著者
村上 守良 六反田 篤 伊東 励
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.169-176, 1979 (Released:2010-10-28)
参考文献数
15

彎曲徴について, 臨床上ならびに歯の解剖学上有効な指針を得るために, 下顎右側の中切歯, 側切歯および犬歯の歯冠長を12等分し, Contracerを用いて歯軸に直交する各断面の輪郭と切縁観輪郭における彎曲徴を角度的に観察した。次のような結果が得られた。1.切縁観輪郭では, 下顎中切歯および下顎側切歯には彎曲徴は認められない。下顎犬歯は明らかに彎曲徴が認められる。2.歯冠各部の輪郭では, 下顎中切歯で切縁側1/4の領域に, 下顎側切歯で切縁側2/3の領域に, 下顎犬歯で尖頭より3/4の領域にそれぞれ明らかに彎曲徴が認められる。3.下顎中切歯において切縁側1/4の領域で明らかに彎曲徴が存在することは他の要素と合わせて左右側鑑別の一助となし得る。
著者
黒沢 文貴
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.145-154, 2009-03

日露戦争の勝利とそれにともなう日本の大陸国家化、そして第二次日英同盟協約の締結とは、日本軍部に大きな衝撃を与えた。陸海軍にはそれぞれ、日本の大陸権益と植民地の維持・拡大を直接的に支える陸軍と、大陸との海上輸送ルート(シーレーン)の確保と対外的抑止力としての海軍という、日本の大陸政策を支える新たな位置づけが与えられたのである。日英攻守同盟は、ロシア海軍の再建を抑止するという点で、日本海軍に相応の軍事的利益を与えるものであった。しかし、ロシアの対日復讐戦を想定する陸軍にとっては、必ずしも純軍事的利益をみいだせるものではなかった。そうした日英同盟評価とロシアを念頭においた種々の国際認識や国防上の見通しが、日英露仏の接近を促す日露戦後の帝国主義的国際環境の変化のなかで、1907年7月の第一次日露協約締結に日本を向かわせる重要な要因となったのである。こうして日露戦後の日本軍部、とくに陸軍は、日英同盟と日露協約の価値と有効性とを常に注視しながら、帝国日本の大陸政策の一翼を担っていたのである。
著者
小島 隆司 市川 一夫
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.3-7, 2012 (Released:2019-11-22)
参考文献数
19

Implantable Collamer Lens(ICL)は後房型有水晶体眼内レンズで,球面矯正のみのものと乱視矯正可能なレンズの2種類が厚生労働省の認可を受けている。手術成績に関しては有効性,予測性,安全性に優れることが本邦および海外にて報告されている。手術にあたっては健常な眼に対する治療であるために,適応を十分考慮し術前の検査を入念に行って安全に施行することが必要である。適応を決める際にはとくに前房深度が十分に確保されていることに注意する必要がある。術前検査で最も注意する点は,正確な屈折を得ることとレンズサイズの決定である。手術においては,外傷性白内障,角膜内皮障害を起こさないように注意してレンズを挿入していく必要がある。手術方法そのものはシンプルであるが,内眼手術に熟練した術者が行うべき手術である。術後早期は瞳孔ブロックが起きていないか,レンズサイズが適切かを調べ,安定したら水晶体混濁の有無について長期の経過観察が必要である。
著者
西尾 俊幸 小田 宗宏 李 秋夢 篠崎 佑子 高橋 愛実
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

各種糖質加水分解酵素の糖転移作用を利用してN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を構成糖として含む特殊構造オリゴ糖を合成し、それらのプレバイオティクス機能について評価を行った。その結果、以前に量産法を確立したN-アセチルスクロサミンを原料として用い、新規な6種類のGlcNAc含有オリゴ糖を合成することができた。これらのオリゴ糖は、ヒト腸内細菌由来の善玉菌であるビフィズス菌の中で特定の種を選択的に増殖させることが分かった。従来のオリゴ糖プレバイオティクスはこのような選択的ビフィズス菌増殖能が無いことから、今回合成したものは新しいタイプのプレバイオティクスとして開発できる可能性がある。
著者
Akihiro Masuzawa Tomomitsu Takagi Hirokuni Arai Goro Matsumiya Shuichiro Takanashi Hitoshi Yaku Tatsuhiko Komiya Yoshiro Matsui Satoru Wakasa Takashi Kunihara
出版者
The Editorial Committee of Annals of Thoracic and Cardiovascular Surgery
雑誌
Annals of Thoracic and Cardiovascular Surgery (ISSN:13411098)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.56-62, 2022 (Released:2022-02-20)
参考文献数
17

Objective: Mitral subvalvular procedures in addition to restrictive annuloplasty are promising for ischemic mitral regurgitation (IMR). However, the prevalence and efficacy of specific subvalvular repair in severe IMR have not been elucidated. This is the first nationwide survey regarding surgeons’ attitudes toward IMR in Japan.Methods: A questionnaire was sent to 543 institutions. From 2015 to 2019, numbers of elective first-time mitral valve replacement (MVR) with/without complete chordal preservation (CCP)/papillary muscle approximation (PMA) and mitral valvuloplasty (MVP) with/without papillary muscle relocation (PMR)/PMA in patients with severe IMR were collected. Concomitant procedures for coronary artery, tricuspid valve, and arrhythmia could be included but left ventricular reconstruction was excluded.Results: Completed questionnaires were received from 286 institutions (52.7%). The majority (90%) had less than 20 cases within 5 years. The number of MVP (1413, 61.5%) surpassed MVR (886, 38.5%). CCP was performed in half of MVR (50.0%), while PMA was included in only 1.9% of MVR. PMA and PMR were also performed infrequently, in only 7.7% and 10.9% of MVP, respectively.Conclusion: Japanese surgeons aggressively perform MVP for severe IMR. Subvalvular repair was also aggressively performed in addition to MVR, but not to MVP. A multicenter registry study is in progress.
著者
松田 敬一 大塚 浩通 一條 俊浩 川村 清市
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.75-77, 2006-01-25
参考文献数
23
被引用文献数
3

バナナ給与が子牛の免疫細胞に及ぼす影響を調査した.バナナ(2g/kg BW)を5日間経口給与して0, 5, 10および15日目に白血球表面抗原の解析を行った.5日目において給与群のCD^<3+>, CD^<3+>CD45R^-およびCD^<3+>TcR^+細胞数は対照群に比較して有意に増加した(P<0.05).以上のように, 子牛へのバナナ給与はTリンパ球を増加させることから, 感染防御能を高める可能性が考えられた.
著者
モロジャコフ ワシーリー
出版者
拓殖大学海外事情研究所附属台湾研究センター
雑誌
拓殖大学台湾研究 = Journal of Taiwan studies, Takushoku University (ISSN:24328219)
巻号頁・発行日
no.2, pp.101-114, 2018

ロシアにおける台湾観測・研究の歴史は,日本海軍の出兵(1874年)から始まる。当初はロシア海軍の将校が,のちには学者と記者が台湾の地理,歴史,民族,言語を研究し始めた。日清戦争の結果として台湾が日本の植民地になってからは,ロシアの分析官がその調査・研究を続けた。帝政時代における観測の重点は,経済(資源開発,農業,貿易)と共に軍事であった。一般的に言えばロシア側は,植民地としての台湾が日本の「宝物」になるのか,「厄介者」になるのか,日本の経済力と軍事力を強めるのか弱めるのか,を知りたがった。日露戦争以前,経済と軍事の両観測分野は同じように大事と考えられた。が,日露戦争直後,台湾の経済は軍事より興味深いと見られた。1920年代には,日本の植民地はソ連共産党とコミンテルンの対外政策の焦点となった。日本を帝国主義列強と見なすソ連政権は,植民地に存在した経済・社会・民族問題及び本土に対する不満を利用する戦略・戦術を採った。対台湾政策はその試みの一つであった。ソ連共産党とコミンテルンは,1923年のドイツ革命の失敗直後,アジアでの革命を世界革命の最も近い道だと論じた。そして,中国及び列強の植民地は革命的闘争と共産主義的活動の現場と見なされた。日本統治時代の台湾の国内状態を分析・評価したソ連・コミンテルンの専門家は,直接的な情報の不足にもかかわらず,事実をかなり正しく理解したと結論できる。しかし,その専門家は,共産主義独裁政権の下,政権からの統制・弾圧を受けて,日本の台湾政策を激しく批判して,台湾における民族問題の重要性,労働・左翼運動の範囲,社会主義革命の可能性を過大に見積もっていた,と結論できる。
著者
佐藤 知広 久保田 敦斗 齋藤 賢一 藤 正督 高井 千加 瀬名 ハディ 宅間 正則 高橋 可昌
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.167-174, 2022-02-15 (Released:2022-02-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1

The industrial manufacturing methods for ceramics are powder mixing, molding, and firing. Ceramics are fired at a higher temperature than metal sintering. For this reason, in the ceramics manufacturing process, a large amount of energy is consumed, and a large amount of carbon dioxide is also emitted, especially in the firing process. Therefore, attention is focused on the non-firing solidification process of ceramics. In this method, after the molding process, there is a solidification process using a solvent instead of firing. In order to realize this solidification process, a grinding process is required to increase the activation energy of the surface of the raw ceramics particle. Therefore, in this study, we set up a molecular dynamics model that simulated grinding and calculated the activation of the silica surface. The grinding of the material surface was modified by the cylindrical indenter of LAMMPS, the material surface was constantly activated by passing multiple indenters continuously instead of a single indenter. As a result, a clear increase in energy was observed. It was suggested that continuous energy input is more effective than local energy input to the surface when reproducing surface activity. Furthermore, activation of the internal structure was observed as in the experiment. Adding water molecules in the relaxation calculation on the activated surface, binding through and without water molecules was observed. It was clarified that there are hydrogen bonds and siloxane bonds in this bond.
著者
岩崎 弥生
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.29-40, 1998-03
被引用文献数
10

精神病患者の家族の情動的負担と対処方法を明らかにすることを目的に,書面による調査同意の得られた分裂病患者を在宅でケアする5家族6名に対して,McCrackenの質的研究方法である"長時間インタビュー"に基づき半構成的対面式インタビューを行い,その内容を分析した.その結果,家族は情動的負担として自責態と無力感,孤立無援態,荷重態を持ち,それぞれ知識の欠如,精神病に対する偏見,および患者の依存や症状が影響していた.ケア知識を欠いた家族は,患者の苦痛に何の手だてを講じることもできないことから自責感を持つと同時に無力感を持っていた.また,精神病への偏見から患者を守るため広く援助を求めることをためらい,ほぼ孤立無援の状態でケアをしていた.そして,時には患者の依存や症状が重荷に感じられケアから逃げ出したい気持ちを抱くこともあった.対処方法は適切なケア提供に関する行動と,自分自身のケアに関する行動から成り立っていた.ケア提供に関しては,家族は試行錯誤しながらケア技術を習得し,患者の話を受け止め,気分転換を促し,社会との接点を見出すなどをとおして適切な心理社会的的環境を提供しようとしていた.ケア提供者自身のケアはケア提供者の健康を保ち患者へのケアを継続するうえで重要で,精神的支援の獲得,自分自身の時間の確保,およびものごとの肯定的解釈を含んでいた.
著者
石井 豊 稲生 啓行 荒井 迅 寺尾 将彦 鍛冶 静雄
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究の目的は、virtual reality 技術を用いて4次元空間を直感的に理解するための可視化方法や4次元対象物を自然に操作できるようにするためのデバイスを開発することにある。中でも、複素2次元力学系が生成するジュリア集合を可視化することでその幾何的性質を観察し更に数学的に有用な予想を引き出すことに、この研究の意義があった。また高次元空間におけるデータセットの「形」を理解するための雛形としても、本プロジェクトの重要性があると考えられる。今年度はコロナ禍の影響で国内・海外出張ができず、メールやslackなどでのやり取りを通して研究を進めた。前年度までに、4次元空間を可視化するための virtual reality デバイスである Polyvision を開発したため、今年度は、この Polyvision を用いた心理実験に向けた準備を進めた。具体的には、Polyvision を用いると被験者の4次元空間認識が向上するかを定量的に測定するための実験タスクをいくつか試験的にデザインし、その実装を行った。しかし通常の3次元空間では容易なはずのタスクが対応する4次元タスクになると急激に困難になるため、現在は(数学的な素養が必ずしもあるとは限らない)一般的な被験者が十分こなせるようなタスクを設定している途中段階にある。そのほかに特筆すべき実績としては、VRを用いた高次元認識に関する(主に数学的な立場からの)研究集会を分担者の稲生が開催し、好評を博すとともにその後の研究の進展に大きな刺激を与えた。