著者
江添 誠 豊田 浩志
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.s1, pp.s53-s56, 2020 (Released:2020-10-09)
参考文献数
5

本研究は、2017年より上智大学豊田浩志名誉教授を研究代表者とする科学研究費助成事業(基盤研究(B))(研究課題名「先端光学機器によるオスティア・アンティカ遺跡・遺物の文字情報調査」、課題番号17H02410)の助成を受けて、研究分担者として発表者がオスティア・アンティカ遺跡博物館で取り組んできた展示彫像群の3次元デジタルモデル生成プロジェクトを実例として、研究データや展示資料としての3次元デジタルモデルの有用性を検討するとともに、それらをアーカイブ化して活用する方法を、大英博物館など海外の事例などを比較しつつ考察してみたい。
著者
曽根 淳
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001417, (Released:2020-09-05)
参考文献数
47
被引用文献数
7

神経核内封入体病(neuronal intranuclear inclusion disease; NIID)は,進行性の神経変性疾患であり,近年まで剖検により診断されていたが,2011年に皮膚生検が診断に有効と報告された後,症例数が増加している.2019年にはNOTCH2NLC遺伝子上のGGCリピート配列の延長が原因であると同定され,遺伝子診断も可能となった.NIIDでは,認知機能障害で発症し,頭部MRIでの白質脳症およびDWIでの皮髄境界の高信号が認められる群と,四肢筋力低下から発症する群の2群が認められる.今後,白質脳症およびニューロパチーの鑑別診断にNIIDを含める必要があり,皮膚生検と遺伝子検査を組み合わせ,NIIDを的確に診断し,病態解明を推進する必要がある.
著者
金子 充
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.33-43, 2002-08-31 (Released:2018-07-20)

産業構造の転換に伴って,人びとの働き方,家族のあり方,ライフコースが大きく変化してきている。そのことは,社会福祉の「対象」が変化していることを表している。こうした社会福祉の現代的な「対象」の問題は,ジェンダー論,人種/エスニシティ論,そしてアンダークラス論から提示されている。「批判的社会政策論」(Critical Social Policy)はこれらの議論のエッセンスを凝縮し,階級,ジェンダー,人種/エスニシティなどの観点から,人びとが「社会的に分裂した」(social division)状態にあることに注目しつつ,そのような、人びとの差異やアイデンティティに配慮した福祉国家を構築することに関心をもつアプローチである。こうした視点をもとに,現代の社会変化と「社会的分裂」に関する議論を踏まえた社会福祉対象論を再構成するための展望について論じる。
著者
山田 真澄 羽田 浩二 山田 雅行 藤野 義範 福田 由惟
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.19, no.41, pp.357-362, 2013-02-20 (Released:2013-02-20)
参考文献数
31

We conducted a damage survey of wooden houses in Sakae village, Nagano prefecture, and Tsunan town in Niigata prefecture for the 2011 Northern Nagano earthquake. Percentages of totally-collapsed and partially-collapsed buildings in local districts are computed based on the observations. Using different criteria, local governments also conducted damage surveys for purposes of emergency response and recovery plans. We compared results from both types of surveys, and found that the damage percentages in each district were consistent. This indicates that the results of damage surveys conducted by local governments may be used as a complement to surveys carried out for research purposes.
著者
山田 真澄 山田 雅行 福田 由惟 スマイス クリスティン 藤野 義範 羽田 浩二
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1_20-1_30, 2012 (Released:2012-02-22)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

我々は、2011年長野県北部の地震(Mj6.7)の震源域で木造建物の全棟調査及び高密度の常時微動計測を行った。木造住家の全壊率は、長野県栄村の青倉地区と横倉地区で30%を超えており、観測記録の得られている森地区では10%以下であった。また、震源近傍で得られた地震観測記録と常時微動記録から青倉地区と森地区での強震時の地震動を推定した。推定された地震動は、地区の中の揺れやすさを反映することができ、その特徴的をとらえた分布を示した。推定した地震動(PGA, PGV)と木造建物被害率との相関は概ね良く、被害分布と矛盾しない地震動分布を推定できたことを示している。本研究で求められた被害率曲線では、150cm/sを境にして木造建物の倒壊率が急増し、倒壊率が半数を超える結果が得られた。

1 0 0 0 歴史群像

出版者
ワン・パブリッシング
巻号頁・発行日
vol.7(2), no.34, 1998-05
著者
青木 雅子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.3_43-3_51, 2009-09-16 (Released:2011-08-30)
参考文献数
16
被引用文献数
4 2

先天性心疾患患者の小児期におけるボディイメージの形成過程を明らかにすることを目的に,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.先天性心疾患をもつ21名の成人患者に,小児期における身体に対する思いを回想してもらった.ボディイメージの形成過程は,もの心ついた時に認識した身体に対するあたりまえさを自分なりのあたりまえさに再構築していく『あたりまえさの創造』であった.【もの心ついたときのあたりまえさ】を基盤にし,友だち社会に進出して認識した身体心理社会的な【不都合さの実感】を,【同化への試み】【ジレンマとの駆け引き】【体内の調整力の発揮】をしながら,【自分らしいあたりまえさの再構築】へと変化修正させていた.体内感覚を頼りにしたボディイメージは,社会的営みを通して自己イメージへと創造されており,身体の適切な理解,他者からの了解,安心,コントロール感の獲得,他者との共軛,理想像との一体感,適応の実感を高めることが安定した自己構築につながると考えられた.
著者
金 恩一 藤井 英二郎
出版者
千葉大学園芸学部
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
no.46, pp.p215-220, 1992-03
被引用文献数
1

韓・日の植栽の構成や取扱いを比較するための基礎として点, 線を対象に, 眼球運動を解析した.実験に用いた対象は白板, 丸点, 横線, 縦線, 横縦線, 右斜め線, 左斜め線, X線である.停留点では「白板」より「丸点」で集中する傾向が見られた.韓国人は「横線」, 「縦線」, 「横縦線」の線上に停留点がより多く分布し, 視点移動もいずれの対象においても横方向の移動がより多く見られた.これに対して日本人では「横線」と「縦線」における停留点の分布と視点移動がいずれもその線上に分布し, また「横縦線」でも対象に則する傾向が見られた.斜め線に対する停留点の分布型では, 韓国人は「右斜め線」, 「左斜め線」, 「X線」いずれにおいても同じ分布型を示すのに対して, 日本人は対象ごとに分布型が異なる傾向が見られた.従って, 韓国の人々は対象物に係わらず一定した見方を示す傾向があるのに対して, 日本人の見方は対象に則して変化する傾向をより強く示すものと考えられる.
著者
幸泉 哲紀
出版者
龍谷大学国際社会文化研究所
雑誌
龍谷大学国際社会文化研究所紀要 (ISSN:18800807)
巻号頁・発行日
no.6, pp.179-194, 2004-03

国中至る所に色鮮やかな寺院や仏塔が点在し,また忙しい街路では托鉢をする僧と食べ物を施与する在俗者の姿が常に見られるタイは,仏教を実践する国と言うことができる。仏教は国教であり,タイの人々の生活のあらゆる側面にその影響が見られる。これに対して,異次頓の殉教の話や頭部を破壊された仏像に象徴されるように,韓国は堅忍な仏教徒の国と言える。数世紀にわたる排斥と迫害の歴史にもかかわらず,仏教はなお多くの熱心な信徒をもっている。言うまでもないことであるが,タイの人々にとっても韓国の人々にとっても仏教は輸入文化である。両国における仏教文化の出発点は,前論文で「説得による文化移転」と特徴付けたところの文化移転である。しかし両国におけるその後の仏教文化の展開は極めて対照的である。この論文では,タイ仏教と韓国仏教の違いがどこに見られ,その違いはなぜ生じたのかを分析する。タイと韓国の人々が仏教を自らの文化として受容するようになった経緯を分析することで,前論文で提起した文化移転に関する一般的な問題,つまり「移転された文化が移転先の人々に受容されるには,なぜ,どのように,どこに,またどの程度の移転文化の変容がなされるのか」という問題について,幾つかの有用なヒントが得られることが期待される。
著者
新井 絢也 戸田 信夫 黒川 憲 柴田 智華子 黒崎 滋之 船戸 和義 近藤 真由子 高木 馨 小島 健太郎 大木 正隆 関 道治 加藤 順 田川 一海
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.148-149, 2018-06-15 (Released:2018-07-19)
参考文献数
3

A 95-year-old female was transferred to our hospital for the purpose of the treatment of cholangitis due to common bile duct stones. One day after removal of bile duct stones with endoscopic retrograde cholangiopancreatography (ERCP) , she suddenly suffered cardiopulmonary arrest. Prompt cardiopulmonary resuscitation was performed, and the spontaneous circulation and breathing resumed. Contrast-enhanced computed tomography revealed pulmonary embolisms (PE) in the bilateral pulmonary arteries. PE is known as a common but sometimes fatal complication after surgery, and prophylactic approaches including early ambulation, wearing compression stockings, intermittent pneumatic compression, and anticoagulants have been proposed based on the risk of developing PE. However, only a few reports have focused on the development of PE as a complication after invasive endoscopic procedures. In this article, we discuss the risk factors and the prophylaxis policy against PE after ERCP.
著者
宮下 聡子
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.67-89, 2006-06-30 (Released:2017-07-14)

ユングは古来の難問、「悪の問題」に、神義論とは異なる立場から答えようとした。ユングは「キリスト、自己の象徴」(『アイオーン』第V章)で、彼の見るところ「悪の問題」へのキリスト教の答えである「善の欠如」の教説を批判している。ユングによれば、この教説は「最高善」である神の被造物の中に悪は存在しないと説いているが、それは誤りである。神は「最高善」ではないし、そのような神の被造物として人間にも悪は具わっている。ユングはまた『ヨブへの答え』で、神を「対立の一致」にして「無意識」と規定し、「人間化」を欲しているとする。ユングによれば、神は「対立の一致」として善だけでなく悪も含んでおり、しかも「無意識」で自己反省を欠くため、悪の面が現れ出ることがあり得る。そして神は「人間化」を欲し人間に宿ろうとするため、悪は神と人間の関係において解決されるべき問題となる。ユングはこのようにして「悪の問題」に答えようとする。ここに、人間悪を徹底的に見詰め、しかも神との関連においてその解決策を探ろうとした、ユングの思想的格闘の成果を見ることができるのである。
著者
長谷川 典子
出版者
多文化関係学会
雑誌
多文化関係学 (ISSN:13495178)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.15-30, 2005

当研究は2003年12月から約10ヶ月間に亘って行われた質問紙調査の結果を基に韓国ドラマ「冬のソナタ」の視聴行動と視聴者の韓国人に対する態度変容の関係について質的・量的に分析を試みたものである。分析結果から、参加者たちの韓国人に対するイメージは概ねドラマ視聴により好転し、彼らの韓国人に対する関心も高まっていることが明らかになった。偏相関分析の結果、主演俳優に好感を抱いたり、感情移入しドラマ視聴をすることと韓国(人)に関心を持つことの間に何らかの関連性があることが示唆された。また、重回帰分析の結果から、「韓国(人)に対する関心」「『冬のソナタ』への好感」「主人公への感情移入」などは韓国人のイメージの変化に比較的強い関連があるということが明らかになった。自由記述回答に対する内容分析の結果から、回答者たちは韓国の人々の倫理観、人間関係のあり方、ものの考え方などの様々な価値観、すなわち隣国の深層文化の一端を見、文化に対する理解をも深めた者が多く存在したことが判明し、日本での韓国ドラマの放映は、両国間の異文化コミュニケーションの観点からは望ましい結果を生んでいることが窺えた。
著者
溝口白羊 著
出版者
日本評論社出版部
巻号頁・発行日
vol.坤の巻, 1921
著者
松島 理明 高橋 育子 保前 英希
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.147-151, 2012 (Released:2012-03-28)
参考文献数
16

症例は53歳の女性である.貧血に対する1カ月の鉄剤内服でHb 3.5g/dl が8.9g/dl と改善した.入院当日頭痛や痙攣を主訴に救急搬送され,搬入後痙攣重積となった.高血圧を呈し,脳MRIで両側後頭葉などに異常信号をみとめた.髄液蛋白は上昇していた.人工呼吸管理下のチアミラール持続静注で痙攣は収束し,意識状態の改善,脳MRI異常の消退をみとめ,posterior reversible encephalopathy syndrome(PRES)と診断した.PRESの背景として高血圧や薬剤性などがあるが,本症例のように比較的急速な貧血補正で発症するばあいもある.貧血補正の際は慎重さを要する症例が存在する.