湯の頓用が奏効した症例を経験した。症例は46歳女性で,30歳頃より季節の変わり目に群発頭痛の発作があり,症状は3日間持続した。発作時トリプタンや消炎解熱鎮痛剤は無効で,その発作の持続時間が長く頻回となったため漢方治療を希望し来院した。瘀血と気鬱より随証治療で通導散料を処方して頭痛の頻度と程度は軽減したが,鎮痛剤が無効な頭痛発作は生じた。そこで眉稜骨(眼窩上縁)内側の圧痛を認め,痛みの範囲が眉稜骨周囲のため頭痛時に選奇湯を頓用としたところ,最近1∼2週間持続した発作が30分で消失した。一般に構成生薬が少ない漢方薬ほど切れ味がよいとされる。選奇湯は黄芩を含む5味と構成生薬が少なく,頓用での効果が期待できる。眉稜骨周囲の痛みに対して,特に眉稜骨内側の圧痛を認める場合は選奇湯の頓用は試みるべき処方の1つである。

5 0 0 0 OA 荘園志料

著者
清水正健 編
出版者
帝都出版社
巻号頁・発行日
vol.下卷, 1933
著者
川森 博司
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.385-406, 1993-02-26

本稿は,日本と韓国の事例の比較の視点から,異類婚姻譚の類型を整理し,日本の異類婚姻譚を東アジアという視野の広がりの中で考察していくための足がかりを作ることをめざしたものである。類型の分類においては,人間と異類の婚姻が成立するか,成立しないか,ということを第一の基準とし,次に「異類聟譚」と「異類女房譚」に分けて,諸類型の記述をおこなった。婚姻が成立する類型の主なものは,異類が人間に変身して人間との結婚を成就するという形をとるもので,日本においては「田螺息子」の話型があるが,それ以外にはあまり見られない。韓国においては,異類聟譚,異類女房譚ともに,この類型のものが相当数伝承されている。一方,婚姻が成立しない類型は,異類聟譚においても,異類女房譚においても,日本の異類婚姻譚の主要な部分をなしている。日本の異類聟譚においては,人間の女が計略を用いて異類の男を殺害して,婚姻を解消する「猿聟入」や「蛇聟入・水乞型」の伝承がきわめて数多く伝えられている。この形の伝承は韓国には見られないようである。また,日本の異類女房譚では,異類の女の正体が露見したために結婚が解消される形の「鶴女房」や「蛇女房」などが幅広く伝承されている。この類型は韓国にも存在するが,日本の場合ほど顕著にはあらわれない。韓国では,婚姻が成立しない類型においても,一時的な異類との交渉の結果,非凡な能力をもった子どもが生まれる形のものが多く見られる。ただし,これらの点について比較をおこなうとき,『韓国口碑文学大系』においては,昔話と伝説を一括して収録しているのに対し,日本の昔話の資料集は,伝説と区別して,昔話を収集していることを考慮しなければならない。本稿でおこなった類型の整理は,個々の話型についての分析をおこなっていくための土台となるものであり,また,「説話を通して文化を読む」ための基礎作業である。