著者
辻 智子
出版者
東海大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究の主たる目的は、東日本大震災に直面した地域社会の変容・地域共同体の再編の経過をそこに暮らす青年の視点からとらえ、その過程における<青年個人/地域青年集団/地域を越えた青年集団のネットワーク>の足跡を記録するとともに、地域社会にとって、および現代日本の青年たちにとって地域青年集団が果たす役割とその意味を考察することにあった。本研究によって、被災地内外において青年たちが東日本大震災をどのように経験し、そのなかをどのように生きぬいてゆき、さらに今後をどのように展望していこうとしているかを具体的に聴くことができた。それを記録化し、青年たちと日本青年団協議会との共同の取り組みとして冊子『生きる~東日本大震災と地域青年の記録~(第1号/第2号)』(編集委員会編、2012年/2013年)をまとめた。そのことによって記録はより多くの人々と共有するものとなった。このような記録化の取り組みも含め青年団の全国的なネットワークは、被災地への支援活動や被災地の青年たちとの交流・学習を促し、そうした経験を通して一人ひとりの青年が自らの生活や地域を見つめなおしてゆくことを支えていることがわかった。また、各地域の青年集団には歴史的経緯があり、例えば岩手県陸前高田市には60年におよぶ地域青年団活動の蓄積があるが、そのことと現在の地域のネットワークは深くかかわり、災害復旧・復興過程における共同生活や異なる立場の住民どうしの意思疎通、自治を対話的・協力的に進めてゆくことと地域青年集団との浅からぬ関係が示唆された。
著者
勝部 眞人 坂根 嘉弘 中山 富廣 河西 英通 布川 弘 木村 健二 徳永 光俊 真栄平 房昭 弁納 才一 張 楓 張 翔 戴 鞍鋼 蘇 淳烈 朴 ソプ
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、19世紀末~20世紀初頭におけるグローバリゼーションのなかで、在地社会の持つ伝統的文化性(「在来」)が新しい社会変動(「外来」)に対してどのような影響を与え、どういう形で生き残っていくのか…を、東アジア社会という枠組みで検討しようとしたものである。期間中に日本・中国・朝鮮3国の比較に議論が集中し、瀬戸内という対象地域の特質解明にまでは至らなかったが、3国社会比較の視座について「在地社会の共同性」という観点からの手がかりを得ることができた。
著者
庄司 香 キャメロン チャールズ
出版者
学習院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、1930年代以降現在にいたるアメリカ連邦最高裁判所の判事指名を軸に利益団体が行ってきた動員を研究することで、アメリカの利益団体のあり方とその歴史的変遷をとらえることを目的として実施された。新たに構築したデータベースを通じて判明した過去80年間の変化のパターンを下敷きに、近年の事例について理解を深めるために、関係者へのインタヴューを活用した質的研究に取り組んだ。
著者
宮本 佳明
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

前年度に構築した大気・海洋結合モデルを実現象の再現実験に適用できるように改善を行った.ここで,当初構築する予定であった大気・波浪境界層(Wave Boundary Layer : WBL)・波浪・海洋の結合モデルは,前年度のロードアイランド大学滞在中に得た知見を基に,WBLモデルの構築,及び,波浪モデルの組み込みを取り止めた.その理由は,両モデルは計算負荷が大きい欠点を持ちながら,顕著な精度向上が見込まれないためである.つまり,現在までに得られている波浪・WBLの物理過程に関する理解では,長時間のコーディング作業をせずに,多少近似が強いながらも最新の観測結果を踏まえた手法を取った方が良いと判断した.そこで,大気-海洋間の結合が物理量のフラックスによって行われると考え,既存の大気モデルで良く用いられているバルク法を用いて以下のようにモデル化した.海面フラックス(モデル最下層における応力項に対する下端境界条件)は,WBL上端の風・海面上とその高度間の変数の勾配に比例するとして,2005年・2008年の観測・室内実験結果に関する先行研究(Donealn et al. 2004 ; Zhang et al. 2008)からその比例係数を決定した.ここで,WBL上端の高度はモデル変数から診断できないため,大気安定度に依存した対数分布を仮定して高度10mにおける風速を基に勾配を決定した.次に,海洋モデルに日本付近の海底地形データの導入し,過去に顕著な災害をもたらした台風の再現実験を行った.そして,海洋モデル及び最新の実測値を基にした海面フラックスの定式化を行うことによるインパクトを調べ,熱帯低気圧の数値モデル内での再現におけるそれらの重要性を示した.
著者
宇田川 真之
出版者
(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

2010年8月9日に発生した台風第9号による、兵庫県佐用町における洪水の際の住民の避難行動などを調査した。そして、避難行動の有無に影響する要因として、災害因の認知、個人的なリスク認知、避難行動への効力感、避難の効果評定、避難によるコスト感、規範意識などについて考察をおこなった。
著者
THOMAS P. Gill
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

2002年夏、ホームレス自立支援法が成立した。これは初めて日本政府が野宿者問題の存在を明確に認め、具体的な対策に取り組み始めたことを意味する。この研究プロジェクトの目的の一つは、こうした動きを受けて、日本の大都市におけるホームレス事情を調査し、各地のホームレス対策と施設の運営を比較し、さらに当事者レベルでの対策のインパクトを考察することにあった。もう一つの目的は、ホームレス問題に関して日本に比べ長い歴史と経験を有するアメリカとイギリスのホームレス対策を調べて、各国と都市のホームレス対策の共通点・相違点を確認した上で、日本のホームレス対策の特徴を抽出し、問題点を明らかにすることである。本プロジェクトにおいては、日本では東京、横浜、名古屋、大阪等で、アメリカではロサンジェルスとニューヘーブン、イギリスではリバプール、ロンドンとオックスフォードでフィールドワークを行った。結論として言えるのは日本に関しては、まず(1)地方による差異が大きく、「大阪モデル」、「東京モデル」、「横浜モデル」と呼ぶことが出来る、少なくとも三つの対策のパターンが見られることである。同じ「自立支援センター」という名称を用いながらも、各地の施設の滞在期間・入所と退所の条件設定・運営方式・再利用のルールはさまざまで、流行語になった「自立支援」は各都市で独自の解釈をされている。さらに(2)各都市では試行錯誤の過程で対策の内容と実施が常に変化しつつある。ホームレス対策は日本では比較的新しい社会問題であることから、行政の対応は現段階ではまだ確定していないといえよう。海外との比較に関しては、(1)イギリスでは2000年から集中的な対策を行われ、路上生活者の人口を数値的には激減させることに成功したが、その一方、ホームレス支援は一大事業に膨張し、シェルター運営の現場を検証すると根強い問題が多く、必ずしも成功例とは言いがたい。(2)アメリカでも各種の大規模なホームレス支援事業が活発に行われているが、これは行政・NGO・キリスト教等の教会がそれぞれ独自の理念、基準で実施しているもので、新鮮なアプローチも見られるがホームレス人口は相変わらず日本のそれよりずっと大きく、総合対策がないというのは致命的な問題に見える。
著者
上田 洋子
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ロシアモダニズム期の作家S.D.クルジジャノフスキイによる、芸術における演劇的構造に関する指摘を出発点として、19世紀末から20世紀初頭に誕生した演出家主導型の演劇に関する調査・研究を行った。海外でのアーカイヴ調査を経て演劇の豊穣と他の芸術との相関関係を確認した。論文と学会発表以外に、演劇博物館所蔵の未整理資料調査の結果発見した同時代の貴重な資料等を用い、展示および図録での成果発表を行った(「メイエルホリドの演劇と生涯」展、「ロシア演劇のモダニズムとアヴァンギャルド」展)。
著者
坂口 さやか
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、神聖ローマ皇帝ルドルフ二世の帝国統治理念が、政治的権力としていかなる実効性を持ったのか、帝国理念の表象である芸術作品の解釈および受容の研究により解明することにある。平成20年度は、特に以下の目的に沿って研究を進めた。1.ルドルフの肖像A)即位時のメダイヨンや硬貨、B)トルコ戦争に関する銅版画や彫刻、C)アルチンボルドの《ウェルトゥムヌス》に分類して考察を行った。その結果、A)では新皇帝ルドルフを印象付けるため、B)では皇帝の勝利のイメージにより、帝国やキリスト教世界の平和が保たれることを示すため、C)では自然魔術により地上の黄金時代の魔術的皇帝像を構築するため、ルドルフの肖像が創造され、それらは同時代の文献において皇帝のほぼ思惑通りに受容されていたことが解明された。その成果をもとに、表象文化論学会第3回大会およびオタワ大学でのワークショップでの口頭発表、そして『表象』3号への論文投稿を行った。2.神話画従来の研究でルドルフの神話イメージで最重要とされたウェヌスやミネルウァなどの神話画について考察を深めることとした。まず、各々の作品について図像解釈を行った。そして、そこから導出されたキーワード「愛・叡智・寓意」の相互の関連性および政治権力との結びつきを、ブルーノの著作に基づき論じた。さらに、フィチーノを参照しつつブルーノとの比較を行った。その結果、ブルーノの思想が政治権力を強く志向していると判明した。ブルーノはルドルフを魔術的皇帝と崇めており、またプラハ宮廷の人々とも親交があったため、彼の神話イメージに関する政治思想が、ルドルフや宮廷人たちの思想と同様の方向性を有していた可能性を結論として提示した。その成果をもとに、東京大学で開かれたシンポジウム「イメージの作法」での口頭発表および『表象文化論研究』8号への論文投稿を行った。
著者
合場 敬子
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

プロテストに合格すると、一応一人前のレスラーとなる。その時の自分の体について、自覚的にその変化を捉えているレスラーは少なかった。これは、デビューして数年までは、先輩との厳しい上下関係の中で、日々の雑用や練習に追われてしまい、自分の身体やプロレスのことをあまり考える余裕がない状況にあったからと推測できる。自分の身体のあり方に自覚的になっていたのは、デビューの後、キャリアを積む過程においてであった。多くのレスラーは、女らしい身体とレスラーとして目指す身体を対立するものとして捉えていた。レスラーであることを優先して、そのための身体をまず第一に考え、女らしい身体の獲得をあきらめている。しかし、そのあきらめに悲壮感はない。なぜなら、レスラーとしての身体を持ち、プロレスができることの方が彼女たちにとって重要だからである。プロレスでは、相手も自分の技を受けてくれる、自分も相手の技をうけるという信頼関係が必要である。したがって、プロレスの闘いは相手をとにかく打ち倒すことではないので、レスラーは自分を「強い」と意識することが希薄になっている。レスラーのジェンダー・アイデンティティの核はレスラーになる以前から形成されたように思われる。自分の体をレスラーの体に変容させることは、彼女たちのジェンダー・アイデンティティにはそれほど影響を与えていないと思われる。一方、ファンのジェンダー・アイデンティティへのプロレスの影響も、確認できなかった。多くの男性ファンは、女性として魅力ある身体とレスラーの身体を区別して把握している。多くの女性ファンは自分がなりたい身体のイメージを、自分の好きなレスラーの体型とは別に持っている。多くのファンは、リングを降りた選手に、「女らしさ」を見ている。対称的に、プロレスをしている女子レスラーは、ファンの視点の中では、ジェンダーを越えた存在として捉えられている傾向があった。
著者
藤田 香織
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,伝統構法による木造五重塔の振動特性を定量的に明らかにすることを目的としている.新築の伝統構法五重塔である三重県津市の津観音五重塔にて加速度計8台により地震観測を行っている.本年度は得られた地震応答加速度データの解析を行い,微動時・中規模地震時の塔の動的特性の考察を行った.伝統構法木造五重塔の動的特性,固有振動数や減衰定数はその最大振幅に依存すること,微動測定の結果とは異なる振動モードで振動することなどを明らかにした.更に,(独)防災科学技術研究所の大型振動台にて,伝統木造五重塔の1/5縮小模型を対象に振動台加振試験を行った.昨年度,三重県津市で観測した2004年9月5日紀伊半島沖地震の加速度記録を用いた加振実験を行った.試験体は飛鳥様式五重塔の1/5模型であるため,相似則を考慮し入力波の時間軸を0.7倍に補正したものと源波および1995年兵庫県南部地震の加速度記録(JMA神戸NS)等を用いた.合計100カ所に計測器を設置し各部の変位・加速度を詳細に測定した.その結果,伝統構法五重塔の様式の差違,また加振波の違いによらず,地震観測で得られた結果と同様の傾向が認められることを明らかにした.本研究の成果を,日本建築学会大会および第3回都市地震工学国際会議にて発表した.
著者
高橋 雅興 田中 克史
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

高度通信情報化にともない、放射電磁波の増大や利用周波数領域の多様化が起こり、電磁干渉による電子機器の誤作動が大きな問題となっている。本研究の目的はGHz帯域における吸収性能に優れた電磁波吸収体を創製することである。高分子ブレンドの相分離構造や架橋網目の網目サイズを利用して、ナノカーボン粒子のネットワーク構造を作り、導電性と電磁波吸収性能を飛躍的に高めた。ナノカーボンとして鎖状構造をとりやすいアセチレンブラック(AB:直径20nm)とカーボンナノファイバー(VGCF:直径150nm,長さ10-20μm)を用いた。ナノカーボンの分散と導電性・誘電性の相関、総合的な結果としての電磁波吸収性能の関連がほぼ明らかになった。主な研究結果は次のようにまとめられる。1.ABは凝集クラスターが種々の形をとり、自己相似のフラクタル構造になりにくいが、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)中では、長時間アニールで導電性のパーレーションしきい値を2.2vol%と驚異的に低くできる。シリコンゴムでは、網目サイズをABの一次粒子の直径程度にすることでABの分散制御が可能となる。いずれの系においても導電性のしきい値を少し越えた充填量で、コンポジットは95%以上の高い電磁波吸収性能を示す。2.高密度ポリエチレン(HDPE)/ポリプロピレンブレンドの共連続構造中で、VGCFはHDPE中に局在して、単体中よりしきい値が低下し導電性が増大する。PMMAにごく少量のHDPEを加えると、粗いVGCF末端へのHDPEの吸着がVGCFの連結に寄与し、PMMA単体中よりも導電性が飛躍的に高くなり95%以上の電磁波吸収率を示す。3.反応性シリコン/VGCF分散複合系に電場を印加し、光学顕微鏡観察を行い誘電性の時間変化を測定した。VGCFの電場方向への配列傾向とともに、貯蔵誘電率・損失誘電率が増加する結果が得られた。
著者
小林 満
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1613年の「カステッリ宛の書簡」のなかでガリレオは聖書と自然学の関係を整理してコペルニクス説のほうがアリストテレス・プトレマイオス体系よりも優位にあることを証明したが、その論理の攻撃性もあって、彼は宗教的な論争に巻き込まれてしまう。その反省から、『偽金鑑識官』から『世界の二大体系についての対話』へと執筆活動が展開していくにつれ、彼の説得の技術は、論理的に敵を打ち負かすだけでなく、「たとえ話」をも導入して、読者をより引き込むものへと進化していった。17世紀の前半には「感覚」を重要視する文化的風土があった。たとえば「感覚に基づく経験と必然的な論証」を自然学の研究手段と考えるガリレオ、あらゆる事物には感覚が備わっているという視点から自然を説明する哲学者カンパネッラ、そして五感を通した快楽を主題としたバロック詩人マリーノである。『アドーネ』のなかでマリーノは、望遠鏡を「遠くにあっても、対象を非常に拡大して、誰の感覚にでも近づける道具」と位置づけているとおり、「感覚」に奉仕する新器具の発明者としてのガリレオを賛美した。また、海の航海者=地理的征服者コロンブスと天空の航海者=自然哲学的征服者ガリレオという2人のイタリア人が新時代の象徴として描かれており、ペトラルカの『カンツォニエーレ』所収「わがイタリアよ、たとえ語るのがむだでも」からレオパルディの『カンティ』所収「アンジェロ・マイヘ」に到るイタリアの偉人たちを引き合いに出しながらイタリアを憂える詩のバロック的変奏をなしているとも考えられる。またマリー・ド・メディシスの招聰によってパリの宮廷に登ったマリーノがこの作品をフランスで発表したことを考え合わせると、新旧論争の前段階の重要な作品と位置づけることも可能であろう。ガリレオの存在がいかに国境や領域を越えた「事件」であったかの証左と言える。
著者
吉田 竹虎
出版者
岐阜県可児市立蘇南中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

<研究の意義>平成20年3月に公示された新学習指導要領では,エネルギー変換に関わる学習内容が中学校技術・家庭科で必修の学習内容になった。そこで,「人力自転車発電機」を中核にしたカリキュラムを考え実践した。<研究の具体的内容と成果>希望教員20名が集まり,休日の一日を使い人力自転車発電機の製作を行った。この教具を持ち帰り,それぞれの学校で授業実践をした。以下は授業の様子である。(1)「人力自転車発電機」が回転したところで,負荷のスイッチを入れる。(2)この瞬間に急にペダルが重たくなる。負荷は,20W白熱電球,40W白熱電球,60W扇風機の順にスイッチを入れていった。(3)その都度重たくなるペダルから,発電の大変さを身をもって体験することができた。(4)白熱電球2つと扇風機を回すために120W以上の電力を出そうとすると,ほとんどの生徒は7秒くらいしか連続して漕ぐことができなかった。以下は,研究のまとめ報告会で示された生徒の感想の一部である。「扇風機をつけるには,とても力がいった。急にペダルが重たくなり,私は5秒つけるのがやっとだった。自分で発電するって大変なんだと実感した。電気を生み出すのはとても大変なことなので大切に利用しなければならないと感じた。」これは,具体物を用い体を使った実験を行ったからこその成果だと言える。中学校技術・家庭科では,生活の中での電気利用をイメージしながら,実践的・体験的な学習を繰り返していくことが重要であると再確認した。また,エネルギー変換分野の指導計画を作成し,希望者に配布した。さらに多くの学校で実践が広がることを期待している。
著者
岡本 崇
出版者
筑波大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

輻射輸送は,宇宙物理学において極めて基本的かつ重要な物理過程であり,例えばガスの冷却,大質量星や銀河中心超巨大ブラックホールからの輻射によるガスの光電離加熱や輻射圧による銀河風の駆動など,銀河形成においても無視できない役割を担っているはずである.しかしながら,空間3次元,角度2次元,波長1次元の計6次元を扱わねばならないという多次元性のために,現在までの研究ではその効果はほぼ無視されてきた.本研究では,輻射輸送計算の精度を落とさずに大幅に加速する新たなアルゴリズムを開発し,実際にその性能と精度を確認した.その結果既存のアルゴリズムでは実現不可能であった多数の光源を用いた輻射輸送計算を可能にした.この手法を用いることにより,銀河内の星による輻射性フィードバックの効果等を定量的に調べることが可能になり,銀河形成に対する理解が深まることが期待される.今後は流体計算,自己重力計算コードと統合し,上記の,大質量星や銀河中心超巨大ブラックホールからの輻射が銀河形成に果たす役割を明らかにしていく計画である.また,大規模な銀河形成シミュレーションを行い,銀河のハロー星の起源についても研究を行った.その結果,現在の標準的な宇宙モデルの元では,銀河系のハロー星を説明することが困難であることを明らかにした.
著者
佐藤 嘉倫 近藤 博之 斎藤 友里子 三隅 一百 石田 浩 尾嶋 史章 中尾 啓子
出版者
東北大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2004

本プロジェクトは、社会階層の流動化と固定化という、一見相反する現象を統一的に理解・説明するための階層論を展開することを目的とした。この目的のために、理論的な検討をするとともに、データ分析のための社会調査を実施した。2005年に日本、韓国、台湾でほぼ同一の調査票を用いた実査を行った。また労働市場の流動性の影響をもっとも受けている若年層を対象とした郵送調査・ウェブ調査を2007年に行った。これらの調査データを用いた分析結果は、全15巻の研究成果報告書にまとめられた。また報告書以外にも、プロジェクトメンバーによる学会報告や論文・単行本刊行は多数に及ぶ。本研究プロジェクトは総合的研究なので、社会階層と社会移動をめぐってさまざまな視点からの分析を展開した。このため、研究成果すべてを述べることはできないが、たとえば(1)佐藤俊樹『不平等社会日本』で示されたホワイトカラー上層雇用の閉鎖性は2005年には存在しないこと、(2)非正規雇用者になる傾向は低学歴者と女性に高く見られること、(3)所得格差については正規雇用と非正規雇用の間の格差が大きいが、その格差が拡大しているかどうかは慎重な検討が必要であること、などの知見が得られた。また本プロジェクトが、本格的な東アジアにおける社会階層と社会移動の比較研究として初めてのプロジェクトであることも特筆に値する。その成果の一端は、研究成果報告書第13巻『東アジアの階層ダイナミクス』に収められている。
著者
原田 正純 花田 昌宣 宮北 隆志 富樫 貞夫 羽江 忠彦 下地 明友
出版者
熊本学園大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、被害実態の広がり(医学的側面のみならず社会的側面から)の把握に努め、現在の課題を明らかにすることを課題としており、病いを社会的なものとしてとらえ医学的な疾患学・症候学あるいは病像論から解き放ち、社会環境の中に位置づけ直す試みを通して、改めて被害実態を明らかにしたものである。[健康・医療・生活問題班]では、御所浦地区での全戸調査と数次にわたる集中的ヒアリングを実施、水俣病に対する忌避観の強さとその急速な変貌を明らかにできた。また、熊本学園大学水俣学現地研究センターを利用しての医療相談を定期的に実施し、若い世代の医療的側面での調査も実施し研究発表をしてきた。[地域社会・福祉問題班]水俣社協との協力のもと、住民意識調査の実施、住民との対話の機会を持ち調査の結果をさらに検討し、報告書を作成した。[被害補償と環境再生問題班]では、水俣地域の社会的アクターを中心に地域戦略プラットフォームづくりのワーキンググループを定期的に開催し、具体的な提言書を作成した。毎年1月には、水俣市において水俣病事件研究交流集会を本研究プロジェクト参加者のみならず、全国各地の研究者ら100名近くの参加で開催し、研究成果の発表および討論を掘り下げ、水俣学研究のアリーナ形成をはかることができている。これらを通して、水俣病被害が社会的広がりを持つこと、今なお係争課題が数多く残されており社会運動も継続していること、それらを踏まえた地域づくりの方向性を示すことができた。これらの研究成果は、研究代表ならびに分担者によってモノグラフィックな研究論文や報告書の形で随時発表されている。
著者
岡元 行雄 長屋 昭義 松浦 和幸 福留 瑠美
出版者
兵庫県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

北淡町の地区別の特徴をまとめると、室津地区は一番祭りに熱心な地区であり、祭りを即座に復活させ、神社の再建も工事に着手しており、祭りを語る住民の熱心さは群を抜いている。育波も室津に次いで熱心で、厄年の加も熱心におこなっている。斗ノ内、浅野南、水越は室津ほどではないが、町をあげて熱心に取り組んでいる。富島や野島は激震地であっただけに、祭りの復活が十分ではなかったし、祭りを語る住民の熱意はあまり伝わってこなかった。祭りを通しての地域のまとまりは弱くなっている。平成14年度は野島地区を中心に調査を行った。野島神社は震災で全壊し、現在も仮神殿があるのみで再建の見通しは立っていない。隣のお寺も全壊したが、再建に向けて檀家で話し合いが続いている。神社よりもお寺の再建が優先されるのはどの地区も同じである。野島神社の氏子は野島8地区と仁井の舟木地区の9地区からなっている。壇尻があるのは江崎、平林、常磐、野島ひきの浦、舟木である。この2~3年野島神社の祭りが復活しており、野島神社のお膝元である野島ひきの浦の壇尻は祭りに参加することがあるが、他の地区は祭りに参加していない。震災で死者が出た地区ということもあり、また過疎化が進んだ地区ということもあり、祭りの復興はあまり進んでいない。この地区も、伊勢講、金比羅講、山浄講、天皇講などの宗教活動が盛んであるが、その宗教行事も、震災後に講を引き受けた家での開催から集会所へ場所を移動させたり、日曜日にまとめて開催したりと簡素化、スリム化を図った地区が目立つ。
著者
酒井 直隆 嶋脇 聡
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ラットの坐骨神経を大腿二頭筋枝、脛骨神経、総腓骨神経の3つの神経束に分割し、各々の神経束にフック電極もしくは埋設電極を取り付け、ラットの下肢動作時の神経活動電位を計測した。その結果、各々の神経束から個別に活動電位を得ることができ、いずれも活動電位は2相性で、活動時間、最高電位、最低電位、電位差といったパラメータの値や周波数分布の特徴は類似していた。フック電極と埋設電極によって計測される活動電位を比較すると、計測される最高電位、最低電位、電位差の値に相違があるものの、活動時間や周波数分布の特徴から同様の活動電位を検出できた。活動電位は、大腿二頭筋枝、脛骨神経、総腓骨神経ともに類似の波形であり、足関節の屈伸はこれらの神経活動電位の位相差によって、拮抗筋の収縮・弛緩による協調運動が実現するものと考えられた。そのため坐骨神経を神経束に分離後、同一平面上に配置して各神経束に電極を装着することで、電位束ごとに異なる神経電位を感知することが可能であり、この方法で神経束電位による多チャンネル化が実現するものと考えられた。
著者
海老原 健 阿部 恵 日下部 徹 青谷 大介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

脂肪萎縮症においてレプチン治療が糖尿病、高脂血症、脂肪肝などの代謝異常を改善することをヒトにおいて明らかにしてきた。そこで本研究では、脂肪萎縮症以外にもより一般的な1型および2型糖尿病、高脂血症、脂肪肝において、レプチンが治療薬として有用であることを明らかにした。また、アミリンおよびGLP-1製剤が糖脂質代謝改善作用におけるレプチン抵抗性改善作用を発揮することを明らかにし、レプチン抵抗性状態における併用療法の有用性を示した。
著者
荻田 純久 古橋 紗人子 手良村 昭子 安井 恵子 前川 頼子 隠岐 厚美 近藤 仁史
出版者
滋賀短期大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、所謂「ママ友」関係に起因するストレス要因を明らかにした上で、幼稚園、保育所、認定こども園におけるママ友ストレスの差異を確認することである。その結果、「心理的不安定感」得点、「自分のこどもの対人関係に関する不安」得点において、保育所と認定こども園(短時間保育)の間で有意差がみられ、認定こども園(短時間保育)の方が高値を示した。認定こども園(短時間保育)の保護者の現状、ニーズをきっちりと把握した上で、対応していく必要性が示された。