著者
澤田 秀夫 宮嵜 武
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

JAXA60cm磁力支持天秤装置を用いた風洞実験と高速度カメラを用いた野外実験の二つの手法で和弓矢の空力特性を測定することに成功した。風洞試験結果を用いて矢が軸周りに回転する効果をモデル化し、クロスボウの矢についても風洞試験と野外実験により空力特性を得ることができ、抵抗係数では両者に合理的な一致を見た。風洞試験では、矢が軸周りに回転している状態や、矢の軸が水平面内で1次モード弾性振動をしている状態で空気力を測定する磁力支持天秤技術を獲得した。
著者
片野 修
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.425-431, 2009 (Released:2009-08-17)
参考文献数
25
被引用文献数
3 5

オオクチバスの釣られやすさに見られる個体差について実験池で調べた。1 日おきに 10 回調査したところ,1 回に釣られるバスの数は日ごとに減少した。個々のバスが実験期間を通して釣られた回数には 0~8 回と大きな差があり,同じ個体が 1 日に 2 回釣られることも 3 例認められた。釣られた記録から,65 尾のオオクチバスのうち 34 尾は,用心深い個体(8 尾),学習する個体(10)尾,釣られやすい個体(16 尾)に分けられた。オオクチバスでは,釣られる危険に対する学習と用心深さや釣られやすさの個体差の両方が認められる。
著者
内橋 貴之
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.20-30, 2018 (Released:2018-03-23)
参考文献数
22

最近の高速原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy: AFM)の進展によって, 生理溶液中でのタンパク質の構造とその時間発展,分子の離散集合などダイナミクスをリアルタイムで可視化できるようになってきた. これまで様々な計測手法による実験事実の積み重ねから推定されてきた事実を動画として提示することで, タンパク質の動的振る舞いを介した機能発現の分子機構を直接的かつ直感的に把握できるようになった. 動画は静止画に比べて極めて多くの情報を与えるが, 一方で, 単に動画鑑賞に終わることなく, そこから有益な情報を客観的な指標を基に抽出すること, すなわち動画解析が次のステップには重要である. 本稿では, これまで高速AFMで観察されてきた代表的なタンパク質の動的現象をi)一分子の構造変化, ii)分子の直進運動と速度解析, iii)二分子間の結合と解離, の3つに大別し, それぞれについて筆者らの実験結果をデータの解釈と解析の効率化のために開発した画像解析法とともに解説する.
著者
細川 周平
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.451-467, 2007-05

ジャズはそれまでの音楽にはない急速で広範囲の伝播を特徴としている。その原型ができあがってまもない一九二〇年代に世界共通語になった背景には、三つの新しい再生技術―電気録音、ラジオ、サウンド同期映画(トーキー)―の力が大きい。 ジャズが地理的な辺境を拡大するにつれて、多くの地元の音楽家はその外来性をいかにして地元の文脈に引き寄せるかという問題にぶつかった。ジャズは生まれた時から圧倒的にアメリカ中心の価値観で世界中に広がったが、各地のアメリカ観・演奏家・評論家・聴衆は、外来モデルの拘束力、個人の嗜好と能力、創造性などの交錯するなかで、それぞれの状況にふさわしく変形し、解釈してきた。日本もまた例外ではなかった。本論はそれをいくつかのパターンに分けて明らかにする。(1) 概念。「日本的ジャズ」と仮に呼ばれるタイプの音楽は昭和十年代から間歇的に提唱された。常にアメリカの物まねではないジャズ、日本人らしいジャズという民族的独自性が含意されてきた。この発想はジャズ界のなかでは常に少数派に属し、主流とはならなかった。時には「間」、「わび」のような伝統的な概念を使ってジャズの日本らしさを言い表すこともあった。これは六〇年代末から七〇年代にかけて、ジャズ界の前衛派のなかで民族主義が強かった時期に顕著だった。(2) 俗調の編曲。ジャズを日本に適応させる最も手軽な方法は民謡、俗曲、三味線曲の編曲で、昭和一ケタ代から試みられてきた。これは明治前半の軍楽隊以来、外来の器楽形式が導入されるたびに繰り返されてきたことで、最近では素材が拡張し、二〇年代の童謡を採り上げた録音が盛んになっている。(3) 日本の旋法の応用。一九五〇年代末、アメリカで新しい音階(旋法)理論にもとづくスタイルが創造されると、それを日本の伝統音階に応用する試みが始まった。雅楽の旋法は日本の音楽のなかでも特異だが、それを応用した録音が八〇年代以降、いくつか現れている。伝統楽器の採用。六〇年代初頭、筝と共演が試みられて以降、尺八や能管、鼓、太鼓、笙などがジャズ演奏に加わってきた。これは西洋人のリードないしあるいは西洋での演奏のために企画されることが多い。日本らしさを視覚的にも音響的にも最も明確に打ち出す方法といえる。
著者
根来 龍之 足代 訓史
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.19-32, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
32

本稿は,マーケティング機能を対象に,媒介型プラットフォーム(Platform: PF)におけるPFと補完者(個別事業者)との関係の相互作用的進化について論じる。その目的は,既存のPF研究が基本的に依拠する,「PFを中心に据えて,PFとその補完者との間の関係を論じる見方」とは異なる関係モデルと一般化仮説を提示することである。そのために本稿では,飲食店チェーン業界において,PFと個別事業者との間で,顧客接点機能を相互発展させている現象を事例分析する。事例研究の結果として,以下の命題を主張する。媒介型PFと個別事業者のマーケティング機能は,相互的機能拡張競争によって発展する。また,個別事業者は媒介型PFのネットワーク効果を活用するために,協業的にPF機能の開発を行うことがある。
著者
西浦 博 合原 一幸
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.797-803, 2009 (Released:2009-08-05)
参考文献数
17
被引用文献数
4

新型インフルエンザ流行が世界的に拡大している.今冬および来年度以降の流行に備えてワクチン製造が必要だが, 製造可能なワクチン総数には上限があり, 同時に季節性インフルエンザのワクチン製造も求められる.本研究は, ワクチン製造資源を最も合理的に新型インフルエンザに配分する数理的手法を提案する.新型インフルエンザ単独の流行閾値条件に近いワクチン接種割合(あるいはそれ以上)を達成できるとき, 全資源を新型インフルエンザに費やすことは最適でない.モデル想定とパラメータ推定値が再流行を十分に記述できると仮定すると, 来年度以降のワクチンの年間最大製造量5000万人分の82.2%を新型インフルエンザに配分することで全死亡者数が最少に抑えられる.2009年度は, 製造可能な新型インフルエンザのワクチン総数に上限があるが, 新型インフルエンザの再生産数が季節性のそれの0.9倍以上ならば, 年度内に残る製造資源の全てを新型インフルエンザに費やすことが適切と考えられる.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
小宮 京
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.5-13, 2010

2009年9月,1955年の結成以来,ほぼ政権の座にあり続けた自由民主党の一党優位体制が崩壊し,民主党を中心とした鳩山由紀夫内閣が発足した。政治報道も変化した。とりわけ派閥という存在は,従来の自民党政権と,新しい民主党政権の断絶あるいは連続性を考える上で,興味深いテーマである。本稿は,この問題を考える前提作業として,自由民主党における非公式組織である派閥の機能について歴史的に検討する。その際,総裁選出過程における派閥の役割を,1920年代,1945-55年,1955年以降の三つの時代に分けて, 分析した。その結果,派閥のあり方を規定したのは,第一に,大日本帝国憲法や日本国憲法のもとでの運用,第二に,総裁選出方法との強い関連が明らかにされた。そして,派閥は,非公式の組織でありながら確固たる存在となったことが判明した。
著者
中島 玲奈
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>この研究では、ジャニーズが1年間を通して多くのコンサートを開催し、各コンサートごとにペンライトを販売しているということに注目し、ペンライトの変化の流れを分析することによって新しいペンライトを提案を行う。 最初に背景についてリサーチを行い、その後、ジャニーズによって販売された153個のペンライトについての情報を集め、年表と系統樹を作成しました。 それらを分析し、その結果に基づいてデザイン要件を決定し、プロトタイプを作成を行った。 それを様々なな人に使用してもらい、いくつかのフィードバックを得た。 分析結果やプロトタイプの結果に基づいて、光の強さが歓声に応じて変化するペンライトを最終提案とする。</p>

6 0 0 0 OA 氷の相転移

著者
東 晃
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.274-285, 1972-12-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
37
被引用文献数
1 2

6 0 0 0 OA 新編常陸国誌

著者
中山信名 編
出版者
積善館
巻号頁・発行日
vol.下, 1901
著者
沖田 瑞穂
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.83, pp.109-129, 2016

ヒンドゥー教の主神の一人シヴァと,日本のスサノヲ神には,八つの点で特徴的な類似が認められる。1.破壊と生殖:シヴァは時が来ると世界を破壊する破壊神であり,スサノヲはその行動によって世界を危機にさらす。他方,シヴァはリンガに表されるように生殖の神であり,スサノヲは豊穣の地下界と一体化して,豊穣神オホクニヌシに試練を課す。2.〈教示する神〉:シヴァはインドラの欲望を戒め,スサノヲはオホクニヌシを試練によって導き祝福を与える。3.悪魔退治と武器:シヴァは悪魔の三都を破壊し,英雄アルジュナに武器を授ける。スサノヲはヤマタノヲロチを退治し,それによって得た剣をアマテラスに献上する。4.荒ぶる神・罰・(宥め):英雄神であると同時に両神は荒ぶる神でもある。5.暴風神:シヴァの前身ルドラは暴風神,スサノヲも自然現象としては暴風雨。6.文化:シヴァは踊り,スサノヲは歌と関わり,世界のエネルギーを表す文化と関連する。7.女性的なものとの一体化:シヴァはシャクティとして妃と一体化し,スサノヲは冥府の主であることによって母神イザナミと一体化している。8.イニシエーションを授ける:シヴァはアルジュナに,スサノヲはオホクニヌシに。 このように多くの類似を有するが,両神の間に何らかの系統的関係は想定できず,自然現象としての暴風に基づく神格として,別個に形成された性質が偶然に一致したものと考えることができる。