著者
玉井 颯一
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.170-182, 2020 (Released:2021-08-05)
参考文献数
52

Belongingness is a fundamental human need. Adverse consequences occur with social exclusion. Terms related to pain such as “broken heart” and “hurt,” which are used to reflect individuals’ emotional state when they are socially excluded, are found across a wide variety of cultures. Research indicates that when individuals experience threats to their social bonds, their brain responds in the same way as it does to physical pain. In essence, the psychological reaction associated with being excluded is akin to physical pain. However, several recent studies have criticized the view that the dorsal anterior cingulate cortex, a region in the brain, has a key role in the physical–social pain overlap. In this review, I discuss recent trends in the pain overlap theory and relevant topics for future research.
著者
伊藤 操子
出版者
特定非営利活動法人 緑地雑草科学研究所
雑誌
草と緑 (ISSN:21858977)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.2-15, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
32
被引用文献数
1

生活圏において草本植生で被覆されている領域は鉄道,道路等のインフラ緑地,公園,河川敷,空地・耕作放棄地など多岐・広面積に及ぶが,その大半を構成する大型多年雑草(とくに地下拡張型)群は刈り取り管理下でますます勢力を増している.この深刻な事態に対応する雑草管理を策定するなかで,化学的手段の適材適所的採用は不可欠である.とくにセイタカアワダチソウ,イタドリ,セイバンモロコシ等に代表される地下拡張型多年生雑草の的確な制御には,除草剤の特定の機能を活用する以外にない.なぜ,そういえるのか.本稿では,まず,対象であるこの種の多年草の生理・生態,構造上の特徴を紹介し,その生存戦略の中心が地下部の芽からの萌芽・再生にあることを明確にしている.そのうえで,長期にわたってピンポイント的にこの生育反応を阻害することで,最終的に個体全体を死亡させうる一群の除草剤の存在と特性を,さまざまな研究成果をもとに実証している.共通の特性とは地下部への優れた移行性と芽への集積およびその生長点での形態形成・細胞分裂阻害機能である.単なる ‘刈り取り代用’という誤った認識のもとにある化学的手段を,地下拡張型雑草も的確に制御することで植生の質的調節ができる手段と認識し,他手段との時間的・空間的integrationによって緑地植生の改善に活用することの重要性が強調される.
著者
人文社編集部 編
出版者
人文社
巻号頁・発行日
vol.都道府県庁所在都市篇, 1966
著者
水野 直樹
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文学報 = Journal of humanities (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
no.106, pp.205-238, 2015

特集 : 領事館警察の研究朝鮮の独立運動,共産主義運動が盛んな間島に置かれた領事館警察は,日本の外務省警察組織の中でも最大規模のものだった。朝鮮人の運動を取り締まるため,在間島の領事館警察と朝 鮮総督府司法当局とは,協力して朝鮮人活動家らを逮捕・裁判・投獄する仕組みをつくった。 間島の領事館警察が逮捕し,朝鮮の裁判所に被告を送るというシステムである。 このシステムによって処理された最大の事件が,1925年から1932年まで5回にわたる間島共産党事件であった。領事館警察と朝鮮総督府は,被疑者が多数に上ると,取り調べや司法処理 の方法,拘禁場所の確保などをめぐって,意見の食い違いを見せた。さらには,中国共産党に加入した朝鮮人への治安維持法適用の可否をめぐっても,両者は対立することになった。その ため,5回の間島共産党事件で間島領事館から朝鮮の京城に移送された767名のうち344名 (45%) が不起訴,免訴,無罪となった。 治安維持法適用問題に関しては,朝鮮総督府の司法当局が間島領事館の見解に合わせて,中国共産党員にも同法を適用するという拡大解釈をしたため,間島と朝鮮の当局の見解が一致することになったが,事件の処理をめぐる両者の対立,軋轢は解決しなかった。1932 年日本は満洲国を樹立し軍事支配を強めたが,それに対応する形で間島の領事館は,間島と朝鮮との間の司法共助システムを変更した。それは,被疑者を朝鮮総督府に移送せず,間島で予審にかけることとし,間島に近い清津地方法院の裁判に送る一方,共産党員を検挙時に殺害するという方 策であった。

6 0 0 0 OA 雑芸叢書

著者
国書刊行会 編
出版者
国書刊行会
巻号頁・発行日
vol.第1, 1915
著者
廣瀬 雅裕 三橋 武司 中神 理恵子 新保 昌久 山本 啓二 勝木 孝明 島田 和幸
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.Supplement3, pp.12-19, 2007-08-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
3

症例1:80歳,女性.急性心筋梗塞の疑いで入院.心電図はII,III,aVFにST上昇.心エコーで後下壁運動低下・心嚢液貯留あり.造影CTで大動脈解離は否定.冠動脈造影で左回旋枝狭窄病変を認めた.心タンポナーデを呈したため穿刺にて血性心嚢液排液し血行動態は改善.マルチスライスCTで左室後壁に菲薄化を認め,心筋シンチ・冠動脈狭窄部位と一致し心筋梗塞に伴う心破裂と診断.症例2:73歳,女性.胸背部痛で近医受診.心電図はII,III,aVFでST上昇.一時ショック状態となり当院搬送.造影CTでは大動脈解離は否定的であったが心嚢液貯留あり.心エコーでは壁運動異常なく血行動態も安定したため保存的に加療.マルチスライスCTでは左室後壁に菲薄化あり心破裂と診断.急性心筋梗塞の浸出性心破裂は臨床経過や心エコーのみでは確定診断に至らないことも多いわれはマルチスライスCTにて左室の菲薄化を明瞭に描出し心破裂の診断に至った2症例を経験したので報告する.
著者
中本 智洋 Nakamoto Norihiro
出版者
金沢大学
雑誌
博士論文本文Full
巻号頁・発行日
2016-09-26

博士論文本文Full
著者
長谷川 匡弘 石田 惣 松井 彰子 松本 吏樹郎 長田 庸平 初宿 成彦 植村 修二 和田 岳
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
自然史研究 = SHIZENSHI-KENKYU, Occasional Papers from the Osaka Museum of Natural History (ISSN:00786683)
巻号頁・発行日
vol.4, no.5, pp.117-156, 2022-02-28

大阪府下から記録されている哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類、昆虫類、その他無脊椎動物、コケ類、維管束植物について、主に明治時代以降に持ち込まれたと考えられる外来種を整理し目録を作成した。結果として哺乳類11種、鳥類12種、爬虫類3種、両生類2種、魚類45種、昆虫類・クモ類196種、その他無脊椎動物68種、コケ類3種、維管束植物種800種がリストアップされた。This list shows non-native species that are thought to have been introduced mainly after the Meiji era and were recorded in Osaka Prefecture. As a result, the following species were listed, Mammals: 11 species, birds: 12 species, reptiles: 3 species, amphibians: 2 species, fish: 45 species, insects and spiders: 196 species, other invertebrates: 68 species, mosses: 3 species, vascular plant species: 800 species.
著者
新永 悠人
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.157, pp.71-112, 2020 (Released:2020-12-10)
参考文献数
84

本稿では湯湾方言(琉球諸語の1つである奄美語に属する)の複数形が持つ諸機能に注目し,それを世界の諸言語の複数形が持つ「特殊な機能」(Corbett 2000: 234)と比較・考察した。湯湾方言の複数標識は,簡単に言えば,日本語標準語の「たち」だけではなく,「など」に相当する機能も持っている。このような現象を通言語的な視点から整理するために,本稿では「意味地図」(semantic map)という方法論を用いた。その際,単数,双数,複数などのような「数の区分の意味」(number values)と,累加,連合,などの「数の区分以外の意味」(non-number values)を分けて捉えることによって,諸言語の複数形が持つ「特殊な機能」が意味地図上で比較考察できるようにした。その結果,従来の研究では区別されていなかった「集合的例示」と「選言的例示」の区別,および複数形が実質的に1人の対象を指す用法のうち,いわゆる「尊敬複数」(polite plural)とは異なる「否定的・単独的例示」の通言語的な価値を明らかにした。
著者
小澤 英実
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

アメリカ文化における「恐怖の表象」をフェミニズム理論から検証するという研究テーマに即し、本年度はバーミンガム大学で開催されたアメリカン・スタディーズ国際カンファレンスにて、ハリウッドのホラー映画に関する口頭発表を行い、同内容を論文として同学会ジャーナルに掲載した。本内容は、日本の恐怖映画のリメイク作品群を事例に、日米の文化的・地政学的な差異が諸作品と日米の観客に与えている影響を検証し、ホラー映画に登場する幽霊・モンスターの身体と、演劇・舞踊の身体との接合点を指摘したもので、身体を軸にジャンルを横断した表象研究の必然性を主張した。また本年度はとりわけ、身体がもっとも先鋭的に焦点化される舞台芸術の研究に力点を置き、サム・シェパードのゴシック演劇『埋められた子供』論を雑誌『アメリカ演劇』に、演劇における身体と映画や漫画における身体との比較・考察を雑誌『舞台芸術』に発表し、恐怖の表象研究の汎用可能性および文化研究の横断可能性を示したほか、東京国際演劇祭「アメリカ現代戯曲シリーズ」にて上演された女性の死とセクシュアリティをテーマとしたトリスタ・ボールドウィンの戯曲『DOE-雌鹿-』を翻訳し、現代アメリカ演劇ないしアメリカ社会の最新動向を紹介した。その他の口頭発表として、秋にバイセクシュアリティ研究の重要文献マジョリー・ガーバー『Vice Versa』の討論会に報告者のひとりとして出席し、フェミニズム/セクシュアリティ研究を巡る課題について討議を行った。
著者
須崎 成二
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.16-27, 2019-03-15 (Released:2020-04-22)
参考文献数
15
被引用文献数
3

本稿は,日本最大のゲイバー集積地である新宿二丁目を対象として,ゲイ・ディストリクトの発達モデルを参照しながら,ゲイ・ディストリクトの空間的特徴と存続条件を検討した.ゲイバーの立地傾向の分析,ゲイバー経営者やテナント供給者への聞き取り調査の結果,新宿二丁目では,ゲイバーの経営方針によって店舗の立地に差異がみられ,コストを抑えるリース店舗の存在やカミングアウトの軽減,物件供給に携わるキーパーソンの存在によって維持されている一方で,ゲイ・ディストリクトの消失につながる地域住民との緊張関係も潜在的に存在していることが明らかになった.ゲイ・ディストリクトとしての新宿二丁目は,発達モデルおよびそのモデルに対する批判的論文において示された特徴を部分的に有しており,このことは各都市のゲイ・ディストリクトをより広い枠組みで解釈する必要があることを示唆している.
著者
渡邊 圭祐 宮崎 貴志 片山 哲治 菊田 浩一 中村 夏樹 田中 秀幸 木村 龍範 矢埜 正実
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.375-378, 2012-07-01 (Released:2013-01-16)
参考文献数
15

症例は62歳,男性。下肢静脈瘤に関連した蜂窩織炎にて過去8回の入院歴があり,今回も蜂窩織炎で入院した。入院後まもなく看護師の目の前で突然意識消失するも短時間で意識が回復し,その後1時間あまりの間に6回の心室細動が出現した。ICUに入室し鎮静薬投与および気管挿管後からは心室細動の出現がなく,第2病日に抜管した。ICU入室時の体温は41℃であり,V1,V2誘導で特徴的なcoved型ST上昇を認めた。その後ST上昇は改善するも,Brugada症候群と診断し,埋め込み型除細動器埋め込み術を行った。平常時の心電図はBrugada型の所見は認めず,過去の発熱時の心電図においても軽度ST上昇が認められたが,Brugada症候群と診断するのは不可能であった。発熱を契機に診断されるBrugada症候群の報告は散見され,発熱患者を診る機会の多い集中治療医も銘記しておくべき病態である。
著者
瀬口 篤史
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.25-36, 2020-01-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
22

本事例では、頭部の不快感により一人または娘と二人での外出が困難となった女性のクライエントに対し、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)に基づく介入を行った。また、介入を通した外出行動の改善を、頻度、家から離れられた距離、行くことができた場所の数の三つの次元から行動指標を用いて外出行動を測定し、改善を評価した。その結果、いずれの次元においても改善が示され、外出が困難なクライエントに対するACTの有効性が示唆された。介入の有効性と複数の次元から行動を測定することの有用性などについて考察した。
著者
伊良皆 拓 金城 優志 田中 創大 恒田 雅人 平島 英明
出版者
公益社団法人 日本医学物理学会
雑誌
医学物理 (ISSN:13455354)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.88-105, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
9

Details of Young Researchers’ Association of Medical Physics (YRAMP) was introduced. In addition, several questionnaire surveys on medical physics education (MPE) or medical physicist training system (MPTS) in Japan have been conducted, none have targeted the current status and issues of MPE and MPTS. The purpose of this study was to investigate those from the perspective of researchers and students under 35-year-old (y.o.). The questionnaire survey was conducted between 14th September to 14th October 2021, for 112 members of the Young Researchers’ Association of Medical Physics via Google Forms. The questionnaire was in two parts: MPE (Part1) and MPTS (Part2). Three subparts were constructed in Part1: Classroom lecture, Clinical training, Education course accredited by Japanese Board of Medical Physicist Qualification. Out of a total of 126 questions, 38 were mandatory to be answered. No personal information was collected. Ninety-three members (83.0%) were answered. The age structure of the respondents was as follows: 18–21, 22–26, 27–30, and 31–35 y.o.=5.4%, 36.6%, 39.8%, and 18.2%. Of the respondents, 74.2% and 11.8% answered that they first heard of “medical physics” or “medical physicist” when they were undergraduate students and in high school or younger, respectively. In Classroom lecture, 61.3%, 17.2%, and 21.5% of the respondents answered that they were “satisfied” or “moderately satisfied”, “dissatisfied” or “moderately dissatisfied”, and “Not sure” with the current MPE, respectively. In Clinical training, Education course, and MPTS, 58.1%, 21.5%, and 20.4% of the respondents answered that they were “satisfied” or “moderately satisfied”, “dissatisfied” or “moderately dissatisfied”, and “Not sure”, respectively. In both MPE and MPTS, approximately 88% and 51% of the respondents answered that “holding lectures and study sessions for high school and undergraduate students” and “utilizing YouTube” would be useful in promoting MPE and MPTS in Japan, respectively. The results of the questionnaire survey will provide useful data for MPE and MPTS in Japan.