著者
土久 菜穂 山本 明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.321-326, 2013

本稿は、中世都市における山稜景観をケーススタディとして、フラクタル次元を援用した山稜景観の形態的特性の定量的な記述手法を提案し、その有用性を検証するものである。その結果、各都市の主要施設の立地特性に関する既知の諸事実について、山稜景観の形態的な側面から検証できた。さらに、主要施設を視点場とする山稜景観の形態的特性を、次の通り定量的に記述することができた。・平安京では、多くの稜線による複雑な遠景が一様にもたらされていたが、平坦な市街地中心部に立地する御所邸宅と、市街地縁辺部に立地する宗教施設からの山稜景観には差異があった。・中世平泉では、平安京的な遠景の山稜景観の土地に京文化が輸入されたことから、山を借景とする浄土空間が形成されていった。・谷戸地形を活かした中世鎌倉では、山稜を遠景として望むことが稀であり景観的な複雑さは乏しいが、幕府に庇護され山裾や谷戸周辺に立地する禅宗・新義律宗の寺院と、迫害され平地や海岸線周辺に立地する日蓮宗の寺院からの山稜景観には差異があった。
著者
沢 一馬 山口 敬太 久保田 善明 川崎 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.42-53, 2013
被引用文献数
1

近代以前の琵琶湖や内湖沿岸の水郷集落では,集落内に張り巡らされた水路が,田舟による荷物の運搬,生活用水,農業用水等に用いられ,長きにわたり生業の風景を形成してきた.本研究は水郷の面影を残す数少ない集落の一つである伊庭(東近江市)を対象に,文書や地図資料に基づき明治・大正期の水路網構造を復元し,明治以後の水路網の変遷(埋立,暗渠化,付替えなど)ならびに住民による各時代の水利用の実態について明らかにした.その結果,集落内に網目状に広がる水路が多面的な役割を有していたこと,水路自体の役割の変化が水路構造の変容と持続に密接に関わっていたことを明らかにした.
著者
新妻 実保子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

知能化空間における人と環境(場所やモノ)とのインタラクションを観測し,「人がある場所やモノをどのような目的で使用しているのか」を示す人に対する「場所やモノに対する意味づけ」を推定することにより,人の活動内容に応じた柔軟にサービス設計を実現しようとするものである.場所やモノの機能や意味づけを設計者が一意的に紐付けてしまうことは,実際にサービスを提供されるコンテキストと紐付け内容(サービス)との不一致を引き起こし,知能化空間にとって根本的な問題となる.本研究はこれを解決するものである.場所やモノヘの意味づけを推定するためには人の活動履歴を獲得する必要かおる.本研究では,"Spatial-Knowledge-Tag(SKT)"と名づけた仮想的なタグを用いて,実空間内の3次元座標と情報とを紐付け,人の活動履歴を実空間へ記述する「空間メモリ」を使用する.空間メモリシステムは,利用者が自らの手先や胴体の位置を用いて実空間における情報の蓄積と取り出しを実現するものであり,従来のコンピュータに比べて直感的かつ瞬時な情報の取り扱いが実現する.そのため,SKTは空間内に配置された利用者にとって活動を遂行するうえで必要な情報とみなすことができ,またその配置の構成は利用者の活動目的や情報整理のポリシーの現れであると考えることができる.すなわち,利用者によって主体的に作成されたSKTはその利用者の活動履歴そのものであるといえる,これより,利用者がある環境を使用する中で作成されたSKTを(事前知識を用いずに)分類すること,人の活動内容を表現する表現形式を検討する(パラメータを選定する)こと,分類されたSKTの構成と表現形式に基づいて活動内容を記述すること,活動内容による場所とモノの意味づけを推定(マッピング)することが課題となる.空間メモリを用いた活動内容の記述において,観測される活動は空間メモリを用いている場合のみであるというける問題点あつた.人の活動は,空間と人,人と物の動的な相互作用とみることができることから,物を観測対象として含めることによって,記述対象を広げ,かつ記述精度を向上させることにつながると考えられる.人とモノの動的な関係を記述するため,いつ(when),だれが(who),なにを(what),どこで(where),どのように(how)使用したか,という人とモノの物理的なインタラクションに着目し,モノ情報として記述するシステムを構築した.物理的インタラクションの発生を検出するため,人の手とモノに3軸加速度センサを有するアクティブ型RFIDタグを取り付けた.操作者を特定することにより,(when,who,what)が取得される.それぞれのモノの位置を計測することは困難であるため,人の手の位置を観測し,モノの操作者が特定されたときモノの位置として与える手法を提案した(where).そして,人の手には慣性センサを取りつけ,腕の加速度や姿勢を計測し,モノの使用動作とした,これをクラスタリングすることにより,主要な使用動作パタンを抽出する(how),という手順で4W1Hとしてのモノ情報の獲得を実現した.
著者
新妻 実保子
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

(1)角度比較による時系列データの分類位置座標に依存しない時系列データの分類について検討した。初期姿勢が類似度計算に影響を与えないよう,初期姿勢補正を考慮した類似度計算手法を提案し,人の歩行経路の分類,及び手の動作の分類に適用し,位置の近さではなく形状の類似度に基づく分類を行い,その有用性を示した。(2)地図による活動内容の記述とその分類環境地図,及び活動履歴を階層に分けて,選択的にデータを更新・利用できる仕組みを提案した。人,物の移動履歴として,移動度合いを移動頻度,及び移動速度に基づいて算出し,グリッド地図として表現する手法を提案した。(3)持続的な観測のための観測システムの実装RTミドルウェアによるシステムのコンポーネント化を行い,ロボティクス技術の埋め込まれた住宅実証環境へ統合・実装した。活動モデルの構築と活動内容の推定を行うためのプラットフォームを整えることができた。
著者
冨田 雅典 小林 純也 野村 崇治 松本 義久 内海 博司
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第54回大会
巻号頁・発行日
pp.43, 2011 (Released:2011-12-20)

線量率効果は、線量率が低くなると、総線量は同じでも、生物効果が低くなる現象であり、長い照射時間の間に亜致死損傷の回復が起こるためであると古くから考えられている。しかしながら、低線量率放射線照射下におけるDNA2重鎖切断(DSB)修復の分子機構は、いまだに十分解明されていない。高等真核生物では、DSBは非相同末端結合(NHEJ)と相同組換え(HR)により修復される。我々は、さまざまなDSB修復遺伝子欠損細胞を用いて、線量率効果におけるDSB修復機構の役割について検討を進めている。NHEJに関与するKU70、HRに関与するRAD54、およびKU70とRAD54をともに欠損したニワトリDT40細胞を用い、γ線連続照射に対する影響を解析した結果、低線量率域でもっとも高い感受性を示した細胞はKU70-/-細胞であった。この要因を広い線量率範囲で解析するために、京都大学放射線生物研究センターの低線量長期放射線照射装置を用いて重点領域研究を開始した。これまでの研究から、0.1 Gy/hのγ線照射下において、RAD54-/-、RAD54-/-KU70-/-細胞と比較して、KU70-/-細胞ではより顕著なG2 arrestが起こり、その後アポトーシスが生じることを明らかにした。今後、線量率を下げて変化を解析する予定である。 また、NHEJに関与するDNA-PKcsを欠損したヒト脳腫瘍細胞を用い、低線量率照射後の細胞生存率を解析した結果、照射開始後ある一定レベルまで低下した後は、照射を継続してもそれ以上変化しないことが明らかになった。この結果は、低線量率放射線の生体影響を考える場合、細胞のターンオーバーが重要な要因となることを示している。 低線量率放射線の組織への影響を考える場合、幹細胞への傷害の蓄積性が問題となる。特にdormantな幹細胞では、NHEJが重要な役割を担うと考えられ、NHEJを欠損したマウスの造血系幹細胞が加齢に伴い枯渇することも報告されている (Nijnik et al. 2007、他)。細胞での結果をもとに、低線量率放射線の生体組織影響におけるDNA修復機構の重要性について議論したい。
著者
石川 陽一郎 巳波 敏郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.277-279, 1960-02-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

アルカリ溶液中でのメチルエチルケトンとホルムアルデヒドの反応を動力学的に研究するため,メチルエチルケトンに対するホルムアルデヒドの第1段,ならびに第2段付加反応の速度定数をそれぞれ測定し,後者が前者よりも約4倍の大きさをもつことをあきらかにした。その結果反応生成物の中でもっとも重要なβ-メチル-γ-ケトブタノールを収量よく得るためにはホルムアルデヒドに対し, 大過剰のメチルエチルケトンを使用することによってジメチロール化合物の生成をおさえることが必要であることがわかった。

1 0 0 0 OA 鶯宿雑記

著者
[駒井乗邨] [編]
出版者
巻号頁・発行日
vol.巻二百七十九、巻二百八十,
著者
小林 武夫 石毛 美代子 一ノ瀬 篤司
出版者
THE JAPAN LARYNGOLOGICAL ASSOCIATION
雑誌
喉頭 (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.12-14, 2013-06-01 (Released:2013-09-27)
参考文献数
9

Spasmodic dysphonia (SD) is a focal dystonia that affects the larynx. Abductor SD (ABSD) is less common than adductor SD (ADSD). ABSD is typified by breathy breaks in connected speech.A male professional classic baritone singer, age 46, presented with gradually increasing breathy unphonated breaks in singing over the course of three years. He visited various institutions and was said to have incomplete elevation of the soft palate of unknown origin, myasthenia gravis, etc. His symptoms were remarkable in pronouncing vowels following unphonated consonants. He had been exposed to neither vocal abuse nor heavy singing performances. Our diagnosis was ABSD. An injection of Botulinum toxin (BT) into the posterior cricoarytenoid muscles was done via lateral cervical approach. His voice improved remarkably. His daily conversation became smooth; however, he could not regain his previous brilliant singing voice. He was obliged to discontinue his professional singing performances.
著者
俵 浩三
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.61-66, 1988-03-31
被引用文献数
3

北海道の本格的開拓が開始されたのは明治になってからのことである。以降ほぼ一世紀の間に多くの都市や村落が成立し,さまざまな土地利用が展開されてきた。北海道における都市公園と自然公園の成立にも,開拓政策が深くかかわっており、それは本州方面の公園成立事情ときわめて対照的なことが多い。本論では具体的事例を通して、北海道の公園の成立事情の特異性を明らかにしたい。
著者
稲葉 頌一 大戸 斉 柴田 洋一 坂本 久浩 高橋 孝喜 十字 猛夫 前田 義章
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血学会雑誌 (ISSN:05461448)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-13, 1994-01-25 (Released:2010-03-12)
参考文献数
9

Sixty-six patients who succeeded in storing a sufficient volume of autologous blood (mean±SD; 1097±452ml) using KL-3R3 solution contained in blood bags before elective surgery were included in this study, a five week phase 3 clinical trial of the whole blood preservative solution KL-3R3, commonly known as CPDA-1 (citrate phosphate dextrose adenine) solution. The mean time required for sufficient storage of autologous blood was 23.4±6.9 days, with 40 of the 66 (60.6%) requiring more than 21 days, a period of time that would have resulted in time expiration had we used the citrate-phosphate-dextrose (CPD) or acid-citrate-dextrose (ACD) solution bags which are presently commercially available. Sixty of the 66 patients (90.9%) completed their operations using only autologous blood units. After eliminating three patients who were administered recombinant erythropoietin, the efficacy of KL-3R3 was evaluated as effective in 61 (96.8%) of the 63 patients evaluated (markedly effective 57 (86.4%) and effective 4 (6.1%). Furthermore, in 48 of 56 patients (85.7%), in whom we were able to measure the autologous blood recovery rate after 24 hours of transfusion were estimated effective (markedly effective 29 (51.8%) and effective 19 (33.9%)). In sixty-three patients who had hematological and biochemical laboratory data, vital signs, and urinary data recorded both before and after receiving autologous blood units. RBC counts and hemoglobin levels and platelets counts decreased, and WBC counts increased after returning autologous blood at operation, changes observed commonly under surgical stress. Hemolysis markers such as GPT, indirect bilirubin, and LDH were slightly increased the day after operation, but returned to normal the second day after operation. Other data moved within normal limits expect urine occult blood. Hematuria was observed immediately after transfusion of autologous blood units, but this finding was observed transiently (the first day after transfusion 45.7% and the second day 13.3%). The safety was evaluated in sixty-five patients' blood bags by sight observations and bacterial culture tests, and no abnormal findings or bacterial propagation were detected. One patient was excluded from the safety evaluation because he was operated on within a week of initial predeposition. Two-hundred-thirty-eight KL-3R3 preserved blood bags were transfused in the 66 patients, in one (1/238, 0.4%) which had be discarded because of a large clot formation. In sixty-one patients, both the efficacy and the safety tests of KL-3R3 were rated for usefulness, with all 61 confirmed useful. The laboratory data of the 26 patients whose autologous blood were used within 21 days and the 40 patients whose autologous blood contained at least one unit that exceeded 21 days preservation was compared, with no significant differences observed.Our results confirmed that, in clinical trial of KL-3R3 preserved autologous blood units, all the criteria of effectiveness, safety and usefulness were satisfied.
著者
星野 浩司 青木 幹太 井上 友子 佐藤 佳代 佐藤 慈 進藤 環
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第65回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.298-299, 2018 (Released:2018-06-21)

本研究では、福岡市南区の商店街におけるブランディングを目的とした活性化事業として、本学の芸術学部と福岡市、長住大通り商店街(福岡市南区)の産官学が協働で取り組む、産官学連携型のキャリア教育・専門教育を目的とした人材育成教育プログラムの実践を行った。小学生による長住大通り商店街の店舗コマーシャルの制作をワークショップ形式で実施する取り組みや、長住地区についてゲーム形式で学習するアーケード型ゲームコンテンツの開発を行っている。これらの取り組みを通して高齢化や人口流出の問題、生活様式の変化による商店街衰退の現状について直に触れることで、地域が抱える課題解決に向けた打開策の必要性という切迫した状況を理解する機会を得ることが出来た。また、授業で学んだ知識や技術の応用として学外での本取組みの中で、問題の解決や渉外交渉を通し、主体性を持った行動力とコミュニケーション能力の育成を図ることが出来たと考える。

1 0 0 0 OA 國史

著者
土田泰藏 編
出版者
土田泰藏
巻号頁・発行日
vol.[21], 1800
著者
草加 浩平
出版者
Japanese Society for Engineering Education
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.4_99-4_104, 2011 (Released:2011-08-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

The University of Tokyo established the team “The University of Tokyo Formula Factory” for “Student Formula SAE Competition of JAPAN” that started in 2003 organized by Japan Society of Automotive Engineers’ , and it has participated from the 1st competition. “Easy Drive” is assumed to be the main concept under the basic philosophy “Aim at the victory by a conception different from the others” . The team adopted the power unit with Electronically controlled Continuously Variable Transmission (E-CVT) for the big scooter that no one uses, installing many systems of the world first, and got the 1st prize in the 7th event in 2009. How to advance the project and the effect of the personnel training by making them with new technological developments are verified.