著者
徳村 麻弥 峰谷 沙也佳 金井 眞理子
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.13-20, 2021-12-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
14

スマートフォン(スマホ)の長時間の利用が産後の心身の健康に影響を与えることが懸念されるが,これについての研究はない.【目的】出産のための入院時にスマホについての適切な指導やアドバイスを行うために,褥婦におけるスマホ利用と心身の状態の関連を明らかにすること.【対象と方法】当院に出産のために入院した81名を対象に無記名自記式アンケート調査を行った.【結果】スマホ平均利用時間は入院中が179.8分,出産1ヵ月後が142.0分.平均睡眠時間は入院中が179.8分,出産1ヵ月後が300.0分.エジンバラ産後うつ質問票(EPDS)は入院中,出産後1ヵ月それぞれ7例が産後うつリスク群となる9点以上であった.スマホ依存症リスク群であるスマホ利用時間が4時間を超える症例では入院時の身体不調症状多数群と有意な関係が認められた(p=0.0133).スマホ・睡眠比が高い群は産後うつリスク群と入院時(p=0.0357),出産後1ヵ月(p=0.0248)と有意な関連が認められ,EPDSスコア9点以上はスマホ・睡眠時間の比の0.4(入院時)および0.5(出産1ヵ月後)に対応した.【結語】スマホの利用は睡眠とのバランスが重要であり,睡眠時間に比してスマホを長時間使用することが産後うつハイリスクスと関連しており,スマホ・睡眠時間の比は産後のメンタルヘルケアに関する指導やアドバイスに有用な指標である可能性がある.
著者
徳留 嘉寛
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.135-139, 2020 (Released:2020-03-04)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

薬学や健康科学領域で,化合物の経皮吸収は大変重要な技術領域である。一般に,皮膚は外部からのバリアとしてはたらくことが知られている。一般的に経皮吸収に有利な化合物は,低分子(分子量500以下),脂溶性が高い(オクタノール水分配係数が1から2)であることとされる。したがって水溶性高分子化合物の皮膚浸透性は極めて悪い。本稿では,一般的に経皮吸収に不向きとされる水溶性高分子としてヒアルロン酸をモデルとして最近の著者らの研究成果を紹介する。具体的には,ポリイオンコンプレックス法でヒアルロン酸ナノ粒子を作成し,それを皮膚に適用することでHA を受動拡散で皮膚中に送り込むことができた。これらの技術が将来,健康科学に貢献できることを望む。
著者
石橋 政紀 中村 光 東原 貴志 樋口 雅樹 梅村 研二
出版者
一般社団法人 日本産業技術教育学会
雑誌
日本産業技術教育学会誌 (ISSN:24346101)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.197-203, 2016-12-28 (Released:2019-12-30)
参考文献数
11

本研究では,クエン酸とスクロースの混合物を接着剤として使用したパーティクルボードを製造し性質を評価するとともに,クランプとオーブンを用いた木質成形体の簡便な製造方法を開発した。その結果,曲げ強さは11.4~16.1MPaを示し,ポリエチレンを接着剤として使用したパーティクルボードと比較して大きいことや,4時間煮沸した後の厚さ方向の寸法変化が小さいことを明らかにした。中学生を対象としたパーティクルボード製造の授業実践を行った結果,木質材料の製造法を学習することは木材と木質材料の性質を理解する上で有効であると考えられた。また,新たに開発した木質成形体の製造方法では成形作業が簡易化されており,教材として有望であると考えられた。
著者
相田 純久
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.204-216, 2008 (Released:2008-04-16)
参考文献数
55

硬膜外鎮痛法は周術期や慢性・急性疼痛の管理に有意義である. 使用される薬剤はモルヒネが主流であるが, さまざまな薬剤が試用され, その評価もさまざまである. 硬膜外投与された薬剤は拡散して脊髄に作用するため, 血液脳関門は関与しない. 脊髄には多数のμおよびκ受容体が発現しているが, モルヒネなどのμ作動薬に比較してκ作動薬は副作用が少なく, 安全性が高い. それ故, 硬膜外κ作動薬は有意義な鎮痛法であり, 全身の鎮痛 (頭部・顔面に対しては頸部硬膜外鎮痛で可能) に応用できる. 一方, NMDA拮抗薬は, 痛覚過敏や中枢性感作などの疼痛の促通・増幅を抑制し (鎮痛とは異なる) , オピオイドとの相乗作用や耐性・依存性抑制作用がある (オピオイドの補助薬としての適応) . しかし, 一次求心性インパルスをブロックしないためNMDA拮抗薬に脊髄性鎮痛作用は期待できない. 全身投与によるNMDA拮抗薬は上位中枢神経系の統合機序に影響すると考えられ, 中枢痛・視床痛などには効果が期待できる. しかし, 硬膜外NMDA拮抗薬の効果は脊髄に限られるので, 全身投与に優る効果は期待できない. ケタミンについて考えると, この薬剤は作用特異性が低く, 多彩な効果が期待できる. これにより, 大量投与で全身麻酔作用が, 少量投与で鎮痛作用が現われると考えられる.
著者
渡辺 洋子 井手 誠 坂根 靖子 岩橋 叔恵 岩橋 徳英 中嶋 久美子 髙栁 宏樹 園田 紀之 小川 佳宏
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.528-533, 2020-08-30 (Released:2020-08-30)
参考文献数
10

思春期は精神心理的問題を抱えやすく,慢性疾患である1型糖尿病を発症し受け入れることは容易ではない.今回我々は,心理社会的課題を抱えた1型糖尿病の女児がインスリンポンプ導入を通じ,自身の課題に向き合い解決へと進むことができた1例を経験したので報告する.患児は13歳時に1型糖尿病を発症.いじめが原因で小学校時から不登校であり,親からのマネジメントを十分に受けていないなど心理社会的問題を抱えていた.幼い兄弟が多く,針による怪我を心配してインスリンポンプを自ら希望した.ポンプ導入の際に,エンパワーメントアプローチや認知行動療法などの心理社会的・行動医学的介入を行った.その結果,患児は糖尿病治療中に遭遇した様々な困難を解決する過程で自己効力感を高め,自立性を得ることができた.治療を通じて自身の心理社会的問題にも取り組み,他者との良好な関係を築けるようになり,学校生活復帰を果たすことができた.
著者
上野 彩夏 千貫 祐子 森田 栄伸
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.407-409, 2022-10-01 (Released:2022-11-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

【背景】α-Gal syndrome は,マダニ咬傷によってマダニ唾液腺中の galactose-α-1,3-galactose(α-Gal)に感作された患者が,獣肉の α-Gal に対してアレルギーを発症する疾患である。α-Gal syndrome 患者は哺乳類肉の他,抗悪性腫瘍薬のセツキシマブやカレイ魚卵にもアレルギーを生じる。対処法として,感作原因であるマダニ咬傷回避の指導が重要である。【目的】マダニ咬傷回避の指導による α-Gal syndrome 患者の予後を解析する。【方法】α-Gal syndrome 患者 13 例(初診時年齢 38~81 歳,平均 66.8 歳,男性 8 例,女性 5 例)について,診断と同時にマダニ咬傷回避の指導を行い,その後定期的に牛肉特異的 IgE 値を測定し,臨床的予後を検討した。【結果】13 例中 9 例が,定期的な経過観察中に牛肉特異的 IgE 値が陰性化した(マダニ咬傷回避の指導開始から牛肉特異的 IgE 陰性化までの期間 11~78 カ月,平均 41.1 カ月)。このうち 5 例が獣肉全般の摂取が可能となり,2 例が豚肉のみ摂取可能となり,2 例が恐怖心から獣肉摂取を回避している。【結論】α-Gal syndrome はマダニ咬傷回避の指導によって多くが治り得る。ほとんどの患者がマダニ咬傷には気付いていないため,日常生活上の徹底的な回避の指導が重要と考える。
著者
横山 薫 藍澤 亨
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.76-79, 2022-12-01 (Released:2023-06-19)
参考文献数
13

近年,群馬県において早熟栽培の未成熟トウモロコシでナミハダニの被害が問題となっている。そこで,防除対策構築の一助とするため薬剤感受性検定を行ったところ,レピメクチン乳剤,フルキサメタミド乳剤およびアシノナピル水和剤は雌成虫ならびに卵に対する効果が高かった。この結果は,県内のナスに寄生するナミハダニで確認されている感受性と同じ傾向であった。また,トウモロコシにおけるナミハダニの寄生は国内では報告が極めて少ないことから,トウモロコシの寄主としての適性を探るため,被害報告の多いイチゴを給餌した場合と,発育日数,産卵数および定着性を比較したところ,ナミハダニはトウモロコシ上での発育は可能であるものの,適性はイチゴより劣ることが明らかになった。
著者
赤間 美文 菅野 等
出版者
明星大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

研究実績の概要は下に示した3つの内容に分けられる。1)希土類元素を含む硝酸塩、リン酸塩ガラスを調製し熱分析し系列内での変化を調べたところ硝酸塩ガラスの場合、結晶化温度と液化温度の間には興味ある関係が存在することが明らかとなった。また、リン酸塩ガラスの場合には、ガラス転移温度(Tg)の値はLaからLuにかけて次第に高くなり水溶液系ガラスで見られるような変化が認められ、水溶液系と同様に系列内で配位数の変化が起こることが明らかになった。2)EuCl_3とGdCl_3の水溶液(R=25)にHCl,LiClおよびCsClを別々に加えた溶液のラマンスペクトルを測定し、内部水和数の変化の異常濃度依存性について検討した。その結果、溶液中の水の量が少なくなるにつれて水和希土イオンの内、8配位より9配位の方が数が多くなるという一見異常な現象が認められた。これは、外圏錯体の生成によって異常濃度依存性が生じるという考え方で説明できるものと思われる。3)Lu-PMBP錯体を合成しIRスオエクトルを測定した。120-630cm^<-1>の領域では、配位子と金属の結合によるピークが410および340cm^<-1>付近に認められた。そこでピーク位置の系列内での変化についてプロットしたところLaからLuにかけて次第に高波数側にシフトしているが、Tbのところで大きく変化することが分かった。この変化は、希土類元素のf軌道の電子配置に対応しているように思えるがこれに関しては検討中である。なお、テトラド効果などといわれている不規則な変化は認められなかった。今後は、希土類元素を含むゲルマニウム酸塩ガラスの系列内でのTg変化をみる。更に、異常濃度依存性が非水溶媒系においても観測されるかどうかについて検討する。
著者
Naoto Fujita Suguru Yokosawa Toru Shirai Yasuhiko Terada
出版者
Japanese Society for Magnetic Resonance in Medicine
雑誌
Magnetic Resonance in Medical Sciences (ISSN:13473182)
巻号頁・発行日
pp.mp.2023-0031, (Released:2023-07-28)
参考文献数
45

Purpose: Deep neural networks (DNNs) for MRI reconstruction often require large datasets for training. Still, in clinical settings, the domains of datasets are diverse, and how robust DNNs are to domain differences between training and testing datasets has been an open question. Here, we numerically and clinically evaluate the generalization of the reconstruction networks across various domains under clinically practical conditions and provide practical guidance on what points to consider when selecting models for clinical application.Methods: We compare the reconstruction performance between four network models: U-Net, the deep cascade of convolutional neural networks (DC-CNNs), Hybrid Cascade, and variational network (VarNet). We used the public multicoil dataset fastMRI for training and testing and performed a single-domain test, where the domains of the dataset used for training and testing were the same, and cross-domain tests, where the source and target domains were different. We conducted a single-domain test (Experiment 1) and cross-domain tests (Experiments 2–4), focusing on six factors (the number of images, sampling pattern, acceleration factor, noise level, contrast, and anatomical structure) both numerically and clinically.Results: U-Net had lower performance than the three model-based networks and was less robust to domain shifts between training and testing datasets. VarNet had the highest performance and robustness among the three model-based networks, followed by Hybrid Cascade and DC-CNN. Especially, VarNet showed high performance even with a limited number of training images (200 images/10 cases). U-Net was more robust to domain shifts concerning noise level than the other model-based networks. Hybrid Cascade showed slightly better performance and robustness than DC-CNN, except for robustness to noise-level domain shifts. The results of the clinical evaluations generally agreed with the results of the quantitative metrics.Conclusion: In this study, we numerically and clinically evaluated the robustness of the publicly available networks using the multicoil data. Therefore, this study provided practical guidance for clinical applications.
著者
富山 恵介 田中 周平 森岡 たまき 小浜 暁子 李 文驕
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.23-00028, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
10

近年,環境中のマイクロプラスチックファイバー(以下,MPFs)の存在が明らかになり,要因の一つに衣類の洗濯による排出が指摘されている.本研究では,洗濯による生地設計別のMPFsの排出特性を把握することを主目的とした.糸(長繊維・短繊維),編立(プレーン・メッシュ),加工(柔軟剤無し・柔軟剤有り)で設計を分けたポリエステル生地を8タイプ開発し,ドラム型洗濯機の標準コースで洗濯後,目開き10μmのプランクトンネットでMPFsを捕集した.目的変数をMPFs重量とした3元配置分散分析では,糸の寄与率74.5%,加工の寄与率18.7%となり排出量の主要因であることが示された.糸の長繊維は短繊維に対し中央値で42~45%小さく,加工の柔軟剤無しは柔軟剤有りに対し中央値で22~25%小さい結果となった.
著者
佐藤 恭一
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

回転と直動の運動の組み合わせは,工作機械における穴加工,穴の内径研磨など,多くの産業機械に見られる運動である.通常は,回転運動を回転型のモータに,直動運動をリニアモータに,それぞれ独立して負担させ,この二つのアクチュエータを結合することにより,回転・直動の二自由度運動を実現している.本研究では,この二自由度運動の一つのアクチュエータシステムによる実現と,駆動デバイスの小形化・高機能化をはかること目的に,リラクタンス力により回転力を発生するスイッチトリラクタンスモータ(以下SRMと記す)に着目した.従来の回転型SRMに,固定子磁極の回転軸方向の磁束密度分布を制御する機能を付加することにより,リラクタンス力によってトルクと同時に軸方向推力も制御することを可能とした.これにより,出力軸の回転と軸方向のストロークを両立するモータ機構を試作レベルで開発した.その諸元は次のとおりである.構造(突極:回転子4極,固定子6極),定格出力400W,定格回転数2000rpm,軸ストローク40mm,軸方向推力30N.このモータ機構を実用レベルとするために,「回転・直動する出力軸の回転角度と軸方向変位の同時検出法の開発と,回転・変位センサのSRM内への搭載」,「回転速度・トルクと軸速度・推力の制御法の確立」,「二自由度SRMの電磁気的および機械的最適設計」の課題に取り組み,各課題解決の指針を提案した.さらに,制御性能を維持しつつ,モータ駆動電気回路の電流センサの個数を低減する回路を提案し,実機試験によりその有用性を確認した.
著者
武居 高四郎
出版者
京都帝国大学
巻号頁・発行日
1938

博士論文
著者
根本 拓哉 吉田 翔悟 千明 大樹 古木 宏和 小島 尚人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00273, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
15

本研究では,ハイパースペクトルデータ(HSデータ)の画像特徴強調・判読支援を目的として,繰り返しコントラストストレッチを取り入れた画像特徴強調カラー合成動画作成アルゴリズム(CCMアルゴリズム)を提案した.このアルゴリズムは,以下の4つのステップから成る.1) HSデータに対する主成分分析を通して,第1~第3主成分画像を作成.2) 主成分画像別に繰り返しコントラストストレッチを実施し,複数のストレッチ画像(s-PCC画像)を作成.3) 相関色温度により,s-PCC画像のRGBプレーンへの割り当てを決定.4) s-PCCカラー画像を繰り返し連続表示したCCM動画を作成.CCM動画を用いれば,コントラストストレッチの全過程を可視化・自動化でき,各種画像特徴の動的強調・判読支援に寄与できることを示した.
著者
寺井 康文 渡邊 法美
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00178, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
21

多くの土木事業の基礎条件となる地質は,その不確実性のため重大なコスト損失をもたらすリスク因子である.事業に関わる担当者が地質リスクや事業を“我がこと”とする役割認識がリスクマネジメントにおいて重要とされるが,これまで役割認識の効果を明らかにした研究はない.本研究では,道路事業における地質調査~設計の過程で,事業者,地質技術者,設計者がどのような役割認識を有し,どのような妥当性でリスクの特定や評価が行われるかを整理した.その結果から事業コストの期待値を求めたところ,地質リスクを“我がこと”と認識する担当者と“他人ごと”と認識する担当者では10%以上の事業コストの差が生じるとともに,事業において地質リスクが存在しないケースは少数であることが示唆された.
著者
山口 智子 山口 昌一 後迫 江理奈 小林 充 高橋 浩
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.606-610, 2017-09-15 (Released:2017-10-20)
参考文献数
10

巨大腹部腫瘍摘出術の麻酔管理では,特に呼吸・循環管理に注意を要し,腫瘍が大きいほどその管理に難渋する.今回,われわれは腫瘍重量約70kgの超巨大卵巣腫瘍摘出術の麻酔管理を経験した.症例は37歳女性,左卵巣摘出術の既往があった.入院時,貧血,酸素飽和度(SpO2)の低下と軽度の拘束性換気障害以外に大きな合併症はなかったが,腹囲が大きすぎるためMRI等の術前検査を十分に行うことができなかった.導入時の低酸素血症と再膨張性肺水腫を念頭に呼吸管理を行い,心拍出量,1回拍出量変化,中心静脈圧を指標としながら循環管理を行った.気道確保器具の選択や,術後呼吸器合併症にも注意が必要であった.