著者
岡野 裕行
出版者
情報メディア学会
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.41-61, 2008-12-01 (Released:2008-12-01)
参考文献数
67

文学館という機関は日本近代文学研究者に対する専門図書館としての役割を担っている.しかし文学館ではオンライン検索の普及が遅れており,検索システムを実現化している例はそれほど多くはない.12館の文学館において公式サイトでのオンライン検索システムの提供が行われているが,それらは例外的なものであり,(1)所蔵資料の特殊性,(2)孤立したシステム,などの問題を抱えているのが現状である.文学館のオンライン検索の課題としては,(1)公式機関としての信頼性,(2)存在情報の公開,(3)所在情報の公開,(4)詳細な解説の付与,などに注意を払う必要がある.オンライン検索システムの発達を含め,文学館は日本近代文学研究に関する専門図書館としての機能を充実させていくことが求められる.
著者
瀧口 徹 カンダウダヘワ ギターニ ギニゲ サミタ 宮原 勇治 平田 幸夫 深井 穫博
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.513-523, 2008-10-30
被引用文献数
1

本研究の目的は,発展途上にあって多宗教,多民族国家の一つであるスリランカにおける社会経済的要因と糖分摂取,歯磨き習慣,フッ化物歯磨剤および定期的歯科受診の4つの歯科保健行動との関連を分析することである.対象の西プロビンスは同国の9省(プロビンス)のうち管内の市町村間で最も社会経済的多様性がある.スリランカ国のうち最も都市化した西省の21小学校の12歳児男女949名が無作為抽出され,無記名自記式質問票を担任の監督のもと各家庭に配布し回収した.性別,地域差,民族,父母学歴,職業,収入,児童数,因子分析による社会経済的6因子,歯科保健情報源,および定期的歯科受診の10分類の要因系と前述の4種類の歯科保健行動との関連を多重ロジスティック回帰分析により分析し4つの歯科保健行動の要因系の違いを比較した.その結果,オッズ比が2.0以上を示した要因はタミール族がショ糖含有食品を制限していることが最大オッズ比(exp(-B)=5.44)を示し,次いでオッズ比が大きいものは最多民族であるシンハラ族のフッ化物歯磨剤使用(2.34)および歯科保健情報源としてのテレビ(2.32),生活必需品充足度(因子分析第1因子)と食間でのショ糖添加(2.16),シンハラ族の定期的歯科受診(2.11)であった.高有意性(p<0.001)を示す関係は6つあり,女性の歯磨き励行,生活必需品充足度と食間でのショ糖添加,ショ糖添加紅茶飲用およびフッ化物歯磨剤使用,定期的歯科受診と食事時・食間のショ糖追加摂取および歯磨き励行との関係であった.また2つ以上の歯科保健行動にかかわる指標は,民族,父親の学歴,生活必需品充足度および定期的歯科受診の4つであった.以上,本研究により性差,民族,父の学歴,生活必需品充足度および定期的歯科受診の5つが歯科保健計画策定,キャンペーンや活動に際して注目すべき要因であることが示された.
著者
柴口 拓 池田 弥央 東 清一郎 宮崎 誠一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SDM, シリコン材料・デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.713, pp.63-66, 2005-03-04

光照射下及び暗時においてSi量子ドットフローティングゲートMOSキャパシタの容量-電圧(C-V)特性及び過渡I-V特性を調べた。p及びn型Si(100)基板上に作製したAlゲートMOSキャパシタのC-V特性は、Siドットへの電荷注入・放出により、基板のフェルミ準位を反映した対称的なヒステリシスを示すことから、ヒステリシス特性に対する特定のエネルギーを持ったトラップからの影響を無視できる。また、光照射することでMOSFETsの動作状態である反転領域においてSiドットへの電子注入による容量ピークを観測した。このことは、光照射下におけるMOSキャパシタの特性からSi量子ドットフローティングゲートMOSFETsにおける最適な動作バイアス条件が評価可能であることを示す。
著者
志毛 ただ子
出版者
金沢大学
雑誌
金沢大学十全医学会雑誌 (ISSN:00227226)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.1744-1785, 1958-12-20
著者
松下 姫歌 橋村 裕治
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.8, pp.271-280, 2008

本研究では, 青年期における自己愛傾向は自我同一性の感覚に寄与する健康な側面をもちうるという仮説のもと, 大学生の自己愛傾向と自我同一性との関連を検討した。自己愛人格目録短縮版(NPI-S)の下位尺度の主成分分析によって抽出された「自己愛総合」と「注目-主張」の2成分の高低によって対象者を4群に分類し, 多次元自我同一性尺度(MEIS)の総合得点および下位尺度得点を比較したところ, 全体的な自己愛傾向の高い群は低い群よりも自我同一性達成感を強く持つという結果が示された。このことから, NPI-Sによって捉えられる一般青年の自己愛傾向の高まりは, 病理的な自己愛とは異なり自我同一性達成に寄与するものであると言える。また, 自分の感覚を軸に自己を捉える群の方が, 他者の視点を介して自己を捉えようとする群よりも, 自分の理想や願望を明確に意識していることが示された。
著者
湯川 淳一 山内 政栄 永井 定明 徳久 英二
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.171-175, 1977-09-30

YUKAWA, Junichi, YAMAUCHI, Seiei, NAGAI, Sadaaki & TOKUHISA, Eiji (Entom. Lab., Fac. Agric., Kagoshima Univ., Kagoshima). 1977. Leaf longevity and the defoliating process in saplings of Actinodaphne longifolia (BLUME) NAKAI. Jap.J.Ecol., 27 : 171-175. This investigation was made as a part of the authors' ecological studies of broad-leaved evergreen trees and associated gall midge populations which have been continued since 1970 in a natural forest of Mt. Shiroyama, situated in the centre of Kagoshima-city. The mean leaf longevity in saplings of Actinodaphne longifolia (BLUME) NAKAI was estimated at 51.58 months by counting both the numbers of surviving leaves and scars of leaves that had been shed. The mean numbers of new leaves per twig fluctuated annualy between 5.13 and 10.60,but the fluctuations were not great in the taller trees or in the younger generations of the shorter trees. The defoliating process from the time of leaf emergence to the end of April in 1976 was indicated by τ-index to be nearly random in almost every year. The simple and easy method adopted in this study may be applicable in some cases for estimating the leaf longevity and the defoliating process of other broad-leaved evergreen trees.
著者
中鉢 龍雄
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集 (ISSN:00290270)
巻号頁・発行日
vol.17, no.64, pp.172-178, 1951-12-20

In this paper the theoretical equation of motion of tire wheel is obtained, by the consideration of tire deformation and the slip against road, as a method to connect the Kantrowitz's shimmy equation and the usual theory which neglects the tire deformation. This equation leads to the steering characteristics of pneumatic tire. By this aequation the yawing shimmy and the coupled oscillations fo rolling, yawing, tramping etc. are analysed.
著者
桐生 直幸
出版者
鎌倉女子大学
雑誌
鎌倉女子大学紀要 (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.63-73, 2008-03

本研究では、英語授業を受講している心理学専攻の大学生32名を対象とし、授業改善の一環として授業評価アンケートを実施した。学生による授業評価、学習の自己評価、および授業に対する満足度・理解度の関係を、興味に焦点を当てながら分析した。分析の結果、以下の点が明らかとなった。(1)自己評価に影響を及ぼす要因のうち、興味に関しては「学習内容に対する興味」と、「英語に対する興味喚起」の2つの要因に分けられる。(2)授業の満足度に影響を及ぼす要因は授業回によって異なるが、主たる要因として「授業の展開方法・内容の適切さ」と、「学習内容に対する理解・興味」の2つが挙げられる。
著者
阪井 誠 中道 上 島 和之 中村 匡秀 松本 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.2575-2586, 2003-11-15
被引用文献数
11

WebTracerはWebサイトをブラウズするユーザの視線と操作の記録,再生,分析を支援するユーザビリティ評価環境である.WebTracerは,ユーザがどこを注視しつつ操作を行ったかをコンパクトに記録することが可能である.評価実験の結果,WebTracerは既存のビデオ圧縮方式であるMPEG-2やMPEG-4に比べ1/10から1/20のデータサイズで,Web操作画面を記録し再生することができた.また,Webページのメニューが2カ所に分かれている場合は注視点の移動速度が速かったなど,視線とユーザビリティが関連している可能性が示された.WebTracerを用いれば,ユーザビリティの共同研究や,ユーザビリティ評価者と開発者の間でデータ交換することが可能になる.また,視線データを利用して問題のあるページを容易に探せるなど,ユーザビリティ評価を効率的に支援できる可能性がある.WebTracer is a new usability evaluation environment which supports record, reproduction,and analysis of a gazing point and operation while a user is browsing a website.WebTracer can record a user's gazing point and operation compactly.Results of an experimental evaluation showed that the size of the operation history taken by WebTracer was from 1/10 to 1/20 of the size of data recorded by an MPEG-2 and MPEG-4 format.Thus, with its compact form,the result of usability testing with the gazing point can be efficiently shared.It is expected that we can easily share empirical data between researchers.Also,evaluators can easily send the testing results as a feedback to the developers.Moreover, the results shows that a possibility that gazing points related to usability.For example, if the menu of a Web page is divided into two panes,gazing points moved quickly.It seems that WebTracer improves usability evaluation efficiently,since gazing point data helps to find out problems from Web page.
著者
萩原 信介
出版者
国立科学博物館
雑誌
自然教育園報告 (ISSN:0385759X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-17, 1983-03

マツ林床下におけるシュロの実生を用いて約3年間にわたる月別乾物生長, 死亡要因を調べ, 同時に林内照度, sunfecks, 気温の季節変化を測定しシュロの生長との対応を試みた。また前報(萩原, 1980a, b)の被陰格子内の生育との比較を行った。以下次のことが明らかになった。1. 林内の相対照度は夏季0.1%と低く, 4月下旬が最も高く2.5%となった。2. Sunfecksの割合は夏季2.3%と低く, 4月下旬が最も高く9.0%であった。3. 林外に比較し最低気温は冬で2.5℃高く, 最高気温は夏で2.5℃低かった。4. 実生の死亡要因としては胚軸伸長期の乾燥死が5%, 秋の落葉・落枝に被覆された死亡が3年間で18%, 1年目の冬の乾燥死によるものが15%, 虫害や競争によるものが4%であり照度不足が直接の原因と考えられる死亡は認められなかった。5. 乾物生長はきわめて遅く3年間で320mgと種子重の350mgまで達しなかった。6. 生長は年間を通し直線的で明瞭な生長休止期は認められなかった。7. 被陰格子内の実生との比較では2%照度区とほぼ等しい生長をしていることが明らかとなり, sunfecksの効果と秋から春の照度の上昇が生長の促進また生活の維持に大きく寄与していると考えられた。8. 1年目の実生の冬期の乾燥害は分布北限地域では, シュロの定着に大きな障害となっていることが予想された。
著者
大出 晁
出版者
創価大学
雑誌
創価大学人文論集 (ISSN:09153365)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.A1-A23, 1993-03

わたしは,すでに「アリストテレスの回顧的説明パターン」と題する論文において,アリストテレスの説明理論のもつ基本的特徴点について論じた。その主な論点はつぎのようになる。1.アリストテレスが事象を学問的に説明するときの基本的な考えは,説明されるべき事象を結論とする三段論法を与えることであり,かれはこれをその事象の「論証」とよんだ。2.この論証の方法には二種類ある。(a)中項としてかれの言う「原因」が与えられている場合で,「根拠の論証」とよばれる。例:近くにあるものは瞬く。惑星は近くにある。それゆえ,惑星は瞬く。これは「惑星が瞬く」という事象の,「近くにある」ことを原因とするところの論証である。(b)中項としてかれの言う「原因」が与えられていない場合で,「事実の論証」とよばれる。例:瞬くものは近くにある。惑星は瞬く。それゆえ,惑星は近くにある。これは「惑星は近くにある」という事象の,原因とは見なされない「瞬く」ことを中項とする論証である。だが,アリストテレスは,原因の認定については「惑星は近くにあるがゆえに,瞬かない」のであって,「瞬かないがゆえに,近くにある」のではない,と語っているのみで,それ以上の理由づけをしていない。3.この「根拠の論証」と「事実の論証」のうちで,「知識」とよびうるのは,その原因によって論証をおこなう「根拠の論証」のみである。4.このような「根拠の論証」の特徴は,「より感覚に近い事象」(瞬き)を「より感覚から遠い原因」(天体との距離)によって<説明する>点にある。感覚に近く疑いえぬ事象を,感覚から遠く,それだけ疑問視しうる原因によって,説明するために,説明されるべき事象がまず固定され,それにあわせて原因を探しだす「ハメコミ方式」の性格をもつ。それゆえ,原因あるいはそれをふくむ前提がまずおかれて,そこからさまざまな事象が引き出されるという意味での「演繹的」説明とは異なる。5.この「ハメコミ方式」においては,「実現した事象」から「それ以前の原因」への探索は可能であっても,「すでに実現した事象」から「まだ実現していない事象」への推論は許されないという,アリストテレスの考え方に支えられている。「過去への探索」は必然性をもつが,「未来への推論」は「未来事象の不確定性」のゆえに不可能であるというのが,その理由である。そして,この思考法はアリストテレスに限られぬギリシャ的思考法というべきものであり,ギリシャ的な円環的時間観に由来する。この時間観によれば,過去と未来に本質的な差はなく,「過去の教訓」はそのまま未来の予言につながるのである。そこで,わたしは,このような「根拠の論証」による説明論を「回顧的説明論」とよんだのである。わたしがこの論文で補いたい論点は五つあるが,そのうちのひとつは,この2の主張の原因あるいは中項の位置づけに関係し,残りの四つはいずれも5の主張に関係している。それら四つの論点とは,まず,アリストテレスのいう「条件づきの必然性」,後にスコラ学者がnecessitas ex suppositioneあるいはnecessitas ex conditioneとよんだものであり,第二は,アリストテレスの「出来事の同族性」なる概念であって,ここにかれの「過去・現在・未来」に関する独特な考え方を見ることができる。第三は,かれの「目的因」の概念であって,それがわれわれの通常用いる目的論的な意味内容とはなはだしく異なることを明らかにする。最後の論点はギリシャの円環的時間観についての補足である。以下,この順番にしたがって議論をすすめてゆくことにしたい。
著者
中渡瀬 秀一 木本 晴夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告情報学基礎(FI)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.87, pp.41-48, 1995-09-14
被引用文献数
16

本論文では字面処理によって,テキストから重要語(キーワード)を自動抽出する方法について述べる.日本語の場合まず文章から単語を得るために,形態素解析が必要であるが,形態素解析には未知語や曖昧性の解消などの問題があり,これを解決するために,従来は複雑な規則や人間がメンテナンスしなければならない辞書が必要であった.本手法はNグラムの頻度情報を用いた完全な字面処理になっている.その手順では()まずNグラム頻度情報を使って重要な文字列を抽出し,()次にその中から無意味な文字列を排除する.実験ではこの手法が未知語や複合語の範囲を正しく識別し,抽出精度を向上させることを確認した.This paper describes a new method to extract free keywords automatically from a Japanese text. Morphological analysis is necessary to recognize words from a text for extraction of keywords. There exist, however, problems of unknown words recognition and ambiguity of compound words recognition, so dictionaries and complex heuristics are necessary to resolve them. Our method is based on the n-gram method and consists of 2 steps: (1) Evaluation of major strings using the n-gram statistics, and (2) Exclusion of nonsense strings. It was found that our method extracts keywords that is unknown word more precisely than conventional methods.
著者
山口 巌
出版者
日本ロシア文学会
雑誌
ロシヤ語ロシヤ文学研究 (ISSN:03873277)
巻号頁・発行日
no.11, pp.101-112, 1979-10-10

In hoc opusculo, positis hypothesibus quae ad proprietatem verborum movendi significationum pertinent, dissertum est ut inter ea verba, quae vulgo determinata seu unidirectionalia vocantur et ea, quae indeterminata sive multidirectionalia appellantur, distictionem perficere tam in verbis simplicis, quam in verbis praefixis compositis, non solum idoneum, sed etiam necesse esse arbitrer. Hinc discreta sunt verborum movendi genera quattuor: verba perfectiva determinata, verba perfectiva indeterminata, verba imperfectiva determinata atque verba imperfectiva indeterminata.