著者
小谷 裕枝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1191-1198, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
15

本研究は,滋賀県安曇川沖積平野の条里制集落群を対象として,中世応永29年(1422年)から平成27年(2015年)まで継承される「文化的景観」の特徴に関する研究である。遺産でも遺構でもなく,文化財に付帯もしないが,地域風土による社会的な歴史が作用し,現在の農林地や構造物等にその歴史に基づく利用が確認できる景観を「文化的景観」と定義している。対象地が中世に属した木津荘には,中世応永20年前後の間に2つの史料が存在し,近現代の景観のルーツとされる大きな変化を捉えたとされる。本研究では,これら中世史料の既往研究の成果,明治初期の絵図(1873,74年頃)の復元図,対象地の圃場整備前後の昭和40年(1965年)と平成27年(2015年)のベースマップの5時点を基点に,同一二時点による質的変化と分布変化から分析を行っている。結論として,条里地割に展開する,以降の景観の礎(景観の骨格や関係性,敷地の文脈)を形成した点が中世から現存する「文化的景観」の特徴であることを明らかにした。また,圃場整備を境に生じた,屋敷地の核としての公共施設という地域居住域の特徴の変化も明らかにしている。
著者
黒澤 俊 松本 大生 小西 剛 野中 勝利 楠見 浩二 松田 大 北島 宣
出版者
京都大学農学部附属農場
雑誌
京大農場報告 = Bulletin of the Experimental Farm, Kyoto University (ISSN:09150838)
巻号頁・発行日
no.22, pp.25-26, 2013-12

西南暖地で、無核短梢剪定栽培を行った場合に着色不良が問題となる四倍体ブドウ品種'巨峰'について,プラスチック製結束バンドを利用した結果枝の結縛処理の処理部位と処理時期の違いが果粒品質の及ぼす影響を調査した。調査の結果,いずれの処理も果粒サイズに影響を与えないこと,ベレーゾーン期1ヶ月前に節間に処理した場合には有意に糖度が高くなることが明らかとなった。また,ベレーゾーン期2週間以前の処理は,有意ではないものの,糖度や果皮色を改善する傾向にあることが示唆された。
出版者
奈良教育大学自然教育演習室
雑誌
奈良自然情報
巻号頁・発行日
no.435, 1994-02-04

水上池付近の自然(336)/タヌキの散歩?/こちらはタヌキの輪禍/奈良の冬の最低気温/ゴイサギ/セミの幼虫/若宮椿、咲く
著者
坂根 治美 Osami Sakane 仙台大学 Sendai College
出版者
仙台大学学術会
雑誌
仙台大学紀要 (ISSN:03893073)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.55-67, 1997-03

Kiryu Koto Kogyo Gakko was established at the beginning of Taisho era by the request of and at the expense of the local community of Kiryu, a textile district in Eastern Japan. Judging by the geographical mobility of the students and by the school extension activities, this school maintained a relatively close cooperation with local industry in the area of weaving during the growth of the textile industry in Kiryu through the Taisho period. It is conceivable that this close cooperation was facilitated by two factors. On one hand, this school started as an institute of technology of textile industry which could have a direct and functional relationship with the independent factory owners or the local capitalists who were the main and peculiar bearers of the local textile industry in Kiryu in those days. On the other hand, influential independent factory owners or local capitalists in Kiryu were the main members of the movement to establish this school and they could be the link between the school and the local industry.
著者
柴田 慶一郎
出版者
香川大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

本研究は,3つの目的で構成されている.第一に,魚骨由来のヒドロキシアパタイト(以降FbA(Fishbone Absorber))がどのような物質,特に環境中で有害とされる物質に対して高い吸着特性を持つのかを実験的検討により明らかにすること,第二に,分子動力学シミュレーションを用いた数値解析によって吸着構造・メカニズム等を明らかにすること,第三に,他の吸着材料,あるいは他の吸着材料とのハイブリッドの可能性を検討し,吸着性能について検証を行うことである.第1年度目では,主に第一の目的と第三の目的を達成するために研究を遂行した.重金属に対する吸着特性を,FbAと新たな吸着材料として選択したもみ殻のそれぞれに対して実験により明らかにし,その成果を国際学会でポスター発表した後に,Journal に投稿した.現在は,重金属以外の有害物質に対する吸着特性の解明と,両材料をベースにした新規のハイブリッド材料を開発中である.また,本研究では,セシウム,ストロンチウムのような放射性物質の環境中からの除去もあわせて行っており,森林斜面の表土に沈着したセシウム,あるいはフレコンバッグに封入されたセシウムを含む汚染土壌に対する除去・回収手法を提案した.森林斜面の汚染土壌に対しては,傾斜を利用して流水によってセシウムを除去した上で,回収した汚染水に含まれるセシウムをゼオライトによって吸着した.フレコンバッグ中の汚染土壌に対しては,電気泳動とゼオライトを組み合わせることで土壌中のセシウム濃度を低減した.これらの成果は,前者に対しては国際学会でポスター発表後,Journalへ投稿し,後者については国内学会で口頭発表を行った.フレコンバッグ中の汚染土壌からのセシウム抽出と吸着に関する研究については,研究内容とプレゼンテーションのクオリティが認められ,地盤工学会より優秀論文発表者賞を頂戴した.
著者
宮田 信輝 矢野 隆 井門 健太 松本 秀幸
出版者
愛媛県農林水産研究所果樹研究センター
雑誌
愛媛県農林水産研究所果樹研究センター研究報告 (ISSN:18837220)
巻号頁・発行日
no.1, pp.33-42, 2009-03

ブドウ'安芸クイーン'の着色向上技術として、プラスチック製の結束バンドを用いた結果枝基部への簡易結縛処理を検討した。1)結縛処理により、新梢生育は緩慢になり、果粒重は小さくなるものの、果皮色が有意に向上し、Brixは高くなる傾向であった。2)結縛処理の効果は処理時期によって効果に差が見られ、発芽後20〜30日頃に処理することで、その効果を高めることができた。3)結束バンド2本で結縛処理を行うと果粒重を著しく低下させる危険性があることから、結束バンドは3.6mmから4.8mm幅のものを1本で処理すべきであった。4)結縛処理により結縛部が折れやすくなるため、結果枝の棚への誘引は慎重かつ確実に行う必要があった。
著者
大畠 明
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集 第50回自動制御連合講演会
巻号頁・発行日
pp.126, 2007 (Released:2008-12-11)

自動車制御システムの複雑さが急速に増してきており、合理的なリソーセスと期間で要求される品質を確保することは難しくなってきている。近年、この複雑さを克服する方法として、シミュレーション技術を効果的に用いたモデルベース開発(MBD)が注目されている。 MBDプロセスはシステム開発、制御対象ハードウェア、制御装置開発のプロセスからなり、それぞれのプロセスは、上流行程は下流行程に仕様書を発行し、下流肯定の成果物を仕様書と比較して検証することをベースとする方法を多段に重ねたVプロセスからなる。これによって、開発中に生じた不具合 を早期に発見し、直ちに直すことで、開発効率を位置汁しく低下させる大きな手戻りを無くし、不具合の生じる行程を顕在化させることで、継続的に開発プロセスを改善する。 ここでは、MBDを構成する7つの環境について紹介する、これは、JMAABより世界に発信したMBDの定義である。
著者
河上 淳一 烏山 昌起 宮崎 優 青木 美保 進 訓央 松浦 恒明 原口 和史 藤戸 郁久 森口 晃一 宮崎 かなえ 日野 敏明 曽川 紗帆 中村 雅隆 宮薗 彩香 工藤 僚太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cd0841, 2012

【はじめに、目的】 腱板断裂術後は再断裂が問題である。近年の再断裂率を下げる要因の報告では、リハビリテーション開始の遅延や装具装着期間延長が推進されている。当院での腱板断裂術後は、装具装着は昼夜問わず3~8週装着、退院は3~4週としており、リハビリテーション開始・装具装着期間延長を検討している。装具装着延長になると、安全性確保の半面で退院後の自宅生活に制限をきたす。特に入浴は、更衣・移動・洗体・洗髪の動作を通常装具なしで行う必要がある。入院時の入浴は、三角巾・ペットボトルなどを利用した簡易装具にて対応をしていた。しかし、自宅での介助なし入浴には、三角巾で被覆される面積が大きいために洗体が困難、三角巾の衛生面が問題になると看護師により指摘を受けた。さらに、症例からも簡単かつ安全に入浴できるようにしたいとの要望があった。入浴用装具購入も検討したが、一般に販売されているものは散見されなかった。そのため、I安全性の向上、II衛生面の向上、III安価の3項目を充たすことで、自宅でも安全に入浴可能な入浴用装具開発を目的にて本検討を実施した。【方法】 試作品(以下:1号)を作成し、使用方法を看護師に説明し腱板断裂術後症例の入浴時に使用させた。その中で、看護師・症例よりあがった問題点を随時改良していった。1号は、EVA樹脂素材のスイムヘルパー(以下:スイムヘルパー)とポリ塩化ビニル(以下:塩ビ)のパイプと紐2mを使用した。スイムヘルパーは、直径15cm・高さ10cmの円柱を3個、塩ビパイプは直線タイプの長さ40cm・直径17mm、紐2mを使用した。スイムヘルパー3個の中央に塩ビパイプを通し、塩ビパイプの中に紐を通すことで、通常装具のように肩から吊るすようにした。部品代は約1800円だった。【説明と同意】 本装具作成にあたって、ヘルシンキ宣言に基づき同意を得た。【結果】 結果として、1号から改良を加えて6号の装具までを作成した。作成の中でI安全性の問題となった点は、A前腕の下方制動性がないB手指・手関節周囲の支えがないC着脱に患肢を動かす必要がある D塩ビパイプが抜け落ちる点だった。II衛生面の問題となった点は、E塩ビの中を通した紐が乾かない点だった。III安価の問題点は、特になかった。【考察】 結果から得られたA~Eの問題点は、6号作成の過程で解決させた。Aは、腱板断裂術後の症例では一般に内転・内旋方向で腱板縫合部の伸張が加わり、下方・内転方向を自身で制御すると腱板に収縮が起こり、再断裂の可能性を高め問題となる。そこで、スイムヘルパーを通す直線の塩ビパイプを前・中・後の3本に分けた。中と後の塩ビパイプ間には、塩ビの三又継手を取り付けし、その継手外側には10cmのパイプを取り付けた。この工程で前腕を支持する部分を作成した。さらに、塩ビパイプに直接前腕を乗せると、圧を一点で受けるので、発泡ポリエチレン性カバーを装着した。Bは、A同様の問題に加えて、通常装具のように手関節を安定させる部品が付いていなかったので、不安感を感じる症例が多かった。そこで、直線の塩ビパイプ先端には、塩ビの直角ジョイント4個と10cmの塩ビパイプ3本で手指・手関節を支える部分を作った。これらの部品は、ジョイント部が可動することで体格に合わせた位置で手関節部を固定できるようにもなった。Cは、紐をかぶるように着脱するので、患肢を動かす必要があった。そこで、直線パイプ前方後方にドリルにて穴を開け、リング状の部品をつけた。紐は両先端にカラビナをつけた。これで、患肢を台に固定した状態でも紐が簡単にまわせるようになった。D塩ビパイプが抜け落ちるのは、Bで可動できる部品を使用した為に、パイプが抜け落ちる可能性が出現し問題点となった。そこで、塩ビパイプの中に結束バンドを通しパイプが抜け落ちないように工夫した。Eは、塩ビパイプの中に通した紐が乾きにくいことが問題となった。この点は、Cの問題点改善で同時に解決した。以上のA~Eの5点を中心に改善することで、I・IIの目的を達成できた。また、IIIに関しては、当初より問題となっていなかったが、部品を見直すことで1400円程度になった。この入浴用装具を利用することで、早期退院かつ装具延長になっても自宅で安全で安心して入浴できるようになると考えている。しかし、現在の入浴用装具は、解剖学・運動学的観点と看護師・症例・理学療法士の主観的意見で作成した。そこで、今後は入浴用装具の違いがどのように腱板に負荷となるかを確かめ、更に改良していきたい。【理学療法学研究としての意義】 本作成過程の意義は、理学療法士が他職種との関わりの中で、新たな職域を拡大するための一助となると考える。
著者
李 瑞
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.449-450, 1998-04-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
大貫 挙学
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.90-102, 2018 (Released:2020-03-09)

本稿の目的は、J. バトラーの「倫理」概念を、パフォーマティヴィティ理論から導出される「他者性」に着目して考察することにある。 1990 年代のジェンダー・パフォーマティヴィティに関するバトラーの議論は、彼女をフェミニズム理論家として知らしめることになった。一方2000 年代以降、彼女は、従来以上に、エスニシティやナショナリティの問題に焦点をあて、国民国家による暴力についても直接的に論じるようになった。バトラーによれば、現代社会においては主権と統治性の共犯関係によって、私たちの「生」は不安定なものになっている。そして、「生のあやうさ」が格差をともなって配分されているという。かかる現状にあって、彼女は「生の被傷性」を指摘するとともに、「自己の倫理」を主題化する。近年のバトラーについては、ジェンダー・パフォーマティヴィティから倫理一般への「回帰/転回」が指摘されてきた。 これに対し本稿では、「倫理」をめぐる彼女の議論を、パフォーマティヴィティ概念との連続性のなかで考察したい。こうした作業によって、「他者」についての社会理論と政治的実践との関係も再考できると思われる。また、現代社会における権力批判のあり方にも言及する。すなわち本稿は、バトラーについての学説研究であると同時に、後期近代の権力論を模索するものでもある。
著者
海老澤 哲雄
出版者
筑波大学
巻号頁・発行日
1996

identifier:http://hdl.handle.net/2241/4314
著者
瀧川 裕英
出版者
大阪市立大学
雑誌
法学雑誌 (ISSN:04410351)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.382-346, 2009-12
著者
瀧川 裕英
出版者
大阪市立大学
雑誌
法学雑誌 (ISSN:04410351)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.1256-1215, 2007-11
著者
垣野 明美 沢村 達也
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.147, no.2, pp.107-113, 2016 (Released:2016-02-10)
参考文献数
22

動脈硬化の進行は,血管だけでなくその灌流する臓器の機能にも直接関わり,臓器障害を引き起こす.コレステロールと動脈硬化の関連は確立されており,中でも酸化などの修飾を受けた変性LDLが動脈硬化進行の重要な要因である.血管内皮の酸化LDL受容体LOX-1(lectin-like oxidized LDL receptor 1)は,変性LDLと結合することで血管内皮障害を引き起こし,動脈硬化性疾患の進展と発症を促進する.これまでの研究で,LOX-1は動脈硬化の初期段階から発現が上昇し,LOX-1の抑制により心血管疾患の症状を改善することが明らかになっている.最近の疫学調査により,血中のLOX-1リガンド(LOX-1 ligand containing apolipoprotein B:LAB)が動脈硬化性疾患の発症リスク評価に有用である可能性が高まってきている.また,ヒトの血液中に存在しLOX-1に結合する変性LDL様物質L5が明らかになり,L5がLOX-1を介してST上昇心筋梗塞(ST-elevation myocardial infarction:STEMI)の病態悪化に関与していることがわかってきた.このように内在性のLOX-1リガンドと疾患の関連が明らかになってきている一方,細胞膜上では,LOX-1がアンジオテンシンⅡ受容体のAT1と複合体形成をすることがわかってきた.これにより,細胞内シグナル伝達を介したLOX-1の作用については,AT1を介したアンジオテンシンⅡと似た形で機能する可能性が示唆される.