著者
松浦 伸和
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.81-89, 2005-09-20 (Released:2018-05-08)

本稿の目的は,ローマ字知識やローマ字処理力は英語学力にどの程度影響を及ぼすのか,その影響は時間の経過に伴ってどのように推移するのか,それは指導方法によって異なるのかなど英語入門期におけるローマ字力と英語学力の直接的な関係を実証することにある。英単語の読み書き能力とローマ字知識の間には強い因果関係があることが確認されている。その後の課題について,中学1年生を対象として半年間にわたる調査を行い,以下のことが明らかになった。ローマ字力は,筆記学習開始後3ヶ月程度は英語学力に強い影響を及ぼす。その後影響は弱くなるが,依然その相関は0.3前後で継続的に維持される。
著者
長島 公之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.773-780, 2021-12-28 (Released:2021-12-28)
参考文献数
15

今般,法改正により救急救命士の業務場所が医療機関の救急外来まで拡大され,院内でのMC等に関する研修を受けることが義務づけられる方向である。日本医師会は,相当程度の教育・研修体制とMCが必須であり,需給見通しに基づく養成の視点も重要であることを表明している。今回,これまでの検討経緯と人口変動に関する資料より,業務場所の拡大に伴う教育とMC体制について考察を行った。これまで病院前救護体制を担う職種として制度設計,養成されてきた救急救命士が,医師や看護師等多様な職種が就業する医療機関内で業務を行っていくためには,日々のMCや研修を通してチーム医療の一員となることが求められる。また,超高齢社会,少子化による人口減少社会が進展し,地域医療構想による病床機能の分化,地域包括ケアシステムの構築が進められているなか,医療機関救急救命士に対するMCと研修にも院内外の連携の視点が取り入れられることが重要である。
著者
山崎 千鶴 藤田 あけみ
出版者
一般社団法人 日本救急救命学会
雑誌
救急救命士ジャーナル (ISSN:2436228X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.38-45, 2023-03-20 (Released:2023-06-05)
参考文献数
19

目的:一地方の二次医療施設の救急外来看護師と救急救命士のプレホスピタルにおける連携の実態と課題を明らかにする。方法:救急外来看護師と救急救命士に対して,「病院前医療の連携」に関する自記式質問紙調査を行った。結果・考察:救急外来勤務体制は他部署からの応援体制の施設が多かった。救急の目的を,救急外来看護師の多くは “救命” ととらえていたが,救急救命士は “後遺症を伴わない救命” が半数で,後遺症を見据えた目的を認識していた。連携に不可欠な情報の共有では,救急救命士は通報が十分できていると認識していたが,救急外来看護師は情報不足と認識していた。救急救命士と同様のセミナーを受講していない救急外来看護師はアルゴリズムの存在を知らない可能性があり,共通認識がもてず,情報共有につながっていないと考えられた。結論:円滑な連携のためには,救急外来看護師と救急救命士の合同事例検証会の開催など,関係性を高める取り組みが必要である。
著者
坂井 麻里子 鈴木 則夫 西川 隆
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.144-154, 2022-06-25 (Released:2022-07-12)
参考文献数
14

左側頭葉前部の脳膿瘍の患者にみられた軽度の言語性意味記憶障害に対し,障害の質的検討を行った.本例の理解障害の特徴は,語の派生的意味の理解障害と語の範疇的使用の障害であった.また,語の理解が困難な場合,語の一部の意味や,その語を含む慣用表現の音韻的脈絡を手掛かりとして意味を探索する代償的方略もみられた.Pattersonら(2007)のDistributed-plus-hub仮説を援用すれば,これらの所見は,損傷が及ばない脳領域のtrans-modal pathwayにより各様式の表象間の局部的連結に基づく具体的な意味記憶は喚起されるが,semantic hubである側頭葉前部の損傷によって,より広範な表象の統合を要する抽象的な語の意味記憶が解体されたものと解釈できる.
著者
對馬 佑樹 三上 誠 飯田 圭一郎 和田 尚子 齋藤 百合子 漆舘 聡志
出版者
一般社団法人 日本熱傷学会
雑誌
熱傷 (ISSN:0285113X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.138-143, 2023-09-15 (Released:2023-09-15)
参考文献数
13

【背景】本邦におけるサウナ熱傷の症例集積研究の報告は, われわれが渉猟しえた限りはない. われわれが経験したサウナ熱傷の臨床的特徴について報告する. 【対象】2012年から2021年までの10年間で, 当科を受診した熱傷患者346例のうち, サウナ熱傷患者5例を対象とした. 年齢, 性別, 受傷から初診までの日数, 受傷機転, 受傷部位, 受傷原因, 熱傷面積, 初診時の熱傷深度, 手術の有無, 入院期間, 転帰について調査した. 【結果】対象者の年齢は64~76歳 (平均71±4歳) であり, 5例すべてが意識消失に伴う受傷であった. 死亡した1例以外は経時的に熱傷深度が深達化し, 手術を要した. 【考察】サウナ浴中は脱水と脳血流量の減少により意識消失をきたしやすい. サウナ熱傷にはcontact burnとhot air sauna burns (HASBs) があり, 手術を要する可能性が高い. そのため, サウナ利用者への注意喚起と適切な補水の励行を推奨すべきである.
著者
船越 昭宏 井上 有史
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.198-203, 1995 (Released:2006-06-02)
参考文献数
6

記憶に関する質問紙を,側頭葉切除術を受け,発作の抑制された側頭葉てんかん56名 (優位側切除群27名,非優位側切除群29名) に施行して,術後の主観的な記憶評価を調べ,記憶障害の自覚がどのような要因と関連するのかを検討した。優位側切除群は正常対照群15名に比べて記憶障害を強く自覚し,手術後に記憶機能が低下したと考えていた。一方,非優位側切除群は記憶障害を自覚せず,術前から術後にかけての変化の意識もなく,むしろ正常対照群より記憶の変化の自覚に乏しかった。術前術後にかけての記憶検査成績の変化,切除範囲の違い,薬剤数の変化は優位側切除群での記憶障害の自覚の高さを説明しなかった。しかし人格検査とは相関がみられ,内向的—神経症傾向と記憶障害の自覚が関連することが示唆された。以上,切除側と人格傾向が術後の記憶障害の自覚に強く影響すると考えられた。
著者
青島 亘佐 宮内 芳維
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.274-284, 2023 (Released:2023-11-14)
参考文献数
34

今後の生産年齢人口の減少が進行する社会情勢の中で,社会インフラの維持管理においては,構造物点検の省力化および効率化を図ることが喫緊の課題の一つとなっている.近年,その課題の対応策の一つとしてAIの活用が注目を集めており,画像データ,波形データ等を中心に多くの研究が進められている.しかし,自然言語データに関する研究はまだ少ないのが現状である.そこで,本稿では,昨今の対話型AIの普及を踏まえて,大規模言語モデルを活用した橋梁点検調書作成の省力化について検討を行った.検討の結果,大規模言語モデルの活用が,橋梁点検調書作成の省力化に有効であることを確認した.
著者
杉本 和宏
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

エピジェネティック制御と男性不妊症との関係に関するエビデンスは増えている。今回我々は、プロモーター領域にTDMR(組織特異的メチル化可変領域)をもつGTF2A1L遺伝子に注目して研究を行った。86症例の非閉塞性無精子症の中で17症例がhypospermatogenesisの組織型であった。この中で、5例がTDMRの高メチル化群、12例が低メチル化群であった。TDMRの高メチル化は、GTF2A1L遺伝子発現の低下と関連していた。しかし、両群とも精子回収率、受精率、妊娠率、出生率に関して比較的好成績であり、GTF2A1L遺伝子発現の異常は妊娠率へは影響を与えていなかった。
著者
KUNIO ANDO SEIKICHI SUZUKI TETSUJI SAEKI GAKUZO TAMURA KEI ARIMA
出版者
JAPAN ANTIBIOTICS RESEARCH ASSOCIATION
雑誌
The Journal of Antibiotics (ISSN:00218820)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.189-194, 1969-05-25 (Released:2006-04-12)
参考文献数
11
被引用文献数
31 36

A new antibiotic, funiculosin, C27H41NO7, was isolated from the filter cake of the fermented broth of Penicillium funiculosum THOM. Funiculosin is a neutral lipophilic substance which inhibits both DNA and RNA viruses as tested in infected primary chick embryo fibroblast cell monolayer and also some pathogenic fungi such as Tricophyton mentagrophytes and Candida albicans.
著者
K. ECKARDT H. THRUM G. BRADLER E. TONEW M. TONEW
出版者
JAPAN ANTIBIOTICS RESEARCH ASSOCIATION
雑誌
The Journal of Antibiotics (ISSN:00218820)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.274-279, 1975 (Released:2006-04-12)
参考文献数
5
被引用文献数
25 33

Streptovirudin is a complex of antibiotics isolated from fermentation of a Streptomyces strain. Eight components have been isolated as pure substances, designated as streptovirudins A1, A2, B1, B2, C1, C2, D1 and D2. The streptovirudins are chemically and biologically related to each other and appear to be a new family of antibiotics exhibiting activity against a variety of Gram-positive bacteria, mycobacteria, and various DNA- and RNA-viruses. According to their physico-chemical properties these antibiotics have been classified in series I and II. The streptovirudins of series II (A2, B2, C2, D2) are related to the reported antibiotics tunicamycin, mycospocidin and 24010.
著者
AKIKO KATO TETSUJI SAEKI SEIKICHI SUZUKI KUNIO ANDO GAKUZO TAMURA KEI ARIMA
出版者
JAPAN ANTIBIOTICS RESEARCH ASSOCIATION
雑誌
The Journal of Antibiotics (ISSN:00218820)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.322-326, 1969-07-25 (Released:2006-04-12)
参考文献数
4
被引用文献数
16 19

A new antibiotic, oryzachlorin, C26H31O8N2S2Cl(λmax 298mμ in ethanol) has been isolated from Aspergillus oryzae. It strongly inhibits the growth of many yeasts but has no effect on bacteria or filamentous fungi. It also has antiviral activity in vitro.
著者
藤井 純一郎 大久保 順一 緒方 陸 天方 匡純
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.779-785, 2023 (Released:2023-11-14)
参考文献数
17

ChatGPTをはじめとして,大規模言語モデル (Large Language Model, 以下 LLM) を用いた文章生成モデルの発展が目覚ましい.土木分野においても,LLMを活用した業務効率化が期待されるが,LLMの学習は主にWebで集めた文書を中心としているため,土木分野の専門知識に対しての学習不足が予測され,正確な文章を生成できない懸念がある.そこで,土木分野において正確な文章生成を実現するための基礎的な研究として,本研究ではLLMを土木ドメインに適応することを試みた.正確性の評価手法を提案した上で,LLMの事前学習済み公開モデルと,ファインチューニングによるドメイン適応を行ったモデルで,土木分野に関する文章生成の正確性を評価し,LLMを土木ドメインに適応するための課題について論じた.
著者
森山 学
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.73, no.625, pp.709-714, 2008-03-30 (Released:2008-10-31)

The purpose of this study is to clarify the theories of body culture for Le Corbusier and Pierre Winter, his collaborator, and the relation between them and their architectural theories. This paper deals with Le Corbusier's theory in the 1930's. He proposed a daily exercise for health in the Radiant City (1930) and a solution to a problem of a spectator sports in the 100,000-seat stadium (1936). Furthermore he expressed his profound understanding about life. This is an underlying thought of his projects for the space of body culture.