著者
洪 明真 太田 慧 杉本 興運 菊地 俊夫
出版者
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 観光科学域
雑誌
観光科学研究 (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.11, pp.35-43, 2018-03-15

本研究は東京都台東区上野地域おける行楽行動の要素を歴史地理学的な観点から検討したものである。江戸期にわたって刊行された名所案内記の挿絵と錦絵を用い,これらの視覚史料に描かれた江戸期の上野地域の描写対象を分析した。江戸上野地域は,新しい都市となった江戸を象徴する建造物を建設するため,地形的・文化的条件が合致する場所であった。そして,為政者による江戸の都市施設と遊覧場所として計画された上野地域の「東叡山」とその周辺には,当時の人々の行楽行動が現われていた。江戸上野地域の視覚史料から描写対象としての「人的要素(女性)」と「物的要素(衣食住関連の商業活動)」に注目したところ,江戸上野地域の行楽行動の要因は「東叡山」と「桜」は江戸上野地域における行楽行動の重要な要素となっていた。
著者
中田 智子 高田 勝美 小森 万希子 鈴木 英弘 菅原 基晃
出版者
特定非営利活動法人 日本バイオレオロジー学会
雑誌
日本バイオレオロジー学会誌 (ISSN:09134778)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.27-33, 1997-09-30 (Released:2012-09-24)
参考文献数
35

Using the rabbit ear chamber (REC) method, the author compared the effect of hypocapnia and that of normocapnia on cutaneous microcirculation of rabbits. Eight rabbits, weighting 3-4kg, were used for this study, which were anesthetized with pentobarbital and pancuronium. To maintain PaO2 at 100-150mmHg and PaCO2 at 20-25mmHg (HYPOCAPNIC GROUP), they were mechanically ventilated with air-O2 and regulated. After observing the circulation of arteriole during hypocapnia for 15-20 minutes, to induce normocapnia, 100% CO2 was added to the inspired gas stepwise until PaCO2 reached 35-45mmHg (NORMOCAPNIC GROUP). And the circulationof arteriole was observed during normocapnia for 15-20 minutes.No significant changes were observed in the blood pressure, heart rate and pulse pressure. However, significant change was observed in pH. During hypocapnia, the diameter, blood-flow velocity and blood-flow rate of the arterioles were markedly reduced (p<0.05).This study using REC has shown that hypocapnia causes cutaneous microcirculatory changes and increase systemic vascular resistance.
著者
林 海鷹 松井 徹 堀江 崇文 菱山 信也 藤瀬 浩 矢野 秀雄
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.53-56, 2003-04-10 (Released:2012-09-24)
参考文献数
17

一般臨床上健康な48頭の柴犬から採血を行い,高圧液体クロマトグラフィーにより血漿中ビタミンC濃度を測定した。供試犬の年齢構成は1歳未満4頭,1-2歳12頭,2-5歳7頭,5-10歳12頭,10歳以上13頭であり,性の構成は,雄13頭,雌28頭,避妊雌7頭であった。血漿中ビタミンC濃度は年齢の影響を受けたが(P<0.001),性の影響および年齢と性の交互作用は認められなかった。1歳未満の柴犬は,1歳齢以上のイヌと比較し血漿中ビタミンC濃度が高かった(P<0.01)。一方,1歳齢以降では加齢に伴う血漿中ビタミンC濃度の変化は認められなかった。1歳齢以上の柴犬における血漿中ビタミンC濃度は7.00±1.10mg/L(平均±標準偏差)であり,1歳齢以上の柴犬における血漿中ビタミンC濃度の標準的な値は4.8-9.2mg/L(平均±2×標準偏差)程度であることが推察された。
著者
渡邊 昇五 佐藤 愛実 王 祁 山崎 亨
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌) (ISSN:03854205)
巻号頁・発行日
vol.115, no.8, pp.737-743, 1995-07-20 (Released:2008-07-15)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

A digitized phase sensitive detecting system(DPD)have been developed for precision measurement of voltage ratio. The system is composed of a personal computer, an analog-to-digital converter(ADC)and a software for mesurement and data treatment. Two sinusoidal voltages of a frequency applied to the DPD are converted into discrete data, and expressed as vectors by data treatment following to the principle of usual phase sensitive detector. Then an amplitude ratio and a phase difference of the two input voltages are calculated. Estimeted uncertainties of measured values by the DPD are less than 0.008[%]for amplitude ratio and 0.05 [mrad] for any phase difference at frequency of 50[Hz].The errors of the DPD caused by harmonic distortion of the applied voltages and asynchronus sampling by the ADC are also examined using a two-phase voltage source.

1 0 0 0 和算研究

著者
算友会 [編]
出版者
算友会
巻号頁・発行日
1959
著者
藤原 宣夫 田畑 正敏 井本 郁子 三瀬 章裕
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.601, pp.85-92, 1998-08-22 (Released:2010-08-24)
参考文献数
14

柳枝工施工部におけるヤナギ林の発達過程を推定することを目的とし, 矢作川において施工後の経過年数の異なる8箇所の柳枝工を対象に, 植物社会学的手法による植生調査を実施した. その結果, 3~5年経過では挿し木により導入されたカワヤナギが優占する高さ5m程度の低木林, 10年経過では高さ7mのカワヤナギが優占する低木林が認められた. 10数年経過ではアカメヤナギとジャヤナギが優占する高さ10m程度の高木林が認められ, この高木林は自然のヤナギ林と同様な構造を有していた. 高木林はカワヤナギ低木林が立地の乾燥化に伴い次第に変化したものと考えられ, この変化には河川水位の低下が関与したものと考えられた.
著者
徳永 佳晃
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.01-026, 2019-03

Scholars believe that Safavid Iran (1501–1722) and Mughal India (1526–1858) emphasized their friendly relations with each other and peace was established for many years. It is typical of their good relationship that their monarchs referred to each other in diplomatic correspondence as family members since the seventeenth century. However, detailed analyses of this diplomatic practice have not been conducted. Why did these two empires continue this practice over several generations? To investigate this practice, this study analyzed the usages of terms and expressions indicative of their fictive kinship between the Safavids and the Mughals in their diplomatic correspondence of the seventeenth century. The study particularly focused on correspondence about the Qandahar dispute, which was the biggest disagreement between these two empires. This study revealed the following three points. Firstly, Abbas I (r. 1587–1629) and Jahangir (r. 1605–1627), who experienced a military confrontation regarding Qandahar in 1622, justified their operations using the discourse of kinship, thereby preventing a total breakdown of diplomatic relations between the two empires. Secondly, when confronted by the Qandahar dispute, the heirs of these two monarchs followed this diplomatic practice in an attempt to lessen the negative influence of the Qandahar problem on theit relations, Thirdly, their fictive kinship was referred to in their correspondence with the intention of fixing the relationship, while diplomatic relations generally deteriorated in the second half of the century. In sum, to maintain friendly relations between Safavid Iran and Mughal India, the countries’ monarchs used terms of fictive kinship in their diplomatic correspondence. In addition, they each used that kinship discourse to request the other to accede to their political and diplomatic demands and to explain their military actions. In conclusion, the usages of terms of fictive kinship between these two imperial houses in their diplomatic correspondence over several generations reflect their diplomatic policies used to justified pursuit of their greatest interests while preventing full-scale confrontations.
著者
粕渕 賢志 福本 貴彦 藤田 浩之 前岡 浩 今北 英高
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CaOI1019, 2011

【目的】<BR> 近年,手根中央関節の動きは,常にダーツスロー・モーション方向であると解明されてきた.ダーツスロー・モーションとは橈背屈から掌尺屈方向への動きである.日常生活では手関節の組み合わされた動きが必要となり,ダーツスロー・モーションで日常生活にあまり不自由をきたさないといわれている.また橈骨遠位端骨折後では,日常生活動作能力と関節可動域(以下 ROM)には関連がなく,握力のみ関連があるとの報告が多い.しかし,今までの報告ではダーツスロー・モーション面のROMを評価しているものはない.従って本研究の目的は,橈骨遠位端骨折後患者のダーツスロー・モーション面のROMが日常生活動作能力に関連があるかを調査することとした.<BR><BR>【方法】<BR> 対象は,当院通院中の橈骨遠位端骨折後患者15名(男性7名,女性8名).平均年齢62.4±16.0歳であった.評価項目は身体機能と日常生活動作能力を評価した.身体機能は患側の掌屈,背屈,橈屈,尺屈,回内,回外のROMと,ダーツスロー・モーションである橈背屈,掌尺屈のROMを自動運動,他動運動にて二回ずつ測定し平均値を求めた.ダーツスロー・モーション面ROMは専用のゴニオメーターを作成し測定した.今回作成したダーツスロー・モーション面用ゴニオメーターは検者内・間とも信頼性が0.90を越え,高い再現性が得られることを確認してから使用した.測定したROM結果より,掌背屈,橈尺屈,回内外,ダーツスロー・モーション面の全可動域を求めた.また各ROMの健側との比率を求めた.日常生活動作能力はDASH(The Disability of the Arm, Shoulder and Hand)スコアの日本手の外科学会版を用いて評価した.統計学的解析はDASHスコアと,各ROM,健患比の相関を求めた.各相関はPearson相関係数を求め,危険率を0.05未満で有意とした.<BR><BR>【説明と同意】<BR> 本研究は畿央大学研究倫理委員会の承認(H21-15)を得て行った.被験者に対し研究の説明を行い,同意を得られた者のみデータを採用した.<BR><BR>【結果】<BR> DASHスコアと橈背屈ROMの自動運動(r = 0.596, p < 0.05),他動運動(r = 0.628, p < 0.05),自動運動の健患比(r = 0.604, p < 0.05),他動運動の健患比(r = 0.756, p < 0.01)に相関がみられた.またDASHスコアとダーツスロー・モーション面ROMの自動運動(r = 0.628, p < 0.05),他動運動(r = 0.648, p < 0.01),自動運動の健患比(r = 0.522, p < 0.05),他動運動の健患比(r=0.671,p<0.01)に相関がみられた.その他の項目とは相関は認められなかった.<BR><BR>【考察】<BR> DASHスコアと橈背屈ROM,ダーツスロー・モーション面ROMに相関が認められた.掌屈,背屈,橈屈,尺屈,回内,回外のROMと,掌背屈,橈尺屈,回内外のROMがDASHスコアと相関が認められなかったことは,先行研究と同様の結果であった.今回ダーツスロー・モーション面ROMと相関が得られたことから,橈骨遠位端骨折後ではダーツスロー・モーションが日常生活に最も重要であり,特に橈背屈方向の動きが日常生活に影響を与えていると考えられる.またダーツスロー・モーション面のROMが大きいほどDASHスコアも高値であったことより,橈骨遠位端骨折後の回復過程をダーツスロー・モーション面ROMの評価をすることにより把握することができると考えられる.また手関節背屈40°~50°の角度からのダーツスロー・モーションは,橈骨手根関節の動きは少なくなり手根中央関節の運動のみとなる.よって橈骨遠位端骨折後のリハビリテーションの際に,ダーツスロー・モーションは骨折部にストレスをかけずに早期から手を動かすことができるかもしれないといわれている.これらのことからも橈骨遠位端骨折後には早期からダーツスロー・モーションのROM訓練を行うことが有意義な理学療法に繋がると考えられる.<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 橈骨遠位端骨折では日常生活動作能力を向上させるには,ダーツスロー・モーション面ROMの改善が必要であるということが示された.またダーツスロー・モーションは理学療法において,治療,評価のどちらにも重要であると示唆された.
著者
大貫 雅子 橋本 洋子 堀尾 武
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.505-510, 1996 (Released:2010-08-25)
参考文献数
21
被引用文献数
2

42歳, 男性。体温上昇時, 精神的緊張時に強度の痛みとともに生じる皮疹を主訴に受診した。温熱負荷および運動負荷により紅斑と粟粒大の膨疹が誘発され, 皮疹出現時の発汗低下が確認されたことより, 減汗性コリン性蕁麻疹と診断した。組織学的には発汗低下の要因となるような機質的変化はみとめられず, 連日の運動負荷による発汗の促進誘発により症状の軽快が得られた。本疾患の病態形成機序は十分解明されていない。自験例では, 誘発時の血中ヒスタミン値の有意な上昇はみられなかった。また, 内服PUVA療法により皮疹形成は抑制されたが痛みは改善しなかったことから, 両者に関与するメディエーターは異なる可能性が示唆された。
著者
西野 隆典 井上 直哉 伊藤 克亘 武田 一哉
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.3-12, 2006-12-25 (Released:2017-06-02)
参考文献数
14

バイノーラル信号は,頭部や耳介などによる音波の反射や回折の影響を含んだ信号である。バイノーラル信号による音源方向推定が実現できれば,あらゆる音源方向を識別するロボット聴覚への応用が可能となる。本論文では,バイノーラル信号を用いた音源方向推定手法の提案,及び評価を行う。両耳間音圧差の包絡のケプストラムを単一ガウス分布で近似した音源方向推定モデルを構築し,残響時間が異なる環境において計測された両耳室内インパルス応答を用いて,提案手法が前後左右だけでなく,上下方向の識別について評価を行った。実験結果より,本提案手法は,異なる残響時間,及び上下方向に対応した音源定位手法であることが示された。
著者
水野 資子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.503, 2005-07-01 (Released:2017-08-01)

目的:セロトニントランスポーター(5-HTT)の蛋白発現量と機能は5-HTT遺伝子の転写調節領域(SLC6A4)の遺伝多型によって調節される. 扁桃体を介した恐怖条件づけや日常生活におけるストレスに対する感受性に, この遺伝子多型が関与するという報告がある. 脳機能イメージングを用いた恐怖および怒りの表情認知課題において, 右扁桃体の賦活がSLC6A4遺伝子の"l/l"型に比し"s"アリルをもつ個体において強いことが報告された. 扁桃体と腹内側前頭前野(vmPFC)との間に存在する豊富な神経投射は情動の表出に関連するとされ, 大うつ病患者ではこの回路の過活動が報告されている. また, 前頭前野から扁桃体への伝達にセロトニン神経系が関与することが知られている. よって, セロトニン神経の伝達を調節するとされるトランスポーターの遺伝子多型が扁桃体-vmPFCの情報伝達を調節すると考えられる. 著者らは, トランスポーターの機能が低く, 気分障害や自殺企図との関連が報告される"s"アリル保持者で扁桃体とvmPFC間に強い連絡があると仮説づけ, これを検証した. 方法:対象は29名の健常男性である. 全員に5-HTT遺伝子の多型分析を行った. 課題には情動刺激として快, 不快の情動を想起させる写真を用いた, また, コントロールとしてneutralな写真を用いた. 課題遂行中の脳血流変化(BOLD)をfunctional MRIを用いて測定し, 遺伝子多型との関連性を検討した. 脳画像解析にはSPMを用いた. 結果:遺伝子解析の結果, s/s型9例, s/l型11例, l/l型9例であった. Friskらの報告と同様に, 不快または快刺激の提示時に扁桃体の活動がみられた. また, 不快刺激提示時にのみ右扁桃体と"s"アリルの相関がみられた. 一方, 快刺激提示時の扁桃体の賦活と遺伝子多型の相関はみられなかった. また, 扁桃体とvmPFCの局所血流量上昇の共変性が観測された. この共変性と遺伝子多型に相互作用がみられ, 左扁桃体と左vmPFCの共変性が"l/l"型の個体に比し"s"アリル保持者において強いことが明らかとなった. 考察:本研究は扁桃体-vmPFCの連合強度の5-HTT遺伝多型による差を証明した最初の報告である. 今回の結果は5-HTTの機能が負の感情形成に関与するという先行研究を支持した. また, "s"アリル保持者における不快刺激に対する高い過敏性を示唆した.