著者
川崎 恭治
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.919-927, 1983-12-05
被引用文献数
2

無秩序な状態が不安定になってそこから新しい秩序が出来て行く過程は自然界における最も魅力ある現象の一つである. この解説では自由度の数が無限に大きい場合について, この問題を相転移を例にとって説明する. 特にレーザー発振のような小数自由度系では見られない側面に焦点をあてる. この困難な問題を三つの段階に分けて考え, その中で界面, キンク等のトポロジカルな欠陥の果す役割について詳述する. その他, 不整合相における秩序相形成や物性物理以外の分野との関連についても簡単に触れる.
著者
阪口 祐介
出版者
桃山学院大学
雑誌
桃山学院大学社会学論集 (ISSN:02876647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.47-68, 2016-02

Since the 2011 Fukushima Daiichi nuclear power plant accident, the negative opinion to nuclear power plant has increased and the political debates over the pros and cons of nuclear energy has been activated. This paper attempts to reveal empirically the social determinants of attitudes towards nuclear energy. We focus on generation, gender, and social stratification as the determinants, and examine for the value mediated mechanism. Previous researches have indicated that women tend to have negative opinion to nuclear power and young people tend to have positive opinion to that. In this paper, we assume that these gender and generation differences are mediated by the values. For example, it is expected that women tend to be egalitarian, and egalitarian tends to have negative opinion to nuclear power. In order to examine the value mediated mechanism concerning generation, gender, and social stratification, we do analysis by using structural equation modeling. The data is "The Public Opinion Survey on Internationalization and Political Participation of Citizens" that was conducted in November 2013 by the nationwide sampling mail survey. The findings reveal that the political distrust and the egalitarianism had a strong influence on the antinuclear orientation. Concerning the value mediated mechanism, we found out that the gender difference was mediated by the political distrust and the egalitarianism. This results means that women tend to be political distrust and egalitarianism, for that reason they tend to have the antinuclear orientation. We also found out that the generation difference was mediated by the political apathy. Concerning social stratification, high income people tend to be antiegalitarianism and for that reason they tend to support for the nuclear power.
著者
伴埜 行則 並河 幹夫 三輪 真理子 伴 創一郎 折戸 太一 瀬村 俊亮 川上 雅弘 土井 直也 三宅 司郎 石川 和弘
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.178-187, 2013-06-25 (Released:2013-07-18)
参考文献数
29
被引用文献数
1 3

チェルノブイリ原子力発電所事故以後,京都市内に流通する食品中の放射性ヨウ素(131I)および放射性セシウム(137Csおよび134Cs)のモニタリングを実施してきたが,2011年3月の福島原子力発電所の事故は,調査の重要性を改めて認識させることとなった.福島原子力発電所事故前後において検出した核種と検出率,および濃度について検討した.検査にはゲルマニウム半導体検出器を用いた.福島原発事故以前は,輸入品,国産品をモニタリングの対象とした.核種としては137Csのみが検出された.魚介類からの検出頻度は約70%であり,濃度は最高でも1.7 Bq/kgであった.乾燥キノコを除くキノコ類からの検出頻度は,83%と高く,濃度の最高値は7.5 Bq/kgであった.野菜類は,207検体のうち2件のみ(根菜を除く)で検出したが濃度も明らかに低かった.福島原発事故以降は,東北・関東地方産の流通食品を検査した.3月23日に中央卸売市場から採取したミズ菜から3,400 Bq/kgの131I,280 Bq/kgの134Cs,および280 Bq/kgの137Csを検出したのをはじめ,3月と4月に検査したすべての葉菜類でこれらの放射性物質を検出した.しかし,11月以降はすべてが不検出となった.魚介類から検出された137Csは,平均で7.9 Bq/kgだった.肉類では,トレーサビリティーによって汚染稲わらを与えられたことが判明したウシの肉からのみ暫定規制値を超える137Csが検出された.また,甲状腺に対するリスクが懸念される131Iは,5月以降すべての試料で不検出となった.基準値を超える食品が京都市内を流通する恐れは,すでにほとんどないと考えられた.
著者
貴堂 嘉之
出版者
ジェンダー史学会
雑誌
ジェンダー史学 (ISSN:18804357)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.5-19, 2021-10-20 (Released:2022-10-14)
参考文献数
30

19 世紀末にイギリスで産声をあげた優生学は、アメリカ合衆国やドイツ、日本などへと広がった。その過程で、各国で実施された優生断種――弱者に「不適者」の烙印を押し、精管や卵管の結紮・切除などにより生殖能力を奪う行為――はどのようにして始まり、広がっていったのだろうか。近年、優生学に関する研究史では、「不良な子孫の出生を防止する」ための禁絶的優生学(Negative Eugenics)の実践、とりわけ「断種」に関する研究が分厚く蓄積されるようになっている(Stern 2005A; Stern 2005B; Stern 2011; Kline 2001; Largent 2008; Lombardo 2008; Black 2012; 小野2007)。本稿では、世界で最初に優生断種を法制化した米国の優生学運動に焦点をあてる。なぜアメリカ中西部のインディアナ州が世界初の断種法を制定し、それはどのようにして全米へと広がっていったのか。「不適者」への断種が実践された歴史の現場と時代背景を検証する。また、優生学者が夢見た「アメリカ」の改良計画とはいかなるものであり、断種の対象とされた「不適者」とはいったい誰だったのか。米国での断種は実際には1980 年前後まで行われ、その総数は6 万件以上となるが、本稿では1907 年から1920 年代頃までの断種手術の開始期に絞って、この断種を推進した医師や優生学者らに焦点をあてて考察する。ジェンダー史において優生断種を問うことの意義とは、これが性と生殖に関する女性の自己決定権(リプロダクティブ・ライツ)や、子どもの数を調節するための避妊や中絶といった生殖技術をめぐる問題、「命の選別」をめぐる論争、生殖への国家の介入や人口管理など、再生産領域にかかる現在進行形の問題とつながっているからである(貴堂2010)。優生学の実践は、科学的人種主義とともに20 世紀前半に全盛期を迎え、ナチ・ドイツの優生政策・人種政策への反省から第二次世界大戦後には衰退していったとされる。しかし、実際には本稿で取りあげる米国のような戦勝国では戦後もそれが温存され、GHQ の占領下にあった日本では戦後になって優生断種が開始された。本稿は、最初期の米国における優生断種の歴史を、その担い手や被害者に関するジェンダー視点からの分析を中心に検証するが、この時期は、望まない妊娠に女性が苦しむなか、産む産まないは女性が決めるべきだとマーガレット・サンガーが産児調節運動を開始し、生殖のコントロールをめぐる格闘が開始された時期である。女性解放の立場から運動を開始したサンガーと優生学との交差が、20 世紀初頭の性と生殖をあり方をめぐる政治にどのような影響を与えたのか、その歴史的意義についても考察してみたい。

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著者
山本 明夫
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.620-624, 2007-08-01 (Released:2011-10-14)
参考文献数
17
著者
稲葉 奈々子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.238-252, 2016 (Released:2017-09-30)
参考文献数
44
著者
波多野 恭弘
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.836-840, 2016-12-05 (Released:2017-10-31)
参考文献数
21

話題―身近な現象の物理―物理屋のための地震学入門
著者
波多野 雄治
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.713-717, 2021 (Released:2021-10-10)
参考文献数
20

軽水炉,重水炉,核融合炉におけるトリチウム発生機構,トリチウム取扱量および放出量,トリチウム分離の原理や福島第一原子力発電所処理水へ適用する際の問題点について解説した。トリチウムについて考える際には定量的な議論が不可欠であることから,できるだけ具体的な数値を示した。数値を比較しながら読んでいただけると幸いである。
出版者
豊橋聯隊区管内出征将士事蹟編纂会
巻号頁・発行日
vol.第1輯 (蘆溝橋事件より大山大尉遭難事件まで), 1938
著者
Issei KATO Yuta MASUDA Kei NAGASHIMA
出版者
National Institute of Occupational Safety and Health
雑誌
Industrial Health (ISSN:00198366)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.325-333, 2021-08-18 (Released:2021-10-05)
被引用文献数
5

Surgical masks are widely used for the prevention of respiratory infections. However, the risk of heat stroke during intense work or exercise in hot and humid environment is a concern. This study aimed to examine whether wearing a surgical mask increases the risk of heat stroke during mild exercise in such environment. Twelve participants conducted treadmill exercise for 30 min at 6 km/h, with 5% slope, 35°C ambient temperature, and 65% relative humidity, while wearing or not a surgical mask (mask and control trials, respectively). Rectal temperature (Trec), ear canal temperature (Tear), and mean skin temperature (mean Tskin) were assessed. Skin temperature and humidity of the perioral area of the face (Tface and RHface) were also estimated. Thermal sensation and discomfort, sensation of humidity, fatigue, and thirst were rated using the visual analogue scale. Trec, Tear, mean Tskin, and Tface increased during the exercise, without any difference between the two trials. RHface during the exercise was greater in the mask trial. Hot sensation was greater in the mask trial, but no influence on fatigue and thirst was found. These results suggest that wearing a surgical mask does not increase the risk of heat stroke during mild exercise in moist heat.
著者
林 知己夫
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.81-87, 1989-03-25 (Released:2009-07-23)
参考文献数
9
被引用文献数
1

いわゆる数理統計学と異なった立場のものとして, 「データ解析」というものが生まれてきた。しかし, その内容はさまざま各人各様で, 何となく「それらしいあたり」を議論しているのである。いま得られているデータからどう情報をとり出すか, ということを主な狙いとすることは共通の点であるが, その得られているデータの背景をどこまで考慮するかという点になると差が大きくなる。この点は後で触れよう。たしかに「データ解析」という名前はそう古いものではないが, J.W.TukeyがThe Future of Data Analysis (Annals of Mathematical Statistics Vol.33, 1962) が発表されてから数理統計学の世界で有名になってきた。しかし, 日本においては「統計数理」の名において, 1947年ごろから「データによる現象解析」を志向した動きがあった。どうデータをとり, どう解析して情報を取り出すかという立場が表明された。しかし, 「データ解析」という言葉は使われていなかった。いわゆる推定論, 検定論を中心とする数理統計学に反旗をひるがえし, サンプリング調査によりデータを獲得することを土台にして, データを分析することを考えていたのである。それはさておき, データ解析というとき, 英米流 (英語を話す地域という意味である) の数理統計学的発想のデータ解析とTukey流データ解析 (数理統計学を主体とする前記英米流ではない)・日本流 (といっても日本はEnglish speaking peopleに属すると見做されており, 日本で数理統計学を研究する人とは前述の英米流に属している, 日本において, 数量化・分類-クラスター化-行動計量学を中心にする人々がここでいう日本流である)・フランス流 (フランス・イタリア・スペイン・東欧・アフリカ・中南米など) のそれとは内容が異なっている。英米流では推論的統計学 (推定論・検定論・統計的決定理論, あわせてinferential statisticsという) からやはり離れられないのである。フランス流は, 表現の問題が中心であってdescriptive statisticsと胸を張って言い, 単純なinferential statisticsを見下しているのである。Tukeyによるデータ解析は英米流から抜け出ており, その内容はexploratory data analysis (探索的データ解析) と言い, 統計量統計学からの脱皮, 素直にデータを眺め情報をさぐり出すという立場をとっており, 日本流, フランス流に近い形になっている。データ解析という言葉が英米圏から出たにもかかわらず, inferential statisticsをぬけ切らぬ形でデータ解析が発展してきているのは注目に値する。以下に日本流, Tukey流, フランス流について説明しよう。
著者
城戸 佐登子 林谷 秀樹 岩崎 浩司 Alexandre Tomomitsu OKATANI 金子 賢一 小川 益男
出版者
The Japan Society of Veterinary Epidemiology
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.77-87, 2001-12-20 (Released:2010-05-31)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

1995年2月~1995年6月の5ヶ月間に, 関東地方1都6県の51動物病院で, ならびに1997年10月~1998年3月の6ケ月間に, 関西, 中国地方を中心にする1都2府10県の25動物病院で, カルテから選んだ15歳以上の犬および猫 (以下, 長寿犬または長寿猫とする) と, 1994年4月~1995年3月の1年間ならびに1997年12月~1998年10月の11ケ月間に, それぞれ上記の51と25動物病院に来院し, 5~9歳で死亡した犬および猫 (以下, 対照犬または対照猫) について, 性, 年齢などの宿主要因や食事や散歩などの飼育状況などについてアンケート調査を行い, 各項目についてオッズ比を算出し, 長寿に関連する要因の抽出を試み, 以下の成績を得た。1) 長寿群と対照群との間で, 犬では, 品種, 避妊の有無, 飼育の目的, 飼育場所, 散歩の頻度, 同居動物, 食事内容, 牛乳の給与および間食の項目で, 猫では, 性別, 避妊の有無, 飼育の目的, 飼育場所, 同居動物, 食事内容, 牛乳の給与および間食の項目で, 両群問に有意差が認められた。2) 各項目ごとに長寿に関与するオッズ比を算出すると, 犬では「雑種」, 「毎年予防接種をした」, 「毎日散歩をした」, 「同居動物がいた」, 「食事として手作り調理を与えた」および「牛乳を与えた」のオッズ比がそれぞれ3.36, 2.40, 3.21, 2.44, 2.46および3.75で有意に高く, 「室外で飼っていた」が0.25で有意に低かった。猫では「雌」, 「同居動物がいた」, 「食事として手作り調理を与えた」および「牛乳を与えた」のオッズ比がそれぞれ5.16, 2.32, 2.34および2.00で有意に高く, 「室内外で自由に飼っていた」が0.41で有意に低かった。3) 以上の結果より, 長寿に関与する項目として抽出されたものは, 犬猫ともに飼育者が飼育動物に対して行っている適切な健康管理や飼育管理の項目がほとんどであり, 長寿な動物は飼育者から飼育や健康管理に手をかけられたものであることが明らかとなった。得られた成績は, 今後のコンパニオンアニマルの飼育や健康管理を考える上で貴重な基礎知見になるものと考えられる。