著者
田中 俊男
出版者
至文堂
雑誌
国語と国文学 (ISSN:03873110)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.53-67, 2000-08
著者
野尻 裕子
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 = The journal of Kawamura Gakuen Woman's University (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.169-178, 2004-03-15

わが国には明治期に多くの西洋文化が移入された。近代欧米公園もその一つで,明治36年に開園した日比谷公園は従来の日本型公園を欧米型公園へ転換した画期的な公園といわれている。またそこに設置された児童用遊び場は,東京における初めての近代的児童公園とされている。本稿では,昭和初期に記された日比谷公園児童公園指導員末田ますの資料(『児童公園』昭和17年)から,当時の児童公園の存在の意味と指導員の役割を,健康観という視点から検討した。その結果,戦局下において「国民の体力強化」というスローガンが国中に鳴り響いていた昭和初期には,子どもの遊び場である児童公園もその対象となっていたと考えられる。また母子厚生運動を経験する場としても児童公園は存在していた。単に「子どもが遊ぶ場所」にとどまらず,子どもの遊びに母親が参加する中で,厚生指導を行うことが有効な手段と考えられており,その際の指導員の役割は大きかったと思われる。
著者
酒井 潔 Kiyoshi Sakai
出版者
学習院大学人文科学研究所
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.8, pp.7-20, 2010-03-28

"ライプニッツのcaritas 概念は、一方で伝統的なキリスト教の立場に、他方で十七世紀の啓蒙主義の時代思潮にそれぞれ連続する面を有する。「正義とは賢者の慈愛である」(Justitia est caritassapientis)、そして「慈愛とは普遍的善意(benevolentia universalis)である」というライプニッツの定義には、キリスト教的な「善き意志」のモチーフとともに、(プラトニズム起源のものだけではない)近代の合理主義的性格が見出される。ライプニッツは彼の政治学、ないし政治哲学の中心にこのcaritas 概念をすえている。それは彼の「社会」(societas)概念とも密接にリンクしつつ、今日の社会福祉論への射程を示唆する。ライプニッツの「慈愛」、「幸福」、「福祉」(Wohlfahrt)という一連の概念のもつ広がりは、アカデミー版第四系列第一巻に収載されている、マインツ期の覚書や計画書に記載された具体的な福祉政策(貧困対策、孤児・浮浪者救済、授産施設、福利厚生など)に見ることができる。しかしcaritas 概念の内包を改めて検討するならば、caritas 概念の普遍性と必然性は、その最も根底においては、ライプニッツの「個体的実体(モナド)」の形而上学に基礎づけられている、ということが明らかになるであろう。
著者
岡村 宏 大石 久己 土屋 賢康 長谷川 浩志
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
Dynamics & Design Conference 2016 (ISSN:24242993)
巻号頁・発行日
pp.339, 2016 (Released:2017-06-19)

We report the result of test that has given the acoustic excitation to the new guitar in the aging cell with using the Bach's cello suites. The sound quality effect of playing the guitar for five years is the same as one of the four weeks aging test with the high load. However, the too much aging gives the new guitar the adverse effects. In this time, we were able to have the good balance results with the light load aging. But there were few effects in the upper position sounds of the guitar. The sound range of the cello is not enough to the acoustic excitation of high frequency zone. So, we will try soon the aging test with playing the violin pieces.
著者
平松 早苗
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第54回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.F14, 2007 (Released:2007-06-09)

本研究は、パブリックアートが作家・鑑賞者にとって、どのような思考で、どのような位置を持ち、公共空間における私的・公的な存在意味を有するのか、その可能性を考える。今回の発表では、公共事業の側面からパブリックアートの存在の仕方を、茨城県笠間芸術の森公園・陶の杜を例に、他事例の調査と併せて、どのような作用を場所に与えているか考察する。
著者
京井 尋佑 藤野 正也 栗山 浩一
出版者
日本農業経済学会
雑誌
農業経済研究 (ISSN:03873234)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.245-250, 2019-09-25 (Released:2019-12-25)
参考文献数
17

Eco-labeling schemes have been practiced in Japan to support eco-friendly farmers. Many previous studies have examined consumer preference on rice with eco-labeling which certifies its cultivation method. Most of those investigations, however, cannot sufficiently consider the variation of consumer preference. The objectives of this study are (1) analyzing the consumer preference about information on cultivation method and farmer, considering preference heterogeneity and (2) discussing the character of each consumer preference group. To achieve our purposes, we had an online questionnaire including a choice experiment and conducted latent class model estimation. The main outcomes are as follows. First, consumer preference on cultivation method, rice brand, and information on the farmer are heterogeneous. Second, consumers are likely to prefer the information on the cultivation method to information on the farmer. These results suggest to current eco-labeling schemes the importance of targeting a particular consumer group and providing proper information to each consumer group. Our results also suggest that consumers who prefer the information on the farmer are potentially becoming purchasers of conservation-agricultural products.
著者
古田 尚輝
出版者
成城大学文芸学部
雑誌
成城文藝 = The Seijo Bungei : the Seijo University arts and literature quarterly (ISSN:02865718)
巻号頁・発行日
no.196, pp.266-213, 2006-09

本稿は、日本のテレビ放送で1950年代から60年代前半にかけて「映画」という表記とその内容がどう変化したかを調べ、その要因を考察するものである。要因は、新興の放送産業と映画産業との関係、放送局の自主製作能力の向上、それに番組編成の変化の3つにあると考えられる。日本の放送局は、テレビ放送開始当初、番組製作能力が未熟であったため、編成の多くを映画会社等が製作したフィルム作品に依存した。そして、ニュース映画、短編映画、漫画映画、劇映画の4種類を概括的に「映画」と表記して放送した。これらはすべて放送局以外の外部製作であった。53年春、NHKはまずフィルムニュースの自主製作を始め、同年11月には外部製作のニュース映画と区別して『映画ニュース』と題して放送し、54年6月にはそこから「映画」表記を除いて『ニュース』として独立させた。NHKはまた、54年度から短編映画の自主製作も始め、54年8月から定時番組『短編映画』を編成し、外部製作と区別して「NHK製作」と表示して放送した。そして、表現法や撮影技術が向上すると、57年11月には「映画」表記のない初めてのフィルム番組『日本の素顔』を始めた。外部製作の作品はその後も「短編映画」と題して放送されたが、本数が減少し、逆に独自の番組名を持ったフィルム番組が増加する。こうして、50年代末までにニュース映画と短編映画から「映画」表記が消える。ニュース映画と短編映画の2つの分野は、映画産業のなかでも周辺に位置し、膨大な経費と人員も必要とせず、放送局の参入が比較的容易であった。一方、漫画映画は、1970年代後半にアニメーションという言葉が定着し「映画」表記が消滅するが、アニメーション製作業は放送への依存度が高く、当初から放送産業の支援産業として組み込まれた。こうして大手映画会社の劇映画だけが最後まで「映画」として残った。大手映画会社は、テレビ放送を敵視する一方でテレビ放送事業に参画するという両面性を見せ、テレビ放送対策で混迷した。日活を除く5社は54年度から55年度にはテレビ放送に劇映画を提供したが、56年度以降は提供を拒否し、58年には日活も加わって「6社協定」を結び、6社の劇映画はすべてテレビ画面から姿を消した。放送局はその空白をテレビ放送用に製作されたアメリカ・テレビ映画の大量編成で埋めた。一方、大手映画会社は、59年に開局した民間放送局に出資し、同時にテレビ映画製作にも着手する。そして、64年2月には再び劇映画のテレビ放送提供に方針転換する。大手映画会社の劇映画が姿を消した58年から64年までの"空白の6年間"は、テレビ放送が事業収入を急速に伸ばし自主製作能力を高め、産業として自立する時期である。逆に映画産業は58年をピークに凋落の傾向が顕著となり、経営規模でも放送産業に凌駕されてゆく。本稿が対象とした50年代から60年代前半は、映画からテレビ放送への映像メディアの主役交代の時期であった。テレビ放送における「映画」表記の変遷にも、こうしたメディアの交代と産業構造の変化が反映していると考えられる。
著者
大黒 浩 斉藤 由幸
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.8, pp.1790-1795, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
10
被引用文献数
2

傍腫瘍性網膜症は腫瘍細胞に本来網膜にのみ存在する網膜特異抗原が異所性発現することにより腫瘍細胞と網膜との間に共通抗原が生じ,自己免疫機序により神経網膜が障害される疾患である.本症では網膜の進行性変性に伴い視感度の低下,視野狭窄などの症状を呈する.癌の原発病巣としては,肺癌,特に小細胞癌が最も多く,次いで消化器系および婦人科系の癌の頻度が高い.診断としては上記の臨床症状に加えて血清中に抗網膜抗体が証明されれば診断が確定的となる.現時点では確立された治療法はないが,分子病態が明らかになってきており,分子病態に基づく新しい治療法の開発が模索されつつある.
著者
黄 明侠
出版者
専門日本語教育学会
雑誌
専門日本語教育研究 (ISSN:13451995)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.25-32, 2011-12-16 (Released:2012-08-20)
参考文献数
11

本稿は、日本語母語話者と、中国語を母語とする日本語学習者の書いた意見文を対象に、序列の接続表現の種類とその組み合わせの傾向、およびその背景にある要因を明らかにしたものである。調査の結果、日本語母語話者と中国語を母語とする日本語学習者は全く異なる傾向が見られた。日本語母語話者が「一つ目」系列と「第一」系列という組み合わせを多く使用していたのに対し、中国語を母語とする日本語学習者は「一つ目」系列と「第一」系列をあまり使用せず、「まず」系列を使用していた。また、中国語を母語とする日本語学習者の作文の中に出てきた序列の接続表現の系列選択は、中国国内で使用されている日本語教科書の影響だけでなく、同じテーマで書かれた母語による作文との比較・検討の結果、母語である中国語の影響を受けていることが示唆された。
著者
西崎 友規子 苧阪 満里子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.220-228, 2004-08-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

The present study addressed the relationship between an individual difference in the reading span test (RST) and the performance in text comprehension with respect to storage and retrieval systems. In Experiment 1, an effect of the serial recall task on performance in text comprehension was compared between high and low RST score groups. In Experiment 2, an effect of the word fluency task on performance in text comprehension of two groups was investigated. The results of both experiments showed that the performance in text comprehension of the low RST score group was impaired when the serial recall task was the secondary task; in contrast, the performance of the high RST score group was influenced when the word fluency task was used. The results suggested that the high RST score group comprehended text not only by using a temporary storage system but also by using a retrieval system efficiently.