著者
源 了圓
出版者
The Japan Academy
雑誌
日本學士院紀要 (ISSN:03880036)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.127-204, 2003 (Released:2007-06-22)

Many scholars, in analyzing the concept of“public”in the intellectual history of Japan have centered their arguments around the problem of the concept of the“public and the private”(koshi or oyake to watakushi). However, in the case of Yokoi Shonan (1809-1869), I wish to make a distinction between his concern with“the public”(kokyo) and his treatment of the “public and private.”It seems to me that Yokoi placed centrality on“the public”and sought, especially after the arrival of Commodore Perry's“Black Ships, ”as a means to realize the idea of“the public”in Japanese society, economy, and politics.
著者
善教 将大
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.18-32, 2021 (Released:2023-11-16)
参考文献数
29

本稿では筆者が実施した大阪市民を対象とする意識調査を用いた実証分析を通じて,大阪における感情的分極化の現状,原因,帰結の3点について検討する。地方政治の場において維新vs.反維新という激しい政治的対立が存在する大阪市は,日本で感情的分極化について議論する際,有用な知見を提示することが可能な事例の一つとして位置づけられる。本稿ではまず,地域レベルと個人レベルの分極化指数を求め,その水準を他国の事例などと比較することで大阪の分極化の現状を明らかにする。その上でメディアを通じた選択的接触の議論に基づき,2020年の住民投票期間中のメディア利用が政策選好や個人レベルの感情的分極化に与える因果効果を推定する。さらに個人レベルの分極化指数が,制度信頼,政治不信,市民間の相互不信に与える因果効果も分析し,感情的分極化が進展することの帰結についても考察する。
著者
坂井 伸之 安原 拓哉 笹田 圭一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
大学の物理教育 (ISSN:1340993X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.127-130, 2023-11-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
7

1.なぜ腕の内旋か?野球の上級者の投球には,図1のように,リリース直前に腕を内側にひねる動作がある.この動作は「肩関節の内旋」または「腕の内旋」と呼ばれ,テニスのサーブ,バドミントンのスマッシュ
著者
山瀬 豊
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.828-832, 2019 (Released:2020-04-02)
参考文献数
3

高エネルギー電子加速器を用いた電子線滅菌は,滅菌法では比較的新しい方法であるが,近年,医療機器,医薬品容器等の人体に対するリスクの高い医療用品の製造時の滅菌法として一般的な滅菌法となってきた。その背景には,高エネルギーの電子線は,最終梱包のまま短時間に低温で透過処理できることや,従来から主流であったエチレンオキサイドガス(EOG)滅菌のEOの発がん性の問題関連の規制等,滅菌バリデーション(科学的妥当性の検証)要求,無菌性保証など品質規格要求等も厳しくなったことなどがある。さらに近年は,ガンマ線滅菌の線源高騰,環境,セキュリティ,リスク管理等も重視されEOG滅菌だけでなくガンマ線滅菌からも電子線滅菌に切り替えるケースも増えている。今後は,コンプライアンス順守やCSRの推進等の社会的な取り組みを背景に,環境,労働環境,安全,品質などの対策強化などに伴い,医療機器,医薬品等の電子線滅菌はさらに増加していくことが考えられる。
著者
畑中 康郎 野上 達也 木下 栄一郎
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.213-218, 2008-11-30 (Released:2016-09-17)
参考文献数
19

白山の標高2,450mのMizuyajiri調査地に永久方形区が設置され、クロユリの調査が1992年より実施された。その結果、次の事が明らかになった。1、クロユリは多くの種子をつける。2、実生はまれに出現するが、通常、実生の数は非常に少ない。3、多くの鱗茎葉により栄養繁殖が行われる。よって、白山のクロユリ集団では、集団の維持は主に栄養繁殖によって行われている。しかし、この結果は集団維持に対する実生の貢献の可能性を完全に否定するものではない。調査期間中、比較的まとまった数の実生の出現が1回起きたということは、条件が整えばクロユリ種子が発芽して集団の維持に貢献すること、の可能性を示唆する。いずれにしても、10年、20年という時間間隔のなかで一度起こる事象を検証するためには、10年程度の調査期間はあまりに短すぎる。また、12年間にわたる調査期間中に有茎個体の個体数、集団構造は大きく変動したことは、白山のクロユリ集団が現在も刻々変化していることを示している。温暖化などによる地球環境の変化が高山帯の植物や植生にどのような影響を与えるかは今のところ定かではないし、その変化を予想することは難しい。したがって、白山のクロユリ集団の変化と気温等の変化の関係を明らかにすることは極めて重要であり、定点での継続観察が必要である。
著者
Yu KANAZAWA
出版者
The Japan Association for Language Education and Technology
雑誌
外国語教育メディア学会機関誌 (ISSN:21857792)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1-30, 2020 (Released:2020-10-16)

This study investigated how different modes of micro-level emotion have different impacts on foreign language (LX) memory formation in shallow/perceptual processing. Participants were instructed to orally imitate the words they heard and saw while trying to replicate the emotional tone of the presented sound. Each word corresponded to either positive (LexVal+), neutral (LexVal=), or negative (LexVal-). The valence data for each word were retrieved from the proto-ANEW-JLE (Kanazawa, 2016b; for LX) and ANEW database (Bradley & Lang, 1999; for L1). The emotional prosody of each auditory prime voice clip was either positive (PercVal+), unemotional (PercVal=), or negative (PercVal-). The test session consisted of a free recall memory test, where the numbers of correct responses (dependent variables) were calculated according to (a) PercVal and (b) LexVal (independent variables). It was revealed that (a) PercVal- had a significant facilitatory effect compared to PercVal=; whereas the facilitatory effect of PercVal+ was not statistically significant. (b) LexVal+ and LexVal- were significantly better recalled than LexVal=. Contrary to Kanazawa’s (2016b) positivity effect under the deep/semantic condition, the present results were more congruent with the negativity effect (Bąk, 2016). The results and the rationale further corroborated the Deep Positivity Hypothesis (Kanazawa, 2018; 2020a).
著者
水落 憲和
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.251-261, 2018-04-10 (Released:2019-09-26)
参考文献数
89

ダイヤモンド中の窒素‐空孔(NV)中心は,その単一スピンの観測が実現して以来,量子センサや量子情報処理に関する多くの重要な研究が行われ,注目される.ダイヤモンド合成技術の発展などにより,NV中心の電子スピンは,室温下でもコヒーレンスをミリ秒以上保持するようになり,センサの観点では高感度化がもたらされた.単一系に加え集団系でも,NV中心は磁場,電場,温度,圧力などの高感度センサとして幅広い分野での応用が期待される.また,量子情報素子としても魅力的である.核スピン,光子,超伝導量子ビットなどさまざまな量子系との量子ハイブリッド化によるセンサ感度向上や,量子情報素子における多量子ビット化などの特性向上の面でも注目される.
著者
大西 正男 尾崎 文子 吉野 富佐子 村上 淑子
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.158-162, 1981 (Released:2010-03-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1 14

100匹のWister純系鼠を5群に分け, 全群に同一う蝕誘発食餌6PMVを与えたが, 飲物としてコントロール群には脱イオン水を, 残りの4群には同一フッ素濃度 (10ppm) のNaF溶液, 茶の浸出液とその稀釈液を与えた。30日のう蝕期間で, 茶投与群はNaF溶液群よりも効果的なう蝕抑制をもたらした。抑制率は茶の稀釈度に反比例した。茶は多くの生物学的活性物質を含みまたう蝕予防に好ましい物理化学的性質をもつていると考察された。
著者
望月 ちひろ 宍戸 哲也 石田 玉青 春田 正毅 村山 徹
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会 年会・秋季大会講演要旨集 第49回石油・石油化学討論会(山形大会)
巻号頁・発行日
pp.208, 2019 (Released:2019-12-31)

バイオマスから得られる重要な基幹化合物である5-ヒドロキシメチルフルフラールを選択酸化することで得られる2,5-ジフォルミルフランは、医薬品, 機能性ポリマー合成の重要な前駆体である。本研究では、アルコール酸化反応の光触媒として知られるNb2O5に様々な金属ナノ粒子を担持しHMF選択酸化反応を検討した。この結果、Nb2O5のみに比べAuナノ粒子を担持することで活性・選択性の向上が確認されたので報告する。
著者
キタイン アルマンド
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

マイクロ波-水熱及び炭素系触媒のアプローチを活用して、200 ℃ のより穏やかな条件で酸化グラフェン (GO) を還元することに成功した。還元された GO は、糖 (例え:グルコース、フルクトースなど) を 5-ヒドロキシメチルフルフラール (5-HMF) などの有用な生成物に変換する際に高い触媒活性を示し、50% 以上の収率が得られた。 rGO に Fe や Cu などの金属イオンをドープすると、触媒活性がさらに向上した。出発物質としてのフルクトースへの影響は、グルコースよりも有意であることが観察された。反応機構を解明し、コンピュータシミュレーションによりパラメータを計算した。
著者
大西 由紀 杉本 吉恵 網島 ひづる 大西 英雄
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.14-20, 2010-08-20 (Released:2016-08-25)
参考文献数
19

安全で効果的な湯たんぽの貼用方法の基礎的資料を得るために,湯温 60℃と 80℃の湯たんぽを用いて寝床内の保温範囲,快適な温度への到達時間 ・ 持続時間,保温量などの寝床内温度の経時的な変化を測定し比較検討した.その結果,寝床内の温度は両湯温とも実験開始から 10分までに急激に上昇し,その後緩やかに下降した.また,湯たんぽ周囲から離れるほど寝床内温度は低下し保温量も少なくなることが明らかとなった.さらに,快適な寝床温度 (32~34℃) は湯温 60℃では 5 cm,80℃では 10 cmの位置に湯たんぽを貼用することで約 20分後に得られ,約 4.5時間程度持続することが判明した.一方,60℃でも湯たんぽの表面温度は最高で 44.5℃まで上昇し,43℃以上の表面温度が 110分間持続していることから低温熱傷の危険性があると考えられる.安全で効果的な貼用方法を検討するためには寝床内温度の変化を考慮することが重要である.