著者
川村 よし子 前田 ジョイス 北村 達也 三輪 譲二 宇津呂 武仁
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、世界各国の日本語学習者に、よりよい読解支援環境をWeb上で提供することである。代表者らはすでに読解学習支援システム『リーディング・チュウ太』を開発しWeb上で公開している。今回新たに文章の難易度の主要な決定要因である単語の難易度と構文の複雑さに着目し、「学習者の視点にたった文章の難易度判定システム」を開発することを目指した。そのため、本研究では世界各国の母語の異なる学習者を対象にした難易度判定実験を行い、その結果を基に、単語と構文の双方に着目した文章の難易度判定システムを開発した。さらに、チュウ太の辞書ツールにはデータ・マイニングシステムを組み入れ、日本語学習者の辞書利用の実態調査を行った。利用者の推移や言語別の利用者数の変化および辞書のカバー率の調査を通して、辞書開発に関する今後の課題も明らかになった。研究成果は、Web上の読解学習支援ツールとして世界の日本語学習者・教育関係者に無償公開している。
著者
ジュリアンディ ベリー
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、(1)バルプロ酸によるヒストン脱アセチル化酵素阻害が胎生期神経幹細胞に与える影響の解明、(2)胎生期から成体期の長期に渡る同阻害影響の解明、(3)同阻害影響を回復・最小化する方策の確立の3点である。これら目的を達成する為、申請者は、神経産生が顕著な時期において妊娠マウスにバルプロ酸を経口投与した。その結果、バルプロ酸投与により胎児の脳におけるヒストンアセチル化が増加した。また、バルプロ酸のアナログであるバルプロミド投与では、ヒストンアセチル化の増加は認められなかった。さらに、胎児における神経産生はバルプロ酸投与により亢進した。これは、成体海馬由来培養神経幹細胞において、神経細胞新生がピストン脱アセチル化作用により引き起こされる事を示した過去の報告と整合性がある。また、この神経細胞新生の様式の大部分は、中間前駆細胞の形成が関与する神経幹細胞からの非直接的な神経細胞産生経路を介し、浅層神経細胞層厚の増加と深層神経細胞層厚の減少が観察された。さらに申請者は、マウス胚性幹細胞由来神経幹細胞を用いた浅層および深層神経細胞産生の評価モデルを確立し、in vitroにおいても同様に浅層神経細胞の産生量増加と深層神経細胞産生量の減少を確認した。加えて、胎児期のピストン脱アセチル化酵素阻害により、海馬歯状回における成体脳神経細胞新生および神経細胞形態は異常を示し、胎児期バルプロ酸投与マウスにおける、後の記憶学習能力の低下の原因の一部だと考えられる。
著者
竹内 繁樹 栗村 直 岡本 亮
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、独立した光子源間で良質な量子干渉をもつ単一光子源の実現と、光量子回路への応用を目指した。その結果、95.8%と世界最高レベルの2光子干渉性を実現した。また、入力された2光子の特定の偏光相関成分を抜き出す「量子もつれフィルター」、および2001年にKnillらの提案した線形光学量子計算の基本となる、「制御ノット光量子回路」の実現に成功した。また、擬似位相整合結晶における群速度分散の制御を目ざし、デバイスの作成ならびに評価を行った。
著者
福嶋 祐介 犬飼 直之
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

粉雪雪崩の流動機構と発生機構が同じ固気混相流である吹雪の流動と密接に関連していると考え、一連の研究を推進した。モデルとして、これまで保存性サーマルや定常の泥水流で実績のあるk-ε乱流モデルを用いた。偏微分方程式の離散化と数値解法にはSIMPLE法を用いた。まず、吹雪の解析では拡散方程式の解法で不可欠な底面での境界条件について考察した。その結果勾配型あるいはフラックス型で与えられる境界条件として雪の連行係数を用いる方法がもっとも合理的であることを示した。これを南極みずほ基地で観測された吹雪データと比較し、風速分布、飛雪流量の分布に対して合理的な結果を与えることを明らかにした。また、現地観測結果と数値解析を組み合わせるで雪粒子の密度と雪の連行係数が算定できることを示した。雪崩については、傾斜面上のサーマルの流動と酷似していることから、保存性傾斜サーマルの解析を基礎として、上流部で塩水サーマルとして発生した流れが斜面上の固体粒子を巻き上げ、さらに自ら加速する"Ignition Condition"が現れる泥水流に置き換えて数値解析を行った。この結果、底面上の固体粒子の直径がある程度小さいとIgnition Conditionを満たし、流下方向に加速する現象があることを初めて見出した。このようにサーマルが加速する場合には、塩分濃度の等濃度線の時間変化は保存性の場合とかなり異なり、斜面方向に平坦な形状を示すことが明らかになった。一方、土砂の等濃度線の形状は塩分濃度の等濃度線とはその形状がまったく異なり、プルームの先端部の形状に近いことを明らかにした。さらに、固体粒子を浮遊する流れの相似則についてさまざまな議論があることから、傾斜サーマルについて、保存性と非保存性の二つの場合についてスケールを100倍に替えた数値解析をおない、サーマルの流動に及ぼすスケールの効果について議論した。その結果、保存性傾斜サーマルでは適切な無地元化を行うとスケールにかかわらず相似な流動となることを実証した。一方、非保存性の場合には、スケールが異なると流動特性に顕著な違いが現れることを確認した。したがって、吹雪や雪崩の流動特性を明らかにするためには、現地規模の数値解析を行うことがもっとも有効であることが示されたといえる。またスケールが異なった場合の底面での条件については十分な検討がなされていないことから、この条件を明確にすることの重要性を明らかにした。
著者
速水 修 前田 和司
出版者
北海道教育大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

1.これまで施行してきたスキー遊びについて、本学及び附属中学校の歩くスキーの授業において、方法を改善し、歩くスキーのスキルアップの効果を確認した。2.初心者指導に効果的な人工の雪山については、これまでの実践研究から、歩くスキーで直登行できる傾斜(約5度)とした。この斜度は、中級者にとっても、スピードを出して通過したり、降り斜面での片足スキーなどのスキースキルの学習に効果的であった。3.初心者指導に有効なスキースキルについては、フィンランドスキー連盟で実施しているスキースキルを参考にして初心者、中級者の指導に効果的と思われるものを幼児、中学生、大学生に実践し、その有効性を検討した。4.スキー遊びに使用するジャンプ台は、積雪量や雪質によっては造りづらいことがあるので、木製で移動可能なジャンプ台(幅60cm×長さ130cm×前の高さ30cm・後の高さ15cm)を製作し中級者を対象にテストをし、その安全性と有効性を検討した。5.旭川市民体育の日(平成19年2月17日)に、旭川市教育委員会スポーツ課の許可を得て、神楽岡歩くスキーコースにおいて、トラックセッターによりクラシカル用の溝を切り、参加者(約50名)の感想を聞いた。その結果、全員からその有効性が確認された。6.当初、小学生を対象にスキー遊びの実践指導を計画していたが、日程、天候の都合で実施できなかった。しかし、保育園児(4歳児22名、5歳児27名)を対象に、スキー遊びを実践することができ、幼児段階での有効性が確認できた。7.3年間の研究の成果の概要を指導者および歩くスキーの環境を提供・整備する行政関係者向けに小冊子「スキー遊びとスキースキル」としてまとめ、180部印刷した。歩くスキー実践校及び教育委員会等に配布の予定である。
著者
清水 信年 西川 英彦 岸谷 和広 水越 康介 栗木 契
出版者
流通科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

電子書籍産業におけるイノベーション普及やビジネス成否に関して、マーケティングの観点から重要な要素として以下の3点を導出した。第一に、消費者が電子書籍を利用することを促進するために「インターネット・リテラシー」(操作能力や他者との交流能力、リスク理解能力など)を考慮したサービス設計が求められることである。第二に、関係性マーケティングの観点からのビジネス設計の必要性である。第三に、戦略の「計画」ではなく「実践」を重視する「エフェクチュエーション」の観点の重要性である。
著者
吉田 成孝 板東 良雄 村上 公一
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

KLK6はオリゴデンドロサイトに発現するプロテアーゼであるが、そのオリゴデンドロサイト成熟への関与は不明であった。KLK6ノックアウト(KLK6-KO)マウスの解析により、脊髄でのオリゴデンドロサイト発達の一時的な遅延が見られた。KLK6-KOでは脊髄損傷後のミエリン塩基性タンパク質の発現も少なかった。これらの結果から、KLK6はオリゴデンドロサイトの発達に一定の関与をしていることが明らかとなった。
著者
東野 裕子
出版者
西宮市立高木小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

1.研究目的研究の目的は、課題解決型外国語活動における評価規準や評価方法を反映する形でそれぞれの単元(プロジェクト)の1時間ずつの授業の詳細を提案することにある。具体的には年間35時間を5~6の単元(プロジェクト)で構成し,その1時間ずつの授業の進め方の詳細,評価規準・評価例,指導細案を作成することである。2.研究方法小学校外国語活動に適した活動をプロジェクト(課題解決的な活動)と定義し,実践したことはまとめると次の2点である。(1)単元開発と教材開発指導と評価の一体化を考え,どんな力をつけるかを明確にし、課題解決的な力やコミュニケーションへの態度の育成を考えた単元開発と教材開発を行った。5・6学年で実践したカリキュラム修正し、両学年ともに直接交流できる新しい単元を開発した。例えば、新単元(プロジェクト)、「世界へ発信スカイププロジェクト-台北の友だちに日本のお正月を紹介しよう-」では、スカイプを通して台北の友だちと直接やりとりし、活動やコミュニケーションへの意欲を高めることができた。教材開発では,児童が最終的な活動に向けて自主的に練習し、自己の力を極めるための音声教材を作成した。その他、各時間使用する教材の作り方やその資料となるものをまとめた。(2)評価規準・評価方法の見直しと各時間の詳細案、評価例の作成各単元(プロジェクト)の評価規準・方法,児童の評価を見直し修正した。1時間ごとの指導細案とともに評価をどの場面で実施するかを示し,評価シートや評価カードも作成した。授業内容や評価規準の妥当性の検証のため,単元終了時に扱った表現を使用できる違った場面を与え、応用して言語使えるかの調査も行い、態度や意欲面のみでなく,言語使面でも力がつくことを検証した。3.成果と課題児童の興味や直接交流のできる単元の開発,自主的に使える音声教材の準備,具体的な授業の詳細案、評価規準・方法などを提示することで,児童は意欲的に活動に取り組み、学級担任は,スムーズに授業を進め、妥当性のある評価ができた。これらの研究を踏まえ、低・中学年においても課題解決的な活動を実施し、また、同時に中学への連携(小中一貫)できる9年間を見通したカリキュラムを構築することが必要である。
著者
石川 恵生
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

[背景・目的]遺伝毒性影響とは、微細な染色体の障害を検出し、変異原性、がん原性を示す生物学的影響指標であり、簡便かつ鋭敏な試験として「小核試験」が広く使用される。口腔粘膜の小核試験を実施し、また口腔内金属や歯周疾患の状態などを詳細に把握し、歯科領域の要因が口腔粘膜の小核試験にどのような影響を与えるかを明確にし、精度の高い口腔粘膜を用いた小核試験を確立することを目的とした。[対象]仕事や趣味で化学物質に曝露していない男性の健常者97名。[解析方法]小核試験を従属変数、また歯科的要因(口腔内歯科用金属の数、アマルガムの数、レジンの数、ブラッシングの回数、4mm以上のポケットの数、歯科医院通院回数)、年齢、アルコール摂取量、喫煙の有無を独立変数として重回帰分析ステップワイズ法を行った。[結果]重回帰分析ステップワイズ法による多変量解析の結果、小核試験に有意に影響を及ぼす要因としては、年齢のみが採択された(標準回帰係数β=0.45自由度調整R^2=0.20)。歯科的要因についてはいずれも統計学的に有意でなかった。[考察]年齢は過去の報告でも有意な要因として報告されており、本研究でも同様の結果となった。またアルコールや喫煙、そして歯科的要因については、いずれも統計学的に有意な項目とはならなかった。今後は、視診による口腔内充填物・補綴物の把握にとどまらず、血中や毛髪中の金属濃度などを曝露指標にすることでより精度の高い調査を行い、口腔粘膜の遺伝毒性試験と歯科的要因との関連性を調査する必要があると考える。
著者
椎屋 智美
出版者
宮崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

2型糖尿病(DM)患者と健常人にグレリン(Ghr) 0.5 μg/kgを静注で単回投与し、食事負荷で糖代謝等に与える影響を検討した。経時的に血糖、インスリン(IRI)、成長ホルモン(GH)、Ghr、デスアシルGhr、食欲を評価した。健常人、2型DM患者いずれもGhr投与時と生食投与時で血糖、IRI、食欲に差はなかった。GH、Ghr、デスアシルGhrはGhr投与時、一過性に有意に高値を示し、投与後90分で前値に復した。DM性神経障害(DN)合併患者6名を対象にGhr 1.0μg/kgを1日1回、2週間連日投与した。DNの自覚症状と後脛骨神経伝導速度はほぼ全例で改善した。投与前に比し投与終了後の食事負荷試験ではIRIと血糖は改善傾向であった。Ghr 1.0μg/kg連日投与は重篤な有害事象なく、糖代謝に悪影響も与えずにDNを改善する可能性がある。
著者
志々田 文明
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

竹下勇日記及び「乾」の巻解読によって以下の事実が明らかになった。1)植芝盛平が1926、1927年頃において指導した武術名は大東流柔術であった。以後1928年に相生流合気柔術、1929年に合気武術、1933年頃には合気武道へと変遷した。2)1930年頃から柔道、剣道、唐手等の著名な武術家の竹下勇訪問があり、植芝の武術への他武術の影響が示唆された。3)1635手の技術があり66の格闘形態が想定されていた。その七割強が相手に組み付かれた状態、組みつこうとしたときが想定されていた。4)植芝の武術はかなり実戦・実用的なものと理解された。
著者
金子 昌信
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

j-関数のマルコフ2次無理数における値のある種の連続性をファレイ分数の言葉で定式化した.j-関数の実二次点での値そのものについての数論的性質の解明には至らなかった.しかしマルコフ数のファレイ分数によるパラメトリゼーションを用いてマルコフ数のある種の新しい合同式を証明することが出来たほか,実二次数のcaliberについて,広義,狭義ともに,その偶奇を完全に決定できた.他には一変数モジュラー形式のフーリエ係数の合同,楕円曲線との関連などの結果を得た.
著者
藤田 喜久
出版者
国立大学法人琉球大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では,海岸飛沫転石帯における十脚甲殻類相の解明とその生息状況を明らかにするための野外調査と,飛沫転石帯環境の保全に関する教育普及啓発活動を行った.本研究期間中に,宮古島,石垣島、竹富島,波照間島,鳩間島,西表島を調査した.1.海岸飛沫転石帯における十脚甲殻類の生息状況調査各島の海岸の飛沫転石帯において,十脚甲殻類を採集するための定量的・定性的調査を実施した.その結果,12種(ナキオカヤドカリ,ムラサキオカヤドカリ,オオナキオカヤドカリ,ヤシガニ,ヤエヤマヒメオカガニ,ヒメオカガニ,ムラサキオカガニ,イワトビベンケイガニ,ハマベンケイガニ,ハワイベンケイガニ,カクレイワガニ,オオカクレイワガニ)の十脚甲殻類を採集した.なお,オカヤドカリ類は天然記念物であるため,種を確認した後に逃がした.竹富島・波照間島・鳩間島の各島では,従来,飛沫転石帯の十脚甲殻類相調査が全くおこなわれておらず,多くの初記録種を得た.2.飛沫転石帯環境の保全に関する普及啓発活動飛沫転石帯環境の重要性についての普及啓発を図るため,野外調査機会を利用して,調査地住民への教育普及啓発活動を実施した.具体的には,野外調査の際に,地域住民の方々に案内してもらいつつ調査を行った.また,2009年7月22日~8月30日に宮古島市総合博物館において実施された企画展「マクガン(ヤシガニ)と人の暮らし」の製作を担当し,ヤシガニの幼少時代の生息地である海岸飛沫転石帯について紹介した.さらに,宮古島の地元新聞である「宮古新報」に飛沫転石帯に生息するカニ類の紹介をした(2010年2月3日,2月24日掲載)
著者
安岡 かがり (四方 かがり)
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

平成24年4月より12月の期間は,フランス・モンペリエ市に滞在して研究活動を遂行した。文献・資料収集,およびこれまでの調査で収集したデータの整理をすすめ,学会発表と論文執筆作業をおこなった。平成24年5月に,モンペリエで開催された第13回国際民族生物学会(13th Congress of the International Society of Ethnobiology)の分科会"Histodcal ecology and legitimacy of customary rights to forest resources"において,"Abandonment of Cacao Agrofbrest : Integrating commercial cacao farming into traditional shifyting cultivation in southeastern Cameroon"のタイトルで発表した。発表では,カメルーン東南部熱帯雨林地域におけるカカオ栽培の実践をとりあげ,農民が従来の焼畑システムにどのようにカカオ栽培を取り込んだのかについて論じた。従来,庇蔭樹が多く観察されるカメルーンのカカオ畑の景観は,カカオ・アグロフォレストと呼ばれ,多様性の高い景観として評価されてきた。調査地域においても多様な樹木が残るカカオ畑が観察されるが,本発表ではそれをアグロフォレストリーとして評価するのではなく,焼畑のバリエーション,すなわち動態的な土地利用のなかで創出される景観のひとつとして位置づけ,農民の生活全体のなかでの役割を明らかにした。また,平成23年11月に提出した学位論文をもとに,これまでの研究の成果を日本語の単行本としてまとめる作業をおこない,『焼畑の潜在力-アフリカ熱帯雨林の農業生態誌』のタイトルで出版した。本書では,カメルーン東南部の熱帯雨林地域において焼畑を主たる生業としているバンガンドゥ社会を対象とし,かれらの農業実践についての記述・分析を通じて,焼畑が,人びとが森と共存しながら生活していく基盤としての潜在力をもっていることを明らかにした。とくに,商品作物であるカカオ生産の拡大というグローバルな市場経済との接合にさいして,バンガンドゥが従来の焼畑の営みをどのように改変・調整することで対応したのかに着目しながら,焼畑に関わる人びとの知識や技術,そしてその生態基盤としての熱帯雨林のもつ潜在力について総合的に論じた。
著者
大隈 智尚 濱本 晋一 影山 健 山本 晃 松岡 利幸
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

家兎VX2肺腫瘍に対し経皮的ラジオ波凝固と免疫賦活因子のGM-CSF(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)の局所注入併用による生存と遠隔転移耳腫瘍モデルへの効果を検討した。
著者
伊藤 壽一 中川 隆之 平海 晴一 山本 典生 坂本 達則 小島 憲 田浦 晶子 北尻 真一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究によって内耳発生に重要な因子が内耳再生医療に有用であることを発見した。細胞増殖制御因子p27Kip1を生後マウス蝸牛で抑制すると、増殖能がないとされていた生後哺乳類の蝸牛支持細胞が増殖した。HGFやEP4アゴニストが内耳障害の予防や治療に有用であることを発見し、そのメカニズムを解明した。Notchシグナルが、内耳内の細胞運命決定だけでなく感覚上皮前駆細胞の分化タイミングの制御や維持を担うことを発見した。
著者
竹越 美奈子
出版者
愛知東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、19世紀の西洋人資料、20世紀前半の日本資料、20世紀後半の香港資料を用いて、近代粤語を通時的に研究することである。その結果、19世紀粤語は口語の中に複数の文体が存在していたことがわかった。これは現在でも漢語(ここでは広く方言も含んだ意味での中国語を指す)に特徴的な現象であり、先行研究では、明清時代の口語にも書面語に近い優雅なスタイルと地方の方言をそのまま話す粗野なスタイル(場合によってはさらに両者の中間的なスタイル)が存在していたと報告されている。 本研究により、19世紀の広東でも口語の中にいくつかのスタイルがあり、同じ人が場に応じて使い分けていたということがわかった。
著者
小山内 康人 中野 伸彦 大和田 正明 サティッシュクマール エム 河上 哲生 角替 敏昭 角替 敏昭 足立 達朗 SAJEEV Krishnan JARGALAN Sereenen
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究では,アジア大陸の広範な地域で地質調査を展開し,大陸衝突帯深部地質について変成岩岩石学的・火成岩岩石学的解析を行うと同時に,最先端同位体年代測定を実施して,ユーラシア大陸極東部(アジア大陸)全域における衝突型造山帯形成に関わる大陸形成テクトニクスを明らかにした.また,アジア大陸形成過程と密接に関連するゴンドワナ超大陸の形成・分裂テクトニクスや,日本海形成以前のアジア大陸東縁部におけるテクトニクスについても考察した.5年間の研究成果は国内関連研究も含め51編の原著論文として学術誌に公表し,招待講演を含む多数の学会発表を行った.
著者
山上 隆正 斎藤 芳隆
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

平成15年度に開発した厚さ3.0μm、折径140cmの薄膜ポリエチレンフィルムを用いて容積3万立方米の気球を製作し、飛翔性能試験を行った。平成16年度は、さらに薄い厚さ2.8μm、折径140cmの薄膜ポリエチレンフィルムを開発し、容積5千立方米の気球を製作し、飛翔性能試験を行った。2機の薄膜型高高度気球は、それぞれ予測した高度まで正常に上昇した。また、厚さ2.8μmで容積6万立方米および容積30万立方米の気球を製作し、地上において頭部試験を行った。その結果、将来高度60kmまで飛翔できる目処をたてることができた。スーパープレッシャー気球の開発では、昨年度の地上試験結果を踏まえて、容積1万5千立方米のパンプキン型スーパープレッシャー気球を製作し飛翔性能試験を行った。気球は高度28kmで圧力のかかった状態で水平浮遊に入った。その結果、将来の大型スーパープレッシャー気球化への第一歩を踏み出すことができた。また、大重量観測器を高度40km以上に浮遊でき、気球本体の自重を最小限にするための気球の構造解析を行い、薄いフィルムで気球頭部にキャップを被せるタイプの気球の開発を行い、その有効性を試験するために容積50万立方米気球の頭部部分を製作し、地上において実際に2.6トンの浮力を付け、その性能評価試験を行った。その結果、われわれの構造解析が正しいことが実証された。
著者
大塚 智子
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

コミュニケーション能力など態度・習慣における高い能力は、良好な医師-患者および他の医療スタッフ関係の構築に重要だと考えられているが、現在の医学生においてはこうした能力の低下が危ぶまれている。高知大学医学部医学科では、態度・習慣領域を評価指標とした入試選抜(AO入試)を行っている。入学後の追跡調査により、同選抜で入学した学生の態度・習慣における高い能力が評価され、同選抜の有効性が示唆された。