著者
中沢 文子 高橋 淳子 宮地 昭弘 岩渕 康司
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.655-659, 1992

根菜類, なす, 肉類など比較的含水量の多い食品を電子レンジで加熱し, 加熱中の食品内部の昇温過程を検討した.ゆで加熱では, 多数の食品がゆで水より速く昇温し105℃程度まで昇温した.直接加熱したいも類では, 一旦は118℃にも達してから100℃にもどり, 100℃に保持された.加熱による蒸気発生の初期には, 食品表面から抜けでる気体より食品内部に発生する気体が多いため, 内部の圧力が上がり沸点が上昇すると推察した.細胞組織がこの圧力に耐えられなくなり小数の破裂点が生じ蒸気の通り道が通じて圧力は緩和され, 100℃に戻ると考えられた.顕微鏡観察によると, 電子レンジ加熱したいもでは壊れた細胞壁が少数あり, 細胞内容物が流出していた.これが糊の役目をして, 電子レンジ加熱したいものテクスチャに影響を与えていると考えられた.
著者
岡田 徹
出版者
日本福祉大学福祉社会開発研究所
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of Culture in our Time (ISSN:13451758)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.71-105, 2018-03-31

本稿では,「福祉と開発の人間的基礎」を,森有正というわが国では稀有の思想家,哲学者の人間思索をとおして考究した. ここ【中篇】では,この人間思索をさらに具体的に《感覚-経験-思想》という思惟の道程に沿って考えてみた. 森有正の場合,人間思索は,感覚をその最初の一歩として,《感覚-経験-思想》という道程を辿って深められる.この道程は,実に興味深いことであるが,渡仏後,森有正自身が歩んだ実生活上の道そのものであったことである. 先ず「感覚」については,ここでは感覚の純化である「純粋感覚」に特化して討究した.森有正や,森有正が兄事する彫刻家の高田博厚はこの純粋感覚に,精刻な言葉を与えて肉薄している.ここは「圧巻!」である. 次に「経験」は,森有正哲学の中枢概念にあたる.森有正は経験を,「感覚が純化し,自己批判を繰り返しつつ堆積し,そこに自己のかたちが露われて来る」ものであるとする. 最後の「思想」の段階に到って,すなわち「経験」を言葉で定義する段階で,森有正の筆はピタッと止まる.「実を言うと私は絶望的である」と苦しい胸の裡を明かして,「思想と経験」-「これはいわば哲学者としての絶頂を示す仕事である」とまで言い切っていた,深い思い入れのある「経験と思想」論文を途中で投げ出してしまう. そして思弁的な論議を脱し,踝を返して《感覚-経験-思想》の原質である「純粋感覚」へと立ち戻り,オルガン演奏に没入して《生きて在る》ことそのことへの斜度を深めてゆく.人間思索の深まりとともに,森有正の根本課題「人間が人間になる」ことが少しずつ象を顕わしてくる.
著者
伏見 憲明
出版者
講談社
雑誌
(ISSN:03850366)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.54-56, 1997-05
著者
稲寺 秀邦
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.451-454, 2005-05-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
30

環境ホルモン(内分泌撹乱物質)とは, 動物の生体内に取り込まれた場合, 生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える外因性物質の総称である. その定義は, 「生体の恒常性, 生殖, 発生, あるいは行動に関与する種々の生体内ホルモンの合成, 貯蔵, 分泌, 体内輸送, 結合, ホルモン作用そのもの, あるいはクリアランス, などの諸過程を阻害する性質を持つ外来性の物質」とされている. 環境ホルモンの野生生物に対する影響として, 魚類のメス化, メスの巻貝類のペニスの異常な発育(インポセックス), ワニのペニスの萎縮等の事例が報告されている. 一方, ヒトに対する健康影響として, 精子の数や質への影響, 乳がんの増加, 子宮内膜症との関連等が推測されている. 環境ホルモンの多くは女性ホルモンであるエストロゲンの類似作用を示すものが多く, これらの化学物質は環境エストロゲンと呼ばれている. 本稿では, はじめに環境ホルモンの作用機構について述べ, 次に免疫アレルギー疾患との関連について考察する.
著者
橋爪 克己
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.2-7, 2015 (Released:2018-04-12)
参考文献数
21

清酒には多数の苦味物質が含まれるが,大部分は閾値以下の濃度であり,単独で苦味を感じさせるものは少ない。著者らは以前,清酒のHPLC画分から呈味を手掛かりに苦味ペプチドを同定した。さらに最近,同様の方法で,フェルラ酸およびそのエチルエステルが強い苦味を呈することを見出した。フェルラ酸を含むフェノール酸は植物細胞壁の構成成分であり,清酒製造工程において麹の酵素によって遊離すると考えられている。本記事では,苦味物質としてのフェルラ酸等の同定,フェノール酸の原料米中の分布とその遊離に関わる麹菌酵素について,最新の研究成果をもとに解説いただいた。これらの苦味物質は特に活性炭未処理清酒で濃度が高く,近年増加している「無濾過」清酒の品質を考えるうえで,大変興味深い研究である。
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.Supplement, pp.S607-S664, 2013 (Released:2014-08-19)
著者
長尾 昭彦 JASWIR Irwandi
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

食品由来の抗酸化性物質の摂取は各種の生活習慣病のリスクを低減するものと考えられている。しかし,1990年代に発表されたβ-カロテンの介入試験での否定的な結果及びその後の多くの研究から,抗酸化性物質の過剰投与はプロオキシダント作用により生体に障害を及ぼす危険性があることを示唆している。したがって,食品由来抗酸化性物質を効率的で安全に利用するためには,特に,摂取量あるいは生体内濃度に依存した生物活性の発現を解析する必要がある。本年度は培養細胞に高濃度のカロテノイドを蓄積させるためのカロテノイド可溶化法を開発し,細胞に蓄積されたカロテノイドの抗酸化性を高濃度領域まで範囲広げて解析した。液中乾燥法によりDMEM培地(10%牛胎児血清を含む)に80μMまでの高濃度のカロテノイドを可溶化する方法を構築した。テトラヒドロフラン(THF)に溶解させたカロテノイドをDMEM培地に分散した後,減圧下で細胞毒性を示すTHFを0.001%以下までに留去した。本法により高濃度のβ-カロテン,ルテイン,α-トゴフェロールのDMEM培地への再現性の良い可溶化が可能になった。得られた高濃度カロテノイド培地をヒト肝癌由来HepG2細胞とインキュベーションすると,カロテノイドが高濃度に集積し,ヒト肝臓カロテノイド濃度の約5倍以上のレベルに達することが分かった。このようにカロテノイドを集積させた細胞をtert-ブチルヒドロペルオキシドで酸化ストレスを負荷し脂質過酸化に対するカロテノイドの抗酸化性を調べた。β-カロテンは濃度依存的に抗酸化性を示し,調べた濃度範囲及び酸化ストレス負荷条件ではプロオキシダント作用は認められなかった。しかし,高濃度のカロテノイドは細胞障害を引き起こすことを見出した。その原因及びプロオキシダント作用との関連は不明であり,今後この点をさらに解析することによって,高濃度領域での生体影響を明らかにする必要がある。
著者
中村 洋丈 横田 聖哉 吉村 雅宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.156-175, 2013 (Released:2013-08-20)
参考文献数
35
被引用文献数
6

震災害時には高速道路は緊急交通路の機能を有し,“線”として早期に道路機能が確保される必要がある.したがって盛土構造も耐震性が求められるが,既設盛土は効率的かつ合理的な照査手法がない.本論文の評価手法の骨子は,盛土基本情報の評価点法による一次評価,変形量の簡易予測図による二次評価,復旧土量から算定する許容変形量の設定から成る.この手法を用いて過去の被災区間や実際のモデル路線で適用し,実際の路線においても評価対象箇所の合理的な抽出が可能であること,復旧体制の規模によって目標時間内での復旧可否が判断可能である等の手法の有効性を確認した.これらより対象盛土の選定から残留変形量の算出,許容変形量の設定等を体系化した合理的で実務的な手法を構築した.
著者
保坂 克洋
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.285-304, 2017-07-28 (Released:2019-03-08)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本稿は,放課後児童クラブにおける指導員と発達障害児の相互行為に着目し,支援がどのように行われているのかを明らかにすることを目的としている。特にドロシー・スミスの「切り離し手続き」という概念を分析枠組みとして,支援の実践における指導員と発達障害児の非対称的な関係について考察を行った。 相互行為場面の検討から,発達障害児の行為が問題となる可能性の段階で指導員が介入する「予防的対応」という支援の特徴が明らかとなった。この対応は,ルールを破ることによって様々な社会的場面において排除されてしまうことを危惧していた指導員によって,発達障害児がその状況において適切に振る舞えることを目指しているものであった。 一方,この対応のもとでは,指導員と発達障害児の間にリアリティ分離が生じた際に,発達障害児の状況定義が認められることはなく,発達障害児は現実の構成過程から排除されていた。つまり,発達障害児の包摂を志向した実践であっても,支援の実践が行われている現在時制において排除的に機能する場合があるという,単純に包摂の営みとして捉えられない支援の実践が明らかとなった。 また,この予防的対応は,発達障害児に対する「衝動が強い」という理解に基づいていた。そのため,支援の実践において発達障害児を現実の構成過程から排除しないためにも,この認識枠組みを書き換えつつ発達障害児と関わる必要性を指摘した。

1 0 0 0 音楽芸術

著者
音楽之友社 [編]
出版者
音楽之友社
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, 1957-05
著者
和泉 絵美 内元 清貴 井佐原 均
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.363, pp.1-6, 2006-11-11
参考文献数
13
被引用文献数
2

非母語話者が話す言語には母語話者が話す言語には見られない誤りがしばしば含まれている.しかし,誤りには,その発話の理解に支障をきたす深刻なものとそうでないものがある.言語の正確さを追求することはもちろん重要だが,コミュニケーション優先の言語学習を行う場合,まずは絶対に誤ってはいけない項目と,必ずしも正確さが要求されない項目は何かを知っておくことは有益であると考える.本研究では,日本語を母語とする英語学習者による英語発話データを元に,それに付与されたエラータグ情報および英語母語話者によって付与された発話の「分かりやすさ」のレベル情報を用いて,それぞれの種類の誤りが聞き手の理解度に及ぼす影響について考察する.
著者
手墳 正二 森奎 郎 岡部 鈴子 萩原 和男 久保 宗人 岩沢 敬 来馬 真一 高島 敬忠 黒森 信治 林 明
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.497-502, 1972 (Released:2011-10-19)
参考文献数
5

Epidermal ridges on hands and feet develop during the first trimester of gestation and remain unchanged thereafter for life.Dermatoglyphic aberrations associated with chromosomal defects are sometimes recognized according to the dermatoglyphics of cerebral palsy and severe mental retardations.The purpose of this study is to investigate certain features of dermatoglyphics in Japanese afflicted with cerebral palsy and severe mental retardations.The materials used in the present survey were composed of 330 Japanese with cerebral palsy (295) and severe mental retardations (71). The “Foot-printer” of the Hollister Company were applied to records of finger, palm and sole patterns. The analysis of dermal patterns were cogfarmed to the Cummins and Midlo's method and the Walker's method.As a result of analysis, abnormal frequencies were observed on dermatoglyphics of these individuals as compared normal controls. Abnormal findings were recognized on finger prints, atd angles, axial triradius, interdigital patterns, simian lines and hallucal patterns. Especially, these characteristics were found on cerebral palsy with severe mental retardation and severe mental retarded groups more than cerebral palsy.
著者
和泉 絵美 内元 清貴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.297, pp.27-32, 2008-11-08
参考文献数
10

本研究では、日本人英語発話データ(The NICT Japanese Learner English Corpus)に含まれる誤りを主な手がかりとして、日本人英語における実践的コミュニケーション能力(=通じやすい発話をできる能力)を記述することを目的とする.著者の先行研究においては、特に語彙、語用、談話の誤りが発話の通じやすさを最も大きく減じる原因となることが示唆された。そのうち語彙誤りに関して詳細な分析を行ったこところ、誤り語と訂正語の意味的関連性が高いほど発話は通じやすくなることを示す結果を得た。また、英語運用能力レベルの高い学習者ほど密度の高い語彙空間を持っているため、たとえそれが誤りであっても正解語と高い意味的関連性を持つ誤り語を使用していることが分かった。これらはすべて単語間のparadigmaticな関係を対象としているが、適切な言語運用にはsyntagmatic,analyticな関係についても知る必要がある。本研究では、学習者の語彙運用においてこれら3つのような深い言語知識がどのように作用しているのか分析する。具体的には、どのような語彙知識が不足、または正しく運用(認知)されなかったために誤りが生じたのか、一つ一つの誤りの原因を推測し、その結果と発話の通じやすさのレベルおよび発話者の英語運用能力レベルとの相関を調査する。
著者
金子 雅幸
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.136, no.6, pp.805-809, 2016-06-01 (Released:2016-06-01)
参考文献数
26
被引用文献数
2 6

Studies on endoplasmic reticulum (ER)-associated degradation (ERAD), in which unfolded proteins accumulated in the ER are selectively transported to the cytosol for degradation by the ubiquitin-proteasome system, have been focused on molecular mechanisms in yeast. In human, disruption of the ER quality control system causes various diseases, such as neurodegenerative disease, lifestyle disease, and cancer. However, there are many ERAD genes with unknown physiological and pathological functions. We identified the novel ubiquitin ligase HRD1 involved in ERAD. HRD1 is expressed in brain neurons and protects against ER stress-induced apoptosis. In familial Parkinson's disease, accumulation of Parkin-associated endothelin receptor-like receptor (Pael-R), a substrate of ubiquitin ligase Parkin involved in ERAD, causes ER stress and apoptosis. We demonstrated that HRD1 promotes ubiquitination and degradation of Pael-R and suppresses ER stress and apoptosis induced by Pael-R. Amyloid precursor protein (APP) is processed into amyloid β (Aβ) in Alzheimer's disease. We found that HRD1 promotes APP ubiquitination and degradation, resulting in decreased generation of Aβ. Furthermore, suppression of HRD1 expression causes APP accumulation and Aβ generation associated with ER stress and apoptosis. Interestingly, HRD1 protein levels significantly decreased in the cerebral cortex of Alzheimer's disease patients, possibly because of its insolubilization. We demonstrated that HRD1 protein was insolubilized by oxidative stress, resulting in the accumulation of HRD1 into the aggresome. In conclusion, oxidative stress-induced HRD1 insolubilization might be involved in a vicious cycle of increased Aβ production and Aβ-induced oxidative stress in Alzheimer's disease pathogenesis.
著者
畠山 京子
出版者
一般財団法人 日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.181, pp.181_115-181_128, 2015-09-30 (Released:2016-06-08)
参考文献数
67

Japan has been increasing its roles in a security field in the post-Cold War era. For instance, it decided to participate in peacekeeping operations, strengthened the alliance with the US and upgraded the peacekeeping missions to one of the Self Defense Forces’ core mission. In 2011, it mitigated the arms trade ban policy—an alleged hallmark of Japan’s anti-militarist norm. This article draws attention to the factors behind such changes Japan made on the security front by examining the arms trade ban policy announced in 1967. Arguing that Japan’s security policy has been largely constrained by an anti-militarist norm,constructivists have emphasized the significance of non-material factors in explaining a state’s behavior. The accounts seemed persuasive during the Cold War era when Japan shunned playing military roles. However, they failed to retain pertinence when Japan began to expand its military role after the end of the Cold War. In contrast, rationalists argue that a state pursues maximization of national interests; the behavior is determined by cost/benefit calculations. The shortcoming of the rationalist account is, however, that they either ignore or take a normative factor as given, failing to explain whether normative factors had an effect on a state’s behavior. By incorporating power considerations among actors, this article elucidates the factors behind Japan’s preference changes from rationalist point of view. It is argued by constructivists that the announcement of the arms trade ban policy and ensuing compliance were yielded by the internalization of the anti-militarist norm advocated by the Japan Socialist Party (JSP), which had acted as a norm entrepreneur as well as a protector. However, the investigation of the power balance between the successive Liberal Democratic Party governments and the JSP shows that they were driven by cost/benefit calculation. The 2011 mitigation made by the government under the Democratic Party of Japan was also precipitated by the calculation. By then, the power of the Social Democratic Party, a succeeding party of the JSP which once enjoyed certain influence during the Cold War period, had become negligible. As opposed to the constructivist claim, cost/benefit calculations, not the regulative effect of the norm, are the decisive factor operating behind Japan’s decision making process. More importantly, it is the power balance between norm entrepreneur and decision maker that largely influences the process of cost/benefit calculation.