著者
佐塚 隆志 北野 英己
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

イネの胚発生突然変異体club-shaped embryo1(cle1)、tryptphan deficient dwarf1(tdd1)、club-shaped embryo3(cle3)の3系統を用いて、イネ胚の器官形成におけるマイクロRNAやオーキシンによる制御機構について解析を行った。cle1、cle3は、胚が棍棒状になる変異体であり、tdd1は胚が球状になる変異体で、共に器官形成を行うことができない。ポジショナルクローニングの結果、cle1の原因遺伝子はOsDCL1、tdd1はアントラニル酸シンターゼベータサブユニット遺伝子であることが明らかとなった。これらの変異体を用いた詳細な解析の結果、イネの胚発生におけるマイクロRNA及びオーキシンによる制御機構が解明された。また、別の棍棒状胚変異体cle3の原因遺伝子は第6染色体に、また、重力屈性が異常な変異体crown root less2(crl2)は第1染色体に原因遺伝子が座乗することが明らかとなり、イネの胚発生とオーキシンの関係についての研究基盤が構築された。
著者
阪東 一毅
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー結晶(TPCO結晶)におけるダビドフ励起子の基礎光学遷移について調べた。下枝ダビドフ励起子はTPCO分子のチオフェン環の数に依存して光学遷移が許容になる場合と禁止になる場合がある。一方、より高エネルギー側に存在する上枝ダビドフ励起子はac面内方向に極めて大きな振動子強度を持つ。TPCO分子は結晶内でH会合体のようにほぼ平行に配向するため、上枝ダビドフ励起子は下枝ダビドフ励起子に比較し、大きな吸収強度を持つ原因となる。これらの光学遷移選択則はそれぞれの結晶における分子の遷移双極子モーメントの配列様式によって決まってくる。
著者
畝田谷 桂子 和田 礼子
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、留学生の工学実験系日本語論文作成や読解に資することを目的とし、同分野論文の「結果と考察」章の表現意図による細かいレベルの構造と重層的論理構造を明らかにした。また、「考察」の表現意図に含まれる種々の下位の表現意図別に文型を整理した。さらに、英語論文作成手法「スタンダードプロセス」(潮田(1999)『科学英語論文のすべて』日本物理学会編、丸善)を留学生の日本語論文作成に一部改変して試行した結果、添削可能な文章の自立的産出に有効であった。この手法と上述の論文分析結果を合わせて教育方法を考案し、提言を行った。
著者
青木 康晴
出版者
成城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、(1)利益情報の有用性、(2)会計上の保守主義、(3)配当政策という3つの観点から、支配株主の機会主義的行動について検証した。研究(1)では、支配株主の存在は総じて利益情報の有用性を高めるものの、最大株主がアウトサイダーの場合、その持株比率が一定水準を超えると利益情報の有用性が低下することが示唆された。研究(2)では、最大株主持株比率が高い企業ほど保守的でない会計利益を報告し、役員派遣と相対的規模がそれに影響を与えているという証拠が提示された。研究(3)では、最大株主がインサイダーかアウトサイダーかによって、配当の水準、および最大株主持株比率と配当の関係が異なることが示唆された。
著者
泉 唯史 田中 みどり 菅原 基晃 菅原 基晃 住ノ江 功夫
出版者
姫路獨協大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

運動中の心機能応答の評価のために,運動負荷頸動脈エコーを用いた評価を試みた.体幹と頭部を固定する特殊な運動装置を用いることにより,運動時においても安定した頸動脈エコーを取得することができた.心エコーを用いて従来の心機能の評価によって得られた左室収縮能および拡張能と比較すると,頸動脈エコーから得られた指標は,収縮能においては良好な相関が得られたが,拡張能においては今後の課題を残した.
著者
片山 寛則 菅原 悦子 植松 千代美 池谷 祐幸
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

東北地方より収集したイワテヤマナシを含む野生ナシ、在来品種の有用形質評価(香気、加工特性、早晩性)と新規利用法の開発、個体識別を行った。収集個体は香気成分、有機酸、糖類ともに多様性が高かった。在来品種'サネナシ''ナツナシ'は香りの強いエステルが存在しニホンナシやセイヨウナシとは異なるさわやかな香りだった。'ナツナシ'などニホンナシの約7倍の有機酸量をもつ個体も存在し優れた加工特性を示した。
著者
佐々木 交賢
出版者
創価大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

社会学の主たる起源は哲学思想、心理学であり、E,デュルケームの努力によって哲学思想,心理学から独立して独自の学問としての社会学が確立された。しかし社会学の独立後も哲学からの影響あるいは社会学への批判が続いており、最近になって再び顕著になった。哲学においてプラグマティズムの占める地位は必ずしも高いとはいえないが社会学に与えた影響は小さくはなく、アメリカにおいてはプラグマティズム社会学も存在する。逆に社会学の立場からプラグマティズムに対して体系的に批判を加えたのはデュルケームであった。彼はプラグマティズムの非合理主義,社会と個人の関係説,副現象説,真理論,道徳的善の観念,宗教論,認識論,論理的功利主義,思考と行動との関係論,還元主義,多元論的形而上学,カテゴリー論,知識と実践との関係説,知識の構成論等に対して彼独自の社会学的立場から批判を加えている。しかもアメリカのプラグマティストの中でもとりわけW.ジェームズの立場を厳しく批判している。それはジェームズの哲学がフランスで有力な哲学者達,とくにH.ベルグソンに支持され,彼の諸著作の翻訳もなされているからである。当時のフランスの思想界はデュルケームとベルグゾンによって二分されており,デュルケームにとってはベルグゾンの哲学はプラグマティズムに近いものとされたのである。そこでデュルケームはプラグマティズム批判と同時にベルグソン哲学の批判も行なったのである。しかしデュルケームの社会学説とプラグマティズムとの間には相点点とともに共通するいくつかの側面がある。これらの点をさらに明確にするとともにデュルケームのプラグマティズム批判の再検討,「プラグマティズム論」に集約されているデュルケームの社会学説そのものを再検討する必要がある。
著者
池田 貴子 (原島 貴子)
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究は、英国チューダー朝初期という変革期-すなわち、人文主義の芽生え・宗教改革・写本文化から印刷文化への移行などの変化のあった時代-における、歴史叙述・時間意識の表象の問題を取り扱っている。人文主義の印刷業者John Rastellが自著出版したThe Pastyme of People(1529-30)を中心に、チューダー朝初期年代記の形態(叙述および挿絵・レイアウトを含めた書物の構成要素)を分析し、一つ一つの年代記の頁に表出する歴史観・時間意識について考察を続けてきた。各種の年代記を精査するなか、本年度は特にLondon Chronicles伝統に注目した。これまでの調査の総括より、中世を通じて主に修道会などの聖職者による制作が盛んであった状況が徐々に変わり、ことにチューダー朝初期には年代記の形態やジャンルの意識にも変化が生じていたことが分かってきた。London Chroniclesとは、15世紀以降に盛んになった市民による歴史叙述で、現在も多数の写本が伝わっている年代記を総称して学者が呼んだもので、作者不詳のまま、市民階級の書き手によって叙述が引き継がれていった特色がある。写本間で、内容と形態(本文構成・パラテクスト要素)に共通の要素も認められている。そして調査からは、それらの伝統と一見無縁のような印刷本の年代記の中にも、様々な形でその影響の継続性と変質の模様がうかがえた。本研究は、John Rastellおよび息子の印刷業者のWilliam Rastellがそこに果たした役割を明らかにした。このような、15世紀のLondonChronicles伝統の成り立ちの過程、さらに16世紀における変容は、ルネサンス期の英国文学研究において極めて重要な歴史的背景を与えるにも関わらず、未だ殆ど注目されていない。本研究の成果が公表されることで、状況打開へ向けての一石を投じる意義が期待されよう。
著者
青木 香苗 春山 富義 槙田 康博
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

高エネルギー加速器研究機構においては、多くの超伝導電磁石冷却用ヘリウム冷凍システムの開発、運転の経験がある。そこでまず機構内で超伝導電磁石とヘリウム冷凍システムの調査とトラブル例の収集を行った。その過程でどのような種類のデータを対象にするか決定された。データの種類は二つに大別される。1.一般的な超伝導電磁石とそれ専用のヘリウム冷凍システムのパラメータ2.故障、トラブルに関する事例次に、国内外の過去、現在稼動中、そして将来計画予定のシステムの調査を行った。故障、トラブルも調査するため、各研究所の担当者と連絡を取った上で、データベース公開の原則が決定された。・「1.一般的な超伝導電磁石とそれ専用のヘリウム冷凍システムのパラメータ」「2.故障、トラブルに関する事例」のどちらにおいても一切製造メーカー、担当メーカーの名前を出さない。・「2.故障、トラブルに関する事例」においては、研究所等の名前を出さない。・「2.故障、トラブルに関する事例」においては、データの公開は2段階とし、ユーザーが自由にアクセスできるのは、故障原因が生じた場所によって分類された簡易的な記述のみとした。さらに詳細な情報を得るためには、フォームに使用目的を書き込み申し込みを受け付けてし、目的が開発、研究、実際の運転等に限られた場合に詳細情報へのアクセスを許可するという形式を取った。この原則に基づき、日本国内、海外の研究所における対象装置を調べた。故障、トラブルという情報を提供してもらうためには、極力担当者と連絡を取り、実際に装置を見学して具体的に説明を受けるという方法を取った。また、実際に我々が直面した故障、トラブルの内、環境要因として放射線による低温システム制御系への影響の実験的な調査を行った。この結果は、開発されたデータベースのtop pageから「Useful Notes」として参照できるようにした。これらの原則と情報を元に実際のデータベースの開発を行った。データベースはKEK内で閉じられたネットワーク環境の上でテストされ、最終的にWWW上で公開された。
著者
松永 康佑
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、仮想身体表現のための計測システムの構築を目指している。従来の計測システムは運動解析と形状計測を別々に行うものであり、同時に記録できるシステムが求められた。また、多点運動解析では、計測点が増加するに従い、編集時間増加の問題があった。これらの問題解決のため、本研究では田の字型紙マーカを用いた、計測システムの構築を行った。この計測システムの有効性は確認できたが、計測精度や認識速度の点において問題が残った。
著者
村田 京子
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

まず、バルザック、ジョルジュ・サンド、マルスリーヌ・デボルド=ヴァルモール、テオフィル・ゴーチエ、スタール夫人の小説を取り上げ、文学と絵画の相関性を分析し、絵画が小説構造に果たす象徴的な意味を明らかにした。次に、上記の作家の作品の登場人物のポルトレを抽出し、それぞれラファエロ、ジロデ、ルーベンス、ホルバイン、ドメニキーノなどの絵画的表象と関連づけ、19世紀当時の「女らしさ」「男らしさ」の概念と比較対照しながら、ジェンダーの視点から検証した。最後に、女性作家と男性作家の小説における女性の芸術家像を比較することで、女性作家独自の芸術家像を浮き彫りにした。
著者
宮内 肇
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

年度の前半は、昨年度に中国広州で収集した同テーマに関する史料の読解および分析を行った。同収集史料は、1920年代前半期に中国共産党が広東各地で農民運動を展開した時期のものである。これまでの研究は、中共あるいは中共に参加した農民運動の指導者によって作成された史料を利用したものが多かったのに対し、収集した史料の多くは、農民運動による打倒の対象となった紳士や郷紳と呼ばれる地域社会の指導者が、民団と呼ばれる地域の自衛組織に関する史料や、土地の権利や境界といったトラブルを仲裁の報告書であった。その多くが手書き史料であったために、読解には一定の時間を労した。また、8月25日から9月1日まで、広州の広東省立中山図書館の古籍部を訪問し、補足的な史料収集を行った。年度の後半には、上記の史料を用いて、同時期の政権が展開した民団政策と実態としての民団との関係についての論文執筆に取り掛かった。概要は以下の通りである。1923年に開始された民団政策は行政区画(県・区・郷)を基準に民団を組織し匪賊盗賊からの自衛を規定した。しかし、実際に組織された民団の多くは、宗族を基盤として組織され、郷村を自衛するというよりも、自らの宗族の保護や維持、さらにはその影響力を拡大させようとする意識が強かった。その結果、政策としての民団と実態としての民団との間には齟齬が見られた。一方、これまで、民団とは対立関係にあったとされた同時期の農民運動により組織された農民協会も、郷村内の大姓によって構成され、さらに、その中には郷村内での紛争を民団に持ち込み解決をはかった事例などが見られた。すなわち、両者は必ずしも対立関係にはなかった。1920年代半ばの珠江デルタの郷村社会における宗族結合は、依然として強固であり、郷村民にとって信頼に足るものとして一定の役割を果たしていた。
著者
三宅 洋平 臼井 英之
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

3次元電磁モデル大規模プラズマ粒子シミュレーションにより、太陽近傍プラズマ環境中における科学衛星プラズマ相互作用を定量的に解明した。特に①強太陽放射による大量の光電子放出にもかかわらず、空間電荷制限電流の効果により衛星は負に帯電する、②太陽風プラズマ中の対流電場に起因する光電子の非対称分布が衛星搭載電場プローブ位置に数100 mV/mの強い人工電場を発生させる、③衛星からの光電子放出電流により最大数nT程度の局所磁場変動が起こりうる、などの結果により、これまで人類が経験したことのない極限環境における衛星プラズマ相互作用の実態を明らかにし、将来衛星計画の設計に適用可能な知見を得ることに成功した。
著者
湯山 トミ子 武田 紀子
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

社会的需要を背景に、大学教養課程での中国語学習者が増大しているが、中国語の言語学的特色、授業時間数の制約から、学習者が望む言語能力の習得はなお未達成である。本研究は、この課題に応えるべく構想、開発されたe-Learning活用中国語教育プラン & システム"游"の使用成果を基礎に、自律的な学習能力をもつ意欲的な学習主体の創造、学習状況に基づく教員と学習者の相互啓発による双方向性教育を可能とする学習情報活用型教育法と、それを実現するためのシステムを構築した。
著者
四宮 一総
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

衛星運動型高速向流クロマトグラフ装置を新規に考案・製作した。本装置は、カラムが太陽軸(角速度ω1)、惑星軸(ω2)及び衛星軸(カラムの中心軸、ω3)の周りを同時に回転するもので、ω1 = ω2 + ω3の関係が成り立つように設計した。本装置の分離効率を4-メチルウンベリフェリル糖誘導体を試料に用いて検討した結果、ω1=300rpm、ω2=150rpm、ω3=150rpm付近で良好な結果が得られた。
著者
中岡 まり
出版者
常磐大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、中国共産党が指導する選挙過程と選挙民の投票行動を分析し、選挙制度を通じた共産党統治の変容の可能性を明らかにすることを目的としてきた。研究の結果明らかになったのは、主に以下の3点である。第一に、党の選挙過程に対するコントロールが強化される一方で、選挙により得られる支配の正当性は限定的なものとなる傾向にあること。第二にロジスティック回帰分析の結果、投票者が有権者としての意識を持ち始めていること、第三に党のコントロールが暴力的な形を取り始めたことが示すように、多元化する市民の利益言表出要求に対する共産党の柔軟な適応能力が低下していることである。
著者
白土 博通 八木 知己
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

瞬発気流を再現する風洞実験装置の検討,試作を行い,正方形断面柱の揚力を測定した.揚力ピーク発生とカルマン渦による揚力変動周期の間の密接な関係が一部明らかとなったが,両空気力成分の分離に課題を残した.一方,既存の突風風洞を用いて矩形断面や5本円柱の過渡空気力を測定し,前者は上下面の剥離バブルの非対称な成長,後者は円柱間の複雑な流れの生成の重要性を明らかにした.さらに,過渡空気力のLES数値シミュレーションを実施し,カルマン渦との関係を得たほか,竜巻移動時の風速時刻歴シミュレーションにより,風速急変時の鉄道車両の安全性評価を試みた.
著者
蒲生 忍 柳澤 厚生
出版者
杏林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

終末期における医療の選択は患者と医療者の両者にとり非常に重要な問題である。米国においては、選択は患者の「自律尊重」が重視されるが、本研究では患者と医療者の共同のツールである「事前計画Advanced Care Planning」としての「医師による延命治療指示書POLST」について調査した。また、自律を強く求める人々の終末期の医療選択の一つとして、オレゴン州に続いて2008年11月にワシントン州で尊厳死法が制定され、発効した。ワシントン大学の医療提供者を中心に直接面談して、その制定の背景について調査した。
著者
和田 賢治
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

フランク・ナイト(1921)によって提唱され、エプスタイン・ワン(1994)によって精緻化されたナイトの不確実性について、離散状態および連続状態の二つのモデル化を行い、ナイトの不確実性の定量分析を行った。離散状態モテルは簡素だが、ナイトの不確実性に対して自然な解釈を与えられる。連続状態モデルでは、ナイトの不確実性に対する解釈がそれほど自然ではないが、モデル自体は精緻である。よって両モデルは補完的関係にある。離散状態モデルでは、メラ・プレスコット(1985)によって定式化されたマルコフ過程モデルを用いてナイトの不確実性を定量化した。またこの定式化を用いて日本とアメリカの株および国債の収益率に対して、ナイトの不確実性が存在すれば、リスクプレミアムパズルおよびリスクフリーレートパズルは解決できる事を示した。この論文は、Wada (2005), "The Knightian Uncertainty and the Risk Premium and the Risk Free Rate Puzzles in Japan and the U.S."として2005年8月にEconomic Lettersに投稿中である。連続時間モデルでは、エプスタイン・ワン(1994)によって定式化された動的一般均衡モデルに対して、ルー円バーガー(1969)で証明されハンセン・ジャガナサン(1997)によってファイナンスに応用されたデュアルメソッドを用いて、ナイトの不確実性を定量化した。この論文は、Wada (2006), "A New Measure for the Knightian Uncertainty and the Risk Premium Puzzle in Japan and the U.S."としてJournal of Banking and Financeに2006年3月に投槁中である。
著者
柿田 章 伊藤 徹 阿曾 和哲 佐藤 光史 高橋 毅 柿田 章 伊藤 義也
出版者
北里大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

本研究では移植用肝臓の保存時間の延長を目指して、保存液を加圧することによって凝固点以下の温度でも保存液の過冷却(非凍結)状態を維持、それによって肝臓の凍結・解凍に纏わる傷害を克服する保存法の方法論を確立するために基礎的研究を継続してきた。最終年度の平成11年度は、「加圧」が保存液の「過冷却状態の安定維持」に実際に寄与するか否かに関する実験を行った。その結果、実際に使用したUW液の、常圧、5、10、15MPaにおける凝固点はそれぞれ、-1.2+/-0.0、-1.5+/-0.1、-2.1+/-0.1、-2.5+/-0.1℃(n=6)、過冷却温度は、-4.0、-4.5+/-0.4、-4.8+/-0.8、-5.5+/-0.4℃であった。すなわち、加圧によるUW液の凝固点の降下に伴って過冷却温度も低下することが実証された。また、前年度までの実験では、肝臓が0℃・1時間の保存条件では最大35MPaまでの加圧に耐えて移植後も個体の生命を維持できること、また、加圧による傷害が加圧速度および加圧保存時間依存性であることが、移植後の生存成績や電顕による形態学的変化の観察などから明らかとなっている。加えて、肝臓は5Mpa・-2℃の条件では6時間の長時間保存に安全に耐えられる(移植後生存率100%)という成績が得られている。以上の実験結果は、凍害防止剤や浸透圧調節剤などを使用せず加圧のみによって、移植用肝臓を5MPa・-4.5℃付近まで過冷却(非凍結)状態に保存することが可能であることを示すものである。これらの結果を踏まえ、今後、肝臓の-4.5℃付近での過冷却長時間保存に向けて、氷点以下の低温の細胞・組織に対する傷害機構や至適保存液の物理化学的組成などの課題を解決すべく研究を進める予定である。