著者
多田 幸雄 山脇 一郎 上田 修一 松本 宏 松浦 直資 安本 三治 江田 昭英 堀 幹夫
出版者
Chem-Bio Informatics Society
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.25-38, 2012 (Released:2012-06-28)
参考文献数
14
被引用文献数
1

スルホニウム化合物の分配係数 logK 値は実測されていなかったので、これまでは置換基の πの計算値のみを用いてQSAR解析を報告してきた。本研究においては、固定相としてオクチルシリル化されたシリカゲルプレート(Merck HPTLC RP-8 F253S)、移動相として 50%(V/V) エタノール水溶液を用いて、抗アレルギー剤である Suplatast Tisilate (IPD-1151) の開発におけるスルホニウム化合物の logK 値を測定した。最適化された化合物 52 および 67 (Suplatast Tosilate)の logKTLC値は、それぞれ 0.07 と 0.06 であった。従って、抗アレルギー剤としてのスルホニウム化合物の望ましい logKTLC の値はほぼ 0 であることが判明した。
著者
多田 幸雄 山脇 一郎 上田 修一 松本 宏 松浦 直資 安本 三治 江田 昭英 堀 幹夫
出版者
情報計算化学生物学会(CBI学会)
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.84-93, 2001 (Released:2001-09-28)
参考文献数
12

スルホニウム化合物の物理化学的性質とその生物活性との相関を明らかにする目的で、スルホニウム化合物に特徴的な性質である H-D 交換およびメチル基転移反応速度を調べた。その結果H-D 交換およびメチル基の転移反応速度と急性毒性(LD50)の間に良好な相関があった。医薬品の開発において毒性をコントロールすることは非常に重要なことである。メチル基の高い反応性は急性毒性の面から望ましくない、従ってこれらスルホニウム化合物において、硫黄原子の置換基として不飽和炭素を持たない化合物が毒性軽減の面から望ましかった。さらに、OH 基もしくは COOH 基は大幅に毒性を軽減した。これらの毒性軽減に関する情報は抗アレルギー薬である Suplatast Tosilate の分子設計に用いられた。
著者
人見 英里 高木 麻理子
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学学術情報 (ISSN:18826393)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.53-61, 2009-03-31
被引用文献数
1

本学学生食堂について、平成19年の前期、後期それぞれ2週間について利用者数を調査した。その結果、利用者数は曜日によって変動はあるものの1日230人程度、そのうち約半数はメニューを利用しない持ち込み利用者であった。講義の開講数と食堂利用者数は必ずしも連動していなかった。最も多く利用されているメニューは上位から日替わりランチ、カツ丼、豚玉丼、から揚げ丼であり、これらが全食数に占める割合は約50%であった。提供されているメニューについて食事バランスガイドを利用したサービング数を調べたところ、多くのメニューで副菜のサービング数がないか、または少なかった。バランスのよいメニューとしては日替わりランチがあり、食堂業者との協議の結果、これをさらに充実させ「野菜たっぷりメニュー」として提供してもらうことができた。また、食堂改善のための取組みとして、山口農政事務所との共催で食事バランスガイドキャンペーンの実施、食事バランスガイドを利用したメニュー表示の更新、女子学生向けランチメニューの開発と提案を行なった。
著者
長坂 和茂
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.304-316, 2017-01-01 (Released:2017-06-26)

日本図書館協会の総裁徳川頼倫は,1923年から特別預金5万円の利子として年3000円を協会に対して支払い,財政的に支援している。その利子を当時の協会財政と照らし合わせ,利子の影響力の大きさと,使途について調査した。 年3000円とは当時の日本図書館協会の会費収入に匹敵する重要な収入源であり,図書館雑誌の月刊化や図書館週間の宣伝などに使われていることが判明した。 特別預金利子が大正期の日本図書館協会の財政にとって,大きな役割を果たしていることが明らかとなり,華族による社会貢献の一端を見ることができる。
著者
八木 宏 POKAVANICH Tanuspong 灘岡 和夫 白井 一洋 木村 俊介 下迫 健一郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.956-960, 2010 (Released:2010-11-09)
参考文献数
11

Temporal and spatial variations of suspended particulate matter (SPM) in Tokyo Bay were investigated based on intensive field surveys and numerical simulation. Measurement results showed that the relative high turbidity appeared in the front of bottom high saline water and the middle turbid layer was generated corresponding to the middle hypoxic water generation induced by the intrusion of offshore oceanic water. The neutral tracer tracking simulation shows that bottom SPM have a characteristic to distribute along the front of bottom high saline water which forms the streak pattern from off Tama river mouth to off Chiba port in the south wind period and moves to the head region in north wind period. Furthermore the neutral tracer tracking and water quality simulations revealed that the bottom SPM can be moved upward by the intrusion of oceanic water in the bottom layer due to the change of wind direction or offshore water variations.
著者
鈴木 啓司
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 人文・自然科学篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:03850056)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.23-41, 2018-01

「モノそのもの」であることを表現する言語の構築を目指す新物質主義の思想にのっとり,数学概念のモノ化を目指す。数学は特定の指示対象をもたぬ極めて抽象的な言語であるだけに,逆に人間という「モノそのもの」の内奥から湧き出,それを映し出している言語であると考えるからだ。具体的な対象として,実数,虚数を合わせすべての数を表示する複素平面を取りあげる。認識論的存在論から話を起こし,実数を自己に,虚数を他者になぞらえて解釈する。当初は「あちら」と「こちら」という原始的世界他者意識が,のちに両者が交叉し,中間に「自己」意識を結ぶ。自己とは他者=世界の後付けで生まれたものである。通念とは逆行するこの虚数から実数へという流れを,複素平面のなかに読み込む。こうした観点から,オイラーの公式,さらにはリーマン予想にまで言及する。
出版者
巻号頁・発行日
vol.[42],
著者
川崎 洋平 前田 英児
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.97, 2011 (Released:2012-03-28)

【はじめに】 長期的な松葉杖歩行は、荷重を受ける上肢へのストレスにより肩・頸部痛を生じ、ADLにおける問題や、QOL低下を生じることがある。筆者もその経験者であり、松葉杖歩行による、肩・頚部痛への問題を感じていた中、大腿骨頚部骨折後に荷重制限を必要とし筆者とよく似た症状を訴える患者を担当した。 本症例を通して、松葉杖歩行により二次的に生じる肩・頚部の痛みに関して検討したので文献的考察を含めて報告する。【症例紹介】 50歳代女性。H23.1.9交通事故により受傷、診断名は右大腿骨頚部骨折(H23.1.11骨接合術施行Twin hook +CCS)。術後6週間まで完全免荷期間であり、当院入院初期(H23.2.8)より移動手段は主に松葉杖歩行であった。 入院当初より頚部から右肩にかけて倦怠感を訴えており、肩甲帯アライメントは右肩甲骨が1.5横指下制。右肩甲挙筋に圧痛、頚部右回旋時に右頚部に運動時痛あり、右側への起き上がり時に痛みを訴えることがあった。 なお、ここで使用する情報に関してはヘルシンキ宣言に基づき、発表することに同意を得た。【考察】 市橋らは、松葉杖歩行による肩周囲の痛みに対しての胸鎖関節の関わりとその治療効果について研究を行っている。市橋らは松葉杖からかかる荷重より、胸鎖関節が荷重関節となり、関節機能異常を起こすことに着目しているが、胸鎖関節だけでのアプローチでは痛みが完全に消失しなかったことを報告している。 本症例の場合、頚部から右肩にかけての倦怠感を訴えている。これは、完全免荷での松葉杖歩行において、右側下肢の立脚相にあたる時期では、両松葉杖支持であっても右側上肢により強い荷重がかかることが予測される。この荷重に耐えるため、右側の小胸筋、広背筋、僧帽筋下部繊維といった肩甲骨下制筋群が過剰な筋収縮を引き起こし、二次的に右肩甲骨が1.5横指下制するというアライメント異常が生じたものと考えた。 肩甲挙筋の圧痛・頚部の運動時痛に関しては、上記の理由により、相対的に持続的な伸張ストレスと遠心性収縮を引き起こし、筋スパズムが生じたと考える。そのため、第1~4頚椎の横突起に起始をもつ肩甲挙筋のスパズムが、頚部右回旋時に頚椎関節面上の滑りを阻害し、運動時痛を引き起こしていたと考える。【考察に基づいたアプローチ】 本症例に対してのアプローチとして肩甲骨下制筋群のストレッチを指導したところ、頚部の運動時痛、肩甲挙筋の圧痛に徐々に改善がみられた。全荷重(術後9週)時期には肩甲骨のアライメントに左右差はなくなり、肩周囲の倦怠感・頚部運動時痛の訴えはなくなった。【結語】 本症例を通して、松葉杖歩行では歩行の安全性や安定性だけでなく、二次的に生じる肩・頚部の痛みについて全般的なアセスメント、アプローチ、メンテナンスを行っていく重要性を感じた。
著者
長谷川 和久 福山 厚子 伊東 志穂
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.319-323, 2013-03

生物は一度理化学的に傷つくと,修復に時間を要する。茨城県大宮町のガンマーフィールドにおける放射線による育種・品種改良のように,この線がプラスに効果を発揮すれば幸だが,マイナスでは問題となる。すなわち,福島原発事故では小出裕章氏(京都大2012)によるとヒロシマ型の原子爆弾100個相当分の放射性物質がすでに放出されたという。今後予想される被害は,全く不明と解説される。ちなみに,山陰。湯村温泉街に建てられている有名な吉永小百合さん演ずる夢千代(日記)さんの像は,昭和20年8月6日,広島で胎内被爆された永井左千子さんがモデルで,昭和50年代に建てられた。本人は胎内被爆の影響をずっと危惧して,生涯結婚されなかったという。放射性セシウムの半減期が30余年ということを考えれば,我々農業関係者も科学的事実とその持つ意味を深く考える必要がある。政策的に技術推進された結果の反省が問われている。ふと福井若狭,石川志賀および新潟柏崎の原発において同様の事故が万一発生すれば,「北陸の農業はどうなる?」との思が心をよぎる。生命と環境を大切にする地域の資源・風土を極力利用した安全な科学技術の発展が広く求められる。敬土愛農。
著者
宇田川 妙子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:24240508)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.411-436, 1993-03-30 (Released:2018-03-27)

フェミニスト人類学は,現在,多様な専門分化を遂げてきた反面,ある行き詰まりの状態にあるとも言われている。筆者は,その原因の一つとして,これまでそこで論じられてきた女性が,結局,社会的な意味での女性,即ち,ジェンダーとしての女性でしかなかったということに注目してみたい。性とは,ただ社会的な問題としてあるだけではない。男女の対面的な場,即ちセクシャリティの場で認識される男性および女性という問題もあり,それは社会的な場面での性差にも密接に係わっている。特にイタリアの文化社会における性の問題を考えるためには,この視点が必要となる。彼等は,性の本質を常に対面的な男女の関係が作り出す二元性として捉えている。つまり,彼等にとって性とは,基本的にセクシャリティなのである。それゆえ本稿では,イタリアにおけるこのような性のあり方を具体的に明らかにしてきながら,同時に,それを,フェミニスト人類学一般に対する新たな方向性を模索する試みとしても提示していく。