著者
Kenji Karako
出版者
International Research and Cooperation Association for Bio & Socio-Sciences Advancement
雑誌
Drug Discoveries & Therapeutics (ISSN:18817831)
巻号頁・発行日
pp.2022.01073, (Released:2022-09-06)
参考文献数
6
被引用文献数
1

Japan is facing the largest outbreak of COVID-19 in history in 2022. The number of new infections per day surpassed 200,000 for the first time in July and peaked in August. Japan has required the reporting of information on all infected persons, but maintaining this system is difficult. Starting in September 2, 2022, four prefectures have implemented a trial policy to limit the infected that must be reported in order to reduce the burden on medical personnel. The policy obliges medical facilities to report only people with a high-risk infection, but the number of the infected will continue to be counted regardless of whether they have a high-risk or low-risk infection. More prefectures are expected to adopt this policy in the future.
著者
伊藤 俊 松田 巌
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.566-574, 2021-09-05 (Released:2021-09-05)
参考文献数
49

表面物理学は,物理学の諸分野の中でも「直接見ること」を求め発展してきた点にその独自性がある.その象徴が,走査型トンネル顕微鏡(1986年ノーベル物理学賞)を用いた表面原子構造の観測であろう.一方,光励起で放出される電子を利用した光電子分光(1981年ノーベル物理学賞)により,エネルギー・運動量・スピンすべての情報を分解したバンド構造を直接観測することもできる.物理学の抽象的な概念を,疑いようのない形で描き出すことに表面物理学の醍醐味がある.近年の表面物理学での一大トピックがトポロジカル物質の研究である.トポロジカル物質は「ねじれた」電子状態をもち,そのねじれに対応した特別な電子状態を表面に作り出す.このトポロジカル表面状態は,系の対称性によって不純物から保護され,無磁場下でスピン流を担う驚くべき性質をもつ.表面の数原子層に局在するこの電子状態の研究において,光電子分光による直接観測が大きな力を発揮し,多様なトポロジカル相の存在が実証されてきた.さらに,トポロジカル物質の研究で重要な役割を果たしてきた元素がビスマスである.安定元素中最大の原子質量をもつビスマスは巨大なスピン軌道結合を有する.これを「ねじる」原動力として,多彩なトポロジカル物質が作り出されている.一方でBi単結晶自体は,その強すぎるスピン軌道結合によってねじれが戻ってしまい,通常の物質であるとされてきた.しかし近年異議が唱えられ,我々はビスマス薄膜中に形成される量子井戸状態を活用して,実験的に困難を極めるビスマスのトポロジー決定に成功した.最近のさらなる理論・実験研究とともに,ビスマス表面において多様なトポロジカル相が実現していることが解明されつつある.ビスマス薄膜中の量子井戸状態は,それ自体が表面物理学の歴史的なトピックでもある.半金属であるビスマスのバンドが量子化されることにより,ある膜厚を境に絶縁体化することが半世紀前に予言されていた.電気伝導や光電子分光による測定が行われてきたが,先行研究の間に奇妙な矛盾が残っていた.我々は,高品質なビスマス薄膜の測定により,ビスマスのバンドが量子化によって絶縁化する過程を描き出すことに初めて成功した.量子化モデルと著しく異なる膜厚依存性,そして準位の縮退の観測により,表面状態由来のクーロン反発効果によって薄膜内部の絶縁化が促進されることを明らかにした.この描像は先行研究の矛盾を解決し,表面状態の電子相関による新たなサイズ効果を提示する.薄膜内部の絶縁相が実証されたことで,トポロジカル表面状態の伝導測定が,そしてさらには表面における量子極限での伝導測定が展開できることとなる.奇しくも最近,走査型トンネル顕微鏡により,ビスマス表面における多体電子相が発見されたばかりである.光電子分光による直接観測を駆使することで,トポロジカル相や絶縁体相の実験的検証について進展がもたらされた.だがこれは次の出発点である.存在が明らかになったトポロジカル相や多体電子相がビスマス表面でどのような応答を示すのか.物性物理学の黎明期から研究されてきたビスマスは,依然新たな物性探求の場を提供し続けている.
著者
新井 蔵吉
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.737-747, 1972-11-25 (Released:2011-03-08)
参考文献数
38

1. A new assay method of chemotherapeutic agents, a vertical diffusion assay method at low temperature (15°C) using Serratia marcescens as the test organism, was developed. S. marcescens No. 33 strain, has suitable biological characteristics for this new method. The microbiological activity of bacteriostatic agents such as sulfa drugs is successfully evaluated by this method. The method can also be applied widely for the assay of antibiotics which are active against Gram-negative bacilli.2. S. marcescens No. 33 strain was found to grow anaerobically under certain culture conditions using a new synthetic medium and protein-free medium modified from the experimental results of QUASTIL and STEPHENSON. This method is very useful for the assay of chemotherapeutic agents which are adsorbed onto protein.3. In this method, amount of the samples to be assayed can be minimized by using a gauze, sterilized and impregnated with the sample solution. The amount of the sample solution required is less than 0.1 ml.
著者
牧野 智和
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.34, pp.62-71, 2021-07-31 (Released:2022-08-31)
参考文献数
27

In this paper, I analyze the governmentality of workshops in town management. “Community Design” proposes methods to take the problems of the town as one’s own and to solve the problems while managing the team by oneself. “Design Thinking” is completely workshop-like, the idea being to feed on the mistakes and criticisms of the process for the next step forward. These elements are incorporated in today’s town management, especially in creative space design. It appears difficult for sociologists to become involved in situations where there is no “outside” of the workshop. However, I think what sociologists can do is offer a standard and ambiguous description.
著者
上薗 薫 綿貫 仁美 長谷川 桜
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2022年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.99, 2022 (Released:2022-09-02)

【目的】灰干しとは、火山灰を用いた熟成乾燥加工法の一種で海産魚に対して用いられることが多い。研究者らは魚介類だけではなく、食肉、野菜、果物等に調理加工の下処理手法として活用検討し、加工食品への応用検討も行っている。魚介類では適度に水分を火山灰が吸収し、併せて魚臭やサメやエイではアンモニア臭も吸着し、食味が向上する。本研究では本特性に着目し、渋柿を試料とし、脱渋工程に火山灰干しが活用できるか検討することを目的とした。【方法】試料は平核無、刀根早生2品種とした。1)灰干しの手法は三宅島灰で行われている加工法を基本とした。灰干しに用いる火山灰は環境庁三宅支庁から許可された三宅島火山灰を使用した。2)各試料を火山灰に6時間、12時間、18時間、24時間浸漬処理を行い、その後、低温機械乾燥で干し柿とした。比較対照の脱渋方法としては、アルコール脱渋法を用いた。3)灰干しと灰干し未処理試料に対し、紫外吸収法で各試料の渋味判定と併せてD(+)-カテキンと比較し、カテキン含有量を判定した。また、フォリン・デニス(Folon-Denis)法も用い、含有タンニン定量を行った。【結果】灰干し処理後及び灰干し未処理(アルコール脱渋)後に低温乾燥を行った各々の試料のタンニン定量の結果は、脱渋処理の違いに差は認められず、いずれもほぼ同等のタンニン含有量を示した。よって、灰干しによる脱渋作用が示唆された。加えて、試料により灰干しのデメリットなる火山灰のにおいは、24時間火山灰浸漬処理を行っても火山灰独特のにおいが試料へうつらず、食味も比較対照手法品と同等の甘さが認められた。
著者
松本 功
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.365-371, 2005 (Released:2005-12-31)
参考文献数
26

関節リウマチ(RA)は世界で有病率約1%と頻度の高い自己免疫疾患であるが,病因については不明な点が多い.昨今B細胞表面抗原に対する抗体である抗CD20抗体がRAにも効果が強いことが証明され,自己抗体やB細胞の重要性が示唆されている.RAでは30年以上前よりリウマトイド因子(RF)を自己抗体のマーカーとしてとらえてきが,その病原性については明らかでなく,病勢を反映しないことも臨床上しばし見かける.抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体は多くの症例に認められ注目を集めているが,その他にも抗glucose-6-phosphate isomerase (GPI)抗体,抗カルパスタチン抗体,可溶型gp130に対する抗体,II型コラーゲンに対する抗体などがRA患者血清に同定されている.今回の総説ではRAにおける上記自己抗体の病原性と産生機構に焦点をあて,特にそれらを考える上で重要な自己反応性T細胞,免疫複合体やFcガンマ受容体(FcγR)などについて,主にヒトの解析から判明してきた最近の知見を含めて述べさせていただく.
著者
蛯名 岳志 永嶋 高大 西村 由香
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0979, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】座位は,立ち上がり動作の準備段階として捉えることができ,座位姿勢の状態を把握することは立ち上がり動作を分析する上で重要である。立ち上がり動作は椅子の高さ,肘掛けの有無など周囲の環境に影響を受け,環境設定によっては動作遂行者に掛かる負荷が変化しうる。即ち,環境設定によって立ち上がり動作の遂行を容易くすることや難易度を調節することができると言える。また,立ち上がり動作における骨盤の前傾は第1相で重心を前方に移動させる際に重要な役割を担っているとされている。そこで本研究の目的は,環境設定によって座位での骨盤の前傾を促せるかどうかを明らかにすることとした。【方法】対象は健常成人20名(男子10名,女子10名,年齢21.6±0.6歳,身長165.5±8.6cm)とした。座面高を3条件,座面奥行きを2条件とし,それぞれの組み合わせで骨盤傾斜角度の測定を行った。対象者のうち8名に対しては下肢荷重量の測定も行った。座面高は下腿長,下腿長+5cm,下腿長+10cmの3条件,座面奥行きは大腿長1/2が座面端上にくる条件(以下,座面奥行きが広い条件)と大転子が座面端上にくる条件(以下,座面奥行きが狭い条件)の2つとし,測定は座面高が下腿長,下腿長+5cm,下腿長+10cmの順に,座面奥行きはランダムとし,座位姿勢は,左右足部を肩幅程度に離してもらい,足関節は底背屈0°,上肢は胸部前方で組みリラックスして座るよう指示した。骨盤傾斜角度の測定方法は,上前腸骨棘と上後腸骨棘を結んだ線と水平線のなす角とした。触知にてランドマークの確認を行い,右側からビデオカメラで撮影後,画像解析ソフトImage Jを用いて算出した。測定は3回行い,後傾方向を正の値,前傾方向を負の値とし,平均値を算出した。対象者の8名に対しては,同時に体重計を足底へ設置し,同条件下での下肢荷重量を測定した。荷重量は体重で除し,補正した。座位における座面高と座面奥行きの条件による骨盤傾斜角度と下肢荷重量を比較し,両者の相関関係をみた。分析は,座面奥行きによる差に対しては対応のあるt検定,座面高による差に対しては反復測定の一元配置分散分析として,繰り返しのない二元配置分散分析を行い,多重比較法はTukey-Kramer法を用いた。危険率は5%未満とした。相関関係はピアソンの相関係数の検定を用いた。【結果】骨盤傾斜角度は,座面奥行きの広い条件では,どの座面高でも有意差を認めなかった(下腿長:12.4°±8.3°,下腿長+5cm:11.6°±8.1°,下腿長+10cm:12.9°±7.6°)。座面奥行きの狭い条件では,下腿長(17.7°±6.8°)と下腿長+5cm(14.9°±6.7°),下腿長+10cm(12.8°±7.6°)との間でそれぞれ有意差を認め(p<0.01),座面の高い方が骨盤が前傾していた。また,座面高が下腿長,下腿長+5cmでは,座面奥行きによって骨盤傾斜角度に有意差があった(p<0.05)。下肢荷重量は,座面奥行きが広い条件で下腿長(21.5%±1.7%)と下腿長+5cm(18.8%±3.2%),下腿長+10cm(12.5%±2.7%)との間に,下腿長+5cmと下腿長+10cmとの間に有意差を認め(p<0.05),座面の高い方が荷重量は少なかった。座面奥行きの狭い条件では,下腿長(24.4%±3.9%)と下腿長+10cm(25.6%±3.4%)との間に有意差を認めたが,下腿長+5cm(24.6%±3.1%)は他との有意差がなかった。骨盤傾斜角度と下肢荷重量の相関関係について,座面奥行きが広い条件では相関関係が認められず(r=-0.149,p=0.488),座面奥行きの狭い条件では負の相関が認められた(r=-0.441,p=0.031)。【考察】座面奥行きの狭い条件では,座面を高くすると骨盤の前傾を促すことができ,下肢荷重量が多くなることが分かった。座面奥行きの狭い条件で座面を高くすることは,自身での骨盤前傾動作が困難な方の骨盤前傾を促し立ち上がり動作を簡易的にすること,運動療法時の立ち上がり動作の段階的な負荷量決定の指標になる可能性が示唆された。また,日常生活において立ち上がり動作が困難な方の身体状況に合わせた高さの椅子や昇降式ベッドを導入することで,活動性の拡大につながると考える。座面奥行きの広い条件では下肢荷重量は少なかったが,奥行きの狭い条件よりも骨盤が前傾していたことから,随意的な骨盤前後傾運動を行う際には有用な環境である可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】座面高,座面奥行きによる環境を含めた設定によって座位骨盤傾斜角度の調節が可能であることが示唆された。運動療法や日常生活の環境設定の一助となる。
著者
久保 達彦 藤野 善久 村松 圭司 松田 晋哉
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.299-303, 2013-12-01 (Released:2013-12-14)
参考文献数
10
被引用文献数
2

英国では2010年からThe Statement of Fitness for Work(通称Fit Note)と呼ばれる就業支援を目的とした医療文書を地域医療を担うGeneral Practitioner(GP)が発行する仕組みが導入されている.今回,我々はFit Noteの導入影響に注目しつつ英国の産業医制度の現状について現地で2名の産業医に対してインタビュー調査を実施した.現地の産業医からは産業医が不足して国民全体,とりわけ中小企業や自営業者には産業保健サービスが行き渡っていないことへの強い課題認識が繰り返し聴取された.Fit NoteはGPの産業保健への参加を誘導するツールとして位置づけられ,地域医療の担い手であるGPは産業保健の新たなパートナーとして期待されていた.現地の産業医はFit NoteおよびGPの産業保健への参入を英国の産業衛生の着実な前進と評価していた.
著者
髙橋 南海子 岡田 昌毅
出版者
産業・組織心理学会
雑誌
産業・組織心理学研究 (ISSN:09170391)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.121-138, 2013 (Released:2019-08-05)

Characteristics of the feeling of self-growth resulting from job hunting were investigated. New employees were interviewed about the reality and the effects of job hunting. Results indicated that the feeling of self-growth specific to job hunting included "understanding of society" and "the power to act." Next, a questionnaire was developed based on the concept that was extracted. New company employees with less than 6 months work experience (n = 296) responded to the questionnaire. Factor analysis of the responses indicated five factors: "Interpersonal relationship" "Self-understanding and self-acceptance" "Active participation in society" "Control of feelings" and "Acquisition of problem solving skills." It was also suggested that specialty, the amount of effort spent on the activity, the degree of difficulty of the activity, and the satisfaction from the results of the activity influenced the feeling of growth experienced through job hunting. Furthermore, path analysis was conducted and it was confirmed that "Acquisition of problem solving skills," "Self-understanding and self-acceptance" influenced the behavior before entering a company.
著者
橋之口 朝仁 定永 倫明 本坊 拓也 吉田 倫太郎 坂井 邦裕 松浦 弘
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.1538-1541, 2019 (Released:2020-03-18)
参考文献数
7

症例は54歳,女性. 21年前に子宮頸癌 (Stage I B)に対して腹式単純子宮全摘術,術後放射線療法を受けた.増大傾向にある左側腹部に存在する腫瘍の精査加療目的で当院外科へ紹介となった.MRIでは左腎外側に径11cm大の嚢胞性腫瘤を認めた.外来受診時,「子宮頸癌手術時に卵巣を温存し吊り上げている」とのことであり,婦人科へコンサルトした.子宮頸癌の術後放射線療法に際して,卵巣機能温存目的に被曝を避けるため卵巣を照射野外に移動固定する術式が選択された可能性が考えられた.卵巣移動術後の左卵巣嚢腫を疑い,腹腔鏡下腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的検査で卵巣粘液性嚢胞腺腫 (良性)と診断した.術後は順調に経過し,術後7日目に自宅退院となった.