著者
秋田 喜代美 小田 豊 芦田 宏 鈴木 正敏 門田 理世 野口 隆子 箕輪 潤子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は幼小移行を園文化から学校文化への移行という文化的観点から、3対象調査により検討を行った。第1は、描画と面接での短期縦断卒園前と入学後の日本と台湾の子どもの比較文化調査である。幼児の不安は仲間関係や生活全般であり、台湾が学業不安が高いのとは対照的であった。物理的差異から文化的規範の差異の認識に時間がかかることも明らかにした。第2の保護者縦断質問紙調査の日台比較からは、日本の保護者の方が基本的生活習慣・集団生活・情緒・人間関係への期待が高いことを明らにした。第3に幼小人事交流教師調査により使用語彙の相違、幼少人事交流での適応過程の相違を明らかにした。
著者
松永 宣明 藤田 誠一 金子 由芳 駿河 輝和 香川 孝三 河村 有教 河村 有教
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

経済発展にとって制度的インフラの整備は決定的に重要であり、とりわけ法整備は市場経済の発展にとって不可欠の要素である。本研究では、アジア市場経済化諸国を対象に法整備支援の現状と問題点、さらには今後の課題について学際的研究を行ない、その成果の一部は『法整備支援論-制度構築の国際協力入門』として出版した。調査結果は現在とりまとめ中であるが、各国のコーポレート・ガバナンスのありようが市場経済化の成否に大きく関わっているという暫定的な結論を得ている。
著者
武田 庄平
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

動物園で飼育されている動物が、動物福祉の達成された生活環境で暮らしている場面を来園者に展示するための施策としての環境エンリッチメントの実施および効果の評価を、動物園の飼育の現場の人間が、特別な訓練を必要とせずかつ日常業務の合間に簡便に行える方法を策定することを目指し、各種の試行実験から注目すべき行動特性について整理し、簡便な実験観察法を策定した。
著者
丸山 一平
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

高強度コンクリートは,硬化体の密度が高く乾燥収縮量が小さい反面,自己の水和に基づく内部乾燥によって自己収縮することが知られている。この自己収縮に起因して,微細なひび割れが鉄筋による拘束条件によって鉄筋周辺に生じる可能性があり,もし,この微細なひび割れが存在すれば,付着の劣化による構造挙動の変化,かぶり厚さの低減による耐久性の劣化が懸念される。昨年度は,高強度コンクリートの自己収縮に起因する微細なひび割れが発生するかどうかを,溝切り鉄筋を埋設し,材齢1日より,着色アルコールを溝に流し,ひび割れ発生を検証する法を開発し,実際にひびわれが鉄筋周囲にひびわれが入ることが明らかとなった。本年度は,鉄筋拘束供試体の鉄筋ひずみを検証対象として,増分型3次元クリープ解析を行ったところ,鉄筋ひずみは想定される小さくなった。つまり,ひびわれを想定しないで生じる理想状態の応力と実際の応力では大きな隔たりが生じることが解析的に明らかになった。そこで,この原因が鉄筋周囲のひび割れ発生に基づく付着の劣化によるものであると仮定し,水和継続中の部位のひびわれを既往の破壊エネルギーを用いた有限要素スメアードひび割れモデルの概念を発展させ,時間依存性ひび割れモデルとして提案した。このモデルを用いて,様々な鉄筋比の試験帯を用いて検証したところ良い一致を見た。本モデルは,過去に生じた最大ひび割れ幅と引張強度の進展に依存して,ひび割れた部位であっても剛性が水和によって進展するというモデルである。付着の影響とひびわれの影響がいまだ混在しているモデルではあるが,鉄筋周囲のコンクリート要素という適用範囲を考えれば,十分に実用的なモデルであると考えられる。
著者
根岸 隆之
出版者
青山学院大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では内分泌撹乱化学物質のヒトにおけるリスク評価、特に神経発達影響のリスク評価について有用な情報を提供するためにカニクイザルを用いた神経発達影響評価系の確立を試みた。まず、カニクイザルの神経発達を分子生物学的に評価した結果、生後直後から60日にかけて急激に発達することを明らかにした。また、この時期に甲状腺ホルモンを欠乏させると抑制性神経伝達システムの発達が妨げられることを明らかにした。加えて影響評価に適したカニクイザル胎仔由来神経系細胞の培養法を確立した。
著者
大津留 智恵子 石橋 章市朗 小西 秀樹 土倉 莞爾 廣川 嘉裕 安武 真隆
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

グローバル化によって多文化共生が現実となる社会において, 政治の周縁に置かれてきたマイノリティや若年層の政治参加意識と能力を高め, 民主政治を活性化する手がかりを, 多文化化の先行する社会との比較の中で検討した。マイノリティや若年層の政治参加にとって, 市民社会における政治的資源やその利用のためのネットワーク形成の重要性が確認された。また若年層の政治意識の調査からは, 政治的社会化において教育の果たす役割が認識できた。
著者
一ノ瀬 佳也
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究においては、スコットランド啓蒙哲学における「公私」観念についての研究を行った。そのために、グラスゴー大学アダム・スミス・リサーチ・ファンデーションの客員研究員となり、このテーマをめぐってグラスゴー大学のクリストフォー・ベリー教授と議論した。その結果、「私」的個人とは、単に利己的なだけでなく道徳的心性を有しており、自分たちで正義を導くことができることが分かった。
著者
孫 媛 根岸 正光 宮澤 彰 大山 敬三 西澤 正己
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

産官学の研究連携に関して,企業が先導役を果たすNational Systems of Innovation(NSI)モデルに代わり,Triple Helix(三重螺旋)モデルが国際的に注目されるようになっている。本研究は,産官学問の連携活動を反映すると考えられる産官学の共著論文データに注目し,その分析を通してTriple Helix的連携の浸透の実態を実証的に明らかにすることを目的とする。まず,日本の学会誌論文を対象とした「引用文献索引データベース」(CJP)を用いて,名寄せ,所属機関の同定およびセクター分類方法の検討等を行った上で,日本の研究ネットワークの実態分析を試みた。とくに,産学連携関係からみた各大学の特徴・類似度,大学に対する企業の研究依存度,産学連携が盛んな上位大学および企業の個別性を重点的に分析した。和文論文の共著分析として初めての研究であり,今後の研究可能性を示す役割も果たしたと考える。つぎに,米国の引用索引データベース(NCRJ)を用いて,国際・国内雑誌への投稿論文に基づく比較・分析を行った。その結果,企業と大学の協力関係は対等とはいえず,大学側から見たときの企業の役割の重要さは,企業側から大学を見るときのそれに及ばないことが判明した。1995年前後を境として大学が企業との共同研究から離れる様相も明らかになった。また,企業の基礎研究離れ,企業にとっての国内学会誌の役割の大きさ,産学連携の取り組みにおける大きな分野差・地域差,産学連携が特定の地域に集中する趨勢が近年一層強まっていることなども明らかになった。これらの成果は国際・国内学会で発表したほか,国際・国内学術雑誌にも投稿し,内外の研究者との意見交換・情報発信を積極的に行った。わが国の科学技術政策を論じるために,本研究のような統計的分析,計量的評価を地道に展開する必要があると考え,これまでの成果を踏まえて,今後さらにさまざまな観点からの研究を継続する予定である。
著者
高畑 雅一
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

アメリカウミザリガニHomarus americanusを実験動物とし、新たに開発したoperant chamberを用いて、レバー押し型のオペラント条件づけの可能性を実証するとともに、分化強化の可能性について検討した。動物を実験水槽に十分に慣れさせた後、水槽内の餌場に自発的に接近するようになるまで乾物ホタテ貝柱で誘導し、接近した場合に餌を与えた。この訓練が完了したのち、1セッションを30分としてレバーに対する自発的なはさみ行動の平均生起率(1セッションのはさみ回数/セッション数、以下BL値と呼ぶ)を確定した。次いでレバー押しに対して報酬を連合した。ここでは特に、1)セッションごとのはさみ回数の推移《獲得、消去、回復の傾向は観察されるか》および2)はさみ強度のスケジュール間比較《はさみ強度について分化強化手続きができるか》を調査した。強化閾値を変える前と後で、はさみ強度(各はさみ行動の最大応答値)の分布にどのような変化が現れるのか個体ごとに調べるに当たっては一般化線形モデル選択法を適用した。その結果、各セッションのはさみ回数は、獲得手続きではBL値以上で持続する傾向、消去手続きではBL値付近に徐々に近づく傾向、回復手続きではBL値以上で再び持続する傾向が、それぞれみられた。また、非随伴性強化ではBL値以上の割合は獲得手続きの場合以下であり、持続する傾向もみられなかった。これらの知見は、アメリカウミザリガニでオペラント学習が可能であることを実証している。また、強化閾値を上げたことに依存してはさみ強度が上昇し、強化閾値を変えない場合では、はさみ強度に変化はなかった。これらの結果は、分化強化が強化閾値の上昇に限って成立する可能性を示唆する。閾値下降については、新たな装置を開発して調査する必要がある。
著者
牛尾 直行
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究成果は以下の三点を明らかにしたことに集約される。1.現代南インド 2 州において SC/ST/OBCs 学生の就学前教育段階からの学歴形成過程は様々なパターンや制度があること、2.RTE 法(2010 年 4 月施行)の法制度とその施行過程のなかで、最貧層の人々の教育機会を保障するには至っていないこと、3.中等教育・高等教育人口が急激に増加する中で、マイノリティ・インスティテューションやシフトIIといったオプションが彼らの教育機会の生成過程に大きく影響を及ぼしていること。
著者
川上 泰雄 宮本 直和 栗原 俊之 若原 卓 岩沼 聡一朗 佐久間 淳 平山 邦明 鈴木 克彦 神田 和江
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、2つの動作速度でカーフレイズ運動を行い、筋疲労の程度と遅発性筋肉痛(DOMS)および筋損傷マーカーの量の変化、筋の機能変化の関係ついて、運動前後および運動後7日間にわたって調査した。その結果、(1)筋疲労の程度は動作速度によって異なり、速い動作ほど疲労が少ないこと、(2)筋疲労の程度と遅発性筋肉痛・筋損傷マーカーの量が関係し、これには筋特異性が存在するが、筋疲労の程度によらず筋の機能は速やかに回復すること、(3)運動中の筋線維動態はこれらの変化と連動して変化する可能性があることが示された。
著者
羽田野 慶子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本年度の研究業績は以下の通りである。1.身体をめぐる教育の一つである学校の運動部活動を対象としたフィールド・ワークのデータをもとに、子どものスポーツ実践とジェンダー意識の形成とのかかわりについて考察した論文を執筆し、学会で口頭発表を行うとともに、学会誌へ投稿し、査読つき論文として発表した。調査は関東地方のある公立中学校の柔道部で行なったもので、論文では、女子部員と男子部員が同様の練習に従事しつつも(活動内容におけるジェンダーの平等)、常に男女が空間的に分離される位置関係を保つ様子(活動空間におけるジェンダーの分離)や、男性優位の力関係が壊されないような練習方法が実践されている様子を記述し、子どもがスポーツ実践を通して社会におけるジェンダー関係を学び、身体化していくメカニズムとして描き出した。2.日本における身体をめぐる教育の歴史的展開過程の一環として、昭和恐慌期の東北農村娘身売り問題を取り上げ、当時の新聞記事、および新聞報道を受けて身売り防止運動を大々的に展開した愛国婦人会の活動に関する資料を収集・整理するとともに、売春に関わる女性(娼妓、芸妓、酌婦、女給等)の本籍地別、稼業地別人員統計のデータベース化を行なった。1930年代における東北農村娘身売りの社会問題化は、子どものセクシュアリティに対する教育的介入、とりわけ女子に対する純潔規範の大衆化の契機として位置づけられ、明治・大正〜昭和初期に発展した廃娼運動と、戦後における性教育の展開とをつなぐ歴史的事象といえる。以上の作業で得たデータを用いた論文については、現在執筆中である。
著者
西島 央 藤田 武志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

現行学習指導要領におけるクラブ活動の廃止、学校と地域の連携、教育の市場化といった教育改革のなかで、中学校や高校では、部活動を縮小・廃止したり、地域と連携/委譲を図ったりする動きがみられる。このことが、教師による生徒指導や進路指導、生徒の学校への関わり方や進路選択のありようといった学校のその他の教育活動場面や、生徒のスポーツ・文化活動への参入機会にどのような変化をもたらすかを明らかにすることが本研究の目的である。そのために、東京都、静岡県、新潟県を中心に、中学生、高校生を対象とする質問紙調査、並びに部活動改革に取り組む中学校における観察・インタビュー調査を行ってきた。これらの調査によって得られた主な知見は以下のとおりである。部活動に対する生徒のかまえには活動本意の志向性と人間関係本意の志向性がある。活動本意志向の生徒にとって部活動改革は望ましいが、人間関係本意志向の生徒にとっては、学校で行われる部活動でしか享受され得ない人間関係形成の場を失うことになる。学業だけではないさまざまな場面が学校には準備されていることは、学業に興味のない子どもたちにも学校に対する前向きなかまえをもたせるように働いており、部活動に積極的に関わることが学業成績や将来展望にプラスの影響を及ぼしている。部活動が、ジェンダー・サブカルチャー形成の場として機能している。スポーツ・文化活動への参入機会には、出身家庭の文化的経済的状況や地域性によって差があるが、その格差は、学校で部活動が組織されていることによって縮減されている。部活動の地域との連携や移行という取り組みは、第一に、指導者の外部化によって活動が競技志向に傾くと同時に、顧問教師の関与が下がるため、生徒指導の機会が縮小する。第二に、かえって地域社会や保護者の学校への期待が明確化し、その役割や責任が強調されるという矛盾した結果を生み出している。
著者
前原 俊信 笠井 聖二
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

特殊相対性理論におけるローレンツ変換によって,慣性系における同時刻が相対的になることを仮想体験するための動画変換システムを開発した。人の前を物体が横切る場合,物体の静止系では,物体の前方ほど未来が見えるようにすることによって,変換前の動画では物体がローレンツ短縮しているが,変換後の物体の静止系では物体のローレンツ短縮が解け,逆に人がローレンツ短縮している様子をシミュレートできる。また,逆に変換前を物体の静止系と見て変換することもできるようなシステムとした。この開発において,次のような成果を得た。・正しいシミュレーションとするためには,変換後のフレームサイズとフレームレートを変えなければならないことを理論から明らかにし,システム上で実現した。・高速度撮影カメラによって撮影された動画も変換することができるシステムとした。それにより,スムーズな時刻変化を実現し,臨場感のある動画への変換が可能になった。・USBカメラで撮影してその場で変換できるようにし,その場で撮影することによる実体験を通して実感できる教材とした。・人の静止系と,物体の静止系とを,それぞれを静止させた映像として同時に表示し,その違いを実感できるので,二つの系の関係を理解させるのに有用な教材となった。大学生に対する授業とともに,中学生・高校生にもローレンツ短縮について紹介する自由参加の授業を試行した。アンケートでは,「難しかった」とともに「面白かった」,「また参加したい」という回答が多く,自由記述にも「図や動画があったおかげで,すこしわかったような気がします。」「すこし難しかったですが,動画はわかりやすくて面白かったです。」「動画がとても楽しかったです。でも相対性理論は難しいと思いました。」とあり,専門家だけでなく,初学者にもこのシステムが有用であることを確かめられた。物理学科での検証ができなかったことと,時間の遅れを理解させる教材までは発展できなかったことを,今後の課題としたい。
著者
新井 由紀夫
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、中世後期イングランド社会の具体的諸相を、ジェントリ(十地保有階層)の視点から明らかにするという全体構想のもと、ジェントリの関係する史資料の全貌を体系的に明らかにした。比較的まとまった史料群でありながら、公文書とは違うため英国史料データ化プロジェクトには載らないような中世後期ジェントリの家系文書史料であるイングランド北部のヨークシァ、リーズ市文書館所蔵のプランプトン家文書を、まるごとデジタル画像ファイル化しその史料類型と内容のあらましを整理分析した。
著者
東原 貴志
出版者
上越教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,地域の木材および森林について理解を深めるため,これらを活用した,中学校技術・家庭科技術分野におけるものづくり教材の開発を中心とした,「木育」に関する教材を開発し,中学生を対象とした活動実践に取り組んだ。研究の成果は以下の通りである。(a)国産スギ材を活用した,プランター教材とちゃぶ台教材を開発した。(b)中学生を対象とした木工競技大会の製作課題について検討するため,一例としてCDラックの製作時間を分析した。(c)国立妙高青少年自然の家にいて,森林樹木オリエンテーリングプログラムならびに科学技術学習を取り入れた「森小屋つくり体験活動」に関する教材を開発し,中学生を対象とした活動実践に取り組んだ。
著者
原野 悟
出版者
日本大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

初年度の調査に基づいて前年度に作成したホームページを公開した。同時にホームページの閲覧を促すアイキャッチャーとしてポスターを作成し学内に掲示した。ポスターの内容は直接的なものより、印象に訴えることを試みた。当初予定していた映像によるEnter-Edutamentの教材は構内放送設備の制限や予算の不足により中止の止むなきにいたった。ホームページ公開から6ヶ月のincubation timeを設けて、30名の学生を対象にfocus group interview法による質的研究を行った。この学生構成は男女、文系理系別で等しくした。その結果、ホームページを見たところ、成人麻疹に対する情報として設定したメッセージが理解され認識を変えたとする意見が多く、内容的にはほぼ妥当なものと考えられた。しかし、ホームページの存在はあまり知られておらず、ポスターを見て閲覧の動機となるという意見とイメージが先行して関心が惹起されないという意見に分かれた。このことより、インターネットを用いて健康コミュニケーションを実施する場合には、いかにホームページを見るように動機づけるかが大きな課題となることがわかった。その反面、インターネットを通じて提供される情報についてはあまり批判的ではなく受け入れられる可能性が高く、健康コミュニケーションで用いる有用性も示唆された。また、今回は受け取るメッセージを3つに限定してゴール設定をしたが、この限定が妥当なもので、情報量としての適切さが明らかとなった。本研究では開始時点から専門家によるプログラム開発としたが、より普及させるためには受け手である学生を計画時より参加させるSocial Learningの手法を用いたほうが適切であったことがわかり、今後の課題として残った。
著者
大野 公一 YANG Xia
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

分子やクラスターの平衡構造(EQ)はポテンシャルエネルギー表面(PES)上のエネルギー極小点に相当し、化学反応の遷移状態(TS)はPES上の一次鞍点で近似できる。化学反応は、量子化学計算に基づくPES上でEQとTSを探索することによって理論的に解析または予測できる。しかし、PESは振動の自由度と同数の変数を持つ多次元関数であり、PES全体を考慮したグローバル反応経路探索は非常に難しい課題であった。そのような反応経路ネットワークの探索では、そのネットワーク自身を辿るのが最も効率が良いが、TSからEQへと反応経路を上ることのできる一般的な手法(超球面探索法)を開発し、自動的なグローバル反応経路探索を可能にした。本研究では、超球面探索法を以下の問題に応用した。(1)昨年度に引き続き、星間分子であるアセトアルデヒド、ビニルアルコール、および、エチレンオキサイドを含む組成であるC_2H_4OのPESに本手法を応用し、その反応経路ネットワークの全貌を解析した。さらに、CH_3ラジカルとHCOラジカルなどへの解離極限付近を、それらの電子状態を記述できる量子化学計算と本手法を併用して調べたところ、ローミング機構と呼ばれるラジカル対の再結合反応の遷移状態を初めて見出した。(2)キラリティーを持つ最も単純なアミノ酸分子であるアラニン分子について、そのD体からL体への熱変換反応経路を本手法によって系統的に探索し、4種類のD-L変換経路を見出した。さらに、競合する異性化過程および分解過程を系統的に調べた結果、4種類のD-L変換経路のうちの一つが、最も熱的に有利な過程であることを確認し、アラニン分子を気相中でレーザー光等により過熱した場合には、D-L変換が最も熱的に起こりやすいことを見出した。
著者
川口 大地
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

脊椎動物の大脳発生におけるニューロン産生期には、すべての未分化な神経系前駆細胞が一斉にニューロンに分化するのではなく、ある決まった割合で一部の神経系前駆細胞が選択されてニューロンに分化する。この選択メカニズムとしては非対称分裂が主に考えられてきた。しかし、本研究の前年度までの結果から、この選択にNotch-Delta経路による側方抑制機構が貢献していることがin vitro、in vivoにおけるDll1の過剰発現の実験により示唆されていた。本年度は、Dll1コンディショナルノックアウトマウス(Dll1cKOマウス)を用いた解析を中心に行った。Dll1のニューロン分化選択における必要性を検討した結果、Dll1を少数の神経系前駆細胞でのみKOするとDll1KO細胞は未分化性が維持されたが、殆どすべての神経系前駆細胞でDll1をKOした場合はニューロン分化が亢進する結果が得られた。さらに、Dll1をすべての神経系前駆細胞でKOしたマウス大脳皮質においてニューロン前駆細胞として知られるBasal前駆細胞が一過的に増加することがわかった。この結果は、ニューロン分化が亢進してBasal前駆細胞が増加したが、過剰なニューロン分化亢進により神経系前駆細胞が枯渇して最終的にはBasal前駆細胞の数が減少したことを示唆している。以上の結果は、神経系前駆細胞間におけるDll1の発現量の違いが分化運命選択に寄与している事を示唆しており、側方抑制機構が働いている事が支持された。これまでの結果からDll1の発現細胞はニューロン分化が促進することを示したが、Dll1の発現が細胞増殖や細胞死に与える影響についても検討した。Dll1を過剰発現した細胞が一定の培養期間でどの程度増えたのかを数えた結果、コントロールのDll1を過剰発現していない細胞との差はみられなかった。また、細胞死に関しても核の凝集からその数を調べたが、コントロールと差はみられなかった。従って、Dll1発現は神経系前駆細胞の細胞死や増殖には影響を与えずにニューロン分化を促進することが明らかとなった。
著者
堀田 耕司
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

脊索動物の形態形成過程を細胞レベルで理解するために、本研究では、個体を構成する細胞数が少なくシンプルな体制をもつホヤを用いて個体まるごとの1細胞レベルイメージングを行った。ホヤ幼生ひのう部における新規末梢神経ネットワーク構造の3Dイメージングや尾芽胚の3Dコンピュータモデル化、および神経管閉鎖過程の3Dライブ(4D)イメージングを行い、ホヤ胚発生におけるさまざまな形態形成過程を細胞レベルで明らかにすることができた。