著者
筒井 正明 小林 哲夫
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.21-30, 2022-03-31 (Released:2022-04-26)
参考文献数
37

Ohatayama and Ohataike are adjacent volcanoes aligned in NE-SW direction at the northeastern portion of Kirishima Volcano Group, Kyushu, Japan. Ohatayama volcano has three small craters around the summit area, and Ohataike has a summit crater lake with a diameter of 400 m. Both volcanoes are composed mainly of tephra fall deposits by plinian or sub-plinian eruptions, with intercalations of pyroclastic flow deposits. The main volcanic edifice of the highest point of Ohatayama volcano was formed at least 22 cal ka BP. Tsukiyama were formed earlier than the highest point, and there is a possibility that they can be separated from the highest point. The triangulation point of Ohatayama volcano started its activities on the highest point somewhere around 17-11 cal ka BP, and forming craters A and B. Ohataike volcano was formed by erupting again around 17-11 cal ka BP, after the main volcanic edifice was formed during around 22-17 cal ka BP on the northeast side of the triangulation point. This was followed by four different modes of eruption at Ohatayama C crater in the following order: a phreatic eruption (Oy-4) in 7.6 cal ka BP, Ohatayama lava emission, magmatic and phreatic eruptions (Oy-3) in 7.1 cal ka BP, magmatic and phreatic eruptions (Oy-2) in 6.8 cal ka BP, and lastly, phreatic eruption (Oy-1) in 6.5 cal ka BP. Although no volcanic activity occurred from Ohataike volcano since 11 cal ka BP, foamy volcanic gas is currently being detected on the surface of the crater lake.
著者
田島 明子
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.913-919, 2020-10-16 (Released:2020-12-05)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本稿は,第56回日本リハビリテーション医学会学術集会における指定パネル:障害受容の教育講演に大幅な加筆・修正をした内容となっている.「障害受容」のリハビリテーション医療の臨床場面での使用法について,2007年時と2020年時のインタビュー調査結果の比較検討を行い,「障害受容」の使用法からみえる今後の課題について考察を行った.大きな傾向として「障害受容」の使用を控える療法士が増えていた.今後,人権を基盤としたリハビリテーション医療の推進が重要であり,そのための倫理感(観)の醸成には,「障害受容」の使用法について,障害のある当事者による講演機会や関連書籍の参照,事例検討会などを通した職場の組織体制や風土の変容が有効である.
著者
荒川 武士 上原 信太郎 山口 智史 伊藤 克浩
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.378-383, 2014-10-20 (Released:2017-06-13)

【目的】人工膝関節置換術(以下,TKA)後の膝関節周囲の皮膚可動性の特徴をあきらかにするとともに,術後に獲得される膝関節屈曲可動域との関係性を検証した。【方法】対象はTKA術後患者20名(平均78.1±7.4歳),健常高齢者10名(平均71.8±8.7歳)とした。皮膚可動性を評価するため,膝関節前面の皮膚上にマークし,膝関節を他動的に60度,90度,最終屈曲位にしたときのマーク間距離(縦方向,横方向)を測定した。膝関節屈曲角度120度を基準にTKA術後患者を2群に分類し,健常高齢者を含めた3群間の皮膚可動性を比較した。【結果】TKA術後患者は,膝蓋骨上部付近の縦方向の皮膚可動性が健常高齢者に比べて有意に低下していた。一方で,屈曲120度未満群と以上群との間に有意差を認めなかった。【結論】TKA術後の術創部周囲の皮膚は,健常高齢者に比べて可動性が顕著に低下していた。しかし,皮膚可動性はTKA術後に獲得できる屈曲可動域に対する強い制限因子ではないことが示唆された。
著者
仁藤 敦史
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.194, pp.245-275, 2015-03-31

本稿では,百済三書に関係した研究史整理と基礎的考察をおこなった。論点は多岐に渉るが,当該史料が有した古い要素と新しい要素の併存については,『日本書紀』編纂史料として8世紀初頭段階に「百済本位の書き方」をした原史料を用いて,「日本に対する迎合的態度」により編纂した百済系氏族の立場とのせめぎ合いとして解釈した。『日本書紀』編者は「百済記」を用いて,干支年代の移動による改変をおこない起源伝承を構想したが,「貴国」(百済記)・「(大)倭」(百済新撰)・「日本」(百済本記)という国号表記の不統一に典型的であらわれているように,基本的に分注として引用された原文への潤色は少なかったと考えられる。その性格は,三書ともに基本的に王代と干支が記載された特殊史で,断絶した王系ごとに百済遺民の出自や奉仕の根源を語るもので,「百済記」は,「百済本記」が描く6世紀の聖明王代の理想を,過去の肖古王代に投影し,「北敵」たる高句麗を意識しつつ,日本に対して百済が主張する歴史的根拠を意識して撰述されたものであった。亡命百済王氏の祖王の時代を記述した「百済本記」がまず成立し,百済と倭国の通交および,「任那」支配の歴史的正統性を描く目的から「百済記」が,さらに「百済新撰」は,系譜的に問題のあった⑦毗有王~⑪武寧王の時代を語ることにより,傍系王族の後裔を称する多くの百済貴族たちの共通認識をまとめたものと位置付けられる。三書は順次編纂されたが,共通の目的により組織的に編纂されたのであり,表記上の相違も『日本書紀』との対応関係に立って,記載年代の外交関係を意識した用語により記載された。とりわけ「貴国」は,冊封関係でも,まったく対等な関係でもない「第三の傾斜的関係」として百済と倭国の関係を位置づける用語として用いられている。なお前稿では,「任那日本府」について,反百済的活動をしていた諸集団を一括した呼称であることを指摘し,『日本書紀』編者の意識とは異なる百済系史料の自己主張が含まれていることを論じたが,おそらく「百済本位の書き方」をした「百済本記」の原史料に由来する主張が「日本府」の認識に反映したものと考えられる。
著者
眞溪 歩 藤巻 則夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本基盤研究(B)「変調刺激による誘発脳波・脳磁界計測」は,誘発脳波・脳磁界計測において被験者に提示する刺激に広義の変調を施し,脳波・脳磁界データから脳内処理に関係する情報を抽出する計測方法の開発を目的とした.具体的には以下の項目について研究・開発を行った.1)M系列符号を用いて人間に直接与える刺激にAM, PM変調を施し,この符号を用いた復調を行った.2)言語処理課題の対照実験に対し,実験Aの脳波・脳磁界には実験Aに関連する変調作用が反映されていると考え,それが実験Bの脳波・脳磁界に含まれているかを調べるフィルタリングを行った.3)2)における脳内での変調作用は自発脳波(α波,β波など)の位相同期にも現れると考え,刺激前後のα波の位相と誘発反応の振幅の関係を調べた.4)変調を施さない方式での脳波・脳磁界計測も行い,上記変調方式と比較した.5)1)の方式の有用性検証するために,リアルタイム動作するBrain-Computer Interface(BCI)を試作した.6)上記の手法開発過程での副産物として,信号源推定法を開発した.上記の情報抽出手段は既存の脳イメージングの枠組みにははまりにくいが,システム論の立場では重要な意味を持つ.脳がその処理において入力信号に変調を加えるなら,入力信号の変化は脳が行った処理と考えられる.計測・制御を支えるシステム論においては,信号と処理は抽象化され同一視される.この同一視の重要性は,システムのanalysisにおいてもsynthesisにおいても実証されている.本研究の提案手法では,このような立場に立脚し,上記の5)を除く項目についてはanalysisとして,5)に対してはsynthesisとして有効の可能性を示した.
著者
Ken Okumura Hirofumi Tomita Michikazu Nakai Eitaro Kodani Masaharu Akao Shinya Suzuki Kenshi Hayashi Mitsuaki Sawano Masahiko Goya Takeshi Yamashita Keiichi Fukuda Hisashi Ogawa Toyonobu Tsuda Mitsuaki Isobe Kazunori Toyoda Yoshihiro Miyamoto Hiroaki Miyata Tomonori Okamura Yusuke Sasahara for the J-RISK AF Research Group
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-20-1075, (Released:2021-03-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1 15

Background:Recently, identification of independent risk factors for ischemic stroke in Japanese non-valvular atrial fibrillation (NVAF) patients was made by analyzing the 5 major Japanese registries: J-RHYTHM Registry, Fushimi AF Registry, Shinken Database, Keio interhospital Cardiovascular Studies, and the Hokuriku-Plus AF Registry.Methods and Results:The predictive value of the risk scheme in Japanese NVAF patients was assessed. Of 16,918 patients, 12,289 NVAF patients were analyzed (mean follow up, 649±181 days). Hazard ratios (HRs) of each significant, independent risk factor were determined by using adjusted Cox-hazard proportional analysis. Scoring system for ischemic stroke was created by transforming HR logarithmically and was estimated by c-statistic. During the 21,820 person-years follow up, 241 ischemic stroke events occurred. Significant risk factors were: being elderly (aged 75–84 years [E], HR=1.74), extreme elderly (≥85 years [EE], HR=2.41), having hypertension (H, HR=1.60), previous stroke (S, HR=2.75), type of AF (persistent/permanent) (T, HR=1.59), and low body mass index <18.5 kg/m2(L, HR=1.55) after adjusting for oral anticoagulant treatment. The score was assigned as follows: 1 point to H, E, L, and T, and 2 points to EE and S (HELT-E2S2score). The C-statistic, using this score, was 0.681 (95% confidence interval [CI]=0.647–0.714), which was significantly higher than those using CHADS2(0.647; 95% CI=0.614–0.681, P=0.027 for comparison) and CHA2DS2-VASc scores (0.641; 95% CI=0.608–0.673, P=0.008).Conclusions:The HELT-E2S2score may be useful for identifying Japanese NVAF patients at risk of ischemic stroke.
著者
伊藤 君男
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.52-62, 2003 (Released:2004-02-17)
参考文献数
26

本研究の目的は,被説得者の印象志向動機が内集団成員による説得的メッセージの処理に及ぼす効果を検討するものである。実験1は,被験者は大学生79名で,説得話題に関する議論が後になされることを実験参加者に予期させるか否かによって印象志向動機を操作した。それに加えて,説得者(内集団・外集団)と論拠の質(強・弱)を操作して実験を行った。その結果,議論なし条件では内集団の説得者の説得効果のみが認められた。一方,議論あり条件では,内集団の説得者による説得効果と論拠の質による説得効果が共に認められた。実験2では,議論の予期の操作によって高められる動機(印象志向動機か正確性志向動機)が,個人によって異なるという実験1の示唆に基づき,セルフ・モニタリングの相違によって印象志向に動機づけられる被験者と正確性志向に動機づけられる被験者に分類した。被験者は大学生216名で,実験の手続きは実験1の議論あり条件と同様である。高セルフ・モニタリング群(印象志向動機)は内集団の説得者の説得効果のみが高かった。一方,低セルフ・モニタリング群(正確性志向動機)では論拠の質の主効果のみが認められた。こうした結果に基づき内集団の説得者の特殊性が議論された。
著者
石坂 誠
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会福祉学研究科篇 (ISSN:18834019)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1-18, 2016-03-01

「日本の社会をより良い社会に変革するには、ソーシャルワークが社会運動の一環として、改めてマクロ的な視野を取り戻さない限りは不可能ではないのか?」上記の言葉は、訓覇法子が述べたものである。本研究では、構造的に拡大・深化する貧困に対して、社会福祉、ソーシャルワークがどう対峙するのか、そしてそのあり方について明らかにしていきたいと考えた。研究方法としては、先行研究や統計資料等からの貧困の現況の把握と2013年に筆者が行った反貧困運動団体や脱貧困に取り組むソーシャルワーカーへのインタビュー調査結果から得たストーリーラインの分析、そして貧困者支援のソーシャルワークに関する先行研究の検討等から行なった。そして、訓覇の言う「社会正義や人間性の回復という価値基盤・原点」にたったソーシャルワーク実践のためには、ソーシャル・アクションや社会運動との協働が重要であるという結論に至った。貧困社会正義マクロ的な視野ソーシャル・アクション社会運動
著者
湯川 進太郎 泊 真児
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.15-28, 1999

<p>本研究は,性犯罪を促進する要因として,そうした行為を合理化する誤った信念・態度(性犯罪神話)に注目し,性犯罪神話を形成する要因として,性的メディア(ポルノグラフィ)との接触,友人・先輩との性的な情報交換,パーソナリティなどが一体どのように結びついているのかを,一般の大学生を対象に検討した.その際,性犯罪神話が実際の性犯罪行為の可能性(許容性)へどのようにつながるのかについても併せて検討した.そこで本研究ではまず,因果モデルとして, 個人内要因(性経験・交際相手・一般的性欲・パーソナリティ),性的メディア接触,友人・先輩との性的情報交換,性犯罪神話,性犯罪行為可能性という因果の流れを想定した.そして,男子大学生165名を対象に質問紙調査によって上記の変数群を測定し,重回帰分析を用いたパス解析を行った.その結果,性経験があることや一般的性欲が高いことが性的メディア(ポルノグラフィ)との接触を促し,それが身近で類似した他者である友人・先輩との性的な情報交換を介して,性犯罪を合理化する誤った信念・態度である性犯罪神話(暴力的性の女性側の容認,女性の性的欲求に関する誤認)の形成へとつながり,その結果として女性に対する犯罪的な性暴力の可能性(許容性)へと結びつくことが示された.</p>