著者
吉田 大輔 島田 裕之 牧迫 飛雄馬 土井 剛彦 伊藤 健吾 加藤 隆司 下方 浩史 鷲見 幸彦 遠藤 英俊 鈴木 隆雄
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.EbPI1414-EbPI1414, 2011

【目的】物忘れなどの記憶障害は、アルツハイマー病(Alzheimer's disease: AD)の特徴的な前駆症状である。海馬や嗅内野皮質を含んだ内側側頭葉はこの記憶の中枢であり、記憶障害と内側側頭葉の脳萎縮とは密接な関係があると考えられている。一方、日常的に知的な活動や身体活動、あるいは社会活動(社会とのつながり)を保持することは、高齢期における認知症(特にAD)の発症遅延や認知機能の維持にとって有効である可能性が示唆されている。これらのことから、活動性の高い日常生活を送ることは、内側側頭葉の脳萎縮を抑制できると推察されるが、高齢期における内側側頭葉の脳容量と日常生活活動との関係については、これまでほとんど報告されていない。そこで本研究では、どのような日常生活活動が内側側頭葉の脳萎縮と関連があるのか明らかにすることを目的とした。<BR><BR>【方法】主観的な記憶低下の訴えがある、もしくはClinical Dementia Ratingが0.5に該当した65歳以上の地域在住高齢者125名(76.1±7.3歳)を対象とした。すべての対象者は、基本情報に加え一般的な認知機能検査、頭部のmagnetic resonance imaging (MRI)検査を受けた。内側側頭葉における脳萎縮の程度は、MRI検査で得られた画像を基にvoxel-based specific regional analysis system for Alzheimer's disease(VSRAD)を用いて定量的に評価した。日常の生活活動状況は、質問紙を用いて過去1ヶ月における各活動の実施状況(二択式;している/していない)を聴取した。各々の活動項目はセルフケアや手段的日常生活動作、社会活動などの25項目から構成されており、高齢者の生活活動全般を幅広く捉えられる項目内容とした。そして、活動項目ごとに「している」と回答した者(活動群)と「していない」と回答した者(不活動群)の2群間で内側側頭葉の脳萎縮度に差がないか、共分散分析を用いて検討した。なお分析の前段階として、2群いずれかのサンプルサイズが20に満たなかった活動項目は、あらかじめ分析項目から外した。また、年齢と脳萎縮との関係をpearsonの相関係数で確認した。<BR><BR>【説明と同意】すべての対象者に対しては、事前に研究内容を説明し、書面による同意を得た。また、本研究は国立長寿医療研究センターの倫理・利益相反委員会の承認を得て行った。<BR><BR>【結果】内側側頭葉の脳萎縮と年齢との間には、有意な正の相関関係が認められた(r = 0.457, p < 0.01)。そこで、年齢を共変量とした共分散分析を行い、内側側頭葉の脳萎縮と日常生活活動との関係を検討した結果、「頭を使う活動(将棋や学習)」において、活動群(n = 70)の脳萎縮度が不活動群(n = 55)のそれより有意に小さかった(F = 6.43, p = 0.01)。同様に、「習い事」においても、活動群(n = 70)の脳萎縮度が不活動群(n = 55)のそれより有意に小さかった(F = 4.40, p = 0.04)。<BR><BR>【考察】記憶とその関連領域である内側側頭葉の脳容量とは、密接な関係があると考えられている。今回、同領域の脳萎縮と知的活動(「頭を使う活動」)の実施状況との間に関連性が認められたことは、先行研究の結果と矛盾しない。地域高齢者にとって、日常的に知的な活動を取り入れることは、認知機能の低下だけでなく内側側頭葉の脳萎縮も抑制できる可能性が示唆された。ただし、それ以外の活動(主に身体活動)の実施状況と内側側頭葉の脳萎縮については、有意な関連性が認められていない。今後は内側側頭葉以外の領域、あるいは活動の実施頻度を考慮したより詳細な検討が必要と考える。また、日常的な知的活動が内側側頭葉の脳萎縮を抑制できるとの仮説を立証するためには、縦断的な研究や介入研究が必要であり、今後も追跡調査を継続する予定である。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】理学療法の現場において、認知機能障害を有する高齢者を対象とするケースは少なくない。本研究は、このような高齢者に対し運動療法だけでなく日常の生活活動状況にも配慮した理学療法戦略が重要であることを示した、意義ある研究であると考えられる。また、今回の研究結果をさらに発展させることで、脳萎縮や認知機能の低下を予防するような方策が将来明らかになると期待している。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ヘルスケア21 (ISSN:13463799)
巻号頁・発行日
no.152, pp.79-83, 2002-06

東京都小平市にある一橋病院は、西武多摩湖線の一橋学園駅から徒歩5分ほどのところに位置する99床の小規模病院だ。同病院を経営する医療法人青葉会は、老朽化した建物の一新と診療機能の充実を目的に、2000年から翌年にかけて一橋病院の全面改築を行い、2001年6月にリニューアルオープンした。
著者
市川 意子 市川 忠雄 溝本 朋子
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.780-786, 1996-09-25
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

限局した一地方で得られたウシ乳房炎から分離した黄色ブドウ球菌の毒素産生性パターンと,同じ地域の病院患者から得られた黄色ブドウ球菌が同じパターンをもっているかどうかを検討し,地域的に同じパターンの黄色ブドウ球菌がウシとヒトとの感染症に分布している可能性をみた.用いた黄色ブドウ球菌は,1990年10月から1993年9月までの間に千葉県館山市付近における132の酪農家のウシ乳房炎乳から分離した290株と,1992年11月から1993年3月の間に,病院患者から分離した131株である.その結果,1) ウシ乳房炎乳からの分離株では,コアグラーゼVI型が最も多く,毒素は57.9が産生していてエンテロトキシン(SEA~D)が51.7%,毒素性ショック症候群毒素-1(TSST-1)が31.7%を占めていた.エンテロトキシン産生株中でSECが47.3%と最も多かった.2) ヒト臨床分離株では,コアグラーゼはII型が最も多く,ウシ株に多かったVI型はなかった.毒素は73.3%が産生していてエンテロトキシンが68.7%,TSST-1が45.0%を占めていた.エンテロトキシン産生株中でSECが54.4%と最も多かった.3) コアグラーゼ型と毒素産生の組合せで最も多かった菌株は,ウシではVI型,SEC,TSST-1の組合せで全体の19.3%,ヒトではII型,SEC,TSST-1の組合せが全体の36.6%であった.4) 卵黄反応は,ウシ株およびヒト株でそれぞれ68.5%および96.2%の陽性割合であった.前者ではVI型,SEC,TSST-1株の97.8%が陰性であったのに対して,後者ではII型,SEC,TSST-1株の95.8%が陽性であった.5) 同じ地域におけるヒト臨床分離株とウシ乳房炎からの分離株との間に,毒素産生プロフィールの共通性は認められなかった.
著者
Zhigang Yang Ryo Nakabayashi Tetsuya Mori Satoshi Takamatsu Susumu Kitanaka Kazuki Saito
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.952-956, 2016-07-01 (Released:2016-07-01)
参考文献数
34
被引用文献数
18

Oryza sativa L. (rice) is an important staple crop across the world. In the previous study, we identified 36 specialized (secondary) metabolites including 28 flavonoids. In the present study, a metabolome analysis using liquid chromatography-mass spectrometry was conducted on the leaf, bran, and brown and polished rice grains to better understand the distribution of these metabolites. Principal component analysis using the metabolome data clearly characterized the accumulation patterns of the metabolites. Flavonoids, e.g., tricin, tricin 7-O-rutinoside, and tricin 7-O-β-D-glucopyranoside, were mainly present in the leaf and bran but not in the polished grain. In addition, anti-inflammatory and anti-oxidant activity of the metabolites were assayed in vitro. Tricin 4′-O-(erythro-β-guaiacylglyceryl)ether and isoscoparin 2″-O-(6‴-(E)-feruloyl)-glucopyranoside showed the strongest activity for inhibiting nitric oxide (NO) production and 1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl (DPPH) radical-scavenging, respectively.
著者
アスタティアニ アマリア 川崎 昭如 目黒 公郎
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.337-341, 2015

2011 年3 月11 日にマグニチュード9.0 の東北地方太平洋沖地震が引き起こした災害を東日本大震災というが,この災害では日本人だけはなく日本に居住する外国人も大きな影響を受けた.東日本から国内外へ退避する外国人が多く発生した.外国人のこの行動は日本の社会経済活動に大きな影響を及ぼした.ところで,中央防災会議では,首都直下型地震(南関東で発生するM7 程の地震)が30 年以内に70%の確率で発生すると予想している.一方,安倍総理の政策により,外国人の労働者の受入を増やす方針と2020 年に東京で開催するオリンピック・パラリンピックにより,日本国内に在住する外国人や観光客が増加する.東日本大震災の被害が繰り替えされないための対策を練っておく必要性がある.本研究ではまず,東京湾北部地震発生時の首都圏,1 都3 県(東京都,埼玉県,千葉県,神奈川県)で外国人の暴露人口を算出する.そして,1 都3 県と茨城県のウェブサイトを確認し,各都道府県が実施している外国人向けの防災の支援を把握したうえで,在日インドネシア人大使館の聞き取り調査と(留学生除く)在日インドネシア人のアンケート調査を実施し,その分析に基づいて,今後の首都直下地震に向けた外国人の防災対策を提案する.
著者
青山 俊弘 堺 浩之 臼井 支朗
出版者
特定非営利活動法人 日本医学図書館協会
雑誌
医学図書館 (ISSN:04452429)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.243-247, 2007-09-20 (Released:2011-09-21)
参考文献数
17

The handling of referenced articles is one of the most typical tasks of researchers. Nonetheless, the work is important to the progress of research even though it involves monotonous, laborious, boring, and routine tasks. Recently, most publishers provide portable document format (PDF, Adobe Systems) versions of articles and researchers have to manage a large number of these files. In this paper, we introduce an application named iPapers to manage PDF files based on the reference metadata. The software provides a user interface with the ability to access articles using the name of the author, journal, MeSH keyword, and/or year of publication. These indices are automatically created using metadata. The software complements the metadata through open public databases, e. g. PubMed. Users can import the downloaded PDF files to the application with a ‘drag and drop’ operation. Users can also search for articles using PubMed, download a PDF file from a publisher's site, and import the downloaded file into the application. This application will help researchers to manage many article reprints in PDF format.
著者
中野 翔太 白井 治彦 高橋 勇 黒岩 丈介 小高 知宏 小倉 久和
出版者
福井大学
雑誌
福井大学大学院工学研究科研究報告 (ISSN:04298373)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.77-83, 2007-03-30

To improve security awareness of end-user, we designed and implemented the visualization system of packet header that represent the condition of network communication. We implemented our systems using Microsoft Visual Studio 2005 with Winpcap library and the development traffic, protocol and the time it captured a packet.
著者
相田 満
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014-CH-101, no.10, pp.1-3, 2014-01-18

マンガを文学として扱う際の問題は,すでに文学研究に現れていたといえるだろう.逆に,マンガを研究の素材として扱うことからは,文学研究として様々な示唆を受けることも多い.両者のパラダイムは,将来的にも,相互に刺激し合うことになるだろう.ここでは,パネル討論への参加に際して,「あえて」 文学研究の側から考えるという枠組みに従って所与のテーマに応える意味での見通しを述べてみたい.
著者
坂本 久子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.5-5, 2005

フィラデルフィア万国博覧会(1876年)の会場には二棟の日本の建物が建てられた。これらは日本から建築資材を運び、日本の職人が現地に赴き建てたものであり、アメリカで多くの人々が見た本格的な日本建築であった。一棟は「日本家屋」で、もう一棟は「日本賣物店ノ建築」である。そしてこれらは万国博覧会の日本の出品物であった。これらの建物については、「日本的なもの」や「日本」の演出について考察した研究は見られるが、アメリカの人々がどのような目を向けつつこれらの建物を受留めたかの論考はなされていない。 本報告は、当時の絵入新聞三誌の記事と挿絵を中心にして、この建物を扱ったアメリカの著書と写真を参照しながら、報道を通して日本の建築に対するアメリカ人の受留め方と共にその建設過程についても考察するものである。
著者
岡本 典子 田中 有紀
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.91-100, 2014-06-20

精神科病棟に1年以上入院している統合失調症患者の社会行動を,病棟看護師がSocial Behaviour Schedule (SBS)日本語版を用いて評価した場合の妥当性について検討した.尺度は<対人交流における奇妙さ><過剰で不適切な行動><低下したための不適切な行動><反社会的な行動><対人交流における自己顕示><不安や気分の落ち込み>の6因子構造であった.Cronbach a係数0.88, 2名の看護師間の信頼性係数の範囲は-0.09≦k≦0.78, 1ヵ月の期間をおいて行った再検査の信頼性係数の範囲は0.43≦r≦0.83であった.Global Assessment of Functioning(GAF)尺度との相関係数はr=-0.65であり,本尺度が測定する社会的に容認されない行動が多いほど,全体的機能が悪い傾向にあることが示された.SBS得点は,52.7%の患者に【社会との適切な接触】の問題が見られ,長期在院者の状況を反映していた.以上の結果から,構造的側面,一般化可能性の側面,外的側面,結果的側面からの証拠が集められ,SBS日本語版を病棟看護師が1年以上入院している統合失調症患者の社会行動評価に使用した場合の妥当性を確認することができた.
著者
Rufus M. CLARKE 小林 繁
出版者
International Society of Histology and Cytology
雑誌
Archivum histologicum japonicum (ISSN:00040681)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.133-150, 1975 (Released:2009-02-20)
参考文献数
11
被引用文献数
4 7

ラットの空腸を分離 切断し, その先端は縫合され, 後端は腹壁に開口する袋を手術的に作製した. 次いで この袋の先端近くより, 量と成分の知られている種々の試験液を注入し, 粘膜の細胞学的変化を光線顕微鏡と電子顕微鏡を使って経時的に研究した.ポリエチレングリコール4000 (PEG) の等張液 (16.8%) を注入したものでは, 腸絨毛の上端部の腸細胞はすみやかに損傷された. しかし杯細胞と基底果粒細胞には変化が認められなかった. 等張PEG注入後6-72時間後に採取された標本では, 腸絨毛の上端に杯細胞と基底果粒細胞よりなる帽子状の細胞塊が形成されていた. 1% PEGと5.1%ブドウ糖の混合液を注入したものでは, 注入液が直接注ぐ袋の先端部の粘膜には変化がみられないが, 袋の中間部と後部では, 等張PEGを注入したときと同様の著明な変化が認められた. 蒸溜水の注入も, 腸細胞を損傷したが, このさいの粘膜の変化はPEG注入によるものとは 明らかに異っていた. 等張ブドウ糖液の注入では 粘膜の形態はまったく正常であった. PEG注入による腸粘膜の損傷は, PEG注入を止めてのち, 等張ブドウ糖液を6時間注入することによって正常に回復した.以上の結果が, 腸絨毛を被う上皮細胞の絶えざる更新の問題との関連において考察された.
著者
大山 ゆりあ 相澤 章仁 小林 達明
出版者
JAPANESE SOCIETY OF REVEGETATION TECHNOLOGY
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.97-102, 2012-08-31
被引用文献数
1

都市域の小・中規模緑地を含む「地区スケール」における鳥類群集の種組成の構造的特徴を明らかにすることを目的とし,千葉県松戸市を対象として鳥類調査を行った。各地区における β 多様性の高低および群集の入れ子構造の有無から調査地区は β 多様性が低く入れ子構造がある 1 地区,β 多様性が低く入れ子構造がない 3 地区,β 多様性が高く入れ子構造がある 2 地区,β 多様性が高く入れ子構造がない 2 地区に分類された。nMDS 法を用いた各調査地点の群集構造と環境要因の分析から,地区の鳥類種組成構造が地形や土地利用の多様性などの景観要素と関連していることが示唆された。
著者
星野 浩通 五十嵐 祐太 宮川 道夫 前田 義信
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌. C, 電子・情報・システム部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. C, A publication of Electronics, Information and Systems Society (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.132, no.3, pp.384-390, 2012-03-01
参考文献数
15

We have developed a rehabilitation tool used for treatment of patients suffering from hemiplegia and evaluation of the paralysis-stage. The tool consists of a PC and button switches for a computer game so that it is not expensive, available in anywhere, and possible to get a change of air in the patients. In this study, we have evaluated behavior indices such as an operation time to play with the games both in healthy young students and patients with paralysis. From experimental results, it was shown that the recorded behavioral indices showed the strong dependence on the motion control function of a subject. Preceding evaluation of effectiveness in rehabilitation of the developed tool, possible application of the tool in evaluation of the motion control function of the patients with hemiplegia was discussed in this paper.
著者
河北 倫明
出版者
教育美術振興会
雑誌
教育美術 (ISSN:13459937)
巻号頁・発行日
vol.15, no.11, pp.4-7, 1954-11