著者
相良 友哉 戸川 和成 田川 寛之 崔 宰栄 辻中 豊
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.31, pp.614-622, 2021-01-01 (Released:2021-12-15)
参考文献数
36

ますます長寿化が進む現代の日本においては,健康長寿を目指し,高齢期においても積極的に社会参加することが重要である.既に,高齢者の地域活動に関する研究は多数見られるが,活動への参加行動に着目されることが多く,活動内容や頻度,地域内の人的ネットワークについての検討は少なく,また,地域も限定的である.そこで,本研究では,全国13都市の住民に対して実施したWebアンケートの結果をもとに,どのような属性を持った高齢者が活発に地域活動をしたり,地域の役職者と交流しているか検討した.その結果,他者との交流や地域活動の多くにおいて,住民の性別による違いが顕著であった.女性は日常的な人付き合いが多いが,男性は地域の役職者との交流や役割・目的が明確な地域活動への参加者が多い.居住年数や就業状態,教育状況では,性別ほどの顕著な参加状況の差は見られなかった.人生100年時代とも言われる昨今の日本において,より効果的に高齢者の地域活動,ひいては社会参加を促進させていくためには,こうした性別による違いを踏まえる必要がある.
著者
菱川 優介 桂 重仁 須長 正治
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3+, pp.141-144, 2017-05-01 (Released:2017-10-07)

色覚異常を持つ人の日常生活におけるトラブルとして,焼肉の焼け具合がわからないという報告がされている.このことから,色覚異常を持つ人は,一人で焼肉を行うことが難しいと言える.本研究では,2色覚の一人焼肉を補助すべく,焼肉が焼けたかどうかを知らせるアプリを作成した.実験では,肉の表面を測色すると同時に,3色覚と2色覚に焼肉の見た目の焼け具合を評価してもらった.焼肉の色変化の過程は,錐体刺激値LM平面にて特徴が現れていた.この変化過程は,2色覚に対してL軸またはM軸への射影となる.その結果,生肉の色が,肉が焼けていく過程の色変化のなかに埋もれてしまい,2色覚は色変化からでは焼け具合がわかりにくいことが示された.また評価結果をもとに,LM平面上にアプリによる焼け具合判断の閾値を設定した.作成したアプリと3色覚の判断がどれくらい一致するかを調べた.焼けた肉と焼けていない肉を,アプリが正しく判断する確率はそれぞれ63%と94%であった.また,焼けた肉,焼けていない肉に対して誤った判断をする確率はそれぞれ37%,6%であった.以上のことから,おおよそ正しく肉の焼け具合を判断するアプリを作成した.
著者
坂本 幹
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
no.14, pp.71-82,122, 2006

本研究は、ガーナの農村におけるサッカー活動について、フィールドワークに基づき経験的に描くことを目標にしたものである。具体的には、サッカーを通じて形成された社会関係が、「約束金」というローカルな試合システムを通じて、スポーツの場のみならず、日々の職探しや食物の相互提供といった生活保障システムに組み入れられていくダイナミズムに焦点を当てた。<br>このことを明らかにする理由は二つある。一つは、スポーツのような文化的活動が生活どころか「生存」レベルの危機を抱えている社会において行われることは稀であり、また仮に行われることがあっても、それは生活の根源的諸問題とは位相を異にした単なる娯楽活動であるとする、これまでの第三世界スポーツ論に通底した認識を打破するためである。<br>もう一つは、従来第三世界のスポーツ活動を扱った研究が、スポーツの実践されている場のみを対象化したものであり、その場を構成する人々が同時に生活の諸問題を抱え、それに対処していく「存在」であることを等閑視してきたことにある。しかしながら本稿で実証データから明らかにしたのは、村のサッカー選手たちが、グラウンドでの「最高の気分」と「生活不安」の双方を携えて生きていることであり、スポーツの活動が生活の場と密接につながっているばかりか、むしろ大変重要な機能を備えているということである。<br>本稿では、こうした生活保障システムを支える、人々の「生活の論理」について、人類学者のJ. スコットと松田素二の議論を参照し、それをガーナの村落における若者達のサッカー活動から検討する。
著者
東京音楽学校 編
出版者
東京音楽学校
巻号頁・発行日
vol.昭和15至16年, 1941
著者
東京音楽学校 編
出版者
東京音楽学校
巻号頁・発行日
vol.昭和13至14年, 1941
著者
神代剛典 佐藤寿倫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.43-53, 2004-01-15
参考文献数
35

コントレイルプロセッサは,エネルギー消費効率改善の目的でマルチスレッド技術を利用している.コントレイルプロセッサでは,アプリケーションプログラムは実行中に2 つの命令実行ストリームに分割される.1つは投機流(speculation stream)と呼ばれ,プログラムの主要部分を構成し,高速なパイプラインで実行される.投機流からは,トレースレベルの値予測を利用して,多くの命令実行列が削除されている.実行命令数が削減されているため,投機流でのエネルギー消費効率が改善されている.残りの命令実行ストリームは検証流(verification stream)と呼ばれ,投機流での値予測を検証してその実行をサポートしている.検証流は低速ではあるが電力消費の小さなパイプラインで実行される.したがって,エネルギー消費効率を改善できる.コントレイルプロセッサの鍵は,トレースレベルの値予測を利用することで元々はクリティカルであった命令列を非クリティカルに変え,それらを投機流から検証流に移動させることでエネルギー消費効率の改善を図っている点にある.本稿では,コントレイルプロセッサにおいて重要な役割を果すトレースレベルの値予測機構について検討する.Contrail processors utilize multithreading for improving energy efficiency. In Contrail, an execution of an application is divided into two streams. One is called the speculation stream. It consists of the main part of the execution and is dispatched into the fast functional units. However, several regions of the execution are skipped by utilizing trace-level value prediction. The other stream is called the verification stream. It supports the speculation stream by verifying each data prediction, and is dispatched into the slow units. The key idea is that the trace-level value prediction translates each critical path into non-critical one and moves it from the speculation stream into the verification stream, and then the non-critical instructions are executed on the slow units. In this paper, we investigate a trace-level value predictor for Contrail processors.
著者
二宮 貴一朗 大熊 裕介 海老 規之 青景 圭樹 大矢 由子 阪本 智宏 上月 稔幸 野崎 要 白井 克幸 野中 哲生 里内 美弥子 石川 仁 堀田 勝幸 滝口 裕一
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.95-99, 2021-04-20 (Released:2021-04-30)
参考文献数
19

遠隔転移を有する非小細胞肺癌の標準治療は薬物療法であり,局所治療の追加による生存延長効果は明確に示されていない.一方で,転移病変が限られていた場合(Oligometastatic disease)において,局所治療を行ったことにより長期予後が得られた症例が存在する.近年,Oligometastatic diseaseに対して局所治療の追加の意義を評価したランダム化比較試験が複数報告された.これらは,診断時から原発および限られた転移病変を有し,すべてに対して局所治療が可能な症例(Synchronous oligometastatic disease)を対象としており,いずれの試験でも有望な結果が示されている.有効な薬物療法(分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬など)の台頭や放射線治療技術の進歩により肺癌治療は多様化しており,局所治療の目的も変化しつつある.Oligometastatic diseaseに対する局所治療は,その侵襲性によるデメリットや薬物療法の中断に伴うリスクを考慮する必要があるが,新たな治療戦略の1つとなる可能性がある.
著者
Pournelle Jerry 林田 陽子
出版者
日経BP社
雑誌
日経バイト (ISSN:02896508)
巻号頁・発行日
no.267, pp.112-117, 2005-08

Mac OS X 10.4 Tigerをインストールしたところである。OS X 10.4(まもなく10.4.1にアップグレードする)は素晴らしい。まさに「グレート!」だ。米Microsoft社がLonghornに搭載すると約束している機能を,ほぼすべて備えている。しかしTigerは今ここにあり,ちゃんと動く。このOSのあらゆるものに興奮させられる。
著者
宇留間 悠香 小林 頼太 西嶋 翔太 宮下 直
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.155-164, 2012-11-30 (Released:2017-10-01)
参考文献数
19
被引用文献数
8

近年、草地性や湿地性の生物の代替生息地である農地の生物多様性が著しく減少しており、農地生態系の再生を目的とした環境保全型農業が普及し始めている。本研究では、新潟県佐渡市で行われているトキの個体群の復元を目的とした環境保全型農業のうち、冬期湛水および「江」の設置が、繁殖のため水田を利用することのある両生類3種(ヤマアカガエル、クロサンショウウオ、ツチガエルの一種)の個体数や出現確率に与える影響を探った。佐渡市東部の20箇所の水田群(計159枚の水田)において各種両生類の個体数を調べ、一般化線形モデル(または一般化線形混合モデル)と赤池情報量基準(AIC)を用いて、水田と水田群の2階層における個体数を説明する統計モデルを探索した。その結果、ヤマアカガエルとツチガエルの一種において、冬期湛水もしくは江の設置が強い正の影響を与えることが明らかになった。ヤマアカガエルでは、水田と水田群レベルで異なる農法が正の効果を示した。これは、個体群レベルの応答を評価するためには適切な空間スケールを定める必要があることを示唆している。景観要因としては、ヤマアカガエルとクロサンショウウオで水田周辺に適度な森林率が必要であるが、その空間スケールは大きく異なること、またツチガエルの一種では景観の影響を受けないことが明らかになった。この結果は、日本の里山のように景観の異質性が高い環境では、環境保全型農業の影響評価の際に、一律の指標種を用いるのではなく、局所的な生息地ポテンシャルにもとづいて評価対象種を選定する必要があることを示唆している。
著者
ラッシラ エルッキ・T 隅田 学
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.25-28, 2020-12-13 (Released:2020-12-09)
参考文献数
9

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)は、全国で行われる公教育の文脈において、高い興味関心や優れた能力を持つ生徒の個性や才能を伸長する理数系人材育成の一つの日本型教育モデルである。本研究では才能を個人と環境の組みわせとして定義する「行動環境場(actiotope)モデル」と「教育資本(educational capital)」のアイデアをベースとし、SSHの可能性を議論する。質的研究アプローチを採用し、SSH2校において計10名の教員にインタビューを行い、研究開発実施報告書等を資料として補完しながら分析を行った。その結果、これまであまり議論されていないSSHのインパクトとして、1)連携機関等とのネットワークと校内キーパーソンによる「社会的教育資本(social educational capital)」と2)公教育において意欲や能力の高い生徒に焦点を当てて教育支援をすることへの理解が広がる「文化資本(cultural capital)」へのインパクトが明らかとなった。予想に反し、「インフラ・経済資本(infrastructural and economic capital)」のインパクトが大きいようには見られず、「教育方法的教育資本(didactic educational capital)」のインパクトは曖昧で、才能についての共通認識はなく、課題研究の指導力が不十分と考える教員が多かった。
著者
棚橋 沙由理 山本 桃子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.17-30, 2022-01

社会の持続可能な発展をにらみ,博物館における学際的な教育研究が社会の持続可能性へどのように寄与し得るのかについて,議論が活発化している.ことに理工系大学・学部では科学技術の社会実装に際し,科学技術コミュニケーションの重要性が増しているため,大学博物館も科学技術コミュニケーションへの貢献が期待されている.そのような現状において,海外の大学博物館ではオブジェクト介在型学習(Object-based learning)による分野横断型学習の可能性に注目が高まっている.欧米を中心に博物館教育の文脈で育まれてきたオブジェクト介在型学習であるが,わが国では学術的枠組みにもとづく実践例が乏しい.本稿ではオブジェクト介在型学習の再考にあたり,大学博物館のコレクションを用いた分野横断型学習としての有効性を検証し,科学技術コミュニケーション活動の一手法としてどのように一般化できるのかを明らかにすることを目的として,理工系大学の大学博物館における養蚕・製糸風景の描かれた錦絵のキュラトリアルワークショップを実施した.その結果,オブジェクト介在型学習は学生の知識習得および共同作業について有用であることが明らかにされた.本研究により今後,オブジェクト介在型学習の多種多様な事例研究が展開されることにより大学博物館の教育研究に資するとともに,科学技術コミュニケーション活動を通じた学術・文化コモンズとしての大学博物館の機能が一層高まるであろうことが示唆された.
著者
田端 恒雄
出版者
明倫短期大学
雑誌
明倫歯科保健技工学雑誌 (ISSN:13440373)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.67-68, 1998-03

年をとっても良い噛み合わせで食事できることは,健康と長寿にとってなによりも大切であり,ちゃんと噛めることはボケ防止にもなると言われている。シンポジウムでは,(1)噛めなくなると健康にどんな影響があるか,(2)歯がなくなるとどれほど噛めなくなるか,(3)入れ歯を入れるとどれほど噛めるようになるか,についてお話しした。
著者
田 シン
出版者
産業学会
雑誌
産業学会研究年報 (ISSN:09187162)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.25, pp.69-81, 2010-03-31 (Released:2011-03-31)
参考文献数
17

This paper investigates the assembly process outsourcing of Toyota group. I examine the characteristics of division of labor between Toyota motors and Complete vehicle OEM makers such as Kanto Auto works or Daihatsu motors. This study reveals the following results:(a) in Japan, Complete vehicle OEM makers are playing a role of production and development of Complete vehicle and production of parts; in contrast, in overseas, Complete vehicle OEM makers are playing an important role of technology support of Toyota's oversea plant.(b) The characteristics of division of labor between the Complete vehicle OEM makers and Toyota can be summarized as this, for the production of main mass production models, the “Toyota + Complete vehicle OEM makers” is the main type; on the other hand, for production of non mass production models, “Toyota or Complete vehicle OEM makers” is the main type.Many studies about division of labor of production or product development of parts in automotive industry has shown that Japanese automakers and their suppliers cooperate closely even in product development processes. However most of these studies merely analyzed the division of labor of production or product development of Complete vehicle. So this paper is a new attempt to analysis that.