著者
新田 敏勝 川崎 浩資 芥川 寛 江頭 由太郎 石橋 孝嗣
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.3034-3039, 2011 (Released:2011-11-07)
参考文献数
14

症例は76歳,女性.突然の心窩部痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診された.上部消化管内視鏡検査所見では,胃穹窿部から索状物が認められ,幽門洞へ引き込まれていた.また腹部造影CT検査では,十二指腸球部に占有する5cm大の腫瘤陰影を認めた.まず,術前に用手圧迫を併用し内視鏡下に整復を行い,胃穹窿部から発生したGISTと診断し,小切開による胃部分切除術を施行した.病理組織学的にもKIT(+)CD34(+)でGISTであった.ball valve syndromeをきたした症例に対し,内視鏡下に嵌頓を解除し,適切な加療を行えた1例を経験したので報告する.
著者
田中 皓介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_241-I_248, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
31

日本という国土に生きていく以上,大雨や地震,雪害などあらゆる自然災害への対応が必須である.そのような自然災害発生直後には,例えば多くの自衛隊や警察,消防が動員され救助や復旧にあたっていることは広く国民の知るところである.一方で,地元の建設業者もまた大きく貢献しているものの,地元建設業をはじめとした土木業界の活躍は,人々の認知が十分になされていない.このように,土木建設業あるいは公共事業を軽視する状況が続けば,今後の日本では十分な災害対応が困難となることが懸念される.そこで本研究では,国民世論の形成に寄与する新聞報道を対象に,災害発生後の救助や捜索,復旧活動に着目し,その報道状況を明らかにする.そして,内容の分析,考察に基づきその改善に向けた知見の提供を目的とする.
著者
加藤 護
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.153-160, 2017-09-10 (Released:2017-10-11)
参考文献数
36

An MJMA 6.7 (Mw 6.2) earthquake occurred in Northern Nagano, Japan, on November 22, 2014. While the damage in the city center of Nagano was relatively minor, 65 stone lanterns, among 182, standing in the precinct of the Zenkoji Temple, approximately 25 km from the epicenter, were toppled by the ground motion of this earthquake. Damage of the surrounding residential area was minor. Directions of the collapse were dominantly in the north-south. Strong motion seismograms recorded at nearby JMA Nagano Local Meteorological Observatory were rich in high frequency, especially in the NS component, which explains collapse of stone objects whose natural periods are few tenths of a second. Similar damage was documented in a historic earthquake in 1714, and recurrence of such damage implies that high frequency ground motions from large earthquakes in this epicentral area have been repeated threats to the Zenkoji Temple and Nagano City.
著者
佐治木 弘尚 澤間 善成 近藤 伸一
出版者
岐阜薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ステンレススチール(SUS304)製遊星型ボールミル中で水をミリングすると、メカノエネルギーとSUSを構成する金属の触媒作用効率良く協調して、非加熱、非加圧で水の全量分解反応が進行し、水素が定量的に生成する。反応の進行にはSUS合金を構成する金属とメカノエネルギーが重要である。水だけでなく炭化水素やエーテルでも同様に水素が効率良く生成することも明らかにした。特に芳香族化合物共存下、ジエチルエーテルをミリングすると芳香核の還元が定量的に進行する。さらにSUS304ボールとH2O、CO2をミリング処理するとCO2がSUSを構成する金属の炭酸塩を経て逐次的にメタンに定量的に変換されることも判った。
著者
舟木 貴久 村山 明生
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.303-312, 2004-10-29 (Released:2007-12-21)
参考文献数
11

大規模システムをめぐる事故への法的対応を論じるにあたっては, 原因究明に基づく適切な対策の実施と法的責任追及による制裁のバランスをどのように図っていくかが重要な論点となる.本論文ではフランスの航空事故調査の法システムを取り上げ, 原因究明を行うBEA, 責任追及を行うGTA, 行政処分を行うDGACの任務・権限, 組織, 調査件数, 人員, 調査の流れ等を調査整理した. フランスの航空事故調査システムはBEAにおける専門性を確保した調査体制, GTAという航空機事故に特化した警察組織の存在, GTAとBTAとの証拠の融通, 調査の連携, 証拠や調査結果の流用などの点で特徴的である.最後に, 日米仏の比較整理を行うことにより, 航空事故をめぐる安全確保の法システムのオプションの抽出とその選択の考え方の例を提示した.
著者
阪本 真由美
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.199-207, 2013-11-15 (Released:2019-01-19)
参考文献数
15

This study focuses on the coordination system to receive international assistance after mega disaster based on the experience of the Great East Japan Earthquake that occurred on 11 March 2011. First, it summarizes how the coordination system for receiving international assistance after mega disasters was developed in Japan. Then, it reviews how international Urban Search-and-Rescue (US&R) teams were received in the Great East Japan Earthquake, based on interviews with municipalities which received assistance. Then, the study compares the current Japanese coordination system with other countries which had received international assistance in disasters. Finally, based on the analysis the study proposes an effective coordinating system for mega disasters.
著者
薮内 喜人 浜端 悦治 神谷 要
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.A1-A9, 2014 (Released:2015-01-08)
参考文献数
19

水鳥の採食行動を明らかにするために,給餌実験と野外実験を行なった.給餌実験ではカルガモにクロモの地上部(茎と葉)と塊茎を与えたところ,明らかに塊茎を好んだ.野外実験は愛知川河口付近の水深30cm と60cm のクロモ群落で行なった.ネットを張った調査区とネットを張らない調査区を設置し,越冬する水鳥が飛来した前後の塊茎密度を測定した結果,塊茎密度が高かった水深60cm の調査区において多くの塊茎が食べられていた.これらのことから,水鳥はクロモの塊茎を好み,塊茎密度に依存して採食している可能性が考えられた.
著者
西野 貴晴 北村 俊平
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.A1-A19, 2022 (Released:2022-02-23)
参考文献数
88

バラ科キイチゴ属(Rubus)は先駆性の低木種であり,開放的な環境が形成されるといち早く侵入・繁茂し,さまざまな鳥類や哺乳類が果実を利用する典型的な周食型散布植物である.本研究では,自動撮影カメラを用いて,中部日本のスギ林に生育するキイチゴ属3種(クサイチゴ Rubus hirsutus,モミジイチゴ R. palmatus,クマイチゴ R. crataegifolius)の量的に有効な種子散布者を明らかにすることを目的とした.調査は石川県農林総合研究センター林業試験場内のスギ人工林において,間伐施業後に出現したキイチゴ属3種を対象として,2019年5月9日~7月10日に行なった.自動撮影カメラLtl-Acorn6210MCをもちいて,熟した果実(クサイチゴ108個,モミジイチゴ489個,クマイチゴ168個)と落果(モミジイチゴ32個)の果実持ち去り動物を記録した.キイチゴ属3種ともに3週間で83%以上の果実が樹上から消失した.果実持ち去り数の割合が上位の動物は,クサイチゴでアナグマ(総持ち去り数の30.4%),ニホンザル(27.8%),ヒヨドリ(19.0%),モミジイチゴでヒヨドリ(59.7%)とニホンザル(37.4%),クマイチゴでヒヨドリ(78.2%)とニホンザル(20.4%)だった.ヒヨドリが散布したクマイチゴの種子の発芽率は3.2%(N=189)だった.果実持ち去り数が上位であったヒヨドリとニホンザル,さらにアナグマはキイチゴ属3種の量的に有効な種子散布者と考えられた.これらの3種の動物は,発芽能力のある種子を散布し,その散布範囲は動物種によって数十ヘクタールから数平方キロメートルの範囲内に散布する可能性があることから,質的にも有効な種子散布者である可能性が高いと考えられた.
著者
櫻井 龍子
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.660-663, 2022-11-15 (Released:2022-12-23)

医療,産業活動,航空機運行といった社会的に有用かつ不可欠な活動に伴い,不幸にして人が負傷,死亡する結果が生じることは避けられない.それぞれの分野で人命尊重の観点から,長年にわたって適切な事故調査,再発防止策等を講じるための努力が積み重ねられている.講師の経験から,航空機事故については,再発防止が最重点であるため,正確な証言を得るための刑事免責,民事免責が講じられていること,労災事故については,公的制度により必要な補償を行う制度が確立されるとともに,再発防止のための研究,教育,事故調査等が労働安全衛生行政として行われていることを紹介する.
著者
市川 学 石峯 康浩 近藤 祐史 出口 弘 金谷 泰宏
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会誌 (ISSN:24320374)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.21-35, 2017 (Released:2017-10-30)
参考文献数
12
被引用文献数
2

地震に代表される自然災害の多いわが国では、災害発生時に被災地の医療を支援するため、避難者の健康を管理するために、DMAT・DPAT・DHEATなどに代表される保健医療支援活動従事者が、被災地において支援活動を行う。本研究では,発災直後から復興期にかけて保健医療支援活動従事者が、どのように組織され、どのような活動をどのように行なっているかを論じる。また、近年では、保健医療支援活動を支える情報技術も整備されつつあり、情報を利活用する災害時の保健医療支援活動についてマネジメントの視点を交えて説明する。
著者
野田 哲平
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.126, no.12, pp.1273-1276, 2023-12-20 (Released:2024-01-01)
参考文献数
9

聴覚障害はコミュニケーションの障害を続発させ, 社会参加を阻害する因子となる. 2001年5月, 障害の医学モデルと社会モデルを統合し得る枠組みとして WHO 総会において国際生活機能分類 (International Classification of Functioning, Disability and Health: ICF) が採択された. 生活機能として心身機能・身体構造, 活動, 参加があり, 生活機能に影響を及ぼす要素として背景因子である個人因子と環境因子がある. この ICF を聴覚に当てはめると, 聴覚障害が学習やコミュニケーションなどの機能に影響を与えて活動制限を来し, さらに就学や就労に影響が出現する. これらは学業や仕事など社会活動への参加制約となる. この生活機能の問題と, その背景因子としての環境因子や個人因子それぞれに介入し, 制約や制限を軽減していくことが求められる. 社会モデルの考え方ではさまざまな角度から障壁を低減することを目指すが, 一方で聴覚障害者側も, 自分がどのように困っていてどうすれば解決・改善するのかといった建設的な意見を, 環境や社会に対して提示することが重要である. この能力や技術は「セルフアドボカシー」と呼ばれる. 一朝一夕に身に付くものではなく, 幼少期からの指導が重要である. 本稿では, ICF から見た聴覚障害と, セルフアドボカシー指導の試みについて述べる.
著者
松川 杏寧 髙岡 誠子 木作 尚子 柴野 将行 有吉 恭子
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.107-117, 2022-11-01 (Released:2023-04-26)
参考文献数
24

This study aims to explore the elements necessary to solve the problem of shelter quality in disaster-affected areas in Japan. The researchers identified twelve positive deviant good practice evacuation shelter management cases from four significant disasters over the past ten years. Interviews with twelve leaders were transcribed. Three disaster researchers from sociology, public health, and architectural backgrounds as well as two crisis management practitioners independently extracted key terms from the same transcript. Through the Affinity Diagram method, eight mutually exclusive super-conceptual clusters emerged. Five out of eight super-clusters corresponded with areas that were prescribed by the National government-issued Evacuation Shelter Management Guideline. Three unique super-clusters also appeared to be characteristic of the competent shelter operation.
著者
柴田 伊冊
出版者
総合危機管理学会
雑誌
総合危機管理 (ISSN:24328731)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.69-77, 2019 (Released:2019-12-10)

危機状態若しくは通常とは異なる緊張状態にあるときに言語に課される役割を、航空管制(英語)の場合と、日本の消防の場合の比較によって明らかにする。航空管制(英語)の場合が、極めて合理的な思考方法によって整理され、世界規模での標準化を行っているのに対して、日本の消防の場合は、基本形提示による言語の使用のほか、実際の運用では人的な経験の程度や知識の有無に依存する傾向がある。日本語について、その「曖昧さ」が言語として優れた面であるとする評価があるが、日本語の解釈が客観性の追究よりも、人的な要素を重視する方向にあるということが本論の結論になる。