著者
平野 智紀 三宅 正樹
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.365-376, 2015-03-20 (Released:2017-06-12)

本研究は,対話型鑑賞で観察される鑑賞者の成長という現象と,それがどのようにして促されるのかを,ヴィゴツキー以降の学習理論,具体的には正統的周辺参加理論(レイヴとウェンガー)と認知的徒弟制の理論(コリンズ)に基づいて明らかにした。鑑賞場面で生起する参加者の全発話をテキスト化し,先行研究をもとに学習支援に関する発話カテゴリを設定して定性的に分析した結果,対話型鑑賞場面ではファシリテーターの学習支援が徐々に鑑賞者に移譲され,さらに鑑賞者同士でお互いに学習支援を"わかちもつ"ことで鑑賞者が成長する現象が確かめられた。さらに対話型鑑賞場面では個人の美的能力の発達よりも"場"としての共同的な発達が促されている様子も明らかになった。
著者
矢野 正
出版者
大阪教育大学実践学校教育研究講座
雑誌
実践学校教育研究 (ISSN:13439758)
巻号頁・発行日
no.8, pp.69-82, 2006

小学校高学年児童352名を対象として、夏休みの過ごし方の違いによる生きる力へ及ぼす効果を測定した。測定にあたっては「こどもIKR(生きる力)評定用紙」を用い、子どもたちの夏休みの過ごし方を、どちらかといえば外で遊ぶことが多かった(戸外遊び群)、屋内での勉強が多かった(室内勉強群)という二群にわけて調査を行った。その結果、夏休みの過ごし方は戸外遊び群と室内勉強群は約半々に分かれた。そして、両群とも、夏休みの間に子どもたちの「生きる力」は向上し、特に「身体的能力」の向上が明らかとなった。しかしながら、「生きる力」を構成する「社会的心理的能力」には戸外遊び群が、「徳育的能力」には「室内勉強群」にそれぞれの向上がみられたものの、意味のある差とまではいえなかった。よって、どのような夏休みの過ごし方が児童の活きる力の向上に効果的なのかということについては、今後の課題である。Measuring the effect of how the summer holiday was spent on the IKIRU CHIKARA for 352 upper grade elementary school children. The IKIRU CHIKARA evaluation paper for children was used for the measurement. The children's ways of spending the summer holidays were divided into two groups : "playing outside group", children who played outside more, and "studying inside group", children who studied inside more. As a result, playing outside group and studying inside group on how spending summer holiday were almost halved. It became clear that in both groups, children improved their IKIRU CHIKARA, especially physical ability, during the summer holiday. The playing outside group and the studying inside group improved their social-psychological ability that composes IKIRU CHIKARA and their moral education ability, respectively. However, there was no meaningful difference. Future challenges are to investigate how children can spend the summer holiday to effectively improve their IKIRU CHIKARA.
著者
小野 三嗣 宮崎 義憲 渡辺 雅之 原 英喜 湊 久美子
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.114-121, 1981-04-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
5
被引用文献数
2 3

保健体育科男女大学生, 大学における運動部員, 中年までの肉体労働者及び事務職員, ウェイトリフターに反復握力の計測を行った結果, 概ね次のような成績を得た。1) 女子は男子より握力反復計測による維推率が小さいが, 両性とも朝・夕での差はなかった。2) 大学運動部員の場合, 野球部員の維推率は大きく, 柔道部員がこれに次ぎ, バレーボール, テニス部員などはそれが小さかった。3) 中年までの男子の場合, 肉体労働者の維推率は大きく, 事務職者の場合は小さかった。4) ウェイトリフターは経験の少ない若い選手の方が, 鍛練度の進んだ選手よりも握力反復による維推率が小さかった。5) 右手と左手の反復握力による維推率には, スポーツ種目により若干の傾向差が見られるものもあるが, 他種目との比較の場合より少なかった。ただし個人では左右で大差の認められるものもあった。6) 最大握力と反復測定による維推率との間には有意の相関が認められなかった。
著者
吉田 一正 武田 賢一 河崎 雄司 西田 陽二 近藤 清彦 原田 智也 山口 耕介 山崎 章 井岸 正 清水 英治
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.204-207, 2012-10-31 (Released:2016-04-25)
参考文献数
7

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者のリハビリテーションでは下肢の活動量についての検討はされてきたが,上肢の活動量についての検討は十分とはいえず,COPD患者で上肢活動量の評価方法は確立されていない.COPD患者(17人)の上肢の活動量,動作の障害程度をActiwatch 2 とPFSDQ-Mで評価し,呼吸機能,呼吸筋力,6-minute pegboard and ring test(6-minute PBRT)で測定される上肢運動能等との関係を調べた.6-minute PBRTでのリング数とActiwatch 2 のカウント数との間に正の相関(r=0.53, p<0.05)を認めた.6-minute PBRTは上肢の活動量のサロゲートマーカーとなり,呼吸リハビリテーションを考えるうえで,上肢活動量の推測とリハビリテーションの効果判定に有用である可能性がある.
著者
朝鮮総督府逓信局 編
出版者
朝鮮総督府逓信局
巻号頁・発行日
vol.昭和15年度, 1943
著者
木村 隆一 片岡 昇 水谷 博
出版者
環境技術学会/環境技術編集委員会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.359-366, 1991-06-30 (Released:2010-03-18)
参考文献数
7

大阪国際空港において, 気象条件や路線長による航空機の離陸滑走距離の変動を調査した.滑走距離は気温, 滑走路方向のベクトル風, 路線長などの影響を受けると考えられることから, それらの関係について重回帰分析をおこなった.その結果, どの機種の場合でも滑走距離とそれらの要因との間に高い相関があることが明らかになった.つぎに, 離陸後の飛行コース (フライトトラック, 高度) や騒音レベルについて空港北部で測定し, 滑走距離や気象などの変動がそれらに及ぼす影響についても調査した.飛行コースや騒音レベルを説明するための変数として, 滑走距離気温, 風向, 風速および路線長を選んで重回帰分析をおこない予測モデルを作成した.これらのモデルを使えば, 任意の気象条件における滑走, 離陸, 上昇プロファイルが得られ, 航空機騒音コンター図の作成に役立つことを確認した.最後に, 米国FAAのIntegrated Noise Modelに登録されている飛行プロファイルと実測のプロファイルを比較した結果, 標準的な気象条件では, 国内便の上昇プロファイルが良く一致した.
著者
本村 政勝 福田 卓 吉村 俊朗
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

LDL受容体関連蛋白質4(Lrp4)抗体陽性重症筋無力症(MG)の臨床像と神経筋接合部病態を解明し「アセチルコリン受容体(AChR)抗体と筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体に次ぐ、第3番目の病因自己抗体になる」という理論仮説を検証した。我々はAChR抗体陰性MG患者から、Lrp4抗体を有する9症例を報告した(Ann Neurol. 2011)。その臨床像は、男女比4対5、発症平均年齢57歳、嚥下障害を主体とする全身型MGで胸腺腫の合併は無かった。神経筋接合部生検は、3例とも運動終板に免疫複合体の沈着は無く、電顕でも運動終板の破壊像は無くAChR抗体陽性MGとは異なるものであった。
著者
井上 真 長尾 智己 迫 秀則 大久保 浩一 佐藤 博
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.219-226, 2015 (Released:2016-02-25)
参考文献数
20

手術後も消化管機能が保たれる心臓手術の術後は,経口摂取による栄養管理が早期に開始となる.経口摂取による栄養管理は患者の「食べようとする意志」に左右されるため,その摂取量には個人差が認められる.さらに,術後は多くの症例で食欲の低下を認め,必要と考えられている摂取量を充足していないケースも見受けられる.一方,手術技術の進歩により,体力的に難しかった心臓手術を80歳以上の高齢者も受けることが可能になってきた現在において,これまであまり気にされることがなかった心臓手術の術後の栄養管理にも目を向けていく必要が生じてきている.すなわち,術後の早期回復を目指し,経口で効率的に栄養を摂取してもらうための最適な食事内容を検討,評価していくことが今後の重要な課題である.
著者
野池 達也 李 玉友
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

酢酸単一基質あるいは酢酸、プロピオン酸、n-酪酸から成る混合酸に少量の酵母エキスを添加した基質および前途の混合酸に少量のグルコースを添加した基質を用い、流入COD負荷2・5〜10gCOD・l^<+1>・d^<-1>の範囲で、流入負荷の影響に関する実験を活性炭を担体とする流動床型反応槽を用いて行ったところ、次のような結果が得られた。1.酢酸単一基質を処理するより、少量の有機物を添加するほうが基質除去が改善される。これは、メタン菌とアセトジェニック菌および酸生成菌が共生することにより、メタン生成が促進するためであると考えられる。2.生物膜形成において、酢酸単一基質を用いるよりも、酵母エキスを添加した混合酸基質を用いたほうが、生物膜形成が促進された。3.流動床における菌体保持形態としては、生物膜形成という形以外にも活性炭床部によりフィルター効果による菌体捕捉があり、後者の形態によっても十分高い菌体濃度が維持できる。4.実験を行った流入負荷の範囲において、酢酢単一基質では基質除去率は98.5%以上酵母エキスを添加した混合酸基質では98.8%、グルコースを添加した混合酸基質では99.5%以上の高い基質除去率が得られた。5.最大比COD除去速度は、酢酸単一基質を用いた場合に0.7mgCODmg^<-1>VSS・d^<-1>、酵母エキスを添加した混合酸基質では0.4mgCODmg^<-1>VSS・d^<-1>程度であった。COD負荷に対する床内タンパク質濃度の関係を合わせて考えると、グルコースを添加した混合酸基質では、菌体中での活性のあるメタン菌の占める割合が低いと思われる。嫌気性微生物の担体への付着について、微生物の親水性および疎水性をn-hexadecaneを添加し、菌の分離の様子を観察することにより、酸生成相およびメタン生成相汚混を用いて検討した。

1 0 0 0 Calculus

著者
Michael Spivak
出版者
Publish or Perish
巻号頁・発行日
2008
著者
藤原 了 橋本 学 竹本 修三
出版者
日本測地学会
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.659-678, 2001-06-25 (Released:2011-03-01)
参考文献数
44
被引用文献数
1

三次元有限要素法を用いて琉球弧をモデル化し,粘性流体媒質中の定常流の仮定下で流れ及び応力場を計算した.背弧直下に想定される低密度媒質及び一般的なプレート運動の原動力の背弧拡大に対する効果,地殻粘性率の影響について考察した.解析の結果,スラブ引っ張り力やリッジプッシュ等のみを考慮したモデルでは背弧地域に圧縮場を形成した.一方,背弧直下での低密度媒質に働く浮力を考慮した場合,背弧における拡大を示唆する張力場が得られた.背弧直下の低密度媒質は地殻付近の深さまで到達している可能性が高く背弧拡大の主原動力と考えられる.さらにマントルの粘性率と背弧領域の地殻粘性率との差が小さい時,すなわち相対的に軟らかいプレートを仮定した時に拡大が生じた.