著者
関 文貴 日高 隆博 山本 晋一郎 小林 隆志 手嶋 茂晴 阿草 清滋
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE)
巻号頁・発行日
vol.2010-SE-167, no.27, pp.1-9, 2010-03-11

車載ソフトウェアでは,コストの観点から浮動小数点演算を用いることができず,アルゴリズムを固定小数点演算で実装しなけれならないことが多い.実数演算を取り扱うアルゴリズムを固定小数点演算へ変換する作業は非常に労力を必要とする.そこで,本論文では浮動小数点演算で記述されたソフトウェアを固定小数点演算へ変換するための手法の提案と自動で変換を行うためのツール開発を行う.
著者
須田 将吉 清水 逸平 南野 徹
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.521-528, 2019

<p><b>要約:</b>老化は様々な疾患のリスク因子である.動脈硬化巣に老化細胞が蓄積していることがわかり,血管細胞の老化がこれらの疾患に関与していることが示された.血管内皮細胞特異的に老化を抑制すると血管機能が保たれ,反対に老化を促進すると血管機能が悪化することも報告されている.さらに血管内皮細胞の老化抑制は,脳血管・心血管疾患だけでなく,肥満や糖尿病も改善させることが明らかとなり,血管内皮細胞の老化抑制は加齢関連疾患の包括的治療につながる可能性が示唆されている.さらに近年では,老化細胞除去(senolytic)治療という新しいストラテジーに注目が集まっている.老化した血管内皮細胞を選択的に除去する薬剤を投与したマウスでは,認知症や加齢による筋力低下などの老化の表現型が改善し,さらには寿命が延長するという結果も出てきている.血管内皮細胞老化は,血管疾患だけでなく様々な疾患の発症や個体老化にも重要であり,新しい治療標的となりつつある.</p>
著者
藤井 千里 赤間 明子 大竹 まり子 鈴木 育子 細谷 たき子 小林 淳子 佐藤 千史 叶谷 由佳
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1_117-1_130, 2011-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
42

本研究の目的は,訪問看護ステーションの収益と管理者の経営能力との関連を明らかにすることである。全国のステーション管理者を対象に質問紙調査を行い,有効回答数64ヶ所のデータを集計分析した。 その結果,次のことが明らかとなった。管理者が収支を予測したり,経営戦略の策定,経理・財務を理解している割合や他職種にステーションの過去の実績を示す,利用者獲得に向けた活動の評価について実施している割合が低かった。一方,従事者数や利用者数が中央値より多い,管理者が経営学を学んでいる,経営戦略や経営計画を策定し,採算性の評価をしている,必要な情報を収集・分析し,有効に活用しているステーションは,有意に収益が高かった。 以上より,ステーションの経営の安定化には,計画に基づいた事業の実施とその評価,利用者だけではなく,医師や介護支援専門員等の専門職を顧客と位置づけて営業活動を実施していくことの重要性が示唆された。
著者
柿沼 直美 飯田 苗恵 大澤 真奈美 原 美弥子 齋藤 基
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.1-9, 2015-04-27 (Released:2015-06-02)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

目的:訪問看護ステーションにおける安定的な経営管理のために,管理者が活用可能な自己評価尺度を開発する.方法:尺度の開発は,①概念枠組みの明確化,②尺度の原案は先行研究および研究者の経験に基づき作成,③専門家会議およびパイロットスタディによる内容的妥当性の検討,④全国の管理者を対象とした本調査の実施およびデータの項目分析,尺度の信頼性・妥当性の検討とした.結果:検討の結果,7下位尺度25項目からなる尺度が完成した.尺度のクロンバックα係数は,0.897であり,内的整合性を確保していた.因子分析により抽出された7因子は,【第1因子:意思疎通がよく,働きやすい職場環境の形成】【第2因子:資金の管理】【第3因子:サービスの拡充】【第4因子:収支のモニタリング】【第5因子:生産性の向上】【第6因子:看護の質保証】【第7因子:市場調査】であった.結論:本尺度は,管理者の経営管理に対する自己評価を促し,安定的な経営管理のために活用可能である.
著者
Michihiko Sugimoto
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
Genes & Genetic Systems (ISSN:13417568)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.109-120, 2014-06-01 (Released:2014-12-04)
参考文献数
98
被引用文献数
16 24

The proximal third of mouse chromosome 17 is known as the t-complex. The t-haplotype is a variant form of this region containing four tandem inversions compared with the wild-type t-complex, and thus recombination in heterozygotes of the t-haplotype is strongly suppressed along the entire t-complex region. Within this genetically locked t-haplotype, many mutations related to various interesting phenotypes (e.g., taillessness, transmission ratio distortion, recessive lethality) have accumulated, and many mouse geneticists have been attracted to t-haplotype research. Many recessive lethal mutations known as t-complex lethal mutations have been found, and detailed phenotypic analyses have revealed that the functions of t-lethal genes are related to important developmental events. Therefore, identification of the genes responsible for these lethal mutations may contribute to our understanding of the mechanisms of mammalian development. In this review, I introduce the phenotypes of t-lethal mutations and describe recent findings, including our results regarding the molecular identification of a t-lethal gene.
著者
薄井 宏航 フランク イアン
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.499, pp.71-76, 2012-03-22
参考文献数
9

人は直感や理性を用い意思決定を行うと古くから考えられてきたが,近年の研究により,意思決定における体性感覚の影響の大きさが示唆されている.本研究では,理性や感情,そして身体感覚が意思決定に及ぼす影響を調査する.我々は,Wilsonらの実験に倣い,理性的な考え方と,直感的な考え方を比較する実験を行った.さらに,体感覚(味覚)が意思決定に及ぼす影響についてを調査する実験を行った.結果として,顔の魅力を評価する際は,Wilsonらの実験で見られた考えることを強制するような質問とのプライミングの効果が見られなかった.さらに,味覚と意思決定間のつながりを示した.
著者
萩原 潤治 村田 ひろ子 吉藤 昌代 広川 裕
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.24-47, 2018-07-20

世論調査の有効率の低下が課題となるなか、WEBを利用した新しい調査方式が注目されている。そこで、NHK放送文化研究所では、住民基本台帳から無作為抽出で選んだ調査相手に対し、郵送で調査への協力を依頼し、WEBで回答してもらうという「郵送依頼WEB回答方式」(以下、「WEB式」とする)の可能性を探ることにした。2016年と2017年の計2回、このWEB式の実験調査を、回答方法を「WEB回答」に限定せず、一部、補完的に「郵送回答」も受け付ける、WEB先行のミックスモードで行った。この結果から得られた主な知見は、以下のとおりである。住民基本台帳から無作為抽出で選んだ調査相手でも、適切な調査設計と調査材料を作成すれば、WEB式調査は可能であるWEB式調査の有効率は、30代以上では、比較用の郵送調査と差がない水準にまで高めることができたが、現時点で、若年層の有効率の向上には効果が見られなかった WEB式調査の有効者のサンプル構成比は、住民基本台帳から大きく乖離していない なお、WEB式調査と比較用郵送調査について、回答方法の違いにより、回答差が生じるのかどうか、もし差が生じるとしたらその要因は何なのかも検証するが、この結果については、稿を改めて報告する予定である。
著者
沖野 正宗 加藤聰彦 牛島 準一 伊藤秀一 飯作俊一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.2557-2565, 2004-12-15
参考文献数
9
被引用文献数
4

近年,その場に集まったノード間が無線インタフェースを用いて簡易にネットワークを構築するアドホックネットワークが注目されている.それにともない,多くのノードが使用されるまたは無線の到達距離が長いなどの理由で,無線伝播範囲に多数のノードが存在する高密度なアドホックネットワークに対する考慮が必要となる.このようなネットワーク環境では,特に経路を発見または伝達するための制御メッセージの転送オーバヘッドが増大するという問題点が生ずる.本稿では,オンデマンド型のAODV ルーチングプロトコルを拡張し,無線伝播範囲の離れたノードのみに経路要求メッセージを中継させる方式を提案する.この方式は,追加のメッセージ交換のオーバヘッドがなく,必要なノードのみにメッセージの中継を行わせ,さらにネットワークの動的な変化にも対応できることを特徴にしている.さらに本稿では,ネットワークシミュレータを用いて提案方式を評価し,AODV に対する優位性を明らかにしている.Recently, ad hoc networks come to be actually used in sensor networks and in network construction in case of disaster. Accordingly, it is required to study the routing in high density ad hoc networks, where multiple nodes exist within radio propagation area. In such a network environment, it is important to decrease the overhead of route request messages flooded into the whole network. In this paper, we propose a modified AODV protocol adapted to high density ad hoc network. Its feature includes that it does not introduce any additional message overhead, that it enables necessary and sufficient nodes to relay route request messages and that it copes with network configuration change. This paper also shows the performance evaluation indicating that our protocol can reduce the total number of route request messages compared with the original AODV.
著者
勝山 清次
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.p169-211, 1987-03

本稿では、これまで「国司苛政上訴闘争」に対する朝廷の政策的対応の観点から把握されてきた公田官物率法の成立について、その前提の究明を試み、十一世紀前半には、それまで臨時雑役に包摂されていた諸賦課が順次田率賦課に移行し、官物体系改変の条件が整うとともに、諸国においては自然・地理的条件に規定されて、産業構造の地域的特化が進み、独自の官物率法が制定される前提が形成されていたことを明らかにした。また公田官物率法成立にともなう官物体系改変の歴史的意義についても、これまでの諸見解を踏えて、(1)受領による官物の賦課率の恣意的な変動を制約したこと、(2)官物が一個の独立した税目となり、中世的な年貢制を準備したこと、(3)中央への主要な貢納物が一律的に官物によって賄われる体制が成立したことなどに集約できるとした。
著者
宮坂 賢一
出版者
日経BP社
雑誌
日経ベンチャ- (ISSN:02896516)
巻号頁・発行日
no.292, pp.74-77, 2009-01

2008年11月15日の夕刻、JR中央線・吉祥寺駅近くの食品スーパー「ららマート吉祥寺店」では、レジに長蛇の列ができていた。「青果全品半額」「乳製品すべて100円」。店内の商品はすべて極端に安かった。混み合う店の入り口には「しばらくの間休業させていただきます」との張り紙があった。
著者
窪田 晃子
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.101-110, 2017 (Released:2020-02-22)
参考文献数
9

本発表では、非漢字系学習者1)への漢字指導の実践報告として,非漢字系学生が半数以上を占める日本語学校での漢字指導,また授業で工夫したことなどの報告を行う。彼らにどう「漢字」や「漢字語彙」を教え,理解・定着へと導くかという教師側の課題と,学習者側が抱える問題を整理したことや,漢字の特性に注目した漢字指導から教師が試行錯誤しながら工夫した点や課題などを紹介し,漢字教育や学習への新たな試みとして共有したい。
著者
稲本 由美子 木原 健二 飯田 一史
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.284, 2017

はじめに 重症心身障害児者にとり、「呼吸」を安楽に維持することが生命予後、QOLの向上につながる。呼吸ケアというと、吸引・呼吸器の管理など医療的ケアをイメージするが、姿勢管理、口腔ケア、緊張緩和のための心理的関わりなどのほうが重要である場合も多い。日常生活の中で多職種がそれぞれの専門性を発揮して適切な介助、対応を行うことが重要であると考える。しかし、現状は職種間の知識・技術の格差があり、専門性を発揮した呼吸ケアを実践しているとは言い難い状況である。職員全体の「呼吸」に対する知識の底上げを行うことが重要であると考える。さらに、知識だけでなく、それを実践に活かすためにはOJTは不可欠であり、指導する立場の職員を育てることも重要である。 今回、施設が求めるそれぞれの職種(看護師・支援職・セラピスト)の呼吸ケアにおける役割を明確にすること、「重症心身障害児者の呼吸障害」の基礎的な知識を職種間格差なく持てること、個々の症例に合わせた適切な呼吸ケアを実践できることを目標とし、系統的な「呼吸研修プログラム」の立ち上げに取り組んだので、その経過を報告する。 活動内容 1.「呼吸研修検討会」定例会議1回/月を実施。「呼吸研修プログラム」の内容検討し、計画立案を行う。 2. 研修会の実施・評価 結果 呼吸の仕組み・重症心身障害児者の呼吸障害とその対応・呼吸リハビリの基礎と実際など基本的に知っておくべき知識と技術を得るための「ベーシックコース」計5回と指導的立場を担うための知識と技術を得る「アドバンスコース」計3回を計画・実施した。「ベーシックコース」は対象職員(看護・支援・セラピスト)約140名中、各回約50〜80名参加。「アドバンスコース」は対象者を限定して実施した。 今後の課題 研修内容を「難しい」と感じた職員に対して理解度のチェックとフォローアップ実践に活かすための、職種別知識・技術の研修プログラムの検討
著者
水沼 淑子 加藤 仁美 小沢 朝江
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究年報 (ISSN:09161864)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.147-158, 2001 (Released:2018-05-01)

本研究は,御用邸・離宮など皇族別荘を研究対象とし,近代における海浜別荘の成立・変容過程とその建築や使い方の特質を明らかにすることを目的とする。戦前に設けられた離宮・御用邸25件,宮家の別邸49件を見ると,宮家の別邸は震災前は御用邸が設けられた海浜別荘地に多いが震災後山間部の新興別荘地に拡がること,本邸の多くが洋館を備えるのに対し別邸は大部分和館のみであること,などの傾向を指摘できる。御用邸においては,和館であっても床に絨毯敷が導入され,椅子座が広く導入されている一方,宮家では,数寄屋の伝統を継ぐ田舎家風の意匠への嗜好が強く見られる。また,天皇家は一施設もしくは一段舎の利用者を特定し,複数施設・複数殿舎を使い分けていた。
著者
加納 千恵子
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-10, 2017 (Released:2020-02-22)
参考文献数
12

日本語の漢字は,字形・読み・意味・用法という4情報を併せ持つ表語文字であるために記憶の負担が大きく,特に非漢字圏の学習者にとってその習得が困難であるとされてきた。しかし,実は漢字圏学習者にとっても日本語の漢字語彙の習得はけっして易しいものではない。文化圏によってその学習上の困難点は異なるものの,日本語の漢字は,文字というより語彙として覚えるという学習方法がどちらの学習者にとっても必要であり,そのための効果的な方法として音声と表記を結びつける活動を提案し,新たな評価方法についても考える。
著者
濱川 祐紀代
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.28-61, 2017 (Released:2020-02-22)
参考文献数
13

本稿は,筆者が過去に実施した質問紙調査の調査票を提供し,読者と調査票を共有することを目的とするものである。本稿で共有する調査票は日本語・英語・インドネシア語・タイ語・ベトナム語・マレー語・ミャンマー語・ロシア語の7か国語が用意されており,様々な教育機関で活用されることを期待し,また妥当性を高めるための共同研究などが始まることも願っている。
著者
加藤 登紀 濱川 祐紀代
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.111-121, 2017 (Released:2020-02-22)
参考文献数
5

1990年以降に出版された日本語学習者のための漢字学習用教材(以下,漢字教材)は25冊以上あるものの,一度に複数の漢字教材を手にとり比べる機会はないという声をよく聞く。さらに,開講されている漢字科目の多くが初級レベル相当であるという声もよく聞くため,初級レベルの漢字教材に絞り,ワークショップを行うことにした。本稿では第60回研究会(大阪)のワークショップの成果を報告し,初級漢字教材の特徴を読者と共有したい。