著者
細田 耕
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-04-01

(1)人間と相同の筋骨格構造を持つヒューマノイド,実験装置の整備空気圧人工筋を用いて,人間と同じような筋骨格構造を持つ上半身のヒューマノイドロボットを開発した.ロボットは,人間のような肩甲骨,肩関節,上腕構造などを持ち,人間の筋と同じような位置に,空気圧駆動人工筋を装備している.各人工筋には,張力センサと空気圧センサが装備されており,これらから各筋の長さを求めることができる.各筋は空気圧弁から送られる空気によって駆動され,人工筋が持つ柔らかさにより,全体的に柔らかい構造を持っている.各筋の空気圧は,個別に空気圧制御弁によって制御することができる.ROSを用いたシステムによって,これらを制御するコントローラを製作した.ROSを用いているため,たとえばカメラなどほかのセンサを使いすることが容易になっている.(2)学習に基づく運動制御法の開発操作の不変項として身体を見つけ出すためには,与えられたタスクに対し,その操作を実現する方法を学習する必要がある.人間の場合にも,操作を学習することを通して,フォワードモデルを学習し,それによって身体の表現を獲得していると考えられる.筋骨格ロボットは,非常に非線形性が強く,とても複雑な機構を持つ.そのため,力学的なモデルを形式的に作ることは難しい.これまで,このようなロボットを制御するために,制御入力のパターンを設計者が試行錯誤することによって作り出していた.本年度は,このような問題を解決し,ロボットが自身の順動力学特性を学習し,それを利用することによって,ロボットを制御する手法を開発した.
著者
細田 耕
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

昨年度試作した空気圧二足歩行ロボットを用い,床面の変化に伴う行動の変化についての検討,股関節の剛性変化による行動変化の検討を行った.さらに空気圧駆動の肩関節ひじ関節などの試作を行い,弾道学的運動のための制御則を考案した.(1)試作した二足歩行ロボットによる歩行の確認試作したロボットによって,弾道学的な歩行が実現できることを確認し,さらにさまざまな床面でロバストに歩行可能であることを実験的に確認した.(2)床面の変化に伴う行動の変化の観測床面の変化に伴い,二足歩行の歩行周期が変化することがわかったので,床面変化を歩行周期から推定する方法について提案し,床面変化に対応できる制御則を考案した.(3)股関節の剛性変化に伴う行動変化の検討股関節の空気圧を調整することにより関節剛性を変化可能であることを示し,剛性変化によって歩行行動がどのように変化するか,特に歩行周期がどのように変化するかについての調査を行った.この知見は,人間の二足歩行において股関節がどのような寄与をしているかについての重要な知見になると考えられる.(4)空気圧駆動の肩関節・ひじ関節の試作と弾道学的制御則の検討二足歩行ロボットの作成に関する知見を踏まえ,2自由度肩関節および1自由度のひじ関節を試作した.また,肩関節のみのロボットについて,運動開始時と終了時のみに空気圧弁の操作を行い,それ以外ではロボットの動特性に従って弾道学的な運動をする制御則を提案し,この制御則によって終点まわりに大きなオーバーシュートを発生することなく,短時間でスムーズな運動が実現できることを示した.
著者
細田 耕 鈴木 昭二 浅田 稔
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

本研究では、視覚情報に基づいて生成される脚式移動ロボットの行動に基づく環境表現手法を提案し,実機によってそれを検証することを目的とする.具体的には視覚誘導により基本的な行動を生成する段階と,それを用いて環境表現を構築する段階に分かれる.使用する脚式移動ロボットに,まず「転ばない」,「脚が接地したまま揺れ動く」,「遊脚を利用して移動する」などの基本サーボ系を埋め込む.これを利用して,断続的に提示される視覚目標に対し,これに追従するよう行動し,この間に,環境中の適当な視覚情報を獲得,これとロボットの行動の相関をとることにより,環境表現を獲得する.さらにこの環境表現に基づき行動し,環境表現の更新及び修正を繰り返す.以下のような項目について,理論の整備,及び実験による検証を行った.(a)脚式ロボットにカメラを装着し,視覚・運動系を構築した.(b)環境に対する先験的な知識がない場合にも,「脚が接地したまま揺れ動く」ために,視覚目標に追従するための制御系と,脚間距離を保つための制御系を組み合わせたサーボ系を開発した.(c)ZMPを観測し,バランスを崩しそうになると,それを回復するための方策を検討し,遊脚を決定するアルゴリズムを開発した.(d)「遊脚を利用して移動する」ためのサーボ系を開発した.(e)以上の方法を実機を用いて,その有効性を検証した.
著者
細田 耕 浅田 稔 高橋 泰岳
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,多数の未分化なモダリティの受容器を持つロボット指を開発し,把持,操りなどの技能を発達的に獲得する方法を検証することである.得られた主な成果を以下に示す.1.多数の受容器をランダムに内蔵した柔らかい指の作成シリコンゴムの内部にひずみゲージとフッ化ポリビニリデンフィルムを検出素子としてランダムに埋め込んだ指先センサを構成した.この指先センサをロボットハンドに搭載し,ハンドシステムを構成した.2.試作したセンサの性能評価試作したセンサの性能を,さまざまな対象をこすった際の弁別能力によって評価した.その結果,押し付け,こすることにより数種類のテクスチャを弁別できることがわかった.3.視覚・すべり覚連合学習法の提案視覚によってすべりを観測する初期状態から,経験を通してすべりに関する情報を獲得するニューラルネットワークを構成し,視触覚統合によってロボットを動作させる学習則を提案した.この学習則を用いると,学習初期にはすべりを視覚で捉えているのに対し,学習が進むことによって,視覚・すべり覚による冗長かつ頑健な表現を獲得することができた.4.はめあい作業の学習実験対象物を持ち,クリアランスの少ない穴にはめ込むはめあい作業を対象として,学習初期には視覚に頼って作業を実現し,その作業を通してすべり感覚を学習,作業後半では,視覚を用いなくてもすべり感覚のみで作業の遂行確率を上げられることを実験的に示した.5.持ち上げ動作の学習実験持ち上げ動作を学習することによって提案するネットワークの有効性を検証した.その結果,視覚のみを用いるよりもすべり覚を組み合わせたほうが,すべりの発生を迅速に検出することができ,すべりを防ぐ動作をさせることができることを確認した.また,持ち上げる対象の質量を変化させた場合にも,すべり検出によって把持を継続できることができた.
著者
細田 耕
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成14年度は,昨年度整備した実験装置により実験を行い,提案手法の有効性を確認した,また,センサに自由度がある場合についても検討を行い,実験を進め,その有効性を調べた.実験装置の整備提案する手法を実験的に示すための実験装置の整備を行い,自由度発見機構,および自由度の凍結,解放のためのプログラムを作成した.製作した実験装置は,7自由度のロボットアームに視覚センサを備えたものである.実験による検証視覚センサに与えられた作業に必要な自由度を自律的に発見することができることを製作した実験システムにより検証した.多数のセンサを備えたロボットの作成ロボットの持つアクチュエータの自由度だけではなく,センサが複数つくことによるセンサの自由度をどのようにうまく利用できるかについても,モータの場合と同様に考察するために,多数のセンサを備えたロボットを作成し,基礎的な実験を行うことによって,多数のセンサがある場合についての,その自由度間の拘束を自律的に発見できる枠組みを示した.
著者
細田 耕 木村 浩 辻田 勝吉 井上 康介 田熊 隆史
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

生物のさまざまな適応的行動の中から特にロコモーションに注目し,反射やCPGなどによってもたらされるリズミックな制御系と,振る舞い全体を修飾する調整制御系の相互作用によって適応性の実現を試みた.これらの実現には生物のような筋骨格系が大きな役割を果たしているとの仮説のもとに,二足,四足,ヘビ型とさまざまなロコモーションについて筋骨格からなる新しいロボットを多数試作し,リズミック制御系と調整制御系の役割を実験的に検証した.
著者
細田 耕 浅田 稔
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では,筋肉によって駆動される骨とそれを覆う柔らかい皮膚,そして皮膚に埋め込まれた多種の受容器を持つヒトの手に酷似した構造を持つバイオニックハンドを開発した.このハンドを使った実験によって,ハンドの優れたセンサ特性や柔軟性を利用した観測の安定性が示され,また人工筋によって実現されるやわらかい動作によって経験を通した適応的なマニピュレーションが学習できることが示された.
著者
宮崎 丈史
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.649-656, 1990 (Released:2007-07-05)
参考文献数
17
被引用文献数
9 13

サツマイモの主要な品種である‘紅赤’と‘ベニアズマ’について, その成分および加熱後の食味などに及ぼすキュアリング処理や貯蔵条件の影響を検討した.1. 収穫時におけるデンプン含量は,‘紅赤’が23~26%,‘ベニアズマ’が27~30%であった. 糖含量は両品種とも約2%であり, 組成的にはショ糖が大部分であった. また, 還元糖は, とりわけ‘ベニアズマ’では少なかった.2. 収穫直後のキュアリング処理によって両品種のショ糖含量は約4%に増加した. 13°C貯蔵中, キュアリング処理区においては糖の変化が少なかった. しかし, 無処理区ではショ糖は1か月後まで徐々に増加して約4%まで達すると,‘ベニアズマ’ではその後変化しなかったが,‘紅赤’では4か月後より再び増加して6か月後には8~10%に達した. また,‘紅赤’のショ糖含量は貯蔵温度による影響が認められ, 低温ほど増加する割合が大きくなった.3. 貯蔵中におけるショ糖合成酵素の活性変化はショ糖含量の変化と関連する傾向が認められたが, その寄与については明確な結論が得られなかった.4. ポリシート包装によって貯蔵湿度は98%程度に保持され, 貯蔵中の重量減少が抑制されるとともに, ‘紅赤’ではショ糖や有機酸の変化が少なくなった.5. サツマイモは加熱により, 収穫時の‘紅赤’では7%,‘ベニアズマ’では14%のマルトースを生成した. 加熱した‘ベニアズマ’は, 収穫時には粉質であるが貯蔵中に粘質化する傾向を示した. マルトースヘ転化するデンプンの割合は貯蔵中にやや増加したが, 粉質•粘質というテクスチャーと糖およびデンプンの変化とは十分な関連性が認められなかった.
著者
田中 純也 渋谷 顕一 大柿 哲朗
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.133-142, 2005 (Released:2006-12-01)
参考文献数
26

Exercise intensity has been identified as a major determinant of the excess post-exercise oxygen consumption (EPOC). However, no studies have compared the prolonged EPOC after supramaximal intermittent exercise and supramaximal continuous exercise. Six young healthy male [age=26±3 (mean±SD) yr ; stature=175.4±5.7 cm ; body weight=66.8±6.7 kg ; maximal oxygen uptake (VO2max)=44.1±8.5 ml/kg/min] xercised on separate days on a cycle ergometer at two equated total energy expenditures (intermittent exercise : 7×30-second intervals at 150%VO2max with intervening 15-seconds rest periods ; continuous exercise : 5 min at 105%VO2max) and then sat quietly in an armchair for 3h. A control trial without any exercise was also performed in a counterbalanced research design. The VO2, carbon dioxide output (VCO2), pulmonary ventilation (VE), respiratory exchange ratio (RER), heart rate (HR) and blood lactate concentration (LA) were measured before exercise, during exercise and during the 3-h recovery period. The mean VO2 after intermittent trial at 150%VO2max were higher than these of the control trial and the continuous trials at 105%VO2max for 3-h recovery periods (p<0.05). The 3-h EPOC value for intermittent exercise trial (10.5±2.4L) was significantly greater than that of continuous exercise trial (4.8±2.7L) (p<0.05). The mean RER values for intermittent exercise trial were significantly lower than those of the control trial during 60-180 min post-exercise (p<0.05). We examined the effect of supramaximal exercise intensity on the magnitude of 3-h EPOC after 12-fasting. In the present study, 3-h EPOC was significantly greater for supramaximal intermittent exercise compared with the supramaximal continuous exercise when the amounts of work output performed are same. Therefore, our results indicate that exercise intensity may be a primary factor of 3-h EPOC even in a supramaximal exercise and that one of mechanisms for the 3-h EPOC would be related to the promoted lipid metabolism.
著者
奥田 真子 加藤 史香 川井 友貴 加賀谷 みえ子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.109-117, 2017 (Released:2017-10-31)
参考文献数
27

The breath hydrogen (H2) excretion and subjective symptoms were measured during expiration for eight hours after a meal intake (used four kinds of examination meals) by healthy humans for the purpose of clarifying the effectiveness of the dietary fiber meal. The subjects of the breath H2 analysis were five or seven young healthy women.The examination meals B and D had a greater intake and quantity of dietary fiber than the A and C test meals, and the breath H2 quantity was significantly higher (p<0.05, p<0.01). The max breath H2 quantity for B was 40.6±17.8ppm (p<0.05), and for D were 38.8±28.3ppm (p<0.01) which were significantly higher than A and C. Each total breath H2 of A, B, C and D was 5463, 7221, 2337 and 6955ppm×min, respectively. The small intestine transit time of A, B, C and D was 334±25, 285±14, 273±32min and 273±26min, respectively. No significant difference was seen between A and B, and C and D. The blood sugar was not influenced by the meals. The cross point of time of while feeling hunger and the feeling of a full stomach of A and B was both of 210min, C was 255min, and D was 255min. The meal with more carbohydrates, like D, was able to provide a feeling of a full stomach that lasted for a long time. The D food consisting of more dietary fiber produced more H2, and it is thought that H2 is involved in the removal of the active oxygen. The dietary fiber rich meal is regarded as an effective meal for increasing the breath H2 production.
著者
石黒 真木夫
出版者
一般社団法人 日本応用数理学会
雑誌
応用数理 (ISSN:24321982)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.125-138, 1994-06-15 (Released:2017-04-08)
参考文献数
15

It is established through a simulation study that if Kepler would have known AIC he could have used it to "prove" his theory. The reasons why the AIC works were sought and it was found that: 1. The AIC could be an un-biased estimate of the "mean expected log likelihood" of models, under mild conditions. 2. The "Mean expected log likelihood" is a reasonable criterion to compare statistical models. 3. The variance of the AIC is in effect small enough to allow the practical comparison of models. 4. If the bootstrap method is applicable, the variance can be estimated.
著者
櫻井 克己 岩田 行剛
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.2_115-2_120, 2016 (Released:2016-08-26)
参考文献数
13

大学による研究成果の特許保有が,企業が大学研究成果の実用化をする為の投資インセンティブに繋がるという考え方は正しいかについて,十分検討されずに来た.そこで,企業が大学と共同研究を進める際に大学特許出願の有無をどう認識しているかについて,企業産学連携関係者へアンケートを行った.その結果,企業は大学と共同研究を開始するに際して,共同研究対象について,大学の特許出願を必要としていないことが分かった.これは製薬系企業においても同様であった.又,共同研究成果の取扱いについて,特許は活用する側にある企業に帰属させるべきと考える人が多いこと,譲渡条件については共通認識が醸成されていないことが分かった.
著者
岩田 清二
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.82-86, 1948-12-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
1
被引用文献数
1 1

The living bivalves have the 3 forces concerning to close the valves: namely the closing force of adductor muscle, the opening force of ligament of valves and the adhesive force of adductor muscle to the shells. The closing force of adductor muscle decreases gradually as temperature rises and becomes minimum at about 70°C and increases as temperature rises higher until the shell opens. The force of ligament increases by degrees as temperature rises so as to open the valves. The adhesive force of adductor muscle to the shell is exceedingly strong in lower temperatures but it decreases as temperature rises so far as the shell opens. The sementing substance between the adductor muscle and the shell dissolves at length completely by prolonged boiling. The results of my observations and experiments show that when the closing force of adductor muscle or the opening force of ligament exceeds the adhesive force of adductor muscle to the shell the adductor muscle comes off from one side of the valves, which open widely at last.
著者
本岡 拓哉
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.58, 2006 (Released:2006-11-30)

1.はじめに これまでのわが国戦後のスラム研究では、建築・都市計画的な観点から、改善された地域に視点が当てられており、必ずしも全てのスラムとされた地域(不良住宅地区)が扱われてきたわけではなかった。特に、戦後日本の都市において居住貧困層が集まったバラック街は研究対象になることは少なく、その状況や現在までの変容については明らかになっていないことが多い。すなわち、これはわが国のスラムに対する実践・研究双方において、資本主義的都市発展を支える産業基盤整備を中心とした都市整備的な観点が重視され、居住貧困層を支える居住福祉という観点は軽視されてきたからと考えられる。こうした問題意識のもと、発表者は既に神戸市をフィールドに、バラック街の形成からクリアランスまでのプロセスについて明らかにしてきた。しかし、そもそもバラック街が戦後都市の中でどのような状況で、社会的、地理的にどのような位置づけであったかは明らかにしていない。そこで本発表では、1958年に東京都民生局が作成した『東京都地区環境調査』を利用し、この課題に取組む。加えて戦後バラック街の状況とその後の変容との関係性を実証的に明らかにしていく。2.戦後不良住宅地区の形成 太平洋戦争時,度重なる米軍の空襲や空襲疎開によって、東京都の住宅は戦前に比べ、約100万戸減少した。このように戦災により多くの住宅が失われたことで、大量の戦災者や外地からの引揚者は住む所がなく、不定住貧困状態 となった。ここでの不定住貧困状態は大きく二つの様態に分類できる。一つは、街頭に投げ出され都市の盛り場や駅前に寄生して生活する「浮浪者」で、もう一つが、戦災跡に出来た「壕舎・仮小屋(バラック)生活者」であった。戦後復興の中、行政の保護により「浮浪者」が減少していく一方で、仮小屋生活者はその後むしろ増加し、ある一定の場所に集まることでバラック街が形成されることとなった。なお、バラック街のほかにも、例えば、非戦災地域における一般住宅の集団的老朽化、簡易旅館街(ドヤ街)における集団的環境不良化、旧軍用施設ないし工場、倉庫を応急的に転用した低家賃都営住宅、引揚者定着寮等の荒廃化などを、戦後都市の不良住宅地区としてあげることが出来る。このような戦災による被害と共に、その後の急激な都市化の中、大量の人口流入のあった東京都では、他の都市に比べて不良住宅地区問題は非常に深刻であった。1950年代後半になると、量的な意味での住宅難は徐々に解消されつつあったが、質的な意味での住宅問題として「不良住宅地区=スラム」が相対的に深刻化しはじめた。こうした状況に対して、東京都民生局総務部調査課は福祉事務所の協力のもと、1957年11月に大規模な調査を実施し、東京都区部で231の不良環境地区を選定した。3.分析対象・方法 本発表では、『東京都地区環境調査』のデータを再検討することで、当時の不良環境地区におけるバラック街の状況を明らかにする。現在、バラック街とは、不法占拠の仮小屋集団地区とみなされることが多いが、当時のデータを見たところ、全不良環境地区231地区のうち仮小屋地区は71、不法占拠地区51であるが、そのうち一致するものは35で、仮小屋地区と不法占拠地区は必ずしも一致していないことがわかる。また一方、バタヤ地区31のうち28地区が仮小屋地区に分類することができ、その関係性は強いことがわかる。したがって、本発表ではバラック街を仮小屋地区、不法占拠地区、バタヤ街に分類される計90地区と設定し、それらを分析対象とする。データを読み解く際には、バラック街が当時の社会の中でどのような位置づけであったかに留意し、他の不良環境地区との比較を行う。加えて、発表者はこれらの地区の現在までの変容との関連性を明らかにする。全不良環境地区231地区の変容については、既に高見沢・洪(1984)が分析しているが、バラック街の特有性を示しているわけではない。本発表では、住宅地図と空中写真によりバラック街の現在までの土地利用の変遷を辿ることで、バラック街の変容過程を示し、その特徴と背景を明らかにしたい。〔参考文献〕高見沢邦郎・洪 正徳「1959年調査による東京区部不良環境地区のその後の変容について」都市計画別冊、1984、85-90
著者
飛鳥井 元晴 岸 義樹
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.177-178, 2015-03-17

本研究では、敬語表現への変換ルールを分からずとも敬語表現を用いた文章を使えるように補佐するべく、ユーザが入力した自然言語で書かれた日本語文章を敬語表現を用いた文章に変換するシステムの作成を行った。一般的な文章において、主語が自分側の場合は、相手にへりくだる謙譲語を使い、同様に主語が相手側の場合は対象となる相手を敬う尊敬語が使われる。本システムでは自然言語で書かれた文章の形態素解析結果を基に主語となる単語を特定し、主語が自分側か相手側かを判断することで、尊敬語と謙譲語のどちらを使うべきかを選択する。最後に決定された敬語の種類に従って単語の変換を行う。

1 0 0 0 OA 日本の庭

著者
室生犀星 著
出版者
朝日新聞社
巻号頁・発行日
1943