著者
図越 良平
出版者
大阪市立大学文学部
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.p523-539, 1990

I『湯治客。バーデンにおける湯治の手記』(Kurgast. Aufzeichnungen von einer Badener Kur)は1923年10月にバーデンとモンタニョーラで書かれ, 翌1924年9月, 最初は『湯治場心理学。バーデン湯治客の皮肉』(Psychologia Balnearia oder Glossen eines Badener Kurgastes)の標題のもとに私家版として300部出版され, その後わずかに手直しされて, 1925年春にS.フィッシャー書店より現在の書名で刊行された。……
著者
荒井 美紀 鈴木 優太 中野 恒明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.391-396, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
7

本研究においては映画の舞台ともなった柴又帝釈天参道について街並みの現状と形成の変遷を調査し、その特徴と価値を明らかすることを目的とする。同時に現状より今後の保全整備の可能性を考察した。得られた知見は以下の通りである。1)地域住民の生活の場、帝釈天への信仰の街から映画の舞台となったことを契機に商店主等を中心として地元発意的に映画の観光地として街並みが創造されている。2)映画公開後には街並み整備事業が導入され映画の舞台としてだけでなく街並みの観光地化が目指されている。3)街並みは歴史的木造建築物が多くを占めるため、その防災対策が課題としてあり、また防火地域であるため仮に街並みが消失した際に復元は困難であることも課題としてある。
著者
鈴野 弘子 石田 裕
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.479-484, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

高地栽培バナナの風味の良さを化学成分の面から明らかにする目的で, 標高の異なる土地, すなわち, 高地 (1000m), 中地 (500m) および低地 (0-20m) で栽培した3種類のバナナを収穫後, 20℃で追熟させ, 各熟度別での成分変化を比較検討した.高地および中地栽培バナナの水分含有量は, 低地栽培バナナに比べ, いずれの熟度段階においても低い値であった. デンプン含有量は, 完熟段階 (ステージ3) において, 高地栽培バナナが最も低かった. また, 糖および酢酸イソアミル含有量は, 完熟段階で高地栽培バナナが最も多かった. 熟度段階の成分変化をみると高地および中地栽培バナナは低地栽培バナナに比較して, 未熟段階 (ステージ1) から適熟段階 (ステージ2) にかけて糖含有量, 糖酸比および酢酸イソアミル含有量が急激に増加した. 特に高地栽培バナナにおいては, 糖酸比と酢酸イソアミルが顕著な増加を示した. 以上の結果から, 標高の高い土地で栽培されたバナナは, 適熟段階において通常の低地栽培バナナより甘み, 香りが強くなることがわかった.
著者
前田 清一 江口 貞也 佐々木 裕
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.166-170, 1960

1. L-リジン塩酸塩1.25%溶液(pH 4, 7, 8, 9, 11)を121℃, 2時間加熱したが,きわめて安定であった。<BR>2. 糖類が共存する場合加熱するとブドウ糖と果糖共存時でのリジンの破壊は酸性側ではみられないが,アルカリ側に移行するにしたがい増大する。しかし蔗糖共存時ではなんら影響を受けないように思われる。<BR>3. 破壊リジン溶液を酸処理すると,破壊リジンの一部はリジン定量菌に反応するようになるが,人工胃液処理の場合は反応しないと考えられる。<BR>4. リジン強化コッペパンは醗酵工程ならびに焙焼中においては添加リジンは安定であった。<BR>5. リジン強化食パンは醗酵工程中で添加リジンは破壊されず安定であったが,焙焼中には17%破壊され,トーストするとさらに10%破壊された。<BR>6. 炊飯時において添加リジンは15~20%, 6時間放置後で,さらに10~15%破壊された。炊飯直後のご飯をpH 2, 37℃で1時間振盪すると添加リジンの10%が賦活された。<BR>終りにリジン強化パン製造に御協力いただいた東京栄養食糧学校ならびに日清製粉K.K.中央研究所に厚く謝意を表します。
著者
勝又 悦子 Etsuko Katsumata
出版者
Doshisha University Center for Interdisciplinary Study of Monotheistic Religions (CISMOR)
雑誌
Journal of the interdisciplinary study of monotheistic religions : JISMOR (ISSN:18801080)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.27-44, 2019

本稿では、herut(自由)、支配者像、デモクラシーの語源でもあるdimosディモス(民)の用法分析を通して、ラビ文献においてデモクラシーの源流が観察されるか否かを考察する。個人としての完全な自由や支配者と大衆の完全な平等主義が当然とされている様相を見出すことはできない。むしろ、自由とは、何かしら法規によって限定されるものであり、支配者は支配者然として行動することが要望されていることが窺われる。さらに、本論を通して窺えるのは、ユダヤ文学においては、ディモスという術語から民主主義に関する議論が誘発される気配はないということである。それゆえ、19世紀のドイツユダヤ学の学者がしばしばそうしてきたようにユダヤ教と理想的な民主的なユダヤ教を同一視する傾向には十分注意する必要がある。
著者
山口 悦司
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.369-385, 2017-03-18 (Released:2017-07-08)
参考文献数
77
被引用文献数
1

本研究の目的は, 教科書準拠の教師用指導書に焦点を当てて, 理科を教える教師の学習を支援しうる特徴を我が国の教師用指導書がいかに備えているかを解明する試みの第1歩として, 小学校第6学年「月と太陽」の単元を事例とした分析結果を報告することであった. 具体的には, 教育的カリキュラム資料という理論的概念に基づいた分析フレームワークを採用し, 小学校理科の教科書を出版している全6社が発行する教師用指導書を分析対象として, (1)どのような内容の専門的知識の学習が重点的に支援されているのか(支援の内容), (2)専門的知識の学習支援のために, どのような形態が活用されているのか(支援の形態), という2点を明らかにすることを試みた. その結果, 本研究で対象とした教師用指導書について, 以下の2点を明らかにすることができた. (1)支援の内容については, 科学の内容に関するPCK(Pedagogical Content Knowledge)の学習, および科学の方法に関するPCKの学習が重点的に支援されている. とりわけ, 科学の内容に関するPCKについては, 単元に固有な科学の事象に児童が取り組むことに関する知識の学習が, 科学の方法に関するPCKについては, 問題設定, データ収集・分析, 証拠に基づく説明のそれぞれに児童が取り組むことに関する知識の学習が手厚く支援されている. その一方で, 研究計画の立案やコミュニケーションに関する知識の学習は, あまり支援されていない. (2)支援の形態については, 実施の手引き, すなわち, 個々の教授方法・教材・学習活動を効果的に利用する仕方に関する学習を支援する形態が活用されている. これに対して, 理論的根拠, すなわち, 教授方法・教材・学習活動について, それらが教育的・科学的に適切である理由に関する教師の学習を支援する形態はあまり活用されていない. 以上の結果に基づいて, 秀逸点と問題点という2つの側面から, 我が国の教師用指導書の特徴を考察した.
著者
奥田 輝雄 川北 兵蔵
出版者
JAPAN SOCIETY OF NUTRITION AND FOOD SCIENCE
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.420-424, 1964

学校給食パンの品質改善のためには, まず, その現状を知る必要があるので各小学校から採取した試料につきパンの脂肪量を測定し, 同時に学校給食パン加工指定工場から採取した原料小麦粉およびショートニングの品質を検討し, 次の結果をえた。<BR>1) パンの脂肪量は昭和35年においては推定平均値の範囲が1こ取りコッペパンで<I>x</I>=3.29±0.293%, 2こ取りコッペパンで<I>x</I>=2.98±0.426%, 食パンで<I>x</I>=3.32±0.258%と偏りが大きかったが, 昭和36年には, 1こ取りコッペパン<I>x</I>=3.24±0.088%, 2こ取りコッペパン<I>x</I>=3.43±0.211%, 食パン<I>x</I>=3.37±0.145%というところまで改善された。<BR>2) ショートニングはほぼJASに合格し, 品質管理が比較的よく行なわれていた。<BR>3) 小麦粉の主な成分量は個々については製粉会社別に差がみられ, 検収規格に合格しないものもあったが, おおむねそれらに近かった。ただ, 蛋白, 灰分量に差が認められたことは品質管理上, 今後検討を要するものと考えた。<BR>4) エクステンソグラムにおいて製粉会社別に明らかな差がみられ, この物理的性質の相違が主要工程に大きな影響があるものと推測した。

1 0 0 0 OA 農事改良資料

著者
農林省農務局 編
出版者
農林省農務局
巻号頁・発行日
vol.第54 茶樹耕種梗概, 1935
著者
奥田 輝雄 川北 兵蔵 林 右市
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.473-476, 1963

現行の学校給食用普通パン, ぶどう入, ピーナッツ入黒糖入パンの試験焼を行ない, 次の結果をえた。<BR>(1) パン1個の重量は各種類とも焼上り4時間後が最低値を示すが, 個体間の重量差ははなはだ大きかった。したがって, 少なくとも20個以上の平均値を基礎としなければパンの重量を論ずることはできない。この重量の偏りの主因は生地自働分割機の精度にあり, その改善がのぞまれる。またこれらの点から一食分重量は普通パン (2個取コッペパン) は126g, 黒糖入は130g, ピーナッツ入, ぶどう入は各々140gが妥当と思われる。<BR>(2) 副原料として用いたぶどう, ピーナッツ量は製品から摘出した各乾物量にぶどうの場合1, 7を, ピーナ7ツの場合1.1を乗ずることによってほぼその使用量を推定できる。<BR>(3) パン中のビタミンB<SUB>1</SUB>, B<SUB>2</SUB>の最低標準値はビタミンB<SUB>1</SUB>では0.3mg%, B<SUB>2</SUB>では0.2mg%となり, 脂肪量は原料小麦粉に対し3%の配合率のときは製品中少なくとも3.3%となることを認めた。
著者
長谷川 貴史 坂本 武志 島田 明 浦野 羅馬 古川 隼也人
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集 第54回自動制御連合講演会
巻号頁・発行日
pp.169, 2011 (Released:2012-03-09)

今日の制御系設計は、制御対象の動的モデルは、運動方程式や運動学方程式から導き出される伝達関数や状態方程式wお用いて行われる。一方、ソフトウェア工学の世界では、UMLやSysML等のモデル表現言語を用いたシステムのモデリングが行われ、同モデルに基づいてソフトウェア設計なり、システム設計が行われる。両者は共にモデルベース設計と呼ばれるが、その内容は全く異なり、両者の間の接点はあってないようなものとなている。しかしながら、構築されるシステムは同じ1システムであり、両者の間に溝があってはならないはずである。本稿では、倒立振子を題材にしながら、両者の接点についての知見を述べる。
著者
松井 健
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
vol.11, pp.88-102, 2005

<p>自由主義経済体制の先進諸国においては,個人の所有権は,絶対的なものであるかのように法的に固く守られている。そうした法システムのもとでは,個人的所有権は処分,収益,使用権の束として,財産権の基盤とみなされている。しかし,今日でも,このような個人所有権が治安や政治的理由などによって十分に法的に保証されていないところが世界中に多くある。たとえば,パキスタンではこのような個人所有権は警察や法システムの不備や不正のため,しばしば脅威にさらされる。</p><p>アフリカの民族誌の例は,多くの社会が個人の所有権をむしろチェックして抑制する社会的な仕掛けをもっていることを教えてくれる。個人的所有権は,生存のために基本的な資源の所有者に権力集中をもたらすものとみなすそれらの社会は,個人所有権を無力化しようと試みているようにみえる。ときには,近代的な個人的所有権を構成する三つの権利がばらばらに分解されていたりする。狩猟採集,牧畜,焼畑をおこなうアフリカ諸社会は,個人的所有権をあいまいにし,無力化する装置をもっているといえる。</p><p>人間が資源に対してもつ権利のあり方は,その社会と個人の関係と表裏一体である。個人の自立と完全性をうたう社会においては,個人は十全な所有権を許されるが,個人が社会に従属するという位置づけがなされるところでは,社会が個人に十全な所有権を認めることはない。社会のなかにおける個人の位置が,個人的所有権の範囲と強さを左右するということができる。</p>
著者
中島 震
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.2_26-2_32, 2018-04-24 (Released:2018-06-25)

統計的な機械学習プログラムには通常のソフトウェア・テスティングが前提とする確定的なオラクルが存在しない.相対的な正解値に基づく疑似オラクルを用いることになる.その具体的な方法として,多様なデータを入力して検査するメタモルフィック・テスティングが有力である.一方,機械学習プログラムへの入力は多数のデータからなるデータセットである.データ分布の違いが入力の多様性を表すといってよい.本稿は,コーナケース・テスティングを目的として,適切な偏りを持つ入力データセットを得るフォローアップ入力生成の新しい方法を提案する.具体例として,サポートベクタマシンならびにニューラルネットへの適用事例を報告する.