著者
河合 誠之 綾仁 一哉 片岡 淳 吉田 篤正 三原 建弘
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、HETE-2およびSwift衛星からインターネットを通じて配信されるガンマ線バースト速報に対応して、自動的に即時にバーストの方向を撮像する望遠鏡システムを開発し、ガンマ線バーストに伴う可視光フラッシュの観測を行なうことである。本年度は、次の作業を行なった。1.別予算にて岡山県美星天文台屋上に設置した口径30cm望遠鏡の測光精度を調査した。Landolt測光標準星との比較によれば、本システムはフィルター無しにもかかわらず、Rバンドでは標準星のカタログ等級と0.1等以下の誤差でよい比例関係をもつことを確かめた。2.昨年度に製作して宮崎大学工学部の屋上に設置したロボット望遠鏡システム第二号機の調整、試験を行い、指向・追尾性能試験および撮像試験を行った。試験観測として、美星天文台に設置した一号機とともに、変光星、獅子座流星群、超新星2002apなどの観測を行った。3.ロボット望遠鏡システムを統括制御するソフトウェアを改良し、自動観測運用を開始した。雨あるいは雪による機械的、あるいは電気的な不具合が生じたので、修理・対策を施した。4.HETE-2およびBeppoSAX衛星が検出したガンマ線バースト4個(GRB010921, GRB011019, GRB011030, GRB020124)に対して追観測を行った。可視対応天体の検出には至っていない。
著者
長谷部 信行 BEREZHNOI Alexey A.
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究は、主に3つに分類される。1)月表面から放出されるガンマ線の評価2)月表面における揮発性元素の存在可能性3)流星群衝突と月震による月からの電波放出1)月表面におけるガンマ線及び中性子の発生と輸送機構を実験的及び数値計算的にシミュレートし、元素濃度の評価方法の基礎過程を構築した。それに基づけば、ガンマ線分光計のエネルギー分解能が5keV以下の場合、水素、及び硫黄(1wt%以上存在した場合)の検出が可能であるという結論を得た。また、Lunar Prospectorによる観測結果を再検証しApolloやLunaミッションと比較した結果、月西部の海において、深刻なSi存在量の過小評価とAl, Mgの過大評価を発見した。2)月面揮発性元素の彗星起源説について評価を行った。その結果、炭素に富む彗星では現在までに推測されている揮発性元素の存在量を説明することはできず、酸素に富む彗星であれば、十分に存在量を説明することができるとの結論に至った。また二酸化酸素及び二酸化硫黄が安定に存在できる極域内の面積を算出し、それら元素の注入率に制約を与えた。3)1999年から2001年までのしし座流星群到来時の電波観測データの解析を複数の波長を用いて行った。1999年のデータからは月からの信号を見出すことはできなかったが、2000年、2001年においては流星群によると思われる信号を発見した。また、数分にもおよぶ振動の存在を確認した。
著者
山本 真行
出版者
高知工科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は明るい流星の出現直後に稀に見られる流星痕について、研究代表者らが1998年より開始した市民参加の観測キャンペーンである流星痕同時観測(METRO)キャンペーンによって得られた史上初の大量流星痕画像を解析し、未知の部分を多く残す流星痕生成メカニズムならびにその地球超高層大気における消散過程を統計的に調査したものである。本研究課題ではMETROキャンペーンのデータを各種パラメータと共に記録した画像集として世に残すため、まず2編の流星痕カタログ論文を出版した(Toda et al., 2004 ; Higa et al., 2005)。これらの論文は1988〜2002年の国内流星痕観測を纏め上げた世界初の流星痕画像カタログであり、流星痕研究の基礎をなすデータとして今後も活用が期待される観測史的に貴重な文献である。以上は本研究課題によって平成16年度に成された成果である。平成17年度には、さらにカタログ論文に掲載しきれなかった画像についても世界の研究者による利用の便を考えweb上におけるMETROキャンペーンアーカイブとしての整備を進めた。現在、最終の確認作業中であり、著作権等の確認の後に公開される予定である。流星痕の高度解析結果については、1988年〜2001年に得られた観測例のうち、解析に必要な十分な時刻精度と空間分解能を備えたデータ20例を吟味し整約計算を進めた。結果として、オリオン座流星群による2例しし座流星群による18例(計20例)の永続流星痕の高度解析結果から、永続流星痕の出現高度に関して109km〜75kmの高度領域を得た。流星雨の夜の数時間にメソスケール程度の領域に得られた10例のしし座流星群による流星痕に関し、平均中央高度93.0kmを得た。この高度は、Borovicka and Koten (2003)モデルのフェーズ3である主に酸化鉄FeOによる発光過程における流星痕発光高度を統計的に初めて明らかにした成果である。同発光過程においてはオゾンの中間圏・熱圏下部からの供給と酸素原子の供給、拡散を支配する背景大気圧力のバランスが重要であるとJenniskens (2000)等により指摘されているが、本研究はこれを観測的に求めた成果である。20例の分布から、流星痕高度の上端は100km付近で一定であるが、下端については地方時(輻射点高度)依存性が見られ、流星痕発光領域の流星経路長依存性が指摘できる結果を得た。これらの成果は、Yamamoto et al. (2005)としてEarth, Moon, and Planets誌に出版された。その過程で、Abe et al. (2005)における分光観測結果に対し高度情報を与える成果も得た。三次元構造解析の時間発展から中間圏・熱圏風速場について研究した成果は、日本地球惑星科学連合2006年大会にて発表予定である。
著者
長澤 正氏
出版者
沼津工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

流星バースト通信(MBC)は、流星が大気に突入する際に残す電離気体柱を電波の反射体として利用し見通し外通信を実現する通信方法である。小容量の通信路であるが衛星を使ったシステムに比べ安価に実現できることことから、広範囲にわたる気象データの収集などに利用されている。本研究ではMBCの最も有効な応用分野であるデータ収集ネットワークシステムのプロトコルについて過去に提案された方式の数学的なモデルによる解析および新たな方式の提案を行った。研究は静岡大学が運用する流星バースト通信実験システムRANDOMでの通信路の観測および通信路のシミュレーション装置によって行われ、本補助金は主に観測実験の旅費およびシミュレーション装置の構築に充当した。研究初年度には流星バーストによるデータ収集プロトコルの各種方式の分類、比較等をまとめて電子情報通信学会論文誌に発表した。その論文ではグループポーリング方式のグループ再編方式が実用に際して有効であることが理論的に述べられている。また、新たに主局の送信電力を変化させて効率を上げる電力変化法を提案している。電力変化法の有効性を理論面から解析するためには、従来用いていた通信路の数学モデルを見なおす必要があった。そこで、研究2年度には数回の観測実験を行い、電力変化法の解析に必要な通信路の数学的なモデルを得た。研究3年度には、これらの成果を「流星バースト通信におけるプローブ電力と通信路特性の関係」として電子情報通信学会論文誌に発表した。また、1998年11月に33年ぶりの大出現が予測された獅子座流星群について、流星バースト通信の観点から観測をおこなった。この実験により、MBCにとって特異な状態である流星群出現時においても我々が提唱しているモデルがパラメータの変更のみである程度適用できることが判明した。
著者
戸田 雅之
出版者
東急ファシリティサービス株式会社
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

○研究目的(1)短痕の高度解析:2001年に大出現したしし座流星群の2点同時観測動画データから痕の発光部分の抽出を行い、その高度を明らかにする。(2)主要流星群の流星痕観測:しし座流星群以外の主要流星群でも流星痕観測を実施し、対地速度毎の短痕発生頻度を明らかにする。(3)短痕用スペクトル観測装置の製作とその観測:カラーインパクトロンを使用した観測装置を立ち上げ、8月のペルセウス座流星群を皮切りに主要流星群の流星痕分光観測を実施する。○研究方法(1)移動体検出と画像解析に特化したPCを使い、25例の流星痕の発光高度を求めた。(2)(3)平成19年8月のペルセウス座流星群、10月のオリオン座流星群、12月のふたご座流星群、平成20年1月のりゅう座流星群にカラーインパクトロンと一眼レフデジタルカメラを用いて観測をした。○研究成果(1)短痕の出現高度が明らかになった。短痕の上端側は緩慢な高度低下を示し、下端側は流星本体の高度低下と共に一旦下降し、本体消失後に上昇する傾向が常に見られた。発光高度の中央部分は多くの例で高度110km前後で収束し、大気依存が予期される結果となった。この成果は平成19年6月中旬にスペイン・バルセロナで開催された国際会議「Meteoroids2007」および同年9月の日本惑星科学会高知大会において発表した。(2)(3)観測地の当日の天候に邪魔されたり、周辺機材のケーブル断線等の不良等で動画撮影は殆ど出来ず、今回期待していたスペクトル撮影は出来なかった。平成20年度以降は高知工科大学と連携して長期間定常観測を実施し、より多くの短痕画像を取得することを狙う。
著者
津田 敏隆 川原 琢也 山本 衛 中村 卓司
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、京都大学のMUレーダーで高感度の流星観測を行い、流星の大気への流入及びその時の中間圏界面領域の大気力学場を詳細に観測し、併せてナトリウムライダー観測や大気光観測による中層大気上部の大気微量成分の増減を測定し、中間圏大気の物質の変動と流星フラックスや大気力学場の関係を探る事を目的とした。特に、流星起源であるナトリウムなどの金属原子層の密度が突発的に増大するスポラディックナトリウム層などの現象にも焦点をあて、その成因を探った。また、その過程で種々の知見が得られた。1. レーダー観測から、群流星などの活動期であっても散在流星のフラックスが多く、群流星の活動によって顕著に流星フラックスが増加することはないと認められた。ただし、出現方向、出現高度、強度などを限定すると群流星でもかなりの増大がある。2. レーダーとライダーの同時観測によって、ナトリウム原子密度の周期数時間以上で位相が下降する変動は、大気重力波によると確認された。さらに冬季に見られる周期12時間前後の同様の変動も、半日潮汐波ではなく大気重力波と判明した。3. レーダーとライダーとの同時観測によって、スポラディックナトリウム層と流星フラックスの関連は見出されず、むしろ水平風速の鉛直シアや温度の局所的な上昇などが絡んでいることが解った。さらに統計的な解析からは、風速シアの強度と相関が高いことが解った。4. 大気発光層とレーダーおよびライダーとの同時観測から、流星フラックスの増大と発光層との関連は見られなかったが、大気発光層中の様々な大気重力波イベントの考察やその統計解析など、大気力学研究上貴重な知見が得られた。5. 1998年のしし座流星群観測では、大流星雨予想の約1日前に明るい流星の大出現がレーダー観測された。なお、当日は天候が悪く光学観測は翌日になったがこのときには中間圏界面に顕著な変動は見られなかった。
著者
阿部 新助
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、惑星間空間から地球へもたらさせる彗星・小惑星起源物質(流星ダスト)から、組成と軌道およびその進化を明らかにすること、流星の超高層大気での発光素過程を調べることである。平成18年度に開発を行った超高感度紫外分光TVカメラと汎用小型TVカメラを用い、平成19年度は、幾つかの観測を施行した。汎用小型TVカメラ一式は、京都大学生存圏研究所・MU 信楽観測所内に設置を行い、リモート観測を継続的に行った。関連成果として、Earth-grazing fireball(地球大気突入後、宇宙へ戻った隕石火球)の観測に成功し、近地球型アポロタイプ小惑星軌道であることなどを突き止めた(研究成果欄参照)。同型の小惑星である小惑星イトカワの探査データを用い、イトカワの平均密度、空隙率、組成や重力場の導出行い、申請者が筆頭あるいは主導的役割を担った論文は、Science, Nature他に掲載された。また、超高感度CCD-TV紫外分光観測システムを用い、2007年9月に長周期彗星起源流星の分光観測をハワイで行ったが、悪天候に阻まれた。同システムを用い、2007年10月オリオン座流星群、12月ふたご座流星群の分光観測に成功した。また、EMCCDカメラ(五藤光学研究所)を使い、流星体の月面衝突閃光を世界で始めてカラーで捉えることに成功した。これらのデータの一部は、論文や学会を通して発表を行った。また、彗星・小惑星と流星の関連について、「Meteoroids and Meteors - observations and connection to parent bodies(S. Abe), in Small Bodies in Planetary Systems(Eds. Ingrid Mann, Akiko Makamura, Tadashi Mukai, Springer-Verlag)」に大学院生向けの教科書としてまとめた。
著者
麻生 武彦 岡野 章一 藤井 良一 前田 佐和子 野澤 悟徳 三好 勉信 佐藤 夏雄 江尻 全機 佐藤 薫 小川 忠彦
出版者
国立極地研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

最終年度におけるそれぞれのサブテーマの実績概要は以下のとおりである1.EISCATレーダーによる極域電磁圏熱圏大気ダイナミックスに関しては2003年11月11日から19日における8日間のキャンペーンデータ等をもとに、流星レーダー等との比較、イオン温度からの中性温度の導出における定量的な誤差評価、中性温度における大気潮汐成分の解析検討、F層イオン温度の緯度分布と電離層等価電流の分布の比較による両者の密接な関連の解明等を行った さらに下部熱圏における大気ダイナミクスの理解のため、EISCATキャンペーン観測データ解析から準2日波、大気潮汐波、平均風の高度変動および緯度変動、イオンドラッグ加速度、コリオリ加速度、および全加速度の導出とそれらの比較を通してのイオンドラッグの重要性の吟味等を行った。またオーロラ粒子エネルギー導出のための4波長フォトメータ観測をトロムソにて実施し、電子密度高度分布をEISCAT観測データと比較した2.流星レーダーによる極域中間圏・下部熱圏大気ダイナミックス観測ではスバルバールでの4年余の連続観測により、極域大気潮汐波クライマトロジーの解明を行うとともに、トロムソ流星レーダー、EISCATレーダー、MFレーダーとの観測値の直接比較、NSMRレーダーとの比較による大気潮汐波モードの解明、高エコー率を利用しての大気重力波の水辺伝播方向解析と平均流とのかかわり、運動量輸送等について検討した3.HFレーダーによる極域電磁気圏・熱圏ダイナミックスの観測については、EISCATヒーティング装置を用いたSuperDARN CUTLASSレーダーとの共同実験により周期の異なる地磁気脈動の励起伝播について興味ある結果を得た4.オーロラ夜光スペクロトグラフによる極冠域オーロラ・夜光の観測では、酸素原子発光および酸素イオン輝線発光と、ESRによる電離層の電子温度・密度、イオン温度、イオン速度の同時観測データから、低エネルギー電子降下時に磁力線に沿った速度数100m/sのイオン上昇流が発生することを定量的に明らかにした。5.ALISによるオーロラ・大気光トモグラフィ観測では、ヒーティングとの同時観測、しし座流星群の光学観測などが試みられたほか、先端的逆問題手法のトモグラフィー解析への応用研究を始めた6.数値モデリングと総合解析においては中間圏・熱圏下部における半日潮汐波の日々変動について、大気大循環モデルによる数値シミュレーションにより調べた。特に、下層大気変動が、中間圏・熱圏下部の半日潮汐波に及ぼす影響および太陽放射量の日々変動(F10.7の日々変動)が熱圏の大気潮汐波に及ぼす影響を調べた。また流星レーダーで見出された12時間周期付近のスペクトル等についてもモデルによる検討を行った
著者
川辺 良平 河野 孝太郎 北村 良実 鷹野 敏明 井田 茂 中村 良介 阪本 成一 石黒 正人
出版者
国立天文台
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
1999

星と惑星系の形成の問題は、現代天文学の重要課題である。ミリ波干渉計による観測の進展で、太陽系外の惑星系の形成現場を直接観測が可能となった。これにより、観測と理論との直接比較から、惑星系形成論の構築が可能になった。一方、太陽系外の惑星系が発見され、その惑星系の多様性が明らかになってきた。これにより、太陽系が普遍的な存在なのか、その多様性をコントロールする物理は何かなど新たな問題が提起されている。ここでは、新たにサブミリ波の領域で、サブミリ波の特徴を生かし、星形成に伴う原始惑星系円盤の形成や、その構造(円盤の初期条件)を干渉計観測で詳細にしらべ、惑星系形成のシナリオを構築することを目指した。また、観測的研究で、円盤の形成・進化、巨大惑星の形成に制限を与えるガス成分の消失時期、固体惑星の形成の形成に制限を与えるダスト成分の消失時期を抑え、理論と比較することにより惑星系形成のシナリオ構築を目指した。また、惑星系の多様性を説明する独自のパラダイムを提案し、観測との比較を行うことや理論的な実証を行った。既存の野辺山ミリ波干渉計を用いてサブミリ波干渉計を目指し、干渉計実験に成功した。本格観測までは実現できなかったが、南半球領域で世界初の10mサブミリ波望遠鏡の実現へと結びついた。一方、波長1300ミクロン等での牡牛座の天体の干渉計観測により、原始星としては初めてガス円盤が存在する証拠を捕らえ、また円盤の進化する様子、降着円盤としての膨張を捕らえることに成功するなど、円盤の形成・進化の様子を世界で初めて捕らえた。また、惑星系円盤(初期条件)の多様性を観測的に捕らえた。理論的には、独自のパラダイムの理論シミュレーションによる実証ができた。また観測的に発見された系外惑星系が、このパラダイムで説明可能であることを明らかにすることができた。ダストとガスの消失時期について、理論的には推定できた。ガスの消失時間を、観測的には抑えるために、チリに設置した10mサブミリ波望遠鏡による観測を今後実行する予定である。これらにより、惑星系形成論の構築に大きく前進した。
著者
小澤 桂子
出版者
千葉大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

まず、約1年以内に初回の退院をした血液疾患患者を対象に、退院指導についての質問紙調査を行った。退院後の生活等についての説明は、医師から、退院前3〜7日前に、病室で、時間を特にとって、一人で、言葉だけで、どんなことに注意しなければならないかについて説明を受けたと回答した者が最も多かった。それで良かったとの回答が多かったが、面談室で、家族と共に、パンフレットなど紙に書いたものを使って、を希望する意見が多くみられた。P<0.05で正の相関が見れたのは、生活上困ったことの解決の程度と説明が役だったか(相関係数0.737)であった。次に、(1)化学療法とはどのような治療方法であるのかを理解できる、(2)化学療法と自分の疾患の関係を理解し、納得して化学療法を受けることができる、(3)化学療法により起こりうる副作用、自分自身や生活への影響を知り、それらを最小限にするよう、対処方法を獲得できる、(4)得られた知識及び自分の入院中の体験の評価をもとに、退院後に起こる副作用や、自分自身や生活への影響を知り、起こりうる問題に対して効果的な対処方法を検討し、実施することができる、(5)継続した化学療法を行うことを受容できる、(6)自分自身が治療の主体として、疾患や治療とうまくつきあっていこうという意志・意欲を持つことができる、の6つを目標に、退院指導のための看護プログラム及び、パンフレットを作成した。6名の血液疾患患者(男性2名女性4名、平均年齢52.0歳)にプログラムを施行し、退院後1カ月後に質問紙により、プログラム、パンフレットともによくわかり、効果があったとの意見を得た。しかし、副作用などによる生活の困難は依然出現し、退院後の生活を困難にする大きな要因になっているため、この点を改善する方法を検討し、プログラムに取り入れる必要が示唆された。
著者
横浜 康継 蔵本 武照
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

イセエビ(Panulirus japonicus)とウミザリガニ(Homarus americanus)を用い、それぞれ、個体の酸素消費(呼吸=代謝)速度を差働式検容計と酸素電極法とを併用して観測し、代謝速度と温度との関係を調べた。その結果、ともに、体温の低下に抗して代謝速度が維持あるいは促進される温度域があり、ウミザリガニでは5-13℃であるのに対し、イセエビでは13-20℃であることが明らかとなった。イセエビは15℃以上の暖流域に棲み、ウミザリガニは15℃以下の寒流域に棲んでいる。それ故、この棲息地の環境温度が代謝促進のある温度域と関連しているものと考えられた。囲心腔ホルモンの1成分のセロトニンにより、心筋や腹部緊張筋の酸素消費速度が大きく増大した。それ故、セロトニンが囲心腔器官などから分泌されて、体内に存在していれば、少なくとも筋組織は、体温低下に抗して代謝速度を維持または促進しうることが示唆された。一方、他の囲心腔ホルモン成分のオクトパミンやプロクトリンは筋膜の興奮度を高めた。温度低下に伴い、筋の興奮-収縮連関の効率が落ち、収縮の強度は減少するが、オクトパミンやプロクトリンが存在すれば、膜の興奮度がより高まる結果、興奮-収縮連関の効率の低下が補正されることになる。従って、体温低下に伴う筋収縮度の低下は、囲心腔器官からオクトパミンやプロクトリンが分泌されることにより、防げると考えられた。蔵本らは、イセエビで、5度程度の体温低下に伴い囲心腔器官からセロトニンやオクトパミンが分泌されることを実証している(Biol.Bull.,86,319-327,1994)。かくして、エビ生体内においては、環境温度の低下に伴う体温の低下で、筋の代謝速度が下がらないだけでなく、筋の収縮力も落ちないことが解明できた。低温の酸欠下で、10数分間に渡り心拍が維持される現象が見つかった。この酸欠状態での代謝調節機構は不明で、今後の研究課題である。しかし、面白いことに、イセエビは、腹部の屈伸運動による特異な後方遊泳により、15分で3km位は移動できるので、低温の酸欠水塊に遭遇しても、この悪環境から逃避しうることが示唆された。
著者
藤田 統 加藤 宏 牧野 順四郎 岩崎 庸男
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

行動の個体差の原因と形成過程を知るために、我々の研究室で選択交配により作り上げた情動反応性に関する近交系ラット2系統(Tsukuba情動系ラット)および活動性に関する近交系マウス2系統等を用いて、様々な行動遺伝学的、生理生化学的研究を行った。また、Tsukuba情動系ラットを野外フィールドにおいて自然繁殖させ、生態学的研究を行った。1.Tsukuba情動系ラット(THE系とTLE系)のP_1、P_2、F_1、F_2、B_1、B_2を用いてランウェイ・テストの諸測度について古典的遺伝分析を行い、それぞれの遺伝構築を検討したところ、例えば、選択指標である通過区画数には、♀では優勢効果のない中間遺伝が、♂では高情動側への指向優勢が見いだされた。また、各測度間の遺伝相関、諸測度の遺伝率、遺伝子座の推定値を求めたところ、遺伝子座の最小推定値は♀で2〜4、♂で2〜3であった。2.Tsukuba情動系ラットの脳内生化学物質を定量したところ、例えば視床下部のAD濃度がTLEの方がTHEより高いなど、両系の脳内モノアミンおよび代謝産物濃度に様々の生化学的差異が見いだされた。3.Tsukuba情動系ラットのシェルター付きオープンフィールド・両端部屋付き直線走路・I迷路における諸行動、ホーディング行動、穴掘り行動、攻撃行動等が研究され、両系の行動上の差異が比較・検討された。4.Tsukuba情動系ラットの味覚嫌悪学習が、その習得、把持、消去、外部刺激の効果に関して研究された。消去において系統差が見られた。5.ランウェイ、オープンフィールド、I迷路におけるラットとマウスの諸行動を主成分分折して、主因子を抽出した。6.野外フィールドでのTsukuba情動系ラットの性行動、社会行動、日周リズム等が研究され、個体数の推移も分析された。また、野外フィールド育ちによる行動変容についても研究された。
著者
福林 徹 宇川 康二 新津 守 阿武 泉
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

2種類の前十字靱帯再建例に対してその筋萎縮とリハビリテーションによる回復過程をMRIを用いて検討した。1.腸脛靱帯を用いて関節内外2重再建を行い術後1年を経たスポーツ選手10名の検査結果では健側と比較して大腿四頭筋の体積は平均97%、大腿屈筋の体積は102%と膝伸筋に萎縮が見られた。大腿四頭筋の中でも内側広筋は健側の92%と最も萎縮が強く以下中間広筋、外側広筋、大腿直筋の順であった。また靱帯再建のため腸脛靱帯を採取したことにより大腿四頭筋全体に外旋傾向が見られた。外旋は外側広筋に一番強くまた末梢に行くほど増加し、平均として健側に比較し40%程度増加していた。CYBEXによる筋力測定では60deg/sec、180deg/secとも10〜15%程膝伸展筋筋力は健側より劣っていたが、屈筋筋力に差はなかった。MRIにより等尺性筋収縮時と筋弛緩時を比較すると筋収縮時は大腿四頭筋の外旋傾向は減少していた。2.半腱様筋腱と薄筋腱を用いて前十字靱帯の再建を行い1年以上経た33例では、大腿の外旋傾向は見られなかったものの、やはり内側広筋や中間広筋を中心として5〜9%程度の筋萎縮があった。靱帯再建のため採取した薄筋と半腱様筋はまだ正常な筋力ボリュームの60%と71%を維持しておりTagging Snapshotにて筋肉収縮が確認された。半膜様筋と大腿二頭筋のわずかな肥大が半数に観察された。薄筋腱と半腱様筋腱の再生は見られなかった。大腿筋群のこれらの形態変化は、膝関節伸展と屈曲のピークトルクと軽度の相関があった。
著者
萬場 光一 牧田 登之 利部 聡
出版者
山口大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

ファブリチウス嚢組織学的所見と電子顕微鏡および免疫組織学的リンパ球の同定1.ファブリチウス嚢の組織は基本的に、最内層の上皮、粘膜固有層と粘膜下組織、その中に特異的に発達したリンパ濾胞および被膜より構成されていた。2.孵化当日の濾胞のサイズを計測すると、濾胞の大きさは小型で約100μm、特に皮質の発達は悪かった。2〜3週令では濾胞は更に大きくなり、約220μmであり、皮質の発達は良好なところと不良なところがあった。6週令では、濾胞は4、および5週令のものより大型化し、約500μmとなり、皮質は発達し、髄質との間にある基底膜の波状化が認められた。7週令では、濾胞は最大に達し、約700μ以上のものも認められた。また皮質の発達も良好であった。9週令では、濾胞の大きさは減少するものも認められ、約400μmに減少したが、皮質にはまだ衰退は認められなかった。11〜12週令になると、濾胞の大きさは約150〜400μmのものが混在し、皮質にも一部菲薄化が見れた。14週令では濾胞の大きさは約300μmで、大小のものが見られ、皮質も菲薄化したものが多くなっていた。以上の結果より、1.濾胞サイズの検討は、ウズラの成長とリンパ濾胞の発達・消退が極めて密接な関係にあることを、このウズラで初めて見い出すことが出来た。2.免疫組織学的リンパ球の同定ではTリンパ球よりもBリンパ球の存在が多数う認められた。しかし、どちらにも分類されないものも観察された。これらの同定については今後の課題であろう。4.透過型電子顕微鏡によるリンパ球の分類を行ったところ、濾胞皮質には中リンパ球が見られ、有糸分裂も多数認められた。髄質には大、小のリンパ球が認められ、ヘマトキシリン好性の顆粒を持つ、所謂顆粒状物質含有細胞も認められた。5.また、走査電顕でも細胞表面の突起の有無により細胞の同定が可能になった。
著者
徳永 文稔 小出 武比古
出版者
姫路工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

我々は、抗血栓薬ワルファリン投与時に生合成されたビタミンK依存性凝固因子は、分泌されず細胞内で分解されることを示したが、これは薬物誘導による小胞体分解の唯一の例である。本研究ではこのモデル系を用い、平成8年度には、ワルファリン下の細胞内プロテインCは、GRP94、GRP78(BiP)、カルレティキュリンなどの小胞体内シャペロンと会合していることをDSP架橋を用いて明らかにした。また、ワルファリン下プロテインCの細胞内分解は、ラクタシスチンやZ-Leu-Leu-Leu-Hなどのプロテアソーム阻害剤により阻止されつことから、最終的に小胞体内から細胞質へ逆行輸送され、プロテアソームにより分解される可能性が示された。平成9年度においては、ビタミンK依存性因子においてワルファリン投与時に速やかに分解されるプロテインCと比較的緩やかに減少するプロトロンビンをモデルに、γ-カルボキシル化と小胞体分解の感受性を調べた。内在的にこれら因子を産生するHepG2細胞では、ワルファリン下のプロテインCはほとんど分泌されず顕著な細胞内分解を受けたが、プロトロンビンはワルファリン下でも約50%が分泌した。そこで、プロトロンビンのGlaドメインをプロテインCのものと置換したキメラ(GDll/PC)とプロトロンビンのプレプロ配列からGlaドメインまでをプロテインCのそれと置換したキメラ(PPGDll/PC)を作製し、BHK細胞を用いてワルファリン感受性を調べた。その結果、意外なことに両キメラはビタミンK下でγ-カルボキシル化は正常であるにも拘わらず分泌せず細胞内分解を受けた。以上の結果は、Glaドメインとその周辺領域との相互作用も小胞体分解の要因であることを示している。
著者
岡田 恭明
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

都市部の幹線道路の両側には中高層ビルが建ち並び, それに加えて高架道路が併設されている場合も見受けられる。このような沿道での音環境は, 建物壁面や高架裏面からの反射音の影響によって悪化することは良く知られている。そこで, 本研究では高架・平面道路併設部を対象に建物壁面と高架裏面からの反射音による騒音の増加量を計算するモデルについて検討を行った。その結果, 道路周辺の騒音レベルは, 建物や高架道路からの反射音の影響により8dB程度増加すること, またその計算結果は室内模型実験と比較して妥当な値であることを明らかにした。
著者
森下 恵造 杉浦 英雄 河村 裕一
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

サブバンド間遷移光吸収が観測できる多重量子井戸を作製するためには表面平坦性、界面急峻性の良い薄膜作製法の確立が重要である。このためには原料ガス(アンモニア、トリメチルガリウム)を基板と水平に、熱対流を押さえ、原料を基板に押圧するためのガス(水素、窒素)を基板と垂直に導入する常圧ツーフロー型有機金属気成長法が最適と考えた。この方法を用いて高品質なGaNを作製することに成功した。この方法で最も大きな影響を及ぼすのは押圧ガス菅と基板の角度である。押圧ガス管の軸と基盤の角度はほぼ垂直であるが、押圧ガスが約1℃原料ガスの方向を向くように設定しなければならない。最適角度に設定すると横方向成長速度の大きい、大きく綺麗な六角錘や六角柱が積層した連続膜になる。しかし最適角度から0.05度ずれると六角錘が欠けた状態になり、0.3度ずれると連続膜とならず島状成長となり、0.7度もずれるとGaNは全く成長しなくなる。上記の結果は原料流速が45cm/s、押圧ガス流速20cm/sの場合である。最適角度は原料流速に依存し、流速が大きくなるほどより傾けなければならない。原料ノズルは基板と平行がよい。下向きになると基板中央では良い膜ができるが、下流側では成長しなくなる。上記の最適角度は原料ガスの基板上での滞在時間を大きくし、アンモニアの分解効率を高め、反応性窒素を効率よく基板に供給する配置となっている。加圧ツーフロー型有機金属気相成長法を用いて、今後短波長サブバンド間遷移発光の研究を続けていく予定である。