- 著者
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平岡 昌和
- 出版者
- 公益財団法人 日本心臓財団
- 雑誌
- 心臓 (ISSN:05864488)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.11, pp.891-911, 2002-11-15 (Released:2013-05-24)
- 参考文献数
- 92
肥大心や不全心では,不整脈の発現が突然死などを引き起こしやすく,その基盤にはイオンチャネルのリモデリングが関与する.肥大・不全心で最も多く見られる電気的変化は活動電位維持時間の延長と,その頻度依存性変化の消失である.そのイオン機序としては,一過性外向きK電流の現象が主因であり,チャネルメッセージや蛋白の発現低下も認められる.その他に,肥大が高度となると内向き整流Kチャネルの減少,遅延外向きKチャネルの二つの成分(Ikr,Iks)の減少・低下,を生じる.L型Caチャネルについては,軽度から中等度の肥大までは変化が少ないが,不活性化の遅延やβ受容体刺激に対する反応性の低下,などが認められ,高度肥大では電流値も低下する.一方,Na-Ca交換機構の亢進,細胞内Ca transientの低下と反応性の遅延などを生じる.さらに,ペースメーカーチャネルの発現,CI電流の活性化,伸展活性化チャネルの亢進などが,肥大や不全の異なる発現時期に現れてくる.これら様々なイオンチャネルリモデリングにより,活動電位延長から不応期の不均一性を生じてリエントリーの基盤をもたらし,また早期後脱分極からの異常興奮が生じやすくなる.また,Ca電流やNa-Ca交換機構の変化,細胞内Ca負荷などから,遅延後脱分極などによる異常自動能の亢進がもたらされ,不整脈の易発現性が高まると考えられる.