著者
門脇 敬 阿部 浩明 辻本 直秀
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.38-46, 2019 (Released:2019-02-20)
参考文献数
34
被引用文献数
1

【目的】片麻痺を呈した2 症例に対し,下肢装具を用いて倒立振子モデルの形成をめざした歩行練習を施行し,歩行能力と歩容の改善を認めたため報告する。【対象と方法】麻痺側下肢の支持性が低下し歩行が全介助であった重度片麻痺例に対し,足部に可動性を有す長下肢装具(以下,KAFO)を用いて前型歩行練習を施行した。また,無装具で独歩可能だが歩容異常を呈した生活期片麻痺例に対し,あえて下肢装具を用いて歩行練習を実施した。【結果】重度片麻痺例は下肢の支持性が向上し,倒立振子を形成した歩容での歩行を獲得した。生活期片麻痺例においても歩行能力と歩容が改善した。【結論】重度片麻痺例に対するKAFO を用いた前型歩行練習は,下肢の支持性を向上させ,より高い歩行能力を獲得することに貢献できる可能性がある。また,無装具でも歩行可能な片麻痺例の歩行能力や歩容の改善においても下肢装具を用いて倒立振子を再現する歩行練習を応用できる可能性があると思われた。
著者
森田 昌敏
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.1083-1096, 1981-11-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
73
被引用文献数
1 2

生体に取り込まれた金属は血流にのって移動し, いろいろな臓器に到達し, 様々な化学変化を受けながら, 一部は貯蔵 (あるいは蓄積) され, 残りは排泄されていく。吸収から始まる, これらの一連のプロセスは, 各種のフィードバック回路を内蔵した化学反応系であるが, その内容は非常に複雑精緻であり, 今日においても未解明の部分が多い。本稿では, 重金属の生体内での代謝を, 吸収, 輸送, 体内分布, 排泄にわけて記述した。重金属の代謝に関する研究は, 栄養学, 毒物学を中心とし, 分析化学や生化学のような基礎科学から臨床医学のような応用科学まで広い範囲の研究者によってなされてきており, その記述内容は著者のバックグランドによって, かなり左右される。ここでは科学者から見た代謝が書かれている。分析技術の最近の進歩についても若干触れている。
著者
髙谷 新 安保 寛明 佐藤 大輔 新宮 洋之
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.28-37, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
29

本研究は,看護師長のリーダーシップと看護職員の心身のストレス反応の関連において,仕事のストレス要因の高低による看護職員のワーク・エンゲイジメントの媒介効果の影響を明らかにすることを目的とする.16病院の看護職員1,213人を対象に無記名自記式質問紙調査を行い,マルチレベル相関分析および調整媒介分析を行った.有効回答は403部であった.マルチレベル相関分析では,個人レベルでワーク・エンゲイジメントと看護師長のリーダーシップに正の相関が,職業性ストレスとは負の相関が認められた.また,集団レベルでは看護師長の人間関係志向のリーダーシップと職業性ストレスに負の相関が認められた.調整媒介分析では,高ストレス状況下での変数間の関連について推定を行い,結果として課題志向,人間関係志向両方のリーダーシップの発揮が看護職員のワーク・エンゲイジメントを媒介し,心身のストレス反応に影響を与えていたことが明らかとなった.
著者
廣瀬 雄紀 木下 晃吉 木下 勇次 石本 詩子 柴田 恵子 山口 るり 赤須 貴文 三浦 由紀子 横田 健晴 今井 那美 岩久 章 木島 洋征 小池 和彦 猿田 雅之
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.355-362, 2018-07-20 (Released:2018-07-27)
参考文献数
32

症例は84歳の男性.C型肝硬変で当科へ通院中.肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;HCC)に対して,局所治療や血管内治療を繰り返していた.肝内に多発再発を認めたが,腎機能障害のため血管内治療は継続困難となった.テガフール・ウラシル配合剤投与を行うも腫瘍マーカーは上昇傾向であり,投与を中止した.その後HCCは経時的に増加・増大し,多発肺転移も認めた.免疫賦活作用を期待して十全大補湯を開始したところ,開始1カ月後に腫瘍マーカーは著明に低下し,開始6カ月後には一部の肝内病変は縮小し多発肺転移は消失した.十全大補湯による抗腫瘍効果と考えられ,推奨された治療に対して抵抗性,または肝機能不良の進行HCC症例に対して,1つの選択肢となり得る可能性が示唆された.
著者
大野 正英
出版者
日本経営倫理学会
雑誌
日本経営倫理学会誌 (ISSN:13436627)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.241-253, 2012-01-31 (Released:2017-08-08)

'Sanpo-yoshi (three parties good)', which means 'good for the seller, good for the buyer, good for the society', is usually regarded as the word which expresses the management philosophy of Omi merchants. In this paper, I revealed that it was not historic word and the first use of the word could be found in the moral theory of Dr. Chikuro Hiroike. He claimed that we should give sufficient moral considerations to the interests of the third parties, as well as of one's own and of the partner. This concept can be interpreted as a Japanese style stakeholder approach.
著者
柏浦 正広 齋藤 一之 横山 太郎 小林 未央子 阿部 裕之 神尾 学 田邉 孝大 杉山 和宏 明石 曉子 濱邊 祐一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.794-799, 2014-12-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
10

症例は70歳代男性。気分障害にて入院加療中であったが,一時外出中に自宅のメッキ工場でメッキ加工に使用する無水クロム酸を服毒し,その3時間後に当院救命救急センターに搬送された。来院時,口腔内はびらんが強く,一部粘膜は剝離しており,上部消化管内視鏡検査では食道や胃の粘膜表層が剝離していた。血清クロム濃度は842.6μg/dLであった。ジメルカプロールとアスコルビン酸を投与したが,ショック状態となった。集学的管理を行うも,入院36時間後には肝不全,播種性血管内凝固症候群も併発し52時間後に死亡した。剖検では口腔から食道まで粘膜は剝離しており,凝固壊死がみられた。六価クロムは強い酸化剤であり,容易に吸収され腐食性の損傷を生じる。またその細胞毒性から肝・腎障害を生じることが知られている。本症例でも高度の腐食性の化学損傷を起こし,肝・腎不全の悪化から多臓器不全を生じたものと考えられた。
著者
奥野 浩史 竹田 太郎 笹岡 知子 福田 文彦 石崎 直人 北小路 博司 矢野 忠 山村 義治
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.30-38, 2009 (Released:2009-08-11)
参考文献数
16
被引用文献数
8 3

【はじめに】自覚的な肩こりと肩上部の硬さとの関連性について検討した。 【方法】肩こり群 (n=60) および非肩こり群 (n=10) に対し、 肩こり自覚度と硬さの評価を鍼灸治療前後に行なった。 硬さは生体組織硬さ計 (PEK-1) と第3者による触診により評価した。 治療担当者に肩こり治療の有無を記入させた。 【結果・考察】硬さ計と触診による硬さの評価は有意な相関を認めた。 しかし、 肩こり群と非肩こり群との2群間の硬さには差を認めず、 肩こり群の自覚度と硬さに相関関係は認められなかった。 さらに鍼灸治療前後の自覚度と硬さの変化量にも相関を認めないことから、 肩こりと硬さとの関係性が無いことが明らかになった。 また、 鍼灸治療効果は肩こり治療をした群で高かった。 以上のことから、 臨床上感じられる触診結果と肩こりの自覚度との整合性の矛盾について、 その一部を示すことが出来たと考える。
著者
綿谷 翔太
出版者
成城大学
雑誌
常民文化 = Jomin bunka (ISSN:03888908)
巻号頁・発行日
no.38, pp.55-74, 2015-03

Koshin is a folk belief, it was born by Sanshi-setsu (thought to be that there are insects that governs the life in the body) was brought over from China during the Heian period in Japan. It was developed independently in Japan through the Middle Ages and early modern period. When it comes to the early modern period, Koshin was largely prevalent among the Edo townsmen and suburbs of farmers. And develop into various forms in relation to the common people of faith such as Buddhism and Shinto. Also from this period, so that the stone pagoda called Koshinto is built in various places. Mid 18th century, the Buddhist sect Nichiren was also associated with Koshin. Shibamata Taishakuten (Daikyoji) appears as the center of the faith, this temple is as prevalent through the 19th and early 20th century. In this paper I will classify the Koshinto that replicates the principal image of Shibamata Taishakuten as "Shibamata type Koshinto". In addition, as a faith-area they remain, to pick up the Miura Peninsula is the major distribution areas of Shibamata type Koshin tower. And, as the reason why the faith of Shibamata Taishakuten remained in the far away land, and take up the Edogawa of water transportation that utilizes the coast of Shibamata region, we consider the process of faith of propagation.
著者
大塚 斌 菊田 文夫 近藤 四郎 高橋 周一
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.311-318, 1992-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
19

(1) 足の形状とその革靴のサイズとの関連を検討するために, 日本人成人の男性149名, 女性178名の左右両足について, 足長および足囲ボールを計測した.この計測値をもとに, 靴の適正サイズをJIS規格によって判定した.同時に足の靴に対する「適合感」の好みを, 「ぴったり」・「ふつう」・「ゆるめ」の三つに分類して, その分類ごとに靴の適正サイズと自称サイズの一致度を検討した.(2) 革靴の自称サイズのうち最も多いのは, 足長サイズでは男性が25.0 (cm), 女性が23.0 (cm) であって, 足囲ボール表示サイズをあわせてみた場合には, 男性では25EEE (ボール部周径が255mm), 女性では23EE (ボール部周径が234mm) であった.(3) 足長の適正サイズと自称サイズの一致度は, 男性では約41%, 女性では約32%であった.被験者のうち, 男性は38%の者が, 女性は59%の者が自分の足長サイズは知っているが, 足囲ボール表示サイズについては知らなかった.この結果は, とくに市場に多く出回っている婦人靴に, 足囲ボールサイズの表示がない場合が多いが, DやEに相当するものが多いという事情によるものと考えられた.(4) 足長の自称サイズと適正サイズとの差異をみると, 「ぴったり」, 「ふつう」, 「ゆるめ」と移るにつれて, 男性では自称サイズが適正サイズよりも大きい者の割合が増加するが, 女性ではこの傾向は認められなかった. (5) 足の靴に対する「適合感」の好みを, 「ぴったり」・「ふつう」・「ゆるめ」の三段階に分けてみると, 男女ともに「ぴったり」・「ふつう」・「ゆるめ」と移るにつれて, 自称の足囲ボール表示サイズはしだいに大きくなる傾向がみられた.(6) 女性の自称サイズは, 足長・足囲ボールの計測値から判定される適正サイズよりも大きい傾向が認められた.
著者
岡田 和也 一川 誠
出版者
日本視覚学会
雑誌
VISION (ISSN:09171142)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.117-138, 2021-07-20 (Released:2021-07-27)
参考文献数
23

In order to examine how the color of containers affect the taste intensities of drinks, participants evaluated the intensities of four basic tastes for various solutions, which was supplied with a colored container. Also, they evaluated subjective matching between colors and tastes. Analyses for the evaluated intensities of tastes showed that colors of container affect the tastes of drinks; bitterness was emphasized with black and green containers; sourness was emphasized with yellow container; saltiness was emphasized with pink container; sweetness reduced with black, blue, and green containers. We found that yellow container would emphasize the sourness for which participants evaluated as strongly matched with yellow while black, blue and green containers reduce the sweetness for which participants evaluated as negatively matched with those colors. These results suggest that the effects of color of container on taste intensities for inner drinks depend on the subjective matching between the color and taste.
著者
宮坂 実木子
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.73-81, 2005 (Released:2012-09-24)
参考文献数
22

A child is not a small adult. The characteristic feature of pediatric diagnostic imaging has growth and development. And pediatric head and neck pathologies depend on the age. The pathologic processes of the pediatric head and neck can be classified as congenital, inflammatory, benign and malignant tumors, and traumatic lesions. Diagnostic imaging of head and neck lesions includes plain radiography, ultrasound, CT, MRI, and nuclear medicine. CT and MRI are useful in the evaluation of anatomies. Recently, CT and MRI is increased for pediatric patients. On the other hand, it is important to familiar with the radiographic change of normal growth and development, in order to diagnosis head and neck lesions. Diagnostic imaging is considered to be played efficiency and to be in offering the information which is useful to medical examination.In this presentation, we review the imaging of normal development and the imaging features of pediatric head and neck pathologies.
著者
川島 敏彦
出版者
一般社団法人 軽金属学会
雑誌
軽金属 (ISSN:04515994)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.856-872, 1990-11-30 (Released:2008-10-30)
参考文献数
99
被引用文献数
3 3
著者
大山 修一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.87-124, 2011 (Released:2011-02-12)
参考文献数
41
被引用文献数
4 2

2000年に開催された国連ミレニアム・サミットでは,世界中の政治家が「ミレニアム開発目標」を設定した.開発目標のひとつに1人・1日あたりの所得1ドルを貧困の基準に設定し,2015年までに貧困人口を半減させることが挙げられている.「1日1ドル未満の所得」というフレーズは,毎日食うに困って飢餓に恐れおののく人びとの姿を想起させる.サハラ以南アフリカの人口の6割は農村に居住しているが,アフリカの農村に住む人びとは飢餓に恐れおののき,衣食住に困っているのだろうか.ザンビア北西部州のカオンデ社会を事例に,焼畑と狩猟,採集,漁撈を組み合わせた多生業形態,世帯間での食料のやりとり,村長のライフヒストリーを検証し,自分たちの食料や生活資材を自分たちで獲得しようとする自給指向性の強さを明らかにした.アフリカ農村は孤立し,外部社会に対して閉鎖的では決してないが,自給指向性が強く,現金を多く介在させない社会であった.つまり1日1ドルの所得を必要としない,自給に根ざした生活様式がいまだ根強く残っているのである.1日1ドル未満の所得の人びとがすべて,飢餓に苦しみ,援助を必要とする人びとではないことを指摘した.現在,アフリカでは共同保有を基本とした慣習地の土地制度が改正され,土地の囲い込みや私有化が進んでいる.外資の導入や資源開発も進み,今後,アフリカは世界経済とも強くリンクし,農村も急激な変化に取り込まれていくであろう.そのとき,人びとが自給を維持できず,1ドル未満の所得しかない社会の最下層に位置づけられていくことを危惧する.