著者
金澤 治 白根 聖子 早川 さゆり
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.424-429, 2000-09-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
6

Shuddering attacks (SA, 身震い発作) は乳幼児期に発症する稀な良性疾患といわれ, てんかんとの鑑別を要する.発作は意識消失のない何秒間かの身震いで日単位で反復する.Essential tremor (ET, 本態性振戦) と同様の発現機序といわれ脳の未熟性による表現様式の違いとされるが, 報告は稀で本邦では皆無である.SAを呈する生後8~14カ月の乳幼児4例で, ビデオないしビデオ・脳波同時記録で発作時をとらえ病態を検討した.1例でSAに同期した筋電図より, ETの周波数とほぼ一致した.全例で発作減少ないし消失をみたが, MRI上脳の未熟性, トルコ鞍扁平, てんかんの家族歴, のある例もあった.従来SAは良性疾患で検索不要といわれるが, 神経系発達に関連した何らかの問題が潜む可能性がある.
著者
砂原 庸介
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.9-24, 2020 (Released:2023-11-16)
参考文献数
89

本稿では,政府間関係の議論として,地方政府間関係に焦点を当てる。欧米で蓄積されてきた地方政府間の連携についての先行研究を参考にしながら,「なぜ地方政府が他の地方政府と連携を行うか」について,地方政府間の集合行為に注目した説明を行う。次に,日本において地方政府内の対立・地方政府間の競合・国と地方の関係という三つの点について規定する政治制度から,日本における地方政府間関係の特徴について整理する。それを踏まえて,集合行為に注目した説明が,地方政府間の競争を基調として,国が必要に応じて合併を促すという,これまでの実証的な分析が示してきた特徴について整合的に説明できることを示す。さらに地方分権改革以降国と地方の関係が変わる中で,これまでの政治制度の特徴を考慮すれば,今後は都市の中心をめぐる競争と近年の住民投票による民意の表出が制度の議論にとって重要な論点になることを論じる。
著者
善教 将大 木村 高宏
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.86-93, 2021 (Released:2023-11-16)
参考文献数
13

本稿では,注意喚起を目的とする警告メッセージが,サーベイ実験における読み飛ばし行為の抑止や実験結果に与える影響を明らかにする。近年,日本の政治学ではサーベイ実験を用いた研究が増加傾向にあるが,実験結果の妥当性を向上させる方法論については,研究が十分に蓄積されていない。本稿は,図書館の民間委託への選好を推定するサーベイ実験を題材に,先行研究で有効性が示された複数の警告メッセージを取り上げ,これらがサーベイ実験の結果などに与える効果を分析する。実験の結果,警告メッセージはサーベイ実験の処置効果に影響を与えるとはいえないことが明らかとなった。この知見は,警告メッセージにより実験結果の妥当性を向上させるには,メッセージの内容やそれを発するタイミングに注意すべきであること,さらには適切な実験設計が妥当な結果を得る上で何より重要であることを示すものである。
著者
福元 健太郎 菊田 恭輔
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.47-57, 2021 (Released:2023-11-16)
参考文献数
31

投票所の閉鎖時刻は原則として午後8時だが,午後4時までなら繰り上げることができる。本稿は,2009年から2013年までの衆参の選挙について,全市区町村のデータを作成し,差の差分析により,繰り上げが投票率だけでなく自民党や諸派の絶対得票率とも逆相関することを示す。さらに,前回選挙期日の降水量を操作変数として利用することにより,前回選挙の棄権率が今回選挙の繰り上げを抑制する因果的効果があることを実証する。
著者
Yongjin Ma Yuanliang Qiao Ping Lu Xinfu Zhang Xiaoshu Chao Qijiu Shi Pin Zhao
出版者
Resources Economics Research Board
雑誌
Advances in Resources Research (ISSN:2436178X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.32-50, 2023-04-18 (Released:2023-04-18)
参考文献数
82

Shale oil is a kind of oil resource that occurs in shale strata in the form of adsorption and free phase. As an essential strategic replacement resource, shale oil has become the focus of global attention. Shale oil reservoirs’ formation and distribution characteristics are quite different from those of conventional reservoirs. The occurrence mechanism of shale oil reservoirs (including hydrocarbon generation, hydrocarbon expulsion, and hydrocarbon storage) restricts the enrichment of shale oil. Furthermore, the compactness of shale oil reservoir limits the recoverability (mobility and momentum) of shale oil, which is also the bottleneck factor restricting the effectiveness of shale oil exploration and development. The hydrocarbon generation, expulsion, storage, and movable hydrocarbon of shale oil are the key scientific problems in the research of shale oil. Understanding these key scientific problems and establishing an effective evaluation model is the key to improving the effectiveness of shale oil exploration and development. The shale oil resources in Jiyang Depression are of large scale and have the value of a commercial product, but the development effect is not ideal. Based on the research achievements of Jiyang Depression in recent years, this paper discusses the related research progress and the current situation around (1) hydrocarbon generation characteristics, (2) hydrocarbon expulsion characteristics, (3) hydrocarbon storage characteristics, and (4) movable hydrocarbon characteristics. This paper is expected to be beneficial to promote the substantial progress of shale oil exploration and development in Jiyang Depression.
著者
村瀬 武吉
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.455-465, 1937-05-10 (Released:2011-06-17)
参考文献数
9

自殺ヲ目的トセル急性中毒患者ニ就イテ, 其ノ使用セシ藥剤ノ種類・症状・服用量・收容迄ノ經過時間.轉歸・性・年齢等ヲ昭和10年及ビ11年ノ2箇年ニ當内科ニ於テ收容加療セシ35例ニ就イテ探究シ, 併セテ同ジク前記2箇年間ニ愛知縣下ニ發生セル該中毒患者822例ニ就キ, 統計的觀察ヲ行ヒ, 次ノ結果ヲ得タリ.尚本文中1種類ノ藥劑使用者ヲ單獨型中毒者トシ, 2種以上ノ藥剤使用者ヲ混合型中毒者トシテ區別シタリ.當教室ニテハ單獨型ハ29例, 混合型ハ6例ヲ數へ, 愛知縣下ニ於テハ單獨型ハ全中毒患者822例中734例, 混合型ハ85例ヲ數へ, 何レナリヤ不明ノモノ3例ヲ數フ.1. 單獨型中最モ多數ヲ占ムルハ催眠剤中毒ニシテ, 當教室ノモノハ其ノ單獨型ノ55.2%チ占メ, 本縣下ノモノハ, 其ノ單獨型ノ42.4%ノ多數ヲ占ム.死亡率ハ當教室18.8%本縣下18.4%ナリ.猫「イラズ」中毒ハ催眠劑ニ次ギ當教室ニテハ其ノ單獨型全體ノ20.7%ヲ占メ, 本縣下ニテハ其ノ單獨型全體ノ29.3%ヲ占メ, 死亡率ハ當教室66.7%, 本縣下60.5%ノ如キ高率ヲ示ス.猫「イラズ」ニ次ギ白髪染中毒ハ本縣下ニ於テハ, 其ノ單獨型全體ノ6.0%チ占メ, 死亡率ハ25.0%ナリ.之ニ次ギ昇汞中毒ハ其ノ單獨型全體ノ4.24%ヲ占メ, 死亡率75.0%ヲ占ム.青酸加里之ニ次ギ, 其ノ單獨型全體ノ4.2%ヲ占メ, 死亡率80.6%ヲ示ス.重「クローム」酸加里ハ其ノ單獨型ノ1.6%ヲ占メ, 死亡率ハ41.7%ヲ示ス.監酸ハ其ノ單獨型全體ノ1.4%ヲ占メ, 死亡率ハ40%ヲ示ス.其ノ他ノ藥剤中毒數十種アルモ表ノミニテ示セリ.2. 混合型中催眠劑ノミノモノ多數ニテ本縣下ニ於ケルモノハ混合型総數ノ約半數チ占メ, 死亡率ハ4.8%ヲ示ス.此ノ中「カルモチン」・「アダリン」混合服用者多數ヲ占ム.次ニ猫「イラズ」ヲ共ニスルモノ混合型全體ノ31.8%テ占メ, 死亡率ハ48.1%ナリ.此ノ中猫「イラズ」・「カルモチン」混合服用者多數ヲ占ム.3. 男女性別ニ於テハ本縣下ニ於ケル822例中男子56.3%, 女子43.7%ナリ.4. 本縣下ニ於テハ全中毒患者中30歳以下ノモノ75.8%ヲ占ム.5. 本縣下ノ中毒患者ヲ季節的ニ觀察スルニ3, 4, 5月最モ多ク, 6, 7, 8月之ニ次ギ, 9, 10, 11月及ビ12, 1, 2月ハ共ニ稍ゝ少シ.6. 地域的ニ觀察スルニ名古屋市ノ全中毒患者ハ愛知縣下全體ノ57.7%ヲ占ム.7. 本縣下ニ於ケル統計中全單獨型中毒者ノ死亡率ハ34.7%ニシテ, 全混合型中毒者ノ死亡率ハ22.4%, 而シテ單獨型・混合型テ合シタル中毒例ノ死亡率ハ33.7%ナリ.
著者
熊岡 正悟 髙橋 理恵
出版者
独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
雑誌
国立のぞみの園紀要 (ISSN:24350494)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.27-31, 2023 (Released:2023-11-21)
参考文献数
7

強度行動障害支援者養成に係る研修は,2013年度より「強度行動障害支援者養成研修」が実施されているが,強度行動障害研修修了者に対するさらなる専門性の向上のための研修や,支援現場での実践を通じた人材育成を進めることが求められている.そこで,2014年度より国立のぞみの園で実施している全国の知的障害者関係施設職員を対象とした支援者養成現任研修の申込書および研修受講後アンケートの調査分析から,「実地研修」について,①全国各地に受講ニーズがあること,②「福祉」以外に「教育」や「医療」にも受講ニーズがあること,が明らかになり,「実地研修」は,強度行動障害研修修了者に対するさらなる専門性の向上の方法になり得ると考えられた.
著者
澤野 雅彦
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第84集 経営学の学問性を問う (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.22-29, 2014 (Released:2019-09-27)

かつて経営学は,メーカーを中心に研究を展開してきたが,近年,産業構造の転換に対応して研究対象を次々多様化し,さまざまな議論を行うようになってきている。もともと,経済学のようにディシプリンが明確な学問ではないだけに,その分,学問性が怪しくなってきているのも確かである。本研究では,経営学成立の経緯を考えることで,経営学の性質を検討して,「コンビナートモデル」と「自動車モデル」の2つの経営学を抽出したが,いずれも,直傭制が成立する20世紀型システムに適合的であることが明らかである。ところが,21世紀に入る頃から,産業構造の転換により,派遣・請負つまり,間接雇用が増えはじめ,経営学が成立する基盤そのものが揺らいでいる。そのため,脱構築なくしては経営学の学問性は疑わしいものとなるであろう。
著者
小正 葉子 溝口 亨 久保田 仁志 竹腰 英夫
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.95-101, 2004 (Released:2004-04-27)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

エゾウコギ根抽出物(EUE)とエゴマ種子抽出物(OSE)の単独及び併用による抗アレルギー作用を検討した結果,次の成績を得た.1)Compound 48/80によるヒスタミン遊離試験では,単独及び併用で対照群と比較して有意なヒスタミン遊離抑制がみられ(p<0.01),EUEとOSEの濃度比5:1では,それぞれ単独よりも強い遊離抑制効果が得られた.2)卵白アルブミン由来のマウス抗血清に対するPCA試験では,EUE単独及び併用群の14日間連続経口投与により用量に依存した抑制がみられ,単独及び併用で対照群と比較して有意な色素漏出抑制がみられた(p<0.01).併用群の効果はEUE単独程度であったが,明らかにDSCG(インタール®吸入液)群よりも高かった.3)EUEはヒスタミンとセロトニンの皮内注射による色素漏出試験において対照群と比較して有意な抑制はみられなかったものの,用量に依存した抑制傾向がみられた.みられた.
著者
深井 宣男
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1_2, pp.50-56, 2010 (Released:2012-09-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

カムチャツカで実施された日露共同標識調査で捕獲されたアカマシコについて,亜種アカマシコの換羽様式と,雌型個体の羽色における二型について論じた.ヨーロッパの基亜種では,成鳥は繁殖地では換羽せず,越冬地で完全換羽をおこなう.しかし,カムチャツカで繁殖する亜種アカマシコの成鳥には,基亜種同様に繁殖地では換羽せずに渡りを開始する個体と,繁殖地で完全換羽する個体がいることがわかった.また,雌と同じ羽色の成鳥と幼鳥には,風切や尾羽などの羽縁の色に,オリーブ色と赤色の二型があることがわかった.このうち,赤色型の個体は,雄・幼鳥または発色の悪い雄・成鳥の可能性がありうる.
著者
谷口 圭祐 望月 吉勝
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.689-696, 2019-10-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
20

目的:救急現場活動において救急隊員が受ける急性ストレスとその作用を修飾すると思われる因子について推論する。方法:北海道内の消防本部に勤務する救急隊員を対象として,否定的な評価の知覚,自己効力感,救急現場活動中の情動的反応,救急現場活動での失敗経験について調査した。結果:「救急現場活動中の情動的反応」を目的変数とした重回帰分析では,ストレス負荷が高い救急現場の場合に自己効力感,現場や訓練の経験,経験年数が有意な負の標準偏回帰係数を示した。結論:自己効力感の高い救急隊員は,ストレス負荷が高い救急現場において,急性ストレスによる影響を受けにくいことが示唆された。職場において職員相互に肯定的な関係を構築し,自己効力感を高めるような教育体制を確立することが,急性ストレス下における救急現場活動を改善するために重要であると考えられた。
著者
時松 一成
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-6, 2020-01-25 (Released:2020-07-22)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2

カンジダ血症は真菌感染症のなかで最も高い頻度で発生し,死亡率も高く,適正な診断・治療が必要な疾患である.カンジダ症に対するバンドルとして,血液培養2セット採取,疑い例でのβ-D-グルカン測定,24時間以内の中心静脈カテーテル抜去,適切な初期治療の開始,眼病変の有無の確認,症状の改善と血液培養の陰性化を確認した後2週間の抗真菌薬投与,などが提案され,これらを遵守することにより良好な成績が得られた事が報告されている.実践されるべき抗真菌薬適正使用支援プログラムとして,カンジダ血症では少なくとも発症早期と1週間後に眼科で眼病変の有無の診察,無菌検体から酵母様真菌が検出された場合の治療開始,病態が安定した治療が必要な長期例では経口薬へのstep-down治療があげられる.本稿では,カンジダ症のバンドルやガイドラインで述べられている基本的事項の意義と解説,多職種の視点からみたカンジダ血症マネージメントについて述べる.
著者
志水 英明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.957-964, 2022-05-10 (Released:2023-05-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

・血液ガスを測定しなくてもNa―Clで酸塩基平衡異常が推測できる. ・Na―Cl<36 代謝性アシドーシス,Na―Cl>36 代謝性アルカローシスを疑う. ・Na―Cl≒36でも酸塩基平衡異常がある. ・重症疾患(乳酸アシドーシス,ケトアシドーシス,呼吸不全)では血液ガス測定を行う.