著者
鈴木 勝征 内田 誠
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
巻号頁・発行日
no.10, pp.19-91, 2010 (Released:2011-07-13)

本研究は新規にギンナンを導入する際の参考に資するため、ギンナン実生個体の調査並びに既存の日本の品種、中国品種等について、詳細な果実特性調査を行ったものである。樹齢およそ20年生と思われるつくば市内の街路樹545本の調査から、開花結実していた雌樹個体は約28%であった。その果実は既存品種と比較すると小果であり、殻果も小さく、形状は縦長のタイプであった。これらの中から比較的特徴のある44個体を果樹研究所内の千代田圃場に高接ぎ保存した。既存品種の‘二東早生’、‘金兵衛’は早熟性で9月と10月との殻果重には差が無く、他の品種では増加するのが認められた。しかし、これら早熟品種は比較的小果であった。今回の調査では‘喜平’が大果であり有望な品種と思われた。‘金兵衛’は殻果表面に「アバタ」が多く発現する品種であり、数多くの実生個体の中にもこれほど「アバタ」が出る個体はなかった。胚乳上の内種皮の色は上位部と下位部に区分され、その比は品種によって異なり‘金兵衛’、‘栄神’では上位部のほうが長く、これは実生個体にも多く出現する特徴であった。中国6品種の殻果は全て日本の品種より縦長の形をしており、内種皮の上下比では下部が顕著に長いという特徴があった。なお、‘大馬鈴’は5年生の幼木で開花結実し、早期結実性のある品種と思われた。果肉部の屈折計示度は早熟品種が早い時期から高く、10月には全ての品種で20%を越えており、果実の着色と合わせて成熟度を測る指標となりうるものと思われた。また、樹齢が古いと成熟が早まり、若くて樹勢が強いと大果になるが、殻果歩留りは劣るようであった。
著者
山田 雅子 勝山 奈々美 中川 映里 花村 真梨子 諸星 浩美 玉内 登志雄
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.448, 2011

(緒言)近年、身体拘束を廃止しようと医療機関では拘束廃止の取り組みが増加してきている。抑制には紐で縛る抑制「フィジカルロック」、薬物による抑制「ドラッグロック」、言葉による抑制「スピーチロック」があることを知った。私たちは「動かないで!」等の言葉を、言葉による抑制であるという意識なく患者に使用していることに気付いた。そこで、医療現場で勤務する看護師を対象に言葉による抑制「スピーチロック」について意識調査を行った。(方法)看護師174名に独自で作成したアンケート用紙を用いて実施した。1)看護師の背景、2)スピーチロックの認知度、3)例題の言葉に対する認識の程度、等5項目に対し記入を求めた。(結果) スピーチロックを「知っている」と回答した者は26.6%であった。言い方の変化としてスピーチロックと認識されるのは「ちょっと待って!!」が43.2%であることに対し、「ちょっとお待ちください」が1.9%と、差がみられた。スピーチロックと捉える言葉を「毎日聞く」と回答した者は50%を占めた。(考察)言葉は目に見えないもので、抑制であるという定義づけが難しく、他の身体抑制よりも看護師の認識が薄い。そのため不必要な抑制は行わないように心がけていても、言葉で相手を抑制している現状があることを知った。同じ意味でも言葉を変えるだけで抑制に対しての感じ方も変わってくることがわかり、接遇とスピーチロックは関係が深く、接遇の改善でスピーチロックを減らすことができると考える。看護は人と人とのつながりであり、良い接遇は不必要な抑制を減らし、良い看護につながると、多くの看護師が感じていた。看護の現場ではスピーチロックという言葉に対する認識は薄いが、スピーチロックにならないための対策を考えていく必要がある。
巻号頁・発行日
vol.[13], 1700
著者
瀧川 具弘 バハラヨーディン バンチョー 小池 正之 ウサボリスット プラティアン 佐久間 泰一 楊 印生
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械學會誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.51-59, 2002-09-01
参考文献数
14

タイでは, 経済発展に伴い農村での労働力減少, 高齢化が進行しており, 併行して大形農業機械を使用する受託農作業システムの普及が着実に進んでいる。本研究では, 中央平原の Nong Pla Mor 区を対象とした調査に基づき, このような受託農作業者 (コントラクタ) の運用実態を報告する。ここでは, Nong Pla Mor 区でのコントラクタ利用の特徴的な状況についてアンケート調査により農民意識と技術受容構造の関係について調べた。調査地では, 全農家が耕起から収穫までの諸作業でコントラクタを利用していた。こうした受託農作業では, 小形農業機械を利用した互助的形態と, 高価な大形機械を利用する半専業的形態とがあった。後者には, 乗用トラクタによる耕起作業受託とタイ製普通コンバインを用いた収穫作業受託が該当した。
著者
アブドゥラカシム ワンラット 小池 正之 瀧川 具弘 長谷川 英夫 余田 章 バハラヨーディン バンチョー ウサボリスット プラティアン
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械學會誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.77-85, 2005-03-01
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究は, 移動中の車両荷重によって変化する土中応力を, 乾燥密度の変化として把え, 土壌の締固め状況を予測することを目的としている。土中応力は, 八面体応力変換器を用いて実測した。またニューラルネットワークモデルは, 乾燥密度が土の物理的特性と応力関連変数の関数であるとして構築した。乾燥密度の予測では, rms値誤差は4.28%, 相関係数は0.838であった。さらに感度解析により, 垂直応力とせん断応力は, 土の締固めの主要な影響因子であることが分かった。締固めの発生し易さは, 主に初期乾燥密度と含水比に依存した。
著者
新開 明二 万順 濤 小西 陽一
出版者
The Japan Society of Naval Architects and Ocean Engineers
雑誌
日本造船学会論文集 (ISSN:05148499)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.182, pp.435-444, 1997 (Released:2009-09-16)
参考文献数
33

This paper deals with a new statistical prediction method for the propeller racing of ships sailing in rough seas. The propeller racing is one of the most important sea keeping quality in relation to the safety of main engine and shafting system. The trend of the racing has been investigated mainly in order to estimate allowable maximum propeller diameter, operability of ocean-going ships etc.. In those studies, the propeller racing generally and mainly means the situation (propeller exposed) in which the relative motion amplitude between ship hull and wave surface would exceed a depth of point in rotary disk propeller. Therefore, it seems that the magnitude of the amplitude and its exceeding frequency have been examined as a principal subject of study as usual. However, the time during which the amplitude exceeds a depth of point, that is, the propeller exposes in the air over sea surface, must be also one of most important factor affecting the trend of propeller racing. Then, this paper proposes a new practical method for estimating the time lasting of exposed propeller related to propeller racing in rough confused seas on the basis of the statistics.

1 0 0 0 OA 透析

著者
栗山 哲
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨 糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
巻号頁・発行日
pp.23, 2005 (Released:2006-03-24)

糖尿病透析患者の管理で重要な事は、血糖と血圧管理である。I:血糖管理 糖尿病透析患者においても血糖管理の三大原則は、食事療法、運動療法、インスリン注射などの薬物療法である。しかし、一般に腎不全の病態が比較的高カロリー食を要することや、ASOや視力障害による運動療法の制限などから、血糖管理の主体は透析療法自体とインスリン治療である。透析療法が、血糖コントロールに及ぼす影響は透析液のブドウ糖濃度が一因である。血液透析の透析液中ブドウ糖濃度は、通常100-150mg/dlに設定されている。従って、高血糖状態の患者では透析により血糖が低下し、一方、低血糖状態では血糖は上昇する。一方、腹膜透析の場合の透析液には、1.5%、2.5%、4.25%と高濃度のブドウ糖が入っているおり、この一部は腹膜から吸収され体内に入ることから血糖管理は一般的には悪化する。経腹膜的ブドウ糖吸収は1.5%2Lブドウ糖透析液では60Cal、2.5%ブドウ糖透析液2Lでは120Cal程度のエネルギーと概算される。例えば、一日に1.5%ブドウ糖濃度透析液2Lを4回交換している腹膜透析患者では、食事以外に経腹膜的に240Cal摂取されることになる。これらの患者では、摂取カロリーを若干減らすかあるいは、インスリンの増量などを考慮せねばならない。HbA1c 6.5%、FBS 120mg/dl、食後2時間血糖 200mg/dl以下を目標とする。一般に経口糖尿病薬は、体内蓄積から遷延性低血糖があり避けることが望ましい。薬物療法の原則はインスリン皮下注であり、基礎分泌と追加分泌を補う。透析性が低い長時間作用型インスリンは避けるべきである。2型糖尿病では1日2回中間型、不安定型では1日3_から_4回の強化インスリン療法が奨められる。食事療法は、カロリー摂取は30 Cal/kg/日程度とする。適切な運動量としては、激しいスポーツより軽いジョギングや歩行、軽い水中遊泳などが推奨される。 _II_:血圧管理 糖尿病透析患者では、溢水状態が強いため利尿薬やCa拮抗薬などの体液量抑制薬(V-drug)は欠かせない。一方、糖尿病のすべての病期においてACE-IやARBなどレニン抑制薬(R-drug)の脳・心・腎機能保護作用のEBMは枚挙に暇が無い。従って、血圧管理の原則としては、V-drugとR-drugの併用療法を基本とすべきである。
著者
折原 佑輔 和気 洋子 宇都宮 仁 青島 均
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.5, pp.349-356, 2006-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1 4

1) 赤味樽および甲付樽に清酒を, 0, 2, 7, 14日間貯蔵し, グルコース, 着色度, 低沸点香気成分及び杉樽由来成分セスキテルペン類香気成分量を測定した。2) グルコース, 低沸点香気成分は, 樽貯蔵しても増加しなかった。着色度とセスキテルペン類は貯蔵日数と共に増加した。セスキテルペン類は甲付樽の方が早く抽出され, カディネン, オイデスモールは甲付樽に保存した方が赤味樽に保存したものに比べて含有量が大きかった。3) アフリカツメガエル卵母細胞にGABAA受容体を発現させて, 清酒の効果を検討した。清酒は応答を引き起こしGABA様活性を示した。また, この応答は清酒中のGABA含有量に対して大きかった。しかし, この応答は樽貯蔵しても増加しかった。4) 樽酒をペンタン抽出して芳香成分のGABAA受容体応答への影響を測定したが, 有意な効果は見られなかった。5) 樽貯蔵により, 総ポリフェノール量及びDPPHラジカル捕捉活性は相関して増加した。しかし, 過酸化水素の有意な増加は見られなかった。
著者
田中 裕久 大石 保徳
出版者
The Japan Society of Mechanical Engineers
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.65, no.637, pp.3804-3810, 1999
被引用文献数
1

A double cavity half toroidal contimlously variable power transmission transmits input torque through a pair of variable units and changes its speed ratio by controlling attitude angels of four power rollers. One power roller among them is controlled by a hydraulic servomechanism and the others are followed it under the control principle of equal force transmission. Synchronization of four power rollers is guaranteed by safety wires, however nonlinearities of friction force on the control pistons or pressure delay in hydraulic lines due to air mix or pipe length cause instability of the speed ratio servomechanism through the safety wires. This paper focuses the relation between the synchronization and stability of the CVT by making bond graph analyses and experiments, and shows design guidelines on the stabilization of the double cavity half toroidal CVT.

1 0 0 0 OA 狭衣物語 4巻

出版者
巻号頁・発行日
vol.[5], 1691
著者
岩佐 武彦
出版者
日本地図学会
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.20-27, 1987
著者
野本 晃史 岩佐 武彦
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学 (ISSN:0287251X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.129-142, 1985-12-25
被引用文献数
1

イギリスと日本の地理教育を正確に比較することは,いろいろと困難がともなう。授業形態・テキスト及びその内容,教科の位置づけなどが,それぞれに異なっているからである。しかしながら,間違いなくいえることは,日本と比較して市販されている教材の豊富なことであろう。 決まった教科書などなく,指導する教員が適当と思う教材を選択して使用している。しかしながら,その大半がG・C・EやC・S・Eの受験を意図した内容であることは,多くのテキストの序文などから推察することができる。これらの資料を参照すれぱ,イギリスではどのような観点から地理教育がなされているか理解できよう。 わが国と違う点は,「地理」が「社会科」としての位置づけが無く,「地理学」として独立して存在しており,特に,自然環境(地形・地質・気象・気侯など)と人間生活(都市・農村・土地利用)との関係が実に詳細かつ実証的に述べられている。 本稿は,特に地形図の読図を中心に,筆者両人のブリテン島現地視察調査の経験を活かして,いくつかの資料を具体的に紹介しながら,イギリスの地理教育の一端を考えてみたい。