著者
東 正剛 三浦 徹 久保 拓弥 伊藤 文紀 辻 瑞樹 尾崎 まみこ 高田 壮則 長谷川 英祐
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究プロジェクトにより、スーパーコロニー(SC)を形成するエゾアカヤマアリの感覚子レベルにおける巣仲間認識と行動レベルでの攻撃性の関係が明らかとなった。このアリは、クロオオアリの角で発見されたものと同じ体表炭化水素識別感覚子を持ち、巣仲間であってもパルスを発しており、中枢神経系で識別していると考えられる。しかし、SC外の他コロニーの個体に対する反応よりは遥かに穏やかな反応であり、体表炭化水素を識別する機能は失われていないと考えられる。また、SC内ではこの感覚子の反応強度と巣間距離の間に緩やかな相関関係が見られることから、咬みつき行動が無い場合でも離れた巣間では個体問の緊張関係のあることが示唆された。敵対行動を、咬みつきの有無ではなくグルーミングやアンテネーションなどとの行動連鎖として解析した結果、やはり咬みつきがなくてもSC内の異巣間で緊張関係が検出された。さらに、マイクロサテライトDNAを用いて血縁度を測定したところ、SC内の巣間血縁度は異なるコロニー間の血縁度と同じ程度に低かった。巣内血縁度はやや高い値を示したが、標準偏差はかなり大きく、巣内には血縁者だけでなく非血縁者も多数含まれていることが示唆された。これらの結果から、SCの維持に血縁選択はほとんど無力であり、恐らく、結婚飛行期における陸風の影響(飛行する雌は海で溺死し、地上で交尾後、母巣や近隣巣に侵入する雌が生き残る)、砂地海岸における環境の均一性などが多女王化と敵対性の喪失に大きく関わっていると結論付けられる。
著者
佐藤 俊幸
出版者
東京農工大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

チクシトゲアリ(Polyrhachis moesta)は樹上性のアリで、秋に結婚飛行を行い、交尾して翅を落とした女王が枯れ枝中の空洞で越冬し、翌春産卵を開始する。その際、50%近くの巣が複数の女王で構成され、女王どうし口移しの栄養交換さえ行うが、それらに血縁はないことがDNA指紋法により確かめられている(Sakaki,Satoh and Obara,1996)。女王間には餌交換行動や共同育児といった協力行動がみられる。しかし、成熟した巣は多くの場合単女王であることから、多雌創設巣の女王は巣の成熟過程で一個体をのぞき除去されるか、あるいは別の場所へ分かれていくものと推定される。では、なぜ多雌創設が進化したのだろうか?女王の体サイズ、生体重には単雌、多雌創設に関わらず有意差はないことが分かった。創設女王数の頻度分布がポアソン分布の期待値と一致していたことと考え合わせると、創設女王は個体の体サイズやボディコンディションに関係なくランダムに出会ったものどうしで多雌巣を形成していることが示唆された。また、多雌創設巣の女王は、より早く産卵を開始し、より多くのワーカーを育て上げられることが分かった。コロニーの初期の成長速度を速めることは、種内・種間の資源を巡る競争や補食圧の回避を考えると大変重要である。おそらく、野外においても単雌創設より多雌創設の方が、女王あたり期待される繁殖成功率は高いか、悪くても下回らないのではないかと考えられる。ただし、複数いる女王の全てがそのコロニーの女王としては残れず、次第に数が減少していくので、全ての女王が積極的に多雌創設を行うわけではないと考えられる。この種の多雌創設は、出会ったらする、出会わなかったらしない、という日和見的なものではないか。
著者
神戸 隆行 Lovic Gauthier Victor Goulart Antoine Trouve 平木 哲夫 山﨑陽介 村上 和彰
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告組込みシステム(EMB) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.4, pp.97-102, 2007-01-23

Redefis は SoC の計算エンジンとなる動的再構成可能な ASIP(アプリケーション特化命令セット・プロセッサ)を動的再構成可能プロセッサを用いて実現するプラットフォームである。Redefis は Redefis プロセッサとソフトウェア開発ツールである Redefis ツールから成る。Redefis プロセッサは実行時再構成可能な LUT ベースの演算装置を備え、それをカスタム命令を介して利用できる。Redefis ツールは Redefis プロセッサでアプリケーションに特化したカスタム命令を実現するための演算装置の構成情報とそのカスタム命令を用いるオブジェクトコードの両方を汎用の高級言語(ここではC言語)で記述されたアプリケーションのソースコードから生成する。以前開発した試作 Redefis プロセッサ Vulcan とそのた開発ツールとして Redefis ツール・チェインの経験を踏まえて新たな試作プロセッサとして Vulcan2 を開発しつつあり、また、Redefis ツールを C コンパイラの枠組みに統合して新たに ISAcc コンパイラ開発した。Redefis is a design platform for designing dynamically reconfigurable ASIPs (Application Specific Instruction Set Processors), which are going to be used as engines in future SoCs. The platform consists of the Redefis processor and its SW development toolset. The Redefis processor contains a LUT-based reconfigurable module capable to be reconfigured on-the-fly via custom instructions. The Redefis toolset analyzes the target application (written in high level C language) and generates specialized Custom Instructions which are referenced in the final compiled object code of the application. An early prototype of the Redefis processor, called "Vulcan" with its relative tool-chain have been developed. Based on the know-how obtained, a new prototype, "Vulcan2", and a restructured development toolset, called ISAcc, which integrates the previous Redefis design tool-chain into C compiler framework.
著者
嶋 貴子 一色 ミユキ 近藤 真規子 塚田 三夫 潮見 重毅 今井 光信
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.167-177, 2006 (Released:2014-07-08)
参考文献数
13

目的 HIV 検査をより受けやすくするための試みの一つとして,検査を受けたその日に HIV スクリーニング検査結果を通知する「HIV 即日検査」を保健所の HIV 検査に導入し,その効果と実施に伴う問題点等を明らかにするため研究を行った。方法 栃木県県南健康福祉センターにおいて2003年 1 月より,通常の HIV 検査と平行して試験的に即日検査を導入し,即日検査導入前・後の受検者数や受検者層等の比較,また対照として選択した他保健所の HIV 検査受検者数の動向と比較し,即日検査の効果と影響について検討した。即日検査実施の情報についてはホームページ「HIV 検査・相談マップ」に掲載し,その効果についても検討した。結果 栃木県県南健康福祉センターにおける HIV 検査数は,即日検査導入前の2002年は130件であったのに対し,即日検査導入後の2003年は453件と3.5倍に増加した。また,そのうちの94%が即日検査を希望した。即日検査404件中 5 件がスクリーニング検査陽性となり,確認検査の結果,1 例が HIV 陽性,4 例が偽陽性(偽陽性率 1%)と判定された。 HIV 検査と同時に実施している性感染症検査の受検率は,即日検査の導入後には梅毒抗体検査(即日結果通知可)が77%から63%に,性器クラミジア抗体検査(即日結果通知不可)が76%から33%に減少したが,HIV 受検者が大幅に増加したため,受検者実数としては増加した。受検者へのアンケート調査結果から,受検者の61%がホームページ「HIV 検査・相談マップ」をみて受検していることが分かった。 同時期における即日検査を導入していない栃木県内の他保健所の HIV 検査数の増加率は0.9~1.0倍,全国保健所 HIV 検査件数の増加率は1.2倍であった。結論 即日検査は受検者にとって需要の高い検査であり,保健所 HIV 検査への即日検査導入は HIV 受検者数の増加に繋がる可能性の高いことが分かった。また,ホームページに「HIV 検査・相談マップ」よる継続的な情報提供が受検者増に有効であることが分かった。 しかしながら,HIV 迅速検査キットの偽陽性率が約 1%と高いため,検査前・後の説明やスクリーニング検査陽性者へのサポート体制が重要となること,また,即日検査と性感染症検査とを同時に実施する場合には,性感染症検査の受検率の低下を抑えるための対策が必要となる等の課題も明らかとなった。

2 0 0 0 OA 桜史

著者
山田孝雄 著
出版者
桜書房
巻号頁・発行日
1942

2 0 0 0 OA 10.チック

著者
森松 光紀
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.678-684, 2000-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

チックは,単一筋または複数の筋群に起こる,短時間の,すばやい,反復的・常同的運動である.一般に小児期から成人初期に発病し,やがて消失するか,半永久的に続く.心因性のこともあるが脳内伝達物質の異常とみなされる場合もある.後者の代表はトゥレット症候群である.治療はまず経過を観察し,社会生活上の困難を示すときは,ドパミン阻害薬を中心にした薬物治療を行う.ただし,完全抑制はしばしば困難である.
著者
文部省初等教育課
出版者
東洋館出版社
巻号頁・発行日
1950
著者
原田 恵理子
出版者
東京情報大学
雑誌
東京情報大学研究論集 (ISSN:13432001)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.9-18, 2013-09-30
被引用文献数
1

本研究では、高校生のネットいじめの実態について調べ、ネットいじめの実態に応じた支援のあり方を検討した。高校生325名を対象にした質問紙調査を行い、パソコンと携帯電話によるネットの使用、伝統的いじめとネットいじめの併存、傍観者の経験、ネットいじめに対する支援のニーズを検討した。その結果、伝統的いじめとネットいじめの併存は1%、傍観した経験は7%であった。また、多くの生徒がネットいじめに対する教育を希望し、学校及び学級に対する心理教育の重要性が明らかとなった。
著者
高木 眞佐子
出版者
杏林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

これまでキャクストン版『イングランド年代記』に書誌学上もっとも近い写本とされてきた、大英図書館所蔵のBL Additional 10099写本の大部分が、実際には印刷本からコピーされた写本と見られる有力な証左を得た。この研究は、カリフォルニア州サンマリノのハンティントン図書館所蔵のHM136写本が、キャクストン版の印刷用原稿である可能性を濃厚に示す証拠を写本上に示したDaniel Wakelinの発見に有力な理論的根拠を与えることになった。結論としてProse Brut研究において100年定説になっていたBL Additional 10099写本の重要性は根底から覆り、HM136の重要性に新しいスポットが当たるようになった。
著者
宇津宮 隆史
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.396-398, 1998-07-01
被引用文献数
1
著者
大石 時子 柳原 真知子 柳原 真知子 恵美須 文枝 山村 礎
出版者
天使大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ピアエジュケーションの中から中高大学生のセイファーセックスネゴシエートの実際の言葉を抽出し、これらの抽出された認識や行動のパターンと大学生への意識調査の結果等を基本に、大学生ピアカウンセラーを養成するための、8パターンのロールプレイ用演劇シナリオを完成した。また大学生への意識調査からセイファーセックスネゴシエートに関する大学生ピアカウンセラー養成前後の教育効果を計る自己効力感の尺度を作成した。
著者
浅野 三夫 大久保 一良 山内 文男
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.375-379, 1990-05-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

温水浸漬による不快臭味成分低減効果をより詳しく検討するため,大豆を種皮,胚軸および子葉の各部位別に分け,それぞれ温水浸漬しん出物中の配糖体成分をTLCおよびHPLC分析を行って検討した. (1) 温水浸漬によってしん出した各重量あたりの配糖体成分含量は胚軸が最も多く,その量は対照(70%エタノール抽出から調製された配糖体成分)の53%であった. (2) 温水浸漬による不快味成分低減効果は,豆類などのアク抜き剤として用いられているNaHCO3 (1~5%)添加とほぼ同じ効果であった. (3) 温水浸漬によってしん出した配糖体成分のTLC分析の結果は対照に比べて,イソフラボノイド系のバンドが少なく,サポニン系のバンド,特に不快味の強い,サポニンAグループ成分が主体であり,それは胚軸で顕著であった. (4) 同上配糖体成分のHPLC分析からAグループ成分中でも不快味の強いAaおよびAb成分が胚軸に顕著に検出され,また胚軸にはU1 U2を含む未確認成分も多かった. (5) 温水浸漬から調製した胚軸配糖体成分をセファデックスLH-20で分画し, TLCとHPLCで分析した.さらに標品との同定を試みた結果,未確認成分のU1およびU2は,それぞれ不快味を持つグリシティン7-β-Oグルコシドとダイジンであることが明らかになった.