著者
安中 進
出版者
日本比較政治学会
雑誌
比較政治研究
巻号頁・発行日
vol.5, pp.19-39, 2019

<p>本研究は政治体制と栄養不足の関係を考察する。本研究は飢饉と異なり学問的蓄積の乏しい栄養不足を対象に、状況が最も深刻だと考えられているサブサハラ・アフリカにおいて、1991年から2014年にいたるTime-Series-Cross-Section(TSCS)データを用いた統計的分析によって、民主主義国家が他の変数を統制した上で民主主義自体の効果で栄養不足の改善に好ましい影響を与えているという分析結果を報告した。これは民主主義の好ましい影響が特に貧しい国々において見られることを意味し、これまで民主主義は貧しい国々では、うまく機能しないとした先行研究とは異なる結果である。また、貧困国のマラウイを対象にした事例分析によって、民主化後の農業を中心とする政策が栄養不足減少に寄与したメカニズムを説明した。</p>
著者
山川 聡 上村 治 永井 琢人 見松 はるか 日比 喜子
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.19-22, 2009-04-15 (Released:2009-11-10)
参考文献数
3

今回,われわれの施設において小児ネフローゼ症候群患児における年間ステロイド総投与量と身長の伸び率に関しての検討を行った。対象は当施設で管理中の過去1年間の成長記録が存在する特発性ネフローゼ症候群患児54例 (FSGS確定を5例含む) で,1年間の総ステロイド投与量と身長増加率との関係について後方視的検討を行った。患児の内訳は,男児35例,女児19例で,観察終了時の年齢は3.7~17.8歳 (中央値9.3歳) であった。免疫抑制剤併用は54例中42例〔シクロスポリン (CsA) 単独22例,CsA+ミコフェノール酸モフェチル (MMF) 9例,CsA+ミゾリビン (MZ) 4例,MZ単独7例〕であった。年間平均プレドニゾロン (PSL) 量 (mg/kg/day) は0.23mg/kg/day (0~0.88mg/kg/day) であった。ステロイドの投与量が多くなると身長増加率は低下する傾向を認めた。また,PSL投与量が少ない場合は身長増加率への影響も少ない可能性が示された。成長の面から考えて当施設での免疫抑制剤併用の基準としているPSL投与量1mg/kg隔日 (=0.5mg/kg/day連日) 以上は妥当であると考えた。
著者
犬飼 望 田中 伸治 中村 文彦 有吉 亮 三浦 詩乃 小根山 裕之 柳原 正実
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_1327-I_1338, 2018

交差点の平面幾何構造と交通制御を工夫し,右折車と対向直進車の交錯を減らすAlternative Intersections(以下,AI)と呼ばれる新しい交差点概念が海外にて提案されている.本研究ではAIが我が国でも交通制御の選択肢の1つになり得るという仮説のもと,適用に向けた知見を得ることを目的とする.日本に存在する交差点からAIの適用可能性があると考えられる交差点を選定し,観測データを基本入力値としたシミュレーションを用いてAIを仮想再現し,交差点処理性能評価を行った.また,従来型交差点と構造が大きく異なるAIを日本人ドライバーが迷いや違和感なく運転できるかどうかドライビングシミュレータを用いて検証した.その結果,我が国におけるAIの適用領域の目安を示し,日本人ドライバーにとってAIは工夫次第で受容性があることを明らかにした.
著者
三井 隆弘 重松 公司
出版者
岩手大学教育学部
雑誌
岩手大学教育学部研究年報 (ISSN:03677370)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.9-16, 2012-03-10

Little research has been undertaken on how units of measurement are understood, though they are commonly used and the importance of their inclusion in the educational curriculum has been widely recognized. The present paper reports on a cross-sectional survey consisting of 10 questions and designed to assess understanding of units of length, weight, velocity, and force, as well as significant digits, which we administered to 302 university students. The participants were classified according to their field of study. The average score was 2.7 ± 1.5 points (SD) (n = 138) among students not majoring in the natural sciences, and 4.6 ± 1.9 points (n =164) among natural science students; both scores were lower than we had expected. More than half of the students in the former group could not convert 5 m2 to 5 × 104 cm2 (50,000 cm2). Even in the latter group, less than 10% recognized 1 newton (N) as 1 kg m /s2. This is probably due to the reduced number of science classes offered from elementary school through senior high school and the reduced content of the classes that are offered.
著者
高橋 義明
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.11, no.Special_issue, pp.S13-S18, 2018 (Released:2019-04-10)
参考文献数
10

幸福度は政策当局者にも利用されるようになり,世界幸福報告書の公表など国際比較も盛んになっている.世界幸福報告書では各国の幸福度を6つの要素で説明しているが,幸福度平均値の差はむしろ残差で生じている.残差が文化差を示すのかを検証するため,現在の幸福の投影元として「理想(イデア)の幸福度」(11件法)による測定を試みた.日本での5つの調査結果からは不幸せをプラスに評価し,高い割合で「中位の幸福度」を理想とする傾向があった.幸福度(現在)と理想の幸福度の得点差を考慮して幸福度(現在)を調整し,欧州各国の幸福度(現在)に関する頻度分布を利用してクラスター分析を行うと,日本はいずれの調査でもデンマークなど幸福度平均値が高い国と同じクラスターに分類された.以上から,今回提案された幸福度の測定方法を用いると,「アジアの人々の幸福度が低い」との悲観的な結論はえられず,むしろ北欧や中南米の人々の幸福度と差がないと解釈できることが示された.
著者
柿原 利治 若木 毅 柳川 三郎
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.33-38, 1988
被引用文献数
2

In order to make a study of the effects of antenna height error on the two-dimensional positioning accuracy of the GPS, calculations of positioning errors were carried out by using assumed and actual allocation of three NAVSTAR satellites. As the results of these simulations, it was found that the positioning error indicates a certain tendency of dependence on the relative position of three satellites in observer's celestial hemisphere.
著者
諸富 正己
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.911-916, 2010

腸内フローラの研究からプロバイオティクスという新しい概念が生まれ、これが形となって実際に健康維持や病気の予防、治療に使われるようになった。プロバイオティクスとは、「腸内フローラのバランスを改善することにより、宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物」と定義され、その代表的なものは乳酸菌やビフィズス菌である。抗生物質(アンチバイオティクス)に対比される言葉で、「共生」を意味する「プロバイオシス」から派生した言葉である。プロバイオティクスが最近注目されるのは、近代医療が抱える様々な問題&ndash;抗生物質と耐性菌の問題など&ndash;を考えると当然かつ自然の成り行きで、現代の農業にたとえてみると、農薬や化学肥料への依存から自然の生態系を積極的に利用しようという有機農法への回帰に例えることができる。ここでは最近の腸内フローラ研究の進展について、明らかにされつつある共生のメカニズムを中心に解説してみたい。
著者
鶴岡 久 高辻 正基
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.591-594, 1985-11-01 (Released:2011-07-19)
参考文献数
12

1 0 0 0 OA 刑事法論集

著者
小野清一郎 著
出版者
有斐閣
巻号頁・発行日
vol.第2巻 (刑法に於ける名誉の保護), 1934
著者
ブラウン レスター 高田 憲一
出版者
日経BP社
雑誌
日経エコロジー (ISSN:13449001)
巻号頁・発行日
no.71, pp.46-49, 2005-05

1934年、米国ニュージャージー州生まれ。ハーバード大学などで農学と行政学を修める。米農務省の国際農業開発局長を経て、74年にワールドウォッチ研究所を設立。2001年5月から現職。『飢餓の世紀』『プランB』など著書多数。4月には『フード・セキュリティー』を上梓──中国の急速な経済発展は、環境問題とも密接に関係してくると思います。
著者
池田 俊輔 蛯名 麻衣 平野 祥代 大野 駿人 山崎 弘嗣
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.H4P2359, 2010

【目的】応用歩行の獲得は理学療法の重要な目標の一つであるが、応用歩行が運動学的にどのような歩行であるのか基礎的な理解に乏しい。本研究の目的は健常成人の歩行者交通流(集団での歩行中)での個人の運動学的変数とりわけ空間的変数の特徴が、自由歩行における特徴とどのように異なるかを明らかにすることである。<BR>【方法】運動器系及び神経系に障害のないのべ60名(実質47名、男性20名、女性27名、年齢21.6±2.6歳)の大学生を対象とし、6種類の条件でのすれ違い歩行(3つの人数条件×2つの床面設定条件)を行った。3つの人数条件(10人、20人、30人)共に同人数に分かれた2集団が幅1.28mの平坦な廊下を相対する向きに歩行し(counterflow)、他人に衝突しないようにすれ違い所定の距離を歩くことが課題である。集団は16m離れた向かい合う開始線から歩き出す床面設定(プランA)と、2集団が直接対面した状態で歩行を開始する床面設定(プランB)との2通りで1cm四方の目盛りが刻まれた歩行路上を歩いた。各条件10名(のべ30名、実質25名、男性10名、女性15名、年齢21.5±1.2歳)の立脚足踵部の座標をデジタルビデオカメラで撮影し歩幅と歩隔、歩行速度を計測した。<BR>【説明と同意】全ての対象者に本研究の目的と実験方法について説明を行い、書面で同意を得た。<BR>【結果】プランAでは集団人数の増加と共に歩行速度は1.08±0.31(m/s)、1.03±0.11(m/s)、0.78±0.12(m/s)と低下し、プランBでも1.06±0.11(m/s)、0.86±0.10(m/s)、0.67±0.13(m/s)と低下した(p<0.01)。プランAでの歩幅は集団人数の増加と共に55.6±17.8(cm)、54.0±20.2(cm)、44.8±22.5(cm)と狭小化し、プランBでも58.8±16.4(cm)、49.2±20.0(cm)、38.8±24.0(cm)と狭小化した(p<0.01)。歩幅の標準偏差は人数増加に伴い増加する傾向にあった。プランAの歩隔は平均で9.80±7.87~10.9±8.35(cm)にあり、プランBでは10.3±7.67~12.3±10.2(cm)にあった。<BR>【考察】歩行者交通流の集団人数の増加に伴う歩行速度の低下は複数の先行研究の結果と一致した。歩行速度は集団の人数の関数であることが示唆された。本研究は、その歩行速度の低下が、個人の歩幅の減少と対応していることを示した。しかし歩幅は自由歩行に比べて狭く、そのばらつきも大きく、もはや歩行運動を代表する周期変数としての特徴を失っていた。つまり単に前進運動として歩行するのではなく衝突回避を行うための進行方向変更あるいは移動停止や加速を含めた運動調節を行うために下肢の運動を調整していることを反映していると考えられる。殊にcounterflowにおいては、自由歩行で仮定している周期的な歩行運動から逸脱する運動であるために、歩行速度の低下と歩幅の減少の関係は、歩行率を介する関係式(歩行速度=歩幅×歩行率)から予測できるものではない。今後は歩行周期(時間的変数)の変動との関連を明らかにすることが必要であろう。<BR>【理学療法学研究としての意義】歩行者交通流における個人の歩行の運動学的特徴は、平均的には自由歩行にくらべて遅い歩行速度と狭い歩幅である。しかしそれらは、例えば10m歩行テストによって明らかになるような周期変数としての特徴は区別されるべきであり、応用歩行の運動学的特徴は自由歩行あるいは自然歩行の延長線上に位置づけられない。応用歩行の特徴は、非周期的な強制歩行の特徴として記述される可能性がある。<BR><BR>