著者
池田 貴儀
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.428-433, 2010-10-01 (Released:2017-04-25)
参考文献数
25

感情労働とは,肉体労働,頭脳労働と並ぶ第三の労働のあり方であり,サービス業において重要な要素とされている。感情労働による感情のコントロール技術は,利用者をはじめ様々な人と接する図書館員にとって,種々の業務をこなしていく上で欠かせないスキルといえる。その一方で,感情をコントロールすることは,本来の感情と業務として求められる感情との間にズレを生じさせる。感情労働は人と接することで満足感や充足感を得る肯定的な面とともに,感情のズレによりストレスの増加やバーンアウトの誘発を招くという否定的な面を持ち合わせている。本稿では,この感情労働という視点に着目し,図書館業務との関わりについて紹介する。
著者
時友 裕紀子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.279-287, 1995-04-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
28
被引用文献数
7 11

スライスタマネギと球のままのタマネギを各種調理条件下で加熱し,それらのSDE法によるにおい抽出物とヘッドスペースガス成分についてGCおよびGC-MS分析し,比較検討した.スライス加熱タマネギのにおい成分として特徴的なジプロピルトリスルフィドは,球のまま加熱タマネギではわずかであった.一方,プロペニル基を有するスルフィド類は存在していた.甘いにおいの強い焼きタマネギにはフルフラールを始めとするフラン類が多く存在し,加熱タマネギの甘いフレーバーには糖由来の加熱香気成分が寄与していると考えられた.
著者
小山 裕
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.22, pp.44-55, 2009

In the present essay, Jürgen Habermas's early sociological works will be examined in two respects: on the one hand, their stratified relationships to the conceptual constructions of Carl Schmitt and Rüdiger Altmann; on the other, his understanding of historical development in eighteenth-century England. The analysis through these two subjects maintains that the core of his conceptualization of the civil/bourgeois public sphere consists in the articulation between institutionalized political powers (not only government, but also parliament) and private citizens who generally criticize political affairs. In addition, the essay will also argue that his diagnosis of modern society depends especially on his critical attitude of intermediary organizations which attempt to affect political processes without public control in the re-politicized social sphere that emerged after the disappearance of the liberal distinction between the public and private realm.
著者
大西 季実 吉田 裕美 藤井 美代子 鈴木 まさ代 伊東 美緒 高橋 龍太郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.101-107, 2010-01-15

はじめに 精神科では、自殺・事故防止の観点から、入院生活に何らかの制限が設けられていることが多い。病棟内に持ち込む日常生活用品を制限することもその1つである。制限される物品としては刃物やガラス製品、ベルト、電化製品のコード、耳かき、爪楊枝、毛抜き、割り箸など多岐にわたる。刃物など明らかに危険な物品については、マニュアルなどに明文化され対応が統一されていることが多いが、危険度が必ずしも高いとはいえない耳かき、毛抜き、爪楊枝、割り箸などの取り扱いについては、病院・病棟により規定が異なる上、看護者の判断によっても対応に違いが存在するのではないだろうか。 縊死に関連した日常生活用品の持ち込み制限に関する田辺らの調査においても、コード、ネクタイ、針金ハンガーなどは持ち込みを許可する病棟と許可しない病棟がそれぞれ半数ずつであり、看護者が異なる視点で判断している可能性を示唆している*1。病棟内においても看護者間の考え方や対応の相違により混乱が生じることは多々あり、特に精神科の臨床では日常的に遭遇する体験であるという*2。病棟内の看護者間において価値観そして実際の対応方法が異なる場合、患者に混乱をもたらし、そこで働く看護者を悩ませる要因にもなりうる。 過度な物品管理、不必要な制限は患者の依存や退行を引き起こし、自立の妨げになる可能性があり、病棟生活を送る患者の生活の質(QOL)に影響を与えることが示唆されている*1。QOLや人権に配慮しすぎると事故の危険が高まる*3ものの、事故防止を優先しすぎると日常生活を送る上で不都合が生じる。看護師が事故防止を優先するのか、QOLを優先するのかによって日常生活用品の持ち込みの判断に影響が生じると予測される。 そこでこの研究では、①病棟内への日常生活用品の持ち込み制限と優先傾向(事故防止・QOLのどちらを優先するのか)との間には関連があるのか、②看護者のバックグラウンドと優先傾向との間に関連があるのかの2点を明らかにすることを試みた。
著者
山本 聡 松永 安光 徳田 光弘 漆原 弘
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41.3, pp.989-994, 2006-10-25 (Released:2018-06-26)
参考文献数
9

本論は、1990年代初頭イギリス政府都市再生政策「シティチャレンジ」の対象地域に選定されたマンチェスター市ヒューム地区を評価とモニタリングのシステムを適用したもっとも典型的な事例としてとりあげ考察したものである。このシステムはこのプロジェクトに当初から組み込まれていたものであり、現在に至るまで機能している。1997年と2002年当プロジェクトの節目には広範にわたる評価報告がなされている。現地の関係機関を通して入手された資料などを検討した結果、この継続的なプロセスの利点が明らかにされた。このシステムによればプロジェクト当初に策定された目標そのものも、その後の変化に対応して変更することが可能になることが判明した。これがわが国の、特に長期にわたる都市再生事業の評価システムに貢献することを期待する。
著者
出口 米吉
出版者
日本人類学会
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.191-201, 1912-04-10 (Released:2010-06-28)
著者
松本 悠哉
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部言語学研究室
雑誌
東京大学言語学論集 = Tokyo University linguistic papers (TULIP) (ISSN:13458663)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.123-144, 2017-09-30

形容動詞語幹は格助詞を伴うことがあり、実際には多く使用されているものの、形容動詞という品詞について考察される際には例外的な用法とされてきた。これまで言及されることのなかった格助詞を伴う形容動詞語幹の用法を指摘すると共に、形容動詞語幹と格助詞の共起には容易には一般化できない語ごとの多様性が存在していること、形容動詞語幹と格助詞の共起を促す決まった語によってさらに多くこの用法を用いることができるようになることを示す。論文 Articles
著者
松本 章一 久野 美輝 山本 大介 山本 大貴 岡村 晴之
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.243-260, 2015-05-25 (Released:2015-05-22)
参考文献数
84
被引用文献数
11 9

優れた耐熱性,光学特性,および機械的性質を有する高性能透明ポリマー材料を設計するため,N-置換マレイミドと種々のスチレンおよびオレフィンモノマーの交互ならびに2:1定序配列制御型ラジカル共重合を行った.まず,これらシークエンス制御された共重合系の反応挙動を明らかにするため,末端モデルならびに前末端基モデルを用いて共重合組成曲線を解析し,モノマー反応性比を決定した.定序配列制御の発現には前末端基効果が重要な役割を果たし,前末端基効果の大きさはコモノマーの構造や重合溶媒の種類に依存した.これら交互および2:1定序配列制御型のマレイミド共重合体の熱的性質,光学特性,ならびに機械強度などの物性評価を行い,いずれの共重合体も高い熱分解開始温度や優れた透明性を示すこと,マレイミド共重合体の側鎖置換基を設計することにより広い温度範囲でガラス転移温度や機械的性質を制御できることを見いだした.さらに,共重合体の側鎖に導入したアリル基と多官能チオール化合物ならびに表面チオール修飾したシリカナノ微粒子とのチオール–エン反応によって,高い熱分解開始温度や熱変形温度を有し,かつ透明性に優れた熱・光硬化性樹脂ならびに有機無機ハイブリッド材料が設計できることを示した.
著者
長井 長義
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.1909, no.329, pp.739-751, 1909-07-26 (Released:2018-08-31)

エフェドリン」ハ著者カ始メテ麻黄中ヨリ發見シタル鹽基ニシテ著者ハ明治十八年以來之カ研究ニ從事シ其構造ヲ殆ント完全ニ解明スルヲ得タリシヲ以テ更ニ之カ合成ヲ企畫シ實驗漸ク其緒ニ就カントスルニ當リ助手ノ他ニ轉職スルニ會/之ヲ中止スルノ已ムヲ得サルニ至リシカ今回獨逸ノ藥化學者シュミット氏ハ「エフェドリン鹽基ノ合成ニ著手シ其方針ノ著者カ十餘年前既ニ案出セシモノニ接近セルヲ知リ著者ハ同研究ヲ再興シ昨冬以來收メ得タル業蹟ヲ報告セリ
著者
松村 昌家 Masaie MATSUMURA
出版者
大手前大学・大手前短期大学
雑誌
大手前大学人文科学部論集 = Otemae journal of humanities (ISSN:13462105)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.103-120, 2003

幕末にヨーロッパ諸国に向けての使節団派遣のお膳立てをした駐日英国公使オールコックは、その準備の過程で、外交問題とは直接に関係のない二つのプランを練っていた。一つは、一八六二年五月一日に行われる第二回ロンドン万国博覧会の開会式典に、使節団の代表数名を送りこむこと。そして万博会場に日本製品を展示することによって、日本に対するイギリス側の関心を引きつけること。二つとも日英交流史における画期的な出来事であったにもかかわらず、従来あまり注目された形跡がない。本稿では、六二年万博開会式典に臨んだ七名の使節団代表者たちの、文字どおりの異国体験に注目するとともに、この日のパフォーマンスとして仕組まれた「ピクチャー・ギャラリーズへの大行進」が、いかなるものであったかを解き明かす。特に「ピクチャー・ギャラリーズ」は、イギリスにおける万博文化史のなかで、きわめて重要な意味をもっているのだ。日本から送られた展示品は、大部分がオールコックの蒐集になるものであったとはいえ、万博における日本の初参加であったことに変わりはない。これを使節自身はどう見たのか、そしてイギリス側からの評価はどうであったのか。やはり見逃してはならない興味深い日英交流史のひとこまであったのである。
著者
駒村 智史 梅原 潤 宮腰 晃輔 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-107_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】肩甲骨は、投球動作を行う上で重要な役割を担っている。投球動作時の肩関節最大外旋位(MER)では肩や肘の関節にかかる力が大きくなるとされており、その力を軽減させるためにも、MERにおける肩甲骨運動は重要である。野球選手の肩関節機能において、安静時の肩甲骨肢位の評価や、肩関節90°外転位(肩2nd)での外旋可動域の評価は一般的に用いられているが、それらの肢位における肩甲骨の角度と、実際の投球時の肩甲骨角度との関連を明らかにしたものはない。本研究の目的は、安静時および肩2nd外旋時の肩甲骨角度と投球動作のMERにおける肩甲骨角度との関連を明らかにすることとした。【方法】大学生野球選手21名を対象とした(年齢20.7±0.9歳、身長169.8±6.2cm、体重65.6±9.7kg)。安静時および肩2nd外旋時、投球動作時の肩甲骨角度を計測した。肩甲骨角度は、6自由度電磁気式動作解析装置(Liberty;Polhemus社製)を使用し、肩甲骨の外旋、上方回旋、後傾の各角度を計測した。安静時の計測は、座位にて上肢下垂位で5秒間姿勢保持した。肩2nd外旋時の計測は、肩90°外転位にて他動的に外旋し、伸張感が疼痛に変わる直前の強度で5秒間静止した。安静時、肩2nd外旋時ともに、解析には中間の3秒間の平均値を使用した。投球動作時の肩甲骨角度の計測については、全力投球を行い、投球中に上腕骨が最大外旋位となった時点をMERと定義し、MERでの肩甲骨角度を用いた。投球動作は3回行い、MERでの肩甲骨角度の3回の平均値を解析に使用した。統計解析には、Peasonの相関分析を用いて、肩甲骨外旋、上方回旋、後傾それぞれについて、安静時の肩甲骨角度とMERでの肩甲骨角度との相関および肩2nd外旋時の肩甲骨角度とMERでの肩甲骨角度との相関を分析した。有意水準は5%未満とした。【結果】安静時とMERでの肩甲骨角度の相関は、上方回旋(r=0.632, p=0.002)、後傾(r=0.670, p=0.001)はそれぞれ有意な相関がみられた。肩甲骨外旋角度については有意な相関がみられなかった(p=0.907)。また、肩2nd外旋時とMERでの肩甲骨角度の相関は、外旋(r=0.543, p=0.011)、上方回旋(r=0.894, p=0.000)、後傾(r=0.718, p=0.000)全てに有意な相関がみられた。【考察】MERにおける肩甲骨角度は、安静時の肩甲骨外旋角度を除き、安静時および肩2nd外旋時の肩甲骨角度と関連があることが明らかとなった。安静時の肩甲骨外旋角度に相関がみられなかった原因として、肩甲骨外旋角度は上肢の挙上面の影響を受けやすく、MERの上肢挙上面が安静肢位の肩甲骨面と異なると考えられる。本研究の結果から、MERでの肩甲骨角度は、肩2nd外旋時の肩甲骨角度とより強い関連があり、MERにおける肩甲骨角度の評価には肩2nd外旋肢位での肩甲骨角度の評価がより有効である可能性が示唆された。【結論】安静時および肩2nd外旋時の肩甲骨角度と投球動作時のMERにおける肩甲骨角度に相関がみられることが明らかとなった。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を遵守し、本学の医の倫理委員会の承認(C1247-1)を得て実施した。対象者には紙面および口頭にて研究の趣旨を説明し、同意を得た。
著者
神保 佳典 高比良 裕之 小林 一道 安田 章宏
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.76, no.762, pp.219-229, 2010-02-25 (Released:2017-06-09)
参考文献数
17

The growth and collapse of a bubble under a floating body are simulated by using the boundary element method with linear elements to predict the damage of ship bodies induced by underwater explosion. The three-dimensional deformation of the bubble, the translation and rotation of the floating body, and the motion of water surface are taken into account in the simulation. It is shown that the bubble deforms three-dimensionally, and the liquid jet threads the bubble due to the interactions among the bubble, the floating body, and the water surface; the directions of the bubble translation and the liquid jet depend on the initial location of the bubble. The Kelvin impulse is found to be useful in evaluating the translational motion of the bubble. Also, the horizontal translational motion of the bubble is much dependent on the rotational motion of a floating body; when the moment of inertia of the floating body is small, the largest horizontal translation is realized between the axis of flotation and the edge of the floating body. It is also shown that there exists an initial horizontal bubble location where the moment of force acting on the floating body has the maximum value.
著者
大越 愛子
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.49, pp.1-14, 1998-05-01 (Released:2009-07-23)

Victims of sexual violence have long suffered from stories which were fabricated by the violence-producing culture. They have been brainwashed that the sexual assault they'd experienced was not a rape but rather a love affair by mutual consent. Victims were raped twice, one physically and again mentally. and the mental trauma was particularly persistent. To redeem their lost human dignity, we must disclose the deception of these phallocentric stories.Starting from Beauvoir, feminist philosophers, such as Irigaray and Kristeva, have been criticizing the phallocentric logics through their analysis of male philosophers. Their analyses show that even Hegel's phallocentric argument can serve feminist needs, if reinterpreted to our advantage.
著者
塩野 淳子 石川 伸行 村上 卓 河野 達夫 堀米 仁志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1423-1424, 2016-12-15 (Released:2017-12-15)
参考文献数
5
被引用文献数
1