著者
James K CHAMBERS Soma ITO Kazuyuki UCHIDA
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.85, no.11, pp.1195-1209, 2023 (Released:2023-11-18)
参考文献数
168

Merkel cell carcinoma (MCC) is a rare skin tumor that shares a similar immunophenotype with Merkel cells, although its origin is debatable. More than 80% of human MCC cases are associated with Merkel cell polyomavirus infections and viral gene integration. Recent studies have shown that the clinical and pathological characteristics of feline MCC are comparable to those of human MCC, including its occurrence in aged individuals, aggressive behavior, histopathological findings, and the expression of Merkel cell markers. More than 90% of feline MCC are positive for the Felis catus papillomavirus type 2 (FcaPV2) gene. Molecular changes involved in papillomavirus-associated tumorigenesis, such as increased p16 and decreased retinoblastoma (Rb) and p53 protein levels, were observed in FcaPV2-positive MCC, but not in FcaPV2-negative MCC cases. These features were also confirmed in FcaPV2-positive and -negative MCC cell lines. The expression of papillomavirus E6 and E7 genes, responsible for p53 degradation and Rb inhibition, respectively, was detected in tumor cells by in situ hybridization. Whole genome sequencing revealed the integration of FcaPV2 DNA into the host feline genome. MCC cases often develop concurrent skin lesions, such as viral plaque and squamous cell carcinoma, which are also associated with papillomavirus infection. These findings suggest that FcaPV2 infection and integration of viral genes are involved in the development of MCC in cats. This review provides an overview of the comparative pathology of feline and human MCC caused by different viruses and discusses their cell of origin.
著者
黒田 貴子 池田 良穂
出版者
社団法人 日本船舶海洋工学会
雑誌
関西造船協会論文集 (ISSN:13467727)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.236, pp.175-180, 2001-09-25 (Released:2017-09-06)
被引用文献数
2

In the design process of a passenger ship, ship owners try to improve the seakeeping quality of a ship by changing ship hull shape and size, or by installing additional anti-motion apparatuses, like a fin stabilizer, an anti-rolling tank, a ride control system or an anti-pitching fin. Such improvements usually coat the ship owners. They consider the merit and the demerit of each choice carefully, and then decide which way is the best one from the point of view of operation and economics. In this paper, an evaluation method of seakeeping quality from the economical point of view is proposed. The method is divided into three parts ; prediction of ship motions in waves, prediction of vomiting ratio of MSI(Motion Sickness Incidence)of passengers on the ship, and prediction of increases of share of demand for the ship due to improvement of the vomiting ratio. The evaluation method is applied to two domestic routes in Japan.
著者
木村 暁夫 大野 陽哉 下畑 享良
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.340-345, 2022 (Released:2022-11-22)
参考文献数
24

Anti–IgLON5 disease is a recently reported autoimmune neurological disease associated with antibodies against IgLON5, a neuronal cell adhesion molecule. Most patients with anti–IgLON5 disease are older adults and present with gradually progressive movement disorders, sleep alterations, bulbar dysfunction, oculomotor movement disorders, and cognitive dysfunction. These clinical features are similar to those of patients with neurodegenerative diseases including progressive supranuclear palsy, corticobasal syndrome, and bulbar–type amyotrophic lateral sclerosis. Neuropathological studies showed phosphorylated tau protein deposits predominantly involving neurons in the tegmentum of the brainstem. The efficacy of immunotherapy is still debated. However, several studies have reported that anti–IgLON5 antibody is pathogenic. Early diagnosis along with aggressive and sustained immunotherapy may be important to treat this disease.
著者
岩崎 凌 森 直樹 上野 未貴
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回 (2019) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.3C3J902, 2019 (Released:2019-06-01)

近年,人工知能による小説や漫画,アニメ,漫画といった創作物を対象とした研究が大きな関心を集めている. 創作物理解や自動生成といった試みは非常におもしろいものではある反面,そもそも人の創作物理解は高次の知的活動であり,どういったタスクであれば計算機が創作物を理解したといえるのかを定義することさえ難しい. 人の創作物の中で,特に漫画を工学的に扱う分野をコミック工学という. この分野では,日々様々な研究が報告されているが,多くはコミックの持つ画像を対象としており,ストーリーといったコミックの意味を自然言語から解析しようとする研究は少ないのが現状である. その一因としては,上で述べたような意味理解のためにどのようなタスクを設定すればよいか非常に難しいということが挙げられる. 更にデータセットが十分にデータを持っていないこともコミック工学の実験を制限する要因となっているため, Data Augmentation による解決を試み,今後の人工知能による創作物理解の可能性を示すという立場で結果を解析する.
著者
中村 敏子 木村 玄次郎 富田 純 井上 琢也 稲永 隆
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.28, no.11, pp.1407-1413, 1995-11-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
16

血液透析の導入が必要である患者では, 高血圧や肺水腫等のため, 適正な体液量レベルの体重 (DW) をあらかじめ推測することが重要である. しかし, これまでは, DWを決定する絶対的な基準がないため, 実際にどの体重レベルまで除水すればよいのかを推定することは困難であった. そこで, 1977年から1987年の間に当施設で血液透析に導入し転院し得た慢性腎不全患者190例を対象として, 導入時の体重変化の程度と性別, 年齢, 原疾患, 血圧, 胸部X線 (CTR), 心電図などを調べ, DWまでの除水量や体液量是正後の血圧の推定が可能かどうか検討した. 導入期の体重 (iBW) と転院時の体重 (mBW) の差をとり, それを後者で除したものを体重変化率 (%ΔBW) とした. 導入期の収縮期血圧 (iSBP) と維持期の収縮期血圧 (mSBP) の差をとり, それを前者で除したものを収縮期血圧変化率 (%ΔSBP) とした. 性別や年齢は%ΔBWや%ΔSBPに影響を与えなかった. 導入時心電図所見を左室肥大とST変化により4段階に分けスコア化した (ECGスコア). %ΔBwはiSBP, CTR, ECGスコアと相関し, 慢性糸球体腎炎では糖尿病性腎症に比し低値を示した. iSBPは慢性糸球体腎炎では糖尿病性腎症や腎硬化症に比し低値であった. %ΔSBPは, iSBPやECGスコアと有意な相関を示し, 慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症では腎硬化症に比し高値であった. ECGスコアは慢性糸球体腎炎では糖尿病性腎症や腎硬化症に比して軽度であった. このように, 透析導入時に必ず施行される諸検査 (血圧, 心電図, 胸部X線) を利用して, 導入時の体重増加がDWの何パーセントであり, DWまでどの程度除水すべきなのか, 維持期には血圧がどのレベルまで低下するのかをも, 推定することが可能であることが示唆された.
著者
山﨑 哲 内藤 澄悦 静 怜子 家子 正裕
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.636-643, 2016 (Released:2016-12-15)
参考文献数
4
被引用文献数
9 1

要約:凝固検査は標準化が遅れている分野であり,とりわけ活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)測定には多くの診断目的が求められることから測定試薬の多様性が認められる.また,ループスアンチコアグラントの検査法である希釈ラッセル蛇毒時間(dRVVT)測定では,従来1 試薬のみが広く使用されてきたが,現在は複数の試薬選択が可能となっている.こうした背景から,APTT およびdRVVT に関する標準化策を模索すべく検討が行われてきた.APTT については,直接的な標準化が難しいと判断されたため,試薬特性を評価/表現する方法の確立を目指し,dRVVT については,試薬差や機種差を是正する方法の確立と,それらに基づいた共通の健常人上限値の設定を目的とした.何れもある程度の成果が期待できる成績が得られており,今後,多くの検証,追加検討により標準化へと進展することが期待される.
著者
松井 京子 島村 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_111-I_119, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
24

近年頻発する竜巻災害に対しレーダー観測等を用いた警報システムの開発が切望されているが,精度の経済評価および効率的運用の指針は欠如している.低頻度・局所事象警報の空振り削減は難しいが,誤警報は警報の信頼性を減じ事業者損失を発生させる.そこで,直前警報によって被害の軽減が可能な個人・事業者を対象に,竜巻警報の経済価値定式化を行った.これは,警報の精度特性と対象者の損益構造によって経済価値を最大にする捕捉率・誤警報率を導き出すものである.本研究の結果は,「警報には最適な誤警報率・捕捉率の組み合わせが存在し,これは受け取り手の損益構造によって異なる」「誤警報による損失が大きい場合には,『閾値を高く設定してカタストロフィックな災害は回避するが,弱い竜巻を見逃す』戦略が有効である」の2点を示唆する.
著者
松浦 伸和
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.81-89, 2005-09-20 (Released:2018-05-08)

本稿の目的は,ローマ字知識やローマ字処理力は英語学力にどの程度影響を及ぼすのか,その影響は時間の経過に伴ってどのように推移するのか,それは指導方法によって異なるのかなど英語入門期におけるローマ字力と英語学力の直接的な関係を実証することにある。英単語の読み書き能力とローマ字知識の間には強い因果関係があることが確認されている。その後の課題について,中学1年生を対象として半年間にわたる調査を行い,以下のことが明らかになった。ローマ字力は,筆記学習開始後3ヶ月程度は英語学力に強い影響を及ぼす。その後影響は弱くなるが,依然その相関は0.3前後で継続的に維持される。
著者
長島 公之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.773-780, 2021-12-28 (Released:2021-12-28)
参考文献数
15

今般,法改正により救急救命士の業務場所が医療機関の救急外来まで拡大され,院内でのMC等に関する研修を受けることが義務づけられる方向である。日本医師会は,相当程度の教育・研修体制とMCが必須であり,需給見通しに基づく養成の視点も重要であることを表明している。今回,これまでの検討経緯と人口変動に関する資料より,業務場所の拡大に伴う教育とMC体制について考察を行った。これまで病院前救護体制を担う職種として制度設計,養成されてきた救急救命士が,医師や看護師等多様な職種が就業する医療機関内で業務を行っていくためには,日々のMCや研修を通してチーム医療の一員となることが求められる。また,超高齢社会,少子化による人口減少社会が進展し,地域医療構想による病床機能の分化,地域包括ケアシステムの構築が進められているなか,医療機関救急救命士に対するMCと研修にも院内外の連携の視点が取り入れられることが重要である。
著者
山崎 千鶴 藤田 あけみ
出版者
一般社団法人 日本救急救命学会
雑誌
救急救命士ジャーナル (ISSN:2436228X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.38-45, 2023-03-20 (Released:2023-06-05)
参考文献数
19

目的:一地方の二次医療施設の救急外来看護師と救急救命士のプレホスピタルにおける連携の実態と課題を明らかにする。方法:救急外来看護師と救急救命士に対して,「病院前医療の連携」に関する自記式質問紙調査を行った。結果・考察:救急外来勤務体制は他部署からの応援体制の施設が多かった。救急の目的を,救急外来看護師の多くは “救命” ととらえていたが,救急救命士は “後遺症を伴わない救命” が半数で,後遺症を見据えた目的を認識していた。連携に不可欠な情報の共有では,救急救命士は通報が十分できていると認識していたが,救急外来看護師は情報不足と認識していた。救急救命士と同様のセミナーを受講していない救急外来看護師はアルゴリズムの存在を知らない可能性があり,共通認識がもてず,情報共有につながっていないと考えられた。結論:円滑な連携のためには,救急外来看護師と救急救命士の合同事例検証会の開催など,関係性を高める取り組みが必要である。
著者
坂井 麻里子 鈴木 則夫 西川 隆
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.144-154, 2022-06-25 (Released:2022-07-12)
参考文献数
14

左側頭葉前部の脳膿瘍の患者にみられた軽度の言語性意味記憶障害に対し,障害の質的検討を行った.本例の理解障害の特徴は,語の派生的意味の理解障害と語の範疇的使用の障害であった.また,語の理解が困難な場合,語の一部の意味や,その語を含む慣用表現の音韻的脈絡を手掛かりとして意味を探索する代償的方略もみられた.Pattersonら(2007)のDistributed-plus-hub仮説を援用すれば,これらの所見は,損傷が及ばない脳領域のtrans-modal pathwayにより各様式の表象間の局部的連結に基づく具体的な意味記憶は喚起されるが,semantic hubである側頭葉前部の損傷によって,より広範な表象の統合を要する抽象的な語の意味記憶が解体されたものと解釈できる.
著者
對馬 佑樹 三上 誠 飯田 圭一郎 和田 尚子 齋藤 百合子 漆舘 聡志
出版者
一般社団法人 日本熱傷学会
雑誌
熱傷 (ISSN:0285113X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.138-143, 2023-09-15 (Released:2023-09-15)
参考文献数
13

【背景】本邦におけるサウナ熱傷の症例集積研究の報告は, われわれが渉猟しえた限りはない. われわれが経験したサウナ熱傷の臨床的特徴について報告する. 【対象】2012年から2021年までの10年間で, 当科を受診した熱傷患者346例のうち, サウナ熱傷患者5例を対象とした. 年齢, 性別, 受傷から初診までの日数, 受傷機転, 受傷部位, 受傷原因, 熱傷面積, 初診時の熱傷深度, 手術の有無, 入院期間, 転帰について調査した. 【結果】対象者の年齢は64~76歳 (平均71±4歳) であり, 5例すべてが意識消失に伴う受傷であった. 死亡した1例以外は経時的に熱傷深度が深達化し, 手術を要した. 【考察】サウナ浴中は脱水と脳血流量の減少により意識消失をきたしやすい. サウナ熱傷にはcontact burnとhot air sauna burns (HASBs) があり, 手術を要する可能性が高い. そのため, サウナ利用者への注意喚起と適切な補水の励行を推奨すべきである.
著者
船越 昭宏 井上 有史
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.198-203, 1995 (Released:2006-06-02)
参考文献数
6

記憶に関する質問紙を,側頭葉切除術を受け,発作の抑制された側頭葉てんかん56名 (優位側切除群27名,非優位側切除群29名) に施行して,術後の主観的な記憶評価を調べ,記憶障害の自覚がどのような要因と関連するのかを検討した。優位側切除群は正常対照群15名に比べて記憶障害を強く自覚し,手術後に記憶機能が低下したと考えていた。一方,非優位側切除群は記憶障害を自覚せず,術前から術後にかけての変化の意識もなく,むしろ正常対照群より記憶の変化の自覚に乏しかった。術前術後にかけての記憶検査成績の変化,切除範囲の違い,薬剤数の変化は優位側切除群での記憶障害の自覚の高さを説明しなかった。しかし人格検査とは相関がみられ,内向的—神経症傾向と記憶障害の自覚が関連することが示唆された。以上,切除側と人格傾向が術後の記憶障害の自覚に強く影響すると考えられた。