著者
皆川 萌子 Moeko Minagawa
出版者
同志社大学大学院総合政策科学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.153-162, 2009-07-25

今日、過疎化、高齢化が進む農山村において、地域活性化の一環として都市からの新規移住者を受け入れる取り組みが全国の自治体で見られる。都市住民に対して田舎暮らしの意向調査もなされ、そのニーズがあることも確認されている。都市住民に向けた田舎暮らしに関する情報発信は盛んになされており、地方にとっても、都市にとっても都市住民の田舎暮らしへの関心は高まっているといえる。 京都府も例外ではなく、府内の過疎地への移住希望者を募るなどの取り組みがなされている。京都府では「京の田舎ぐらし・ふるさとセンター」が設置され、ここでは都市からの移住希望者への対応や調査などを担っている。本稿では都市からの移住者受け入れ後の集落について、新規移住者と地元住民がともに集落を形成するといった視点から、集落に対する双方の意識を明らかにすることを目的とする。そのために集落の約半数を新規移住者が占める京都府南丹市美山町T集落を事例にとりあげ、新規移住者と地元住民双方に対して実施したインタビュー調査を概観する。また、集落における行政の役割についても、住民との関係から明らかにする。
著者
布施 匡章
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.114-117, 2015 (Released:2016-05-07)

本研究では,内閣府が実施した,神戸,名古屋,仙台の3都市アンケートデータを用いて,地域コミュニティの代理変数としてのソーシャル・キャピタルが,防災活動における自助・共助意識に与える影響について分析した.地域別,あるいは震災経験別による分析の結果,自助の防災意識は,ソーシャル・キャピタルだけでなく,年齢,学歴,年収等によって高まることが示唆されたが,共助の防災意識は,ソーシャル・キャピタルのみが影響し,特にネットワーク,互酬性の規範と呼ばれる地域行事や地域活動が影響する可能性があるとされた.また,震災を経験した住民は経験していない住民よりも,共助意識とソーシャル・キャピタルを高める活動との相関が高いことが分かった.地域行事や地域活動への参加を促す政策が,自助のみならず共助による防災につながると考える.
著者
茂木 伸夫 呉橋 美紀 池上 由美子 桃井 祐子 川戸 二三江 島倉 洋造
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.302-309, 2010-09-24
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

&nbsp;&nbsp;歯科診療は,歯牙切削,歯石除去による室内汚染,口腔処置による血液や唾液からの交差感染を起こす危険があり,様々な感染対策の報告があるが,その実態はあまり知られていない.そこで,院内感染対策の施行度を知るために東京歯科保険医協会感染予防対策プロジェクト・チームは歯科感染予防対策に対するアンケート調査を行った.対象は東京歯科保険医協会会員4539人に調査を依頼,回答のあった934人(回答率20.6%)である.質問内容は1. 個人防護具,2. 室内対策,3. 器具の滅菌・消毒,4. 感染対策の実践,5. 感染対策の知識に大別した17項目である.その結果,1. マスクは99%が,手袋は85%が装着していたが,ゴーグルやフェイスシールドは51%にとどまった.2. 手洗いは95%が行っていたが,患者ごとの手袋の交換は54%であった.空気清浄機の設置は57%,口腔外バキュームの設置は31%であった.3. オートクレーブなどの使用が98%,滅菌と消毒を必ず行っている人は71%であったが,印象材などを消毒している人は34%であった.4. 肝炎患者を自院で診療している人は89%であった.5. スタンダードプリコーションを理解している人は29%であった.結論として,個人防護としてゴーグル,フェイス・シールド,室内対策として空気清浄機や口腔外バキュームの設置の必要性が示唆された.また,歯科医療従事者がスタンダードプリコーションの意識を高める必要があると考えられた.<br>
著者
坂本 信子
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.29-31, 1986-02-15

はじめに 当院は,昭和大学の付属病院として,昭和50年に設立され,同時にリハビリテーション(以下リハと略す)部門が,理学療法(以下PTと略す)室のみで発足した。作業療法(以下OTと略す)室は,昭和54年に,身障OTの認可施設として開設され,以来6年が経過している。現在OTRは2名,RPTは11名,事務職員2名である。リハ部門全体は,中央診療システムをとっており,整形外科の教授が,理学診療科長を兼任している。 OTが対象とする患者層は,年齢,疾患共に多様であるが,近年,中枢神経疾患々者の占める比率及び絶対数が増加している。その原因としては,脳外科・神経内科病棟の増床,救命救急センターの開設,整形外科での脊椎手術数の増加等があり,また,発症後,ごく早期にリハ処方が出されるようになってきている。中枢神経疾患は,もとより,全身的アプローチを要求される疾患であるが,OTとしては,早期から個々の患者に即した生活・動作パターン(筋トーヌスの調整や失行・失認の改善等を目的とする)を,考慮していかなければならない。これは,OT部門発足当初に比べ,よりImpairmentレベルの仕事がふえた事を意味している。 このように,OTの内容が,量的・質的に変化してきている訳であるが,OTの存在と役割は,必ずしも院内の認知・理解を得ているとはいい難く,OTR自身も,病院内で,いくばくかの異和感を捨てきれずにいる。 本来的に,OT部門の管理・運営方法論が,病院という機構内での,OTの位置関係を離れては存在しえない以上,医療の大きな枠組の中でOTをとらえる事は,不可欠である。 近年,リハ医学では,QOLということが,盛んに言われ始めている。しかし,現実には,リハ部門に対する主治医の関心は,専ら人間の動物的機能の面にとどまっている場合が多い。それは,リハの概念自体が,既存の医療構造の中で矮小化されている事を示しているのではなかろうか。加えて,OTが,患者の応用動作,即ち,より社会的な側面に働きかける職種である為,OTに対する理解を得ることは,一層困難である。当院のリハ部門には,リハドクターや,直接指導してくれる内科医師が居ないという特殊性もあるが,院内で,OTが,確固とした位置を築き得ていない事が,スムーズな業務遂行を妨げている。 そのような,悪循環を打開する為には,OTR自身が,状況に流されることなく,地道な実践を種み重ねていくことが根本であるが,医学部カリキュラムの問題等,OT協会のSocial Actionにも期待したい。 以上,管理・運営をめぐる諸条件について述べた。次に,当院の現状を,項目毎に報告する。
著者
熊井 信弘
出版者
学習院大学
雑誌
言語・文化・社会 (ISSN:13479105)
巻号頁・発行日
no.4, pp.91-102, 2006-03

The first hypermedia dictation program called"QuickDictation" was developed by Sugiura with software called HyperCαrd in 1993. The same kind of dictation program,"QuickTime Dictation",was produced by Kumai in 1996 by utilizing video files, which offered realistic communication situations to learners. In this program,1earners watch video files on a screen and enter the exact words they hear. The program automatically evaluates the learners'answers and shows them how well they did in the exercise by providing feedback information once the task is completed. Analysis showed a high rate of preference by learners for this program. However there are some drawbacks which need further improvements. One of them is that the program functions as a mere tester rather than as ahelper. The program only shows whether the answers are correct or not, yielding no other information or clues such as what is wrong with the answers and what learners should do to provide the right answers. Another drawback is that the program worked only on Macintosh computers, which were not the main stream computer system at that time, and could therefore not be executed via the computer network or the Internet. What's worse, the learners'results could not be saved for later reference or analysis. The purpose of this paper is to describe how the new version of the video dictation program was developed, and to discuss some improvements in terms of technology and educational implications. This video dictation program is designed to improve learners'1istening skills, espe一 cially bottom-up processing. The software was produced with quiz authoring software, Q厩zル1αker 2.Oby Articulate. In this program learners watch video files which include the sound changes they learn in the classroom and enter what they hear on the screen. Their answers are automatically recorded and processed by the program. Then the learners get immediate feedback on their results. The results are accumulated in the server, called 五θαγ痂g、Mαnαgement System(Moodle or WebClass)and can be obtained in the form of Excel files for future reference and analysis. With the help of such online programs, teachers can shift these basic practices to the homework assignment outside the classrooms so that they can concentrate more often on those communicative activities and authentic tasks which are only possible during class-time.
著者
時武 治雄
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.3-12, 1986-02-15

はじめに 大阪府立中宮病院が設立されて60年を迎えようとしている。人間でいうなら還暦の年にあたるわけだが,その間作業療法については,シモンのもとで学んだ長山による作業療法の展開や,院外保護の実践が行なわれている。 そうした折の昭和14年に,当院に隣接する枚方火薬庫の大爆発がおきたが,当時実践されていた作業療法の効果によって患者は機敏に行動し,無事故による避難ができたという逸話も残っている。 第二次大戦が激しくなるにつれ,食糧難のために多くの患者が死亡していったという悲しい記録も残されている。終戦後もこうした状態が続いていたが,当院にも,昭和30年代に入って,向精神薬を使用するようになり,少しずつ開放化のきざしがうかがえるようになってきた。昭和35年にはレクリエーション係が設置され専任のスタッフが配置された。昭和36年には,同意入院を取扱うことになった。 一方作業療法については,男子作業は農耕園芸の種目に新しく二部作業とよぶ軽作業を加え,女子作業も和裁・洋裁・手芸の種目に新しく二部作業とよぶ軽作業を加えている。 こうして,作業療法,レクリエーション療法の広がりがあって昭和43年に,旧病棟2,032m2(2階建)が作業療法棟として改造され,レクリエーション療法には社会療法棟(体育館)が新設され,この両者を合わせて名称も活動療法科として誕生した。 今回,協会機関誌編集委員会から執筆依頼があった。当院における作業療法のささやかな経験を実務的に報告することによって,多少なりとも役立つことができるのであればと考え,あえて昭和43年から現在までを,作業療法の分野に限って報告したい。そして御批判をいただきたいと考える。
著者
Hiroshi Ueda Chikako Yamazaki Masatoshi Yamazaki
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.1197-1202, 2002 (Released:2002-09-01)
参考文献数
24
被引用文献数
169 207

Oral administration of the perilla leaf extract (PLE) to mice inhibits inflammation, allergic response, and tumor necrosis factor-α production. We also found that PLE suppressed the tumor necrosis factor-α (TNF-α) production in vitro. Using the inhibitory activity of TNF-α production in vitro as the index for isolation, we searched the active constituents from PLE and isolated luteolin, rosmarinic acid and caffeic acid as active components. Among the isolated compounds, only luteolin showed in vivo activity: inhibition of serum tumor necrosis factor-α production, inhibition of arachidonic acid-induced ear edema, inhibition of 12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate-induced ear edema and inhibition of oxazolone-induced allergic edema. These results suggest that luteolin is a genuinely active constituent which is accountable for the oral effects of perilla.
著者
上村 郷志 稗圃 泰彦 小頭 秀行 岡本 泉 竹原 啓五 中村 元
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.81-86, 2008
参考文献数
8

テレビ・ラジオ番組など特定のイベントを契機として発生するアクセス要求は,短時間に特定のサーバに集中する傾向があり,そのアクセス数は平常時のそれをはるかに上回るため,当該サーバの不安定動作あるいはシステムダウンを引き起こすことがある.本稿では,整理券を用いることにより,特定のサーバに集中するユーザからの大量のアクセスを所望のレート以下に制御するアクセス制御システムを提案する.提案システムでは,新たに導入するアクセスパスサーバにおいて,ユーザ端末がエンドサーバにアクセスするまでに待機すべき時間を整理券に記載して発行することにより,エンドサーバにおける同時接続セッション数を所望の数以下に制御する.また,提案方式を実装したプロトタイプシステムは,モバイル端末向けスクリプトであるFlash Liteを用いてユーザ端末の動作を制御し,ユーザ端末およびエンドサーバへ特別な改修を施すことなく,実稼働中のシステムへ導入することが可能である.
著者
岡本 佳乃 野村 明 山中 晶子 丸山 進
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.149-154, 2009-09-15 (Released:2015-06-27)
参考文献数
13

エンドセリン-1(ET-1)は強力な血管収縮因子や表皮メラニン細胞の分裂促進因子として知られており,紫外線刺激による色素沈着の原因物質の一つとして知られている.我々は,以前にハヤトウリ(Sechium edule)果実抽出物に紫外線で誘導される表皮角化細胞でのET-1産生を抑制する効果があることを報告した.今回,ハヤトウリ果実抽出物のメラニン生成への影響を検討し,さらに,含まれているポリフェノール量を測定したので報告する.本実験では表皮角化細胞と表皮メラニン細胞から構成されているヒト皮膚三次元モデルを使用し,色素沈着の観察とメラニン定量を行った.ハヤトウリ果実抽出物は黒色化を抑制し,メラニン生成量も抑える効果が観察された.また,ハヤトウリ果実抽出物にはチロシナーゼ酵素活性の阻害は見られなかった.ポリフェノールのHPLC-クーロアレイ法での分析結果から,乾燥物重量1gあたり,ルテオリン6.6μg,フェルラ酸5.6μg,p-クマル酸3.3μg,バニリン酸6.1μg,プロトカテク酸1.5μg,p-ヒドロキシ安息香酸0.8μgが含まれていることが明らかとなった.これらのポリフェノールなどの複合物がメラニン生成抑制作用を示しているのではないかと考えられる.
著者
谷山 松雄 鈴木 吉彦 榎本 詳 佐藤 温 杉田 江里 杉田 幸二郎 渥美 義仁 松岡 健平 伴 良雄
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.401-404, 1995-05-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
9

The substitution of guanine (G) for adenine (A) at positioln 3243 of mitochondrial DNA, first demonstrated in MELAS patients, has been found in some diabetics, and this mutation seems to be one of genetic factors for diabetes mellitus. Because mutational mitochondria coexist with normal mitochondria (heteroplasmy), conventional PCR-RFLPm methods may not detect a mutation When a majority of the mitochondrial DNA in leukocytes is normal. We tested the efficacy of specific PCR amplification in detecting the 3243G mutation using a primer whonse 3' base was complementary to the mutational base. This mutation-specific PCR amplification method permitted detection of the mutation in 2 patients with MELAS and in a diabetic patient whose mutation was detected by the PCR-RFLP method in biopsied muscle but not in peripheral leukocytes, and in two other diabetic patients.Specific PCR amplification for detection of the 3243G mutation is a simple and senisitive method and is useful inevaluating this mutation in diabetes mellituls.