著者
松山 淳子 畑 邦彦 曽根 晃一
出版者
鹿児島大学農学部演習林
巻号頁・発行日
no.34, pp.75-80, 2006 (Released:2011-03-05)

2001年5月から12月にかけて、鹿児島大学農学部附属高隈演習林(鹿児島県垂水市)の3林分と鹿児島市城山において、ホンドタヌキの新しい糞を採取し、その内容物を調査した。タヌキの糞には、植物の種子、果肉、組織、昆虫類、その他の節足動物、軟体動物、ほ乳類や鳥類の骨などが含まれていた。このうち、夏は昆虫を中心とした動物が多く含まれ、秋から初冬にかけて植物の種子や果肉の割合が増加した。糞に含まれる昆虫や種子の種類は林分間で異なり、市街地と接している城山では、人間の生活に関連していると考えられるプラムやウメの種子の他に、ビニールやアルミホイル、布なども回収された。これらの結果から、タヌキはその生息環境に応じて、その食性を変化させる能力を持っていると考えられた。人間との接触機会が増加しているタヌキの個体群の保全について考察した。
著者
Charles Spence
出版者
ACOUSTICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
Acoustical Science and Technology (ISSN:13463969)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.6-12, 2020-01-01 (Released:2020-01-06)
参考文献数
98
被引用文献数
2 15

The last few years have seen an explosion of interest from researchers in the crossmodal correspondences, defined as the surprising connections that the majority of people share between seemingly-unrelated stimuli presented in different sensory modalities. Intriguingly, many of the crossmodal correspondences that have been documented/studied to date have involved audition as one of the corresponding modalities. In fact, auditory pitch may well be the single most commonly studied dimension in correspondences research thus far. That said, relatively separate literatures have focused on the crossmodal correspondences involving simple versus more complex auditory stimuli. In this review, I summarize the evidence in this area and consider the relative explanatory power of the various different accounts (statistical, structural, semantic, and emotional) that have been put forward to explain the correspondences. The suggestion is made that the relative contributions of the different accounts likely differs in the case of correspondences involving simple versus more complex stimuli (i.e., pure tones vs. short musical excerpts). Furthermore, the consequences of presenting corresponding versus non-corresponding stimuli likely also differ in the two cases. In particular, while crossmodal correspondences may facilitate binding (i.e., multisensory integration) in the case of simple stimuli, the combination of more complex stimuli (such as, for example, musical excerpts and paintings) may instead be processed more fluently when the component stimuli correspond. Finally, attention is drawn to the fact that the existence of a crossmodal correspondence does not in-and-of-itself necessarily imply that a crossmodal influence of one modality on the perception of stimuli in the other will also be observed.
著者
鍋島 直樹
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2018年度は、現代政治経済学の教科書(単著)の執筆にほとんどを費やした。現代の主流派である新古典派経済学との対抗関係を明らかにしながら、政治経済学の多様なアプローチにもとづき、資本主義経済の基本的仕組みについて解説するものであり、近く公刊の予定となっている。新古典派経済学の理論については夥しい数のミクロ経済学とマクロ経済学の教科書が存在する一方で、政治経済学では入門レベルの教科書はいまだ少ない。これまでマルクス経済学の教科書は数多く刊行されているものの、それらのほとんどは、『資本論』の体系に沿ってマルクスの経済理論を解説することに主眼がおかれている。今日においても、マルクスの経済理論を学ぶことに大きな意味があることは疑いないものの、現代の資本主義経済をとりまく諸問題を理解するためには、マルクス経済学の新しい展開についても知る必要があるし、さらには、ケインズとカレツキを源泉とするポスト・ケインズ派の経済学についての知識も欠かすことができない。本書では、マルクスの経済理論の主要部分についての基本的な知識を得ることができるように配慮する一方で、現代マルクス経済学やポスト・ケインズ派経済学における新しい理論的成果も積極的に取り入れている。しかし、さまざまな学説を並列的に紹介するのみに終わるのではなく、それらの学説のあいだの共通点と相違点、および補完関係についても論じているので、読者は、マルクスとケインズの総合によって新古典派経済学に対する代替理論の構築を進めている政治経済学の今日的な意義と課題について大まかな理解を得ることができるはずである。
著者
山崎 修
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.476-490,544, 1953-02-28 (Released:2009-04-30)
参考文献数
4
被引用文献数
1

Twice crops of rice a year appeared in the middle of the Edo era owing to the favorable climatic condition to make for the staple food. But a period of decadence set in the end of Edo era and early in the Meiji due to the poor cultivation and the difficulty of the gradeimprovement. Since the middle of Meiji at the first crop the Kinugasa-wasa had been planted from the end of March to the end of July and at the second crop the Hayakawa shu had deen planted from early in August to early in Novemder. And from early in Taisho the management has been kept eqilibrium. Those days the twice crops a year was cultivated on the seashore plains but early in Showa it has been limited to the Kochi-Aki Plain, due to labor problem.For the twice crops of rice a year the climatic condition is essetial. It can be cultivated by utilization of the possible-climate, optimatic climate and the sunshiny-hour for grow and distribution of the Typhoon. The latter is the direct motive especially. Topography is the second condition. In Kochi Prefecture the rice-farm is scanty due to the mountainious topography, so the intesity of the rice-farm is very high. This geve impitus to appearance of the twice crops of rice a year. But the grade is low, and the fertilizer and the lador are much required. So there is a tendenoy that the second crop has changed in to the realization crop. The agricultural management of the twice crops of rice a year is changing its areal character. The growing area was most large and the crop was high in 7-8th of Showa.
著者
村上 健
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.4-8, 2020 (Released:2020-11-13)
参考文献数
5

難聴児の中には発達障害を伴う児童が増えている。このような児童には多職種が連携し個別に対応をする必要がある。言語聴覚士の役割としては聴覚管理だけでなく,全体発達および言語発達,コミュニケーションの評価を実施し,医療/療育/教育機関で連携をとりながら難聴児の発達段階に応じたコミュニケーション方法を習得させることが必要である。また評価結果に基づき,児童のもっている能力を最大限に引き出すことが求められる。言語聴覚士の立場から,様々な特性を持つ難聴児一人一人に対する療育・教育における医療/療育/教育機関の連携の重要性と,多職種連携の在り方を述べる。
著者
舟橋 健司 フェルズ シドニー
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.421-428, 2005

In this paper, we describe the method to express water wave and splash for virtual swimming as artwork; Swimming Across the Pacific. Our water simulation is based on the method in which the water surface is modeled as a thin film. For the sea surface plane waves, we use recurrence relations to solve the partial differential equation for the 2D wave as is standard practice. In this method, the sea surface is modeled as a mesh. We approximate the volume of the swimmer with bounding boxes to improve performance and determine when they intersect any of the water grids when they move. Then waves are then made and propagated. If the height is over a pre-defined threshold value and/or the swimming avatars motion interferes with waves, some particles are made in the air to simulate splashing.
著者
加藤 直樹 高野 真希子 木田 哲量 近藤 勉 今野 誠 須藤 誠 加藤 清志
出版者
日本学術会議 「機械工学委員会・土木工学・建築学委員会合同IUTAM分科会」
雑誌
理論応用力学講演会 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.196, 2010

滑走路や高速道路舗装に使用されているようなコンクリート平版が弾性基礎上にある場合、半無限ばりの解析では、従来はその変形および曲げモーメント分布は単純な逆ベル形であったが、本研究によれば減衰部に極性の交番する変形が発生することが明らかになった。この事実は設計にあたり、単純曲げではなく曲げ疲労強度を考慮すべきことを示唆してる。そこで本報告は、半無限舗装版に車輪型点荷重を受ける場合、コンクリート版に引張ひび割れが発生する実状にかんがみ、地盤反力係数(地盤安定処理の程度)と応力やたわみを2000~3000m超という長手方向版長Lに対し、幅員B=100m程度でB/L=1/20~1/30を考慮し、はりにモデル化して解析を進めた。なお、幅員方向応力分担能をはり状に仮定し、版厚の影響についても考察した。また、応力解析にあたり、とくに目地なし半無限版を想定し、たわみ、曲げモーメント、地盤係数等の相関関係を総合的に考察し、舗装版設計上の限界特性値や地盤安定処理についての指針を明らかにし、両振り曲げ疲労対策としての高強度筋使用と鉄筋法の提案を行ったものである。
著者
中山 英二 大内 知之 賀来 亨 柴田 考典 有末 眞 永易 裕樹 安彦 善裕 上野 繭美 河津 俊幸 吉浦 一紀 浅香 雄一郎 上田 倫弘 山下 徹郎 仲盛 健治 平塚 博義 針谷 靖史 関口 隆
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.59-68, 2011-09-15 (Released:2011-10-20)
参考文献数
6
被引用文献数
5 4

唾液腺腫瘍は病理組織像が多彩であり,また,一つの腫瘍型の中にも多様な組織成分が混在するので,唾液腺腫瘍の病理組織学的診断は難しいことがある。それゆえ,唾液腺腫瘍において,良性と悪性の画像鑑別診断もまた困難なことがある。境界が画像上でほとんど明瞭のようであっても,実際は微妙に不明瞭である唾液腺腫瘍は悪性腫瘍のことがある。そこで,唾液腺腫瘍の画像診断においては,画像上の境界の明瞭度は非常に重要で,境界の明瞭度の注意深い判定は必須である。境界の明瞭度はCTではなく,超音波検査とMRIで判定されるべきである。さらに,CTとMRIでは,可能であれば,DICOMビューワー上で最適な画像表示状態で観察されるべきである。大唾液腺腫瘍について:耳下腺腫瘍では良性腫瘍が70%以上であり,顎下腺腫瘍では40%が悪性で,舌下腺腫瘍では80%が悪性である。この事実は唾液腺腫瘍の画像診断をする上で重要である。境界が必ずしも明瞭とはいえない耳下腺腫瘍は悪性を疑う。画像所見が舌下腺から発生したことを示す病変は悪性腫瘍と診断されるべきである。小唾液腺腫瘍について:腫瘍が小さい場合はたとえ悪性でも境界が明瞭なことがしばしばである。そこで,病変の境界が明瞭である画像所見は,その病変が良性である証拠とはならない。口蓋部の悪性唾液腺腫瘍では,画像所見として検出できない微妙な骨浸潤があることに特に注意を払う必要がある。口唇と頬部の唾液腺腫瘍には超音波検査が最も有用である。顎骨内に粘表皮癌が発生することについても注意したい。
著者
大前 麻理子 岩井 大 池田 耕士 八木 正夫 馬場 奨 金子 敏彦 島野 卓史 山下 敏夫
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.393-398, 2005-06-01 (Released:2010-06-28)
参考文献数
20
被引用文献数
1

耳下腺多形腺腫症例60例についてMRIT2強調画像の信号強度と病理像とを比較し, 検討を行った.MRIT2強調画像の信号強度を3タイプに分類したとき, 正常耳下腺組織より著明に高い信号を示すタイプは, 45例75%に認められた.軽度高信号から等信号を示すタイプは9例15%, 低信号のタイプは6例10%であった.これらの症例それぞれの病理像を見ると, 粘液腫様・軟骨腫様間質は高信号領域に相当し, 一方, 細胞の密な領域は軽度高信号から等信号領域に, 線維性結合織は低信号領域に一致した.耳下腺多形腺腫はMRIT2強調画像で一般に高信号を示すとされるが, 今回の検討では, 等信号からそれより信号の低いタイプが全体の25%に認められたことになる.耳下腺腫瘍で多数を占める本腫瘍の, MR所見における特徴の把握が, この腫瘍の診断と他の耳下腺腫瘍との鑑別に有用であると考える.
著者
岡部 正勝
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.683-689, 2017

<p>インターネットの利便性をこれまでになく享受し,ネット上に拡散する情報の力が革新的な発想を後押しすることも多い21世紀初頭は,同時に情報漏えいや権利侵害,依存といった弊害や危うさを露呈し始めた時代でもある。不可視だが確実に存在する脅威,ネットにつながっているゆえの不自由さをも見極める必要がある。現代の環境を冷静に認識し,今起きていることに対してどうふるまうべきか。現代思想・法曹・警察行政・迎撃技術・情報工学・サイバーインテリジェンス等のスペシャリストが,6回に分けて考える。</p><p>第3回は警察庁から慶應義塾大学に出向中の岡部正勝氏が,サイバー犯罪捜査,検挙による抑止努力,犯罪拡大防止のための国際連携の最新状況をとおして,日本の警察の奮戦の実態を解説する。</p>
著者
澤田 正一 小林 泰輔
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.41-46, 2020 (Released:2020-11-13)
参考文献数
16

小児結膜炎-中耳炎症候群33例と中耳炎を伴わない小児急性結膜炎120例の細菌学的検討を行った。小児結膜炎-中耳炎症候群において,眼脂培養では82%から細菌が検出された。細菌は29株検出され,インフルエンザ菌(HI)25株(89%),肺炎球菌(SP)3株(10%),モラクセラ・カタラーリス(MC)1株(3%)であった。眼脂から培養された29株のうち28株(97%)は同種の細菌が鼻咽腔からも検出された。小児結膜炎-中耳炎症候群では,HIが最も重要な原因菌である。急性結膜炎では,65%から細菌が検出され,HI 64株(69%),SP 16株(17%),MC 5株(5%),その他8株(9%)であった。SPまたはHIが検出されたものについて年代別に検討したところ,月齢が上がってくるとHIの比率が上昇していた。小児結膜炎-中耳炎症候群においてはHIが多いが,低月齢ではSPも想定が必要である。
著者
高木 淳 玉井 一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.638-639, 2003-07-01

死産児を分娩した妻(O型)が出血多量のために夫(O型)の血液を輸血したところ,妻は輸血後に副作用を起こした.Levineら(1939)は,この妻の血清から104検体のO型赤血球中80検体を凝集する抗体を見出し,ABO血液型以外の血液型の存在を指摘した(図1左).その翌年,Landsteinerらはアカゲザル(Rhesus macaque)の赤血球をモルモットに免疫して得られた抗体が,アカゲザルのみならず白人の赤血球の約85%を凝集することを見出した(図1右).アカゲザルとヒトが同じ血液型抗原を持っていることを意味するので,この抗原を“Rhesus”にちなんでRh血液型と名付け,この免疫抗体で凝集する赤血球をRh(+)型,凝集しない赤血球をRh(-)型と名付けた.そして,Levineらの症例など,ABO血液型適合の輸血において副作用を呈した者に見出された現象はRh抗原によるものであろうと推定した.しかし,その後輸血副作用を起こした患者の血清中に他の種々の抗体が見いだされ,次に述べるように1種類の抗原によるものでないことが明らかになった. Rh 血液型因子 Rh血液型遺伝子はD,d,C,c,E,eが第1染色体の上に存在する.Dとd,Cとc,Eとeの各遺伝子がそれぞれ対立遺伝子として存在し,DCe,dCEなど3個ずつセットで両親からまとめて遺伝され(図2),各遺伝子が作る抗原が赤血球膜上に表現される.Rh式血液型抗原性の強さはD>>c>E>C>eの順であり,D抗原の抗原性はE抗原よりも10倍高く,D抗原が最も強い.したがって,両親からもらった1対の遺伝子セット(例えばDCe)の中に遺伝子Dを持つヒトをRh陽性者,持っていないヒトをRh陰性者と呼ぶ(dは,いまだに抗d抗体が検出されていないので理論上の抗原である).Rh式血液型はABO型と異なり,Rh陰性者でも血清中に抗Rh抗体を持っておらず,Rh陽性の血液をRh陰性者に輸血すると受血者がRh抗原に免疫されて抗体が産生される.また,Rh陰性の母親がRh陽性の夫の胎児を宿し,その児がRh陽性であると妊娠中または分娩時に児血球が母の血流中に入り,約10%の母が免疫されてRh抗体を作る.この抗体による児への影響は初回の妊娠においては一般的に軽いが,妊娠回数が増えるにつれて新生児溶血性疾患など重い症状を来したり,また抗Rh抗体が胎盤を通過して胎児血球と反応して流産を引き起こす場合もある.Rh陰性は日本では人口の0.2%であるが白人では15%と高い.Rh血液型抗原の命名法には上記のFisher-RaceによるCDE表記と,図2に示すWienerによるRh-Hr表記法の2種類がある.