著者
中山 守雄 原武 衛 荒野 泰 石原 石原 西田 教行
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

我々は、これまでに、^<125> I,^<11> C,^<18> Fで標識したフラボノイド誘導体が、βアミロイド(Aβ)凝集体に対して高い親和性ならびに、脳への良好な移行性と脳からの迅速なクリアランスを示すことを報告した。本研究では、主に、核医学診断分野で最も繁用性に優れた^<99m> Tcを用いて標識したフラボノイド誘導体を合成し、評価した。安定で脂溶性の高い^<99m> Tc標識体を得るための配位部位として、ジアミンジチオール型のMAMAとBATを導入した。そのうち幾つかの標識体は、Aβ(1-42)凝集体に対し高い結合親和性を示し、さらに、動物実験においては、^<99m> Tc-BAT-chalconeが、アミロイドの画像化に適した迅速な脳への取り込みと消失性を示すことが明らかとなった
著者
西 信康
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究課題は、古代儒家思想における人性論の歴史的展開と、儒家道家の思想交渉の歴史的展開に関する研究を進めた。具体的には、(1)『孟子』所載の仁内義外説を再検討し、「義」に対する告子の倫理思想を明らかにした。(2)郭店楚簡『性自命出』に見える「性」「命」「勢」「物」といった概念の意味内容と比喩表現を再検討し、その思想的特徴を明らかにした。(3)上博楚簡『民之父母』に見える「五至」について、『老子』『荘子』『淮南子』の記載を手がかりにその意味内容を検討し、儒家と道家の思想的交渉の様子を明らかにした。
著者
山岸 敬幸 内田 敬子 山岸 千尋 土橋 隆俊 古道 一樹 牧野 伸司 湯浅 慎介
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

心臓流出路の発生には、おもに二次心臓領域と心臓神経堤由来の2種類の心臓前駆細胞の働きが必須であるが、これらの細胞の相互作用によって正常な流出路が形成される機序はいまだ明確でない。私たちは、二次心臓領域に発現し、心臓神経堤細胞の遊走に関与する神経血管誘導因子・Sema3Cの発現制御機構を明らかにすることにより、流出路発生における両細胞間相互作用に関与する分子機構を解明した。Sema3CのenhancerにlacZ遺伝子を連結・導入したtransgenicマウスの解析とChIP およびluciferase assayを組み合わせ、Sema3Cの上流直接活性化因子としてFoxc1/c2を、上流抑制因子としてTbx1を特定した。遺伝子改変マウスの解析によって、Tbx1の発現低下によりSema3Cが神経堤細胞に異所性に発現し、その遊走を障害することが示唆された。さらに両細胞間相互作用を担う候補タンパクの検討により、Tbx1のSema3C抑制機構は、心臓神経堤細胞において分泌因子Fgf8を介することが推定された。
著者
安武 潔 垣内 弘章 大参 宏昌
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

薄型Si太陽電池の実現には、光閉じ込め技術に加えて、キャリアの表面再結合を抑制するパッシベーション技術が鍵となる。p型Si表面のパッシベーションには、負の固定電荷をもつ絶縁膜が有効であり、Al_2O_3薄膜がその可能性を有している。本研究では、p型si表面のパッシベーションに有効なAl_2O_3/極薄SiO_2/Si構造の形成条件を明らかにすることにより、高効率Si太陽電池製造に必要なAl_2O_3薄膜の低温・高速形成プロセスを開発する。(1)大気圧プラズマによるSiおよびAlの酸化特性を調べた結果、400℃でのSi酸化速度は、1000℃ドライ熱酸化と同等であること、Al酸化速度はSiの1/2程度であり、熱酸化に比べ高速であることが分かった。(2)大気圧プラズマ酸化によるSiO_2膜は、高温熱酸化膜と同等の品質であり、SiO_2/Si界面準位密度はD_<it>=2×10^<10>cm^<-2>eV^<-1>であった。一方、正の固定電荷密度が高い(Q_f=5.3×10^<12>cm^<-2>)ため、n型Si表面のパッシベーションに有効であり、非常に低い表面再結合速度(S_<eff>80cm/s)を実現した。(3)Al/Si構造を大気圧プラズマ酸化することにより作製したAlO_x/Si構造は、負のQ_fを有するが、界面特性が十分でなかったため、Al_2O_3/SiO_2/Si構造を形成した。SiO_2が厚い場合、正のQ_fを示すが、SiO_2膜厚の減少とともに負のQ_fが増加することが分かった。(4)Al_2O_3/薄いSiO_2/Si構造により、D_<it>=9×10^<10>cm^<-2>eV^<-1>,負のQ_f=5.4×10^<12>cm^<-2>,S_<eff>=260cm/sが得られた。S_<eff>は、HF処理による915cm/sに比べてかなり低く、本方法で形成したAl_2O_3/SiO_2/Si構造が、p型Si表面パッシベーションに有効であることが示された。
著者
玄 学南 山岸 潤也
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は東南アジアにおけるダニ媒介性動物原虫感染症の流行実態の解明と予防対策の確立を目指して実施する。本年度に実施した研究内容と得られた研究成果は以下の通りである。1. 昨年度に引き続きタイ国北部地域における牛のマダニ媒介性原虫感染症の流行実態を調べた。計200頭の牛の血液サンプルを採集し、全DNAを抽出した。ウシバベシア原虫特異PCR法を用いて、血液サンプル中の原虫DNAの検出を行ったところ、Babesia bovisとBabesia bigeminaの陽性率がそれぞれ12%(24/200)と21%(42/200)であった。この結果より、ウシバベシア症はタイ国北部地域広く流行しており、本症の制圧対策は当地域の牛の生産性向上に重要であることが示唆された。2. フィリピンマニラ周辺地域における牛のマダニ媒介性原虫感染症の流行実態を調べた。計250頭の牛より血液サンプルを採集し、全DNAを抽出した。ウシバベシア原虫特異PCR法とウシタイレリア原虫特異PCR法を用いて予備実験を行ったところ、2種類のウシバベシア原虫(Babesia bovisとBabesia bigemina)と1種類のウシタイレリア原虫(Theileria orientalis)DNAが高率に検出された。これらの結果により、フィリピンマニラ周辺地域の牛にはマダニ媒介性バベシア原虫とタイレリア原虫感染症が高率に流行していることが示唆された。
著者
山岸 忠明 生越 友樹 高田 晃彦
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

両親媒性環状化合物を合成し、凝集状態に及ぼす分子構造の影響と環状化合物を用いた分子カプセルの形成および分子カプセルの3次元配列制御について検討した。両親媒性カリックスアレーンの場合、アルキル鎖長によって凝集状態が変化することおよび分子カプセルの形成には最適のアルキル鎖長があることを解明した。さらに、液晶性シクロデキストリン (LCCD)を合成し、液晶性を利用して分子カプセルを規則的に配列させる方法を検討した。βLCCDがスメクチック液晶構造をとり、環状骨格を層状に規則的に配列させることが可能となった。これは、分子カプセルの規則的な3次元配列を可能とする分子集積技術へと応用される。
著者
中野 貴由 豊澤 悟 坂井 孝司 萩原 幸司 石本 卓也
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

骨は部位に応じた骨配向性を持つことで、初めて正常な力学機能を発揮する。しかし、現状では、最先端の骨再生手法を駆使しても、正常な骨配向性の回復は困難であることを見出した。したがって、次の研究段階では、骨組織の「質的な解析」にとどまらず、疾患・再生骨での「骨配向性を取り戻すための手法の確立」が急務である。本研究では、骨が本質的には異方性微細構造を持ち、その起源が骨系細胞の働きであることに着目し、材料工学ならではの手法を中心に、骨配向化を人為的に誘導可能とする新規概念・新規技術の確立を目指す。具体的には、材料/細胞間での相互作用を利用し、配向化のための最適環境(足場材料の形状・材質・結晶方位制御、核形成・成長、外場制御)を与えるための手法を提案することを目的とした。本研究は2009年4月1日に内定され、通知されたのち研究準備を開始し、単結晶を用いた結晶学的特徴を活かした骨系細胞増殖・分化誘導研究課題の達成のための機器の準備等をスタートした。しかしながら2009年5月11日付で科学研究費補助金・若手研究(S)の内定があり、重複制限により補助事業を廃止することとなった。その際、研究分担者が研究代表者になることで本研究を継続することは困難であるものと判断した。
著者
池田 光子
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、近世期に隆盛をほこった懐徳堂を対象とし、その思想的特徴について、《資料調査》《思想研究》の二方面から検討を行ったものである。主な成果として、《資料研究》では、懐徳堂を代表する儒者の一人である中井履軒の『中庸逢原』を、翻刻・データベース化し、《思想研究》では、養生思想に関する履軒の著作を検討し、儒学・医学に通底した実学主義の学問姿勢を明らかにした
著者
那須 敬
出版者
国際基督教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

17世紀半ばのイングランドにおける、宗教的寛容および不寛容をめぐる政治的・神学的・思想的な交渉過程を考察した。不寛容な前近代から寛容な近代へと直線的に発展する歴史像を提示し続けてきた「ピューリタン革命」理解をこえて、近世社会における宗教対立を理解する新しい枠組みを模索した。議会と教会、イングランドとスコットランド、書簡・請願と説教・印刷メディアなど、複雑な交渉過程の中で、「寛容」「非寛容」の概念がそれぞれを規定しながら動的に構築・再構築されるプロセスが明らかになった。
著者
薮下 彰啓
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

レーザーイオン化個別粒子質量分析計を用いて、春季に長崎県福江島において大気エアロゾルの観測を行った。本装置はリアルタイムに単一粒子毎の化学組成を分析する事ができる。黄砂期においては、鉛を含む粒子と多環芳香族炭化水素を含む粒子の数が増加した。黄砂期の鉛を含む粒子の多くにははんだや石炭燃焼由来の金属成分が含まれており、非黄砂期の粒子には海塩由来の成分が含まれていた。本装置により、粒子状汚染物質や黄砂粒子の発生源や輸送・変質過程についての知見を得る事ができた。
著者
上川内 あづさ
出版者
東京薬科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本年度は、ショウジョウバエが音・重力・風の情報を検知するための感覚神経と脳中枢を解析し、ショウジョウバエの「耳」にあたる触角の付け根にある数種類の感覚神経(ジョンストン器官神経)が、触角の小さな振動に強く反応する細胞と、一定の方向への持続的な変位(角度の変化)に強く反応する細胞とに分類できることを発見した。細胞特異的に神経毒素を発現させてそれぞれの細胞群の神経伝達を特異的に遮断した個体群の行動を解析したところ、前者を遮断すると音に対する応答行動が、後者を遮断すると重力に対する応答行動が、それぞれ特異的に失われた。さらに、音を検知する神経と重力を検知する神経は脳内の別々の中枢に分かれて投射しており、これらの中枢の神経回路は、人間の脳の聴覚や重力感覚の中枢の回路とそれぞれよく似た構造になっていることを発見した。また、ショウジョウバエは強い風が来ると身構えて飛ばされないようにする習性がある。強い風は重力と同じように、触角の傾きを変化させる。このような風検知も、重力と同じ脳中枢で処理されていることを見出した。ショウジョウバエと人間は進化の過程で6億年以上前に分かれた、別々の枝のそれぞれ先端に位置している。このように進化的に遠く離れたショウジョウバエと人間において音や重力の情報処理回路が似ていることは、特定の種類の情報を処理するために最適な方法を求めてそれぞれが独自に進化した結果、同じような構造に行き着いた収斂進化の可能性を示している。
著者
泉 岳樹
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本年度は、都市型集中豪雨に都市ヒートアイランド(以下、UHIと称す)が与える影響を分析するために都市気候モデルを用いたアンサンブルシミュレーションを行った。具体的には、複数の対象事例と複数の客観解析値を初期値に用いたシミュレーションを行い、その平均(アンサンブル平均)を用いた解析を行った。使用した客観解析値は、JRA-25、RANAL、NCEP-FNL、NCEP/DOE-R2、GANALの5つである。アンサンブル平均を用いることにより、カオス性の高い都市の対流性降雨の再現精度は、単一のシミュレーションのみを用いた場合に比べ大幅に向上することが確認された。その結果、UHIは、関東での都市型集中豪雨の際によく見られるE-S型風系(鹿島灘からの東よりの風と相模湾からの南よりの風が東京付近で収束する風系)の形成自体には、大きな影響を持っていないことが明らかとなった。一方で、UHIは、都市の風下側や都市内部での風の収束を強化し、降水量を増加させる効果があることが明らかとなった。このことは、都市の高温化は、それ自体だけで都市型集中豪雨を引き起こすだけの力はないが、他の発生要因が揃っていた際の豪雨の発生確率を高くしたり、降雨量の増大をもたらす効果があることを示唆している。計画当初は、緑化や人工排熱の削減など様々な対策シナリオを設定し、都市型集中豪雨を減らすだめに効果的な方法を分析することを最終的な目標としていた。しかし、アンサンブルシミュレーションを行うのには、多大な計算機負荷がかかることやデータ解析の作業量も増大するため、効果的な対策シナリオの分析までは行うことができなかった。
著者
石川 裕彦 竹見 哲也 中北 英一 丸山 敬 安田 誠宏
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

IPCC5に向けた温暖化研究では、従来からの気象学的気候学的知見に加え、極端現象など災害に直結する影響評価が求められている。本研究ではIPCC4で実施された温暖化予測計算のデータアーカイブに基づいて、疑似温暖化実験による力学ダウンスケーリングを行い、台風などの極丹下現象による災害評価を行った。台風に関しては「可能最悪ケース」の概念を導入し、ある事例に関して経路が少しずつ異なる事例を多数計算し、その中から最大被害をもたらす事例を抽出する手法を開発した。これらの事例について、河川流出計算、高潮計算、強風被害の見積もり等を実施して、被害発生情報を作成した。
著者
山口 直文
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

粒度・波浪条件・リップルの大きさで決まる堆積物粒子の沈降ポテンシャルが,リップルの移動とそれに伴うベッドロード輸送に与える影響を調べた.これまでの現世海浜での観測結果から,リップル移動速度から求められる堆積物輸送量が,既存の掃流砂輸送モデルから推算される輸送量よりも大きい場合と小さい場合があることが明らかになっている.しかし,その原因は明らかになっていない.本研究の造波水槽実験の結果から,これらのリップル移動速度とモデルとの違いが,リップル近傍での堆積物粒子の沈降ポテンシャルにより整理することができることが明らかになった:粗粒砂海浜のような堆積物粒子が沈降しやすい条件の場合,岸側への部分的な沈降がリップル近傍で起こることで,モデルの推算より岸向きへの堆積物輸送量が大きくなる.―方で,細粒砂海浜のような堆積物粒子が沈降しにくい条件の揚合,"phase lag"と呼ばれる流れと堆積物移動のずれの影響によって,モデルの推算より堆積物輸送量が小さくなる.これらの結果は,粒径や周期が主に支配する堆積物沈降ポテンシャルが,振動流下での堆積物輸送において無視できないことを示しており,その影響の仕方を定量的に評価できるパラメータを提案することができた.造波水槽実験に加え,現世海浜の堆積構造の特徴と,海底に形成されたウェーブリップルの特性を調べるために,新潟県上越市の大潟海岸において調査を行った.この調査では,水深約5mから20mの計12地点で,リップルのサイズの計測と,リップルの頂部・谷部における堆積物サンプルの採取を行った.各リップル表面の堆積物粒度は,頂部と谷部で異なる傾向を示した.頂部に比べて谷部は淘汰が悪く,堆積物の平均粒径が05φより粗い場合には,頂部より谷部が粗い傾向を示すが,0.5ψより細かい場合は逆に頂部のほうが粗いという特徴がみられた.
著者
間瀬 肇 森 信人 竹見 哲也 安田 誠宏 河合 弘泰 黒岩 正光
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,温暖化シナリオにもとづく気候変動予測結果をもとに,将来の台風災害,高波の予測災害,高潮災害について定量的な予測方法を確立することを試みた.日本周辺の高波・高潮予測に際しては,適切な台風イベントの抽出とその評価,そして高波・高潮の数値予測が重要となる.このため, 地球温暖化予測結果の下,将来の台風の予測を行った.ついで力学的・統計手法に基づく高波・高潮数値予測モデルを用い,温暖化に伴う高波・高潮災害の予測と評価を行い,将来気候における日本周辺の高波・高潮の顕著な増加を明らかにした
著者
小崎 隆 縄田 栄治 舟川 晋也 矢内 純太 角野 貴信
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、湿潤地において定常的な有機物動態を攪乱・変容させるストレス要因を、土壌有機物動態モデルへ定量的に組み込む可能性を検討した。その結果、多糖基質分解プロセスにおいては可溶化/無機化二段階プロセスモデルの、また単糖無機化プロセスにおいては段階的基質利用コンセプトの適用が有用であり、反応論としてミカエリス-メンテン式の利用によって定量的に評価することが可能であった。いずれにおいても土壌酸性がストレス要因として重要なものであることが検証された。
著者
宮村 倫司
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

大規模な接触問題解析を実現するために,領域分割法に基づく並列解析手法を開発することが本研究の目的である.最初に,摩擦のない接触問題の解法として, Semismooth Newton法の改良手法,内点法とSemismooth Newton法の組み合わせ手法を提案した.次に,内点法やSemismooth Newton法の反復の中に現れる等式制約条件付線形問題を多点拘束条件を考慮したBDD法で解くためのアルゴリズムの開発について検討した. GPGPU実装による高速化についてもプロトタイプコードを開発した.当初の研究計画には,摩擦のある大規模接触問題の解法の開発が含まれていたが,基礎的な検討にとどまり,研究期間内に実用的な手法を開発することはできなかった.
著者
松井 徹哉 武藤 厚 大塚 貴弘 永谷 隆志
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

浮屋根と液体の非線形性を考慮した大型液体貯槽の地震時スロッシング解析理論を体系化し、縮小模型による振動台実験を実施してその妥当性を検証した。さらにその成果に基づいて、2003年十勝沖地震で発生したシングルデッキ型石油貯槽浮屋根の損傷・沈没の原因究明を試み、浮屋根や液体の非線形性に起因する非線形振動モードの存在がポンツーンに過大な応力を発生させ、浮屋根を座屈・沈没に至らせる可能性のあることを指摘した。
著者
辻 宏一郎
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

大気大循環モデル(AGCM)で解像できる重力波の運動量フラックスが、熱帯域下部成層圏において東西方向に非対称な分布をしている原因について調べた。東半球の正の運動量フラックスは、夏季インドモンスーンによる強い平均の東風シアーとの相互作用によって東向き伝播の重力波が生成されることで出来ていた。西半球での負の運動量フラックスは、平均風と波の相互作用よりむしろ、太平洋や大西洋における大規模な(1000km-)cloud clusterの伝播方向に大きな東西非対称性があることが原因と考えられた。西進する雲クラスターが東進するものに比べ卓越しており、この西進する雲と、西向き伝播の重力波の間に強い関係性があると考えられる。以上の結果については、2004年度春季気象学会で発表を行った。さらに、論文として現在投稿中である。また、より長い周期を持つ波動についても同様の解析を行った。1980年から1999年まで20年分のECMWFデータを用いた統計的解析を行った。大気の変動成分を3日以下、3日から10日、10日以上の3成分に分け、各成分毎に運動量フラックスの地理的分布及び季節変化を調べた。どの成分においても、東半球において正の運動量フラックスが卓越していた。3日以下成分では、上部対流圏における、モンスーンによる東風が強い地域で正の運動量フラックスが卓越していて、AGCMにおける重力波分布と矛盾しなかった。3日から10日周期成分では、正の運動量フラックス分布はWheeler and Kiladis(1998)に見られるケルビン波の活動度分布と似ており、西半球まで正の値が広がっていた。10日以上周期成分では、赤道域を中心とする正の運動量フラックスが南北方向にも広がっており、季節内振動の影響が示唆された。
著者
一ノ瀬 俊明 花木 啓祐 泉 岳樹 陳 宏
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

華中科技大学と共同で、中国・湖北省・武漢市の長江両岸地区(武昌と漢口)において再開発が想定される地域を対象に、夏季と冬季の集中気象観測、ならびに街区スケールの気流等に関する数値計算を行った。観測からは、河道上の風速が強まるのと連動し、直交する街路上の風速が強まり、同期して気温の変動が生じていることが示された。また、気象観測や数値計算の結果にもとづき、ヒートアイランド緩和策を盛り込んだ市街地の整備プランを提案した。