著者
姜 理惠 東出 浩教
出版者
日本創造学会
雑誌
日本創造学会論文誌 (ISSN:13492454)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.76-97, 2018 (Released:2018-04-01)

本研究は、創造産業従事者が個人の業績を上げる過程において、どのような要素が影響しているのか、他産業従事者と違いがあるのかを職場環境や個人の創造性などの観点から定量分析したものである。創造産業従事者とそれ以外を対象にした質問紙調査を実施し定量分析を行い、二群を比較した。結果、創造産業従事者は、ビジネス創造性の観点から見て、他産業従事者と異なる特徴はなく、創造産業従事者のビジネス創造性と業績には直接的な関係は見つからなかった。しかし創造産業従事者のビジネス創造性は職場環境の影響を受けていたことから、創造産業従事者のビジネス創造性と職場環境との間には何らかの関係があると考えられる。また高業績の創造産業従事者は、開放的、自律的、支援的、挑戦的、良好なチームサポート、適度な負荷のある職場環境で働いており、個人の属性としては自由主義的で、同性愛や外国人に対して寛容であり(外的寛容)、逆に自他の失敗に対して厳しい(内的不寛容)という特徴があった。これは上記の条件に適合するよう職場環境を整え、労働者の外的・内的寛容に配慮することによって、創造産業従事者の業績が上がる可能性があることを示唆している。
著者
斉藤 潤 諫川 輝之
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.27, no.66, pp.847-852, 2021-06-20 (Released:2021-06-20)
参考文献数
7

In the case of emergency that requires all the occupants to evacuate from a high-rise building, a method of “phased evacuation” is said to be effective for avoiding congestion in the staircase. However, some occupants will feel anxiety because they are requested to stay there until the other occupants in different floors finish evacuating. This study examines how giving information of phased evacuation influence mental state of the occupants. As a result, disseminating the scheme of phased evacuation and giving detailed information to whole the building decrease anxiety while waiting time, and lead to evacuation as planned.
著者
小和田 侑希 内田 大貴 北村 亘
出版者
アクオス研究所
雑誌
水生動物 (ISSN:24348643)
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.AA2023-4, 2023-02-20 (Released:2023-02-20)

The bluegill Lepomis macrochirus, an invasive alien fish species, has been confirmed in the Tsurumi River in Kanagawa Prefecture, Japan. To investigate the impact of the bluegill on native species in terms of predation and competition, the stomach contents of the bluegill captured in the Tsurumi River were analyzed. Invertebrates predominated the stomach contents and no fish species was observed, in which larvae of the insect family Chironomidae were the most abundant, followed by an amphipod Crangonyx floridanus and an insect Micronecta sahlbergii. These results suggest that the bluegill may be exerting a foraging influence on native species.
著者
長永 真明 大西 丈二 梅垣 宏行 葛谷 雅文
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.321-326, 2020-07-25 (Released:2020-09-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

IgG4関連疾患は高齢男性に多く,自己免疫異常や血中IgG4高値に加え,全身諸臓器の腫大や結節・肥厚性病変などを認める原因不明の疾患である.IgG4関連疾患ではしばしばリンパ節腫大を伴うが,臨床的に悪性リンパ腫との鑑別が求められる.今回我々はIgG4関連疾患に悪性リンパ腫を合併した超高齢者の症例を経験したので報告する.症例は85歳男性.X-6年に自己免疫性膵炎を指摘されていた.X-1年10月にIgG4関連下垂体炎と診断され,続発性副腎不全に対する補充療法としてヒドロコルチゾンが開始となった.X年2月に中枢性尿崩症を併発したためデスモプレシンが追加となった.X年11月発熱に加え,弾性硬で可動性のある圧痛のない全身性リンパ節腫脹を認めたため入院となった.入院後右腋窩リンパ節生検を施行し,病理所見よりびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断した.年齢やPerformance Statusなどを考慮した結果,積極的治療は行わず,症状緩和目的でのステロイド投与の方針となり,入院55日目転院となった.悪性リンパ腫とIgG4関連リンパ節症との鑑別は臨床経過,病理所見,血中IgG4値などの検査データ,他臓器病変の有無などを元に総合的に判断する必要がある.今までのIgG4関連疾患に悪性リンパ腫を合併した症例は概ね60~70歳台であり,本症例の85歳での報告は最高齢である.しかしIgG4関連疾患,悪性リンパ腫共に高齢者に多い疾患であり,一般内科医や老年内科医として知識を深めておく必要があると考えられる.
著者
瀧澤 淳 尾山 徳秀 曽根 博仁
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

MALTリンパ腫の発症にIgG4関連疾患(IgG4-RD)が関与している可能性を考え、当科で診断したMALTリンパ腫69例を対象に、IgG4-RD合併の有無について検討した。69例中11例(16%)にIgG4-RDの診断基準を満たす病変が確認された。MALTリンパ腫の部位別では眼窩が41例中10例(24%)にIgG4-RD合併が確認され、他は肺MALTリンパ腫7例中の1例(14%)であった。IgG4-RD合併MALTリンパ腫11例中3例に、経過中部位の異なるMALTリンパ腫や形質細胞腫が続発したことから、IgG4-RDはMALTリンパ腫などB細胞性腫瘍の発症原因となる可能性が考えられた。
著者
一ノ宮 士郎
出版者
専修大学経営研究所
雑誌
専修マネジメント・ジャーナル = Senshu Management Journal (ISSN:21869251)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-10, 2022-07-16

最近の不正会計事例かつ国際財務報告基準(IFRS)適用企業という観点から英国のCarillion社とドイツのWirecard社を事例に選び,財務諸表分析とスコアリングモデルの代表例としてBeneishモデルを対比させ,不正会計判別力を比較検討した。IFRSを適用する米国企業以外でも,Beneishモデルは不正会計を判別し得ることが確認できた。
著者
高橋 重雄 酒井 洋一 森屋 陽一 内山 一郎 遠藤 仁彦 有川 太郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.159-164, 2008 (Released:2010-08-25)
参考文献数
27

The primary objective of tsunami disaster mitigation is to reduce the casualties. The major cause of the deaths is drowning by tsunami current, especially during evacuation. In the paper, the causes of deaths are discussed through reference to past experiences. A fault tree is presented to summarize the physical danger posed by tsunami waves to the human body, and the personal danger is discussed based on the tree. The stability of the human body against wave front collision and tsunami currents is discussed and threshold conditions are proposed. The time for evacuation is usually very limited and the risk of encountering a tsunami during evacuation is often high. Walking in inundated areas during a tsunami attack is especially dangerous. Vertical evacuation is highly recommended.
著者
岩室 紳也
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.21-27, 2023-02-28 (Released:2023-03-12)
参考文献数
4

健康教育の基本は,伝えたいことが伝わり,伝えた相手が健康になれることであるが,多くの人は健康になるために何をすべきかは知っている.一方で専門職は業務の中でハイリスクアプローチ,早期発見,早期対応に傾倒するがあまり,ポピュレーションアプローチが社会にまん延する様々なリスクへのアプローチだという視点が弱い.なぜ知識があっても健康的な行動を実践できないか,リスクが何かがこれからの健康教育に不可欠な視点である.以前から健康づくり,人づくりの基本はコミュニケーションと言われてきた.目から入る情報はわかったような気になるだけで,耳から入る情報は想像力を育み記憶に残ると言われるように,健康教育でも文部科学省も指摘しているように対話的な学びを心掛けることが求められている.最終的に聞き手や受け手のこころに響き,気が付けば健康になっている健康教育とは,正確な情報を伝えるだけではなく,聞き手が自分自身の現実を受容しつつできることを具現化し,教育する側が聞き手のことを大切に,大事にしていることが伝わることが求められている.すなわち,健康教育とは単に伝え手と聞き手の情報のやり取りだけではなく,最終的には健康づくりの基本となるソーシャルキャピタルの三要素である信頼・つながり・お互い様が感じられる場づくりと考えている.
著者
Mayuko KANO Noriko SUDO Ayumi YANAGISAWA Yukiko AMITANI Yuko CABALLERO Makiko SEKIYAMA Mukamugema CHRISTINE Takuya MATSUOKA Hiroaki IMANISHI Takayo SASAKI Hirotaka MATSUDA
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
日本健康学会誌 (ISSN:24326712)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.150-162, 2017-09-30 (Released:2017-10-30)
参考文献数
26
被引用文献数
1

妊娠可能年齢の女性の栄養状態を評価する方法として,2016年にFAOからMinimum Dietary Diversity for Women(MDD-W)が発表された.これは24時間以内に摂取した食品群の数を数えることにより,11ある微量栄養素の摂取状態を集団レベルで評価するものである.本研究ではMDD-Wをルワンダ農村地域で用いる際の妥当性を調べた.41名の対象者から集めた54日分の直接秤量記録データを用い,観測された摂取量が必要量を満たしている確率(probability of adequacy; PA)とMDD-Wスコアの関連をスピアマンの順位相関係数を用いて評価した.各栄養素のPAとそれらを平均した総合的な栄養指標(Mean PA; MPA)のうち,MDD-Wと有意な正の相関を示したものは少なく,相関係数も0.294から0.392と小さかったことより,本調査地域におけるMDD-Wの妥当性は確認できないと判断した.本地域では微量栄養素に富む食品の摂取量が少なく,食べていたとしてもそれらが全体的な栄養供給に貢献できていない例が多くみられた.食品群に含まれる栄養素量をその食品群の現地での平均摂取量当りに換算したところ,穀類の方が微量栄養素に富む食品群よりも多くの栄養素を供給していた.しかしMDD-Wでは摂取の有無のみを基準に評価を行うため,少量しか摂取されず栄養供給への寄与が低い食品群も,摂取量の多さにより寄与が高くなっている食品群も,同じ1ポイントとして扱われてしまう.また,各食品群の摂取量とPA,MPAとの相関係数を算出したところ,穀類の摂取量とMPAが有意な正の相関を示し,相関係数は0.634と相関の程度も強かった.一方で多様な食品を摂取しMDD-Wスコアが上がるほど穀類の摂取量は減るという逆相関がみられたことより,実際の栄養摂取状況とMDD-Wによる評価に不一致が生じていた.本地域でMDD-Wが正しく機能しなかったことは以上の理由によると考察するとともに,食品の多様性が限られている地域においては,現地の人々の栄養摂取に最も寄与している食品を見極め,その食品の人々の摂取量を把握することも重要であるという結論に達した.
著者
西原 鈴子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.172, pp.62-72, 2019 (Released:2021-04-26)
参考文献数
15

日本国内外の日本語学習・教育は,様々な要因を反映しつつ多様な展開を見せている。その流れは,日本語教育人材の在り方についての課題とそれに対応する取り組みに直結している。文化庁審議会国語分科会が2018年に刊行した報告書「日本語教育人材の養成・研修の在り方について」は,日本語教育人材の養成・研修について,課題を整理したうえで,各段階の教育内容のモデルカリキュラムを提示している。 本稿では,それらの指針に基づいて養成される人材の職業的成長を段階別に認証する方法について検討する。結論として,教育人材の認証に関わる組織・機構の設立が必要であること,日本語教師の職業的成長を評価する公的認証のためには,教育内容に関する知識・技能・態度のみならず,実践現場を取り巻く環境への対応,社会的責任のあり方など,複眼的要因による総合的評価基準の策定が必要であることを提案する。
著者
上田 真保子 宮沢 孝幸 大保木 啓介
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

乳がん臨床試料から得た遺伝子発現解析で、レトロトランスポゾン由来の遺伝子である「Arc」と「Peg10」が高発現することを見出した。これらの遺伝子はレトロウイルスのGag遺伝子と相同で、ウイルス様の粒子(VLP)を形成し、乳がんの転移に関わる可能性が高い。またVLPを形成可能なタンパク質をコードする、レトロトランスポゾンがヒトゲノムに多数あることから、ArcやPeg10以外にもVLPを形成する遺伝子が存在する可能性がある。本研究では、乳がん試料からVLPを形成するレトロトランスポゾン由来遺伝子をすべて同定し、そのVLPが内包するRNAが乳がん治療に向けての新しい分子標的となりうるかを調べる。
著者
青木 孝 アオキ タカシ
出版者
神奈川大学総合理学研究所
雑誌
Science Journal of Kanagawa University (ISSN:18800483)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.9-16, 2019-06-30

Breadcrumbs made from "Denki-Pan" (breads baked using an electrode bread machine invented by Shozo Akutsu) are still on the market. We conducted an experiment to reproduce Denki-Pan, and compared stainless steel and titanium as electrode plate materials. The experiment revealed that the existing technology to cook rice with electrodes ("Denki-Rice") had been applied to Denki-Pan. Thus, Shozo Akutsu had put a two-purpose device into practical use. Electrodes to cook Denki-Rice are placed either parallel or at the bottom of a cooker. We investigated historical factors that influenced the process of materializing this idea.
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.17-40, 2009-01-18 (Released:2009-09-04)
被引用文献数
2

随意運動の機能回復—機能的MRI の知見—…加藤 宏之 17脳卒中後の機能回復と脳機能画像…宮井 一郎,三原 雅史,畠中めぐみ,矢倉 一,服部 憲明 22ロボット訓練の適応と機能画像…蜂須賀研二 26失語症の回復と機能再編…安保 雅博 32失語症の回復と機能画像所見…三村 將,小嶋 知幸 34
著者
菅原 正則 松田 圭大 木幡 行宏 畑山 良二 川端 伸一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E1(舗装工学) (ISSN:21856559)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.I_274-I_282, 2023 (Released:2023-02-22)
参考文献数
17

ガラス発泡軽量材は廃ガラスを原料とするリサイクル軽量材である.寒冷地においてガラス発泡軽量材を地盤材料として使用する際は,凍上性や凍結融解抵抗性の確認が必要であるが,それらを検討した事例は非常に少ない.本研究は,ガラス発泡軽量材に対して凍上試験や熱伝導解析を行い寒冷地での適用性を検討したものである.軽量材は,非凍上性材料であり,凍結融解後のCBR値の低下もみられない良質な材料であった.また,粒子内に多くの間隙が存在することが確認され,その効果により一般的な砕石と比較して優位な熱的性質であることを示した.さらに,車道舗装の凍上抑制層や路盤に軽量材を用いたモデルを作成し,凍結深さの抑制効果を熱伝導解析によって明らかにした.