著者
猪股 伸晃 坂本 雅昭 山路 雄彦 中澤 理恵 宮澤 一 金城 拓人 中川 和昌 富澤 渉
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.C0313-C0313, 2006

【はじめに】<BR>我々は,群馬県高校野球連盟(以下:県高野連)からの依頼により,平成14年度の第84回全国高校野球選手権群馬県大会(以下:大会)からメディカルサポート(以下:サポート)を開始し4大会を経験した.本研究の目的は,平成17年度に開催された第87回大会サポート結果を整理し,現サポート体制についての課題を明らかにすることである.<BR>【対象及び方法】<BR> 対象は第87回大会の3回戦以降に進出したチームであった.サポートを行うため,群馬県スポーツリハビリテーション研究会を通じ,本県内の理学療法士(以下:PT)にボランティア参加を募った.サポートの内容は,3回戦以降の試合前および試合中のアクシデントに対するテーピング・応急処置,4回戦以降の投手及び野手別のクーリングダウン(軽運動・ストレッチング)であった.投手の連投を考慮し,投球数,肩および肘関節の痛みの有無,疲労感等に関するチェック表を使用し状態を把握した.対応方法については内容を統一するため,事前に講習会を行ったが,加えて新規参加者に対してはアスレティックリハビリテーションの基礎に関する講習会への参加を促した.準決勝・決勝戦を除き試合会場は2球場であり,各球場に投手担当2名,野手担当4名以上が常駐するようにスタッフを配置した.また,大会終了後にPTスタッフによる反省会を実施し,現サポート体制の問題点について議論した.<BR>【結果及び考察】<BR>クーリングダウンは投手に対しては延べ29校41名に,野手に対しては延べ28校に実施した.投手の中では下肢の柔軟性が低下している選手が多く認められ,日頃のトレーニングあるいは大会中のストレッチングを含めたコンディショニングの重要性が示唆された.また,肩痛や肘痛は各々10%程度に認められた.応急処置対応は延べ54件(32名;選手14名,審判1名,観戦者17名)であり,デッドボール等による打撲への対応の他に,応援席観戦者の熱中症に対するクーリングや安静指導が多かった(14件).サポートに参加したスタッフは延べ74名(実数57名)であり,投手担当は15名,野手担当は41名であった.前年度までのサポート経験者が32名,新規参加者が25名であった.反省会ではPTの質的な部分,すなわち技術だけでなく現場での態度やサポート活動に対する姿勢に関して,スタッフ間に差があることについての問題提起がなされ,単に知識・技術レベルを向上するだけでなく,意識の均一化も重要であることがわかった.また,来年度からは1回戦からのサポートが決定されており,より効率的な新規参加者の育成システムの確立が必要と考えられた.<BR><BR>
著者
石黒 立人
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.149, pp.335-348, 2009-03

大規模集落には三つの類型があり,中期Ⅰ~中期Ⅲにかけて集住複合型,中期Ⅳに集住単純型,後期に分散複合型が現れる。集住複合型は自然成長的にではなく,多数の自立的な単位が集合して,当初から大規模な集落として成立した。それは"諸生産"を可能にするためであり,朝日遺跡では生業・手工業生産も集約化されて構成単位の多数性も大小の区画により整序された。自立的な単位が占地する小区画が大区画によってまとまる重層的な構成は墓域のまとまりと調和しており,大形方形周溝墓を核とする規模格差による構造化は高い統合度を現わしている。朝日遺跡が10km圏を超えてさまざまな影響を与えた背景こそ,多種多様な系譜をもつ諸要素を統合し融合させたからであり,それも"諸生産"の一部であった。集住単純型は人口動態の大規模変動に対応したものである。集住複合型の解体は凹線紋系土器の波及に示される《外圧》によって引き起こされたのであり,諸集団の通過や再結集,再配置への通過点が集住単純型であった。移動の継起点ではあったが,"生と死"が結び合う集落としての自己完結性に乏しいために大形掘立柱建物を軸とする象徴空間を必要とした。分散複合型は,典型的には環濠集落群として,あるいは環濠集落と非環濠集落からなる1km圏程度のまとまりとして構成される自立的な集落の結合体であり,単体としての大規模集落ではない。中期Ⅳ以降の集団再編成の中で,集落間分業の進展と集団間の序列化の中核になった。以上の経緯をたどって推移する大規模集落とは,離合集散を続ける集団のその時々の固有の条件に対応した現れであった。There are three types of large-scale Yayoi settlements: 1) compound-type settlements that existed from Middle I through Middle III; 2) the simple clusters of dwellings of Middle IV; and 3) scattered compound-type settlements in Late Yayoi.Compound-type settlements did not develop naturally, but were large settlements from the outset that were formed by the coming together of many independent units. This was to enable "various production." At the Asahi Site, the many units that were production collectives producing daily necessities and handcrafts were also organized in blocks of varying sizes. Large blocks with a stratified structure formed by bringing together independent units occupying small blocks are consistent with the organization of burial precincts. Structuring using differences in scale centered on large rectangular tomb mounds surrounded by a ditch is a manifestation of strong integration. It is precisely due to the various influences on the Asahi Site covering more than 10 kilometers that elements with a wide variety of genealogies were integrated, and this too was part of its "various production."Simple clusters of dwellings came about in response to massive changes in population dynamics. The demise of compound-type settlements was brought about by "outside pressure" as indicated by the spread of combed-pattern pottery, and these simple clusters of dwellings were a point of transition for the passage, regrouping and relocation of various groups. Although they were sites of successive migration, because they were not self-contained settlements where "life and death" took place, they required symbolic spaces centered on buildings with large earthfast posts.Scattered compound-type settlements were typically moated settlements or a combination of independent settlements made up of a group of moated and non-moated settlements covering an area of around one kilometer. On their own they were not large settlements. When groups were being restructured after Middle IV, they formed the nucleus of advances in the division of labor between settlements and the creation of a hierarchy among groups.Large settlements, which changed in the ways described above, responded to the intermittent and inherent conditions of groups which continued to assemble and disperse.
著者
新澤 祥惠 川村 昭子 中村 喜代美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.226, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】石川県におけるおやつの特徴を検討した。【方法】平成25~27年に実施した「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の聞き書き調査(穴水町、金沢市、野々市町、白山市、小松市、白峰村)及び文献等により検討した。【結果】1)石川県全域で出現するものは「かき餅(欠餅とも書く)」がある。1月下旬に寒の餅をつき、赤、青の色をつけたり、黒豆、切り昆布、胡麻など混ぜてトボ型に入れ、薄く切ったものを縄で結んで屋内で乾燥するものである。これを1年中焼いて食したが、細かく切って煎り、砂糖や黒砂糖をまぶした「はぜ」としても利用した。「かき餅」は農山村では自家製であるが、都市部では菓子屋で搗いたもちを切ってもらい、自宅で干した。 2)「かき餅」以外にも餅類は多く、正月の終わりには、お鏡をおろして「善哉」とし、春と秋の彼岸、報恩講にはご飯を半殺し(半分だけつぶす)にした「おはぎ」を作った。また、春にはよもぎ団子、初夏になるとササゲを塩味にゆでてもちにまぶした「ささげ餅」が、また、笹のあるところでは笹の葉に包んだ笹餅が作られた。この他、春や秋に訪れるパクーン業者(パクーンとは米を煎り砂糖をまぶしたもの)に煎り米を作ってもらった。 3)夏は、スイカ、まくわ瓜、みの瓜を、秋は柿、ぐみ、栗、イチジクなどの果実がよく食べられた。渋柿は干してさわし柿とした。 4)以上の他に、大麦粉に砂糖を入れて水で掻いた「おちらし」、さつまいもを蒸して細く切り乾燥させた「干しいも」、さつまいもやじゃが芋(砂糖を加える)をつぶした「茶きん絞り」やテングサから作ったところてん、ザラメから作ったカラメル焼きなどが出現した。 5)白峰村では炒り豆や豆板、びやゆり・じゃが芋のデンプンに砂糖を入れ湯でかいた葛湯、かまし粉を番茶で掻いて砂糖を入れたおちらしや、栃の実の粉で作ったとち餅などこの地域独特のものがみられた。

1 0 0 0 OA 御書附留帳

出版者
巻号頁・発行日
vol.第23冊(天明8-天明9),
著者
齋木 千尋 伊藤 絵梨子 田髙 悦子 有本 梓 大河内 彩子 白谷 佳恵 臺 有桂
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.56-64, 2015

目的:本研究では,訪問看護師のとらえる臨死期にある在宅終末期がん療養者の家族介護者の体験と支援を明らかにすることを目的とした.方法:対象は,関東圏A市内に所在する2か所の訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師である.管理者より熟練訪問看護師として推薦され,かつ在宅終末期がん療養者と家族介護者に対する支援の実務経験が3年以上,おおむね10事例を有する者5人である.臨死期にある在宅終末期がん療養者の家族介護者の体験と支援について半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した.結果:臨死期の家族介護者の体験について分析した結果,【在宅での看取りの決意とジレンマ】【家族の死の接近に対する知覚と混乱】【家族間の意思や感情の衝突と再結集】【家族の最期の瞬間の立ち会いと看取り】【家族の死の体験の振り返りと意味づけ】の5つのカテゴリーが抽出された.また支援については【臨死に揺れ動く家族の繊細な思いに対する見守りと対処】【在宅での看取りに必要な家族の資源力の引き出し】【看取りに求められる家族の心身の健康と日常生活の保障】の3つのカテゴリーが抽出された.考察:臨死期における在宅終末期がん療養者の家族介護者への支援においては,臨死期の家族が看取りの過程におけるさまざまな体験を乗り越えるとともに,家族がその後の人生も主体的に生きていけるよう,成長のプロセスを支えることが重要である.
著者
中川 尚史 後藤 俊二 清野 紘典 森光 由樹 和 秀雄 大沢 秀行 川本 芳 室山 泰之 岡野 美佐夫 奥村 忠誠 吉田 敦久 横山 典子 鳥居 春己 前川 慎吾 他和歌山タイワンザルワーキンググループ メンバー
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.21, pp.22, 2005

本発表では,和歌山市周辺タイワンザル交雑群の第5回個体数調査の際に試みた無人ビデオ撮影による群れの個体数カウントの成功例について報告する。<br> カウントの対象となった沖野々2群は,オトナ雄1頭,オトナ雌2頭に発信器が装着され群れの追跡が可能であった。またこれまでの調査からこの群れは,小池峠のやや東よりの車道を南北に横切ることが分かっていた。<br> 今回の調査3日目の2004年9月22日にも,一部の個体が道を横切るのを確認できた。しかし,カウントの体制を整えると道のすぐ脇まで来ていてもなかなか渡らない個体が大勢おり,フルカウントは叶わなかった。この警戒性の高まりは,2003年3月から始まった大量捕獲によるものと考えられる。翌23日も夕刻になって群れが同じ場所に接近しつつあったのでカウントの体制をとり,最後は道の北側から群れを追い落として強制的に道を渡らせようと試みたが,失敗に終わった。<br> そこで,24日には無人ビデオ撮影によるカウントを試みることにした。無人といってもテープの巻き戻しやバッテリー交換をせねばならない。また,群れが道を横切る場所はほぼ決まっているとはいえ,群れの動きに合わせてある程度のカメラ設置場所の移動は必要であった。そして,最終的に同日16時から35分間に渡って27頭の個体が道を横切る様子が撮影できた。映像からもサルの警戒性が非常に高いことがうかがわれた。<br> こうした成功例から,無人ビデオ撮影は,目視によるカウントが困難なほど警戒性の高い群れの個体数を数えるための有効な手段となりうることが分かる。ただし,比較的見通しのよい特定の場所を頻繁に群れが通過することがわかっており,かつテレメーター等を利用して群れ位置のモニタリングができる,という条件が備わっていることがその成功率を高める必要条件である。
著者
木村 宗裕 大城 英裕 末田 直道 植田 清一 藤木 穣率
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.123, pp.83-90, 2006-11-22
参考文献数
8

オーディションインタフェースを有した画像処理システムを提案する.候補画像提示,ユーザの候補画像選択を繰り返すオーディションを行うことにより,画像処理に関する知識や経験のないユーザでも目的の画像処理結果を得る枠組みである,まず,システムはランダムに作成した画像処理パラメータ値(候補点)からユーザに対し複数の候補画像を生成する.ユーザは,最も良いと感じる画像を一つ選択する.システムはユーザの選択した候補画像ならびに選択しなかった候補画像からユーザの望む候補点を推定し,新たな候補画像の提示を行う.新たな候補点は,過去に提示した候補点と新たな候補点の距離を用いて,パラメータ空間をボロノイ分割したことと同等の処理を行い,ユーザが選択した候補点が存在するボロノイ分割領域内に,高速にかつランダムに獲得する.実際のユーザを模した仮想ユーザを用いたシミュレーション実験では,有意性検定が可能なユーザ数ならびに回数を擬似的に確保し,システムの評価を行った.We propose an interactive image processing system that is useful to user who don't have knowledge about image processing. In this system, several processed images are shown to user. The user selects an favorite image from the images. In this paper, An pseudo Voronoi tessellation is applied to determine parameters of new candidate images. We evaluate our proposal system by simulation experiment using virtual user models that are based on user actions. We discuss the effectiveness of our method with results of simulation experiment.
著者
吉澤 利弘
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.407-420, 2016-04-01

「治せる認知症」の原因としてビタミン欠乏は頻度は稀ながら重要な課題である。とりわけ高齢者の認知症診療ではビタミンB12欠乏が原因と考えられる症例に遭遇する頻度が高い。一方,葉酸はビタミンB12と代謝経路上密接な関係を有し,その欠乏とビタミンB12欠乏の間には共通点も多い。したがって本論では,ビタミンB12欠乏と葉酸欠乏に焦点を絞り,これらの欠乏による認知症を診療するうえで必要な情報を概説する。