著者
増山 英太郎 勝見 正彦
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.157-164, 1994-06-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
5
被引用文献数
1

桂枝雀は, 落語を聞いている者の心理的プロセスによって落ちを4分類した. この4分類の妥当性について検討, 考察することを目的として実験を行った. 桂米朝の語る8演目の落語のビデオを15名の大学生に見せ, 落ちのおかしさと印象に関する12個の質問項目に, 7段階で評定させた. 被験者全体の評定点を主成分分析した結果,“合わせ”,“なるほど”,“まとも”,“常識的”,“ドンデン返し”の5因子が得られ, このうち“まとも”を除いた4因子は各々, 桂枝雀の分類“合わせ”,“謎解き”,“へん”,“ドンデン”に対応するものであった. 次に各演目の主成分得点を求めプロットした図を考察してみると, その落ち分類各々に対応する主成分が高くなっている演目と, 必ずしもそうなっていない演目とがあった.
著者
髙泉 佳苗 原田 和弘 中村 好男
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.63-73, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
20
被引用文献数
4

目的:食生活リテラシーと食情報源(利用回数,信用度)および食情報検索バリアとの関連を検討した.方法:社会調査会社の登録モニター(20~59歳)を対象に,ウェブ調査による横断研究を実施した.解析対象は1,252人(男性631人,女性621人)であった.食生活リテラシーと食情報源(利用回数,信用度)および食情報検索バリアとの関連は重回帰分析(強制投入法)を用いた.結果:食生活リテラシーと正の関連が認められた食情報源は,男性では「医療従事者・専門家」(利用回数:β=0.12,p<0.01),「友人・知人」(信用度:β=0.14,p=0.01),「インターネット」(信用度:β=0.23,p<0.01)であった.女性では「インターネット」(利用回数:β=0.17,p<0.01,信用度:β=0.19,p<0.01),「友人・知人」(信用度:β=0.13,p=0.01)であった.食生活リテラシーと関連が認められたバリアは,「自分で検索した食情報は難しすぎて理解できない」(男性:β=-0.23,p<0.01,女性:β=-0.25,p<0.01),女性では「食情報を検索していると欲求不満や苛立ちを感じる」(β=-0.11,p=0.01)であった.結論:食生活リテラシーが低くなるほど,特定の食情報検索バリアが高くなる可能性が示された.食生活リテラシーに影響を与えている可能性がある食情報源は,男性女性ともに「友人・知人」,「インターネット」であり,さらに男性においては「医療従事者・専門家」も含まれていた.
著者
兵藤 裕己
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.2-13, 2017-01-10 (Released:2022-02-02)

『源氏物語』や『平家物語』の語り(narrative)について、風景や装束が記述的・事実確認的ではなく行為遂行的(performative)に語られること、それに関連して、語り手と読者および作中人物の共主観的(相互主観的)なあり方について述べた。また、そのような物語の語りが、近世の出版メディアのなかで変容することを、近松門左衛門の作者署名の問題や、洒落本・人情本の自己言及的な語りの問題として論じ、末尾で、江戸後期の戯作の語りが、明治期の尾崎紅葉や泉鏡花の語りに接続することを述べた。
著者
堀越 和夫 鈴木 創 佐々木 哲朗 川上 和人
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.3-18, 2020-04-23 (Released:2020-05-16)
参考文献数
58

小笠原諸島の絶滅危惧種アカガシラカラスバトColumba janthina nitensの個体数は非常に少なく,その個体群の存続には侵略的外来種であるネコの捕食圧が大きく影響していると考えられていた.このため,諸島内の最大の有人島である父島では,2010年から島内全域でネコの捕獲が行われ,2013年頃にはその個体数が当初の10分の1以下になったと考えられている.また,集落域では飼いネコの登録や不妊去勢の推進が行われ,ノラネコの個体数も減少した.そこで,ネコ対策の効果を明らかにするため,一般からの目撃情報に基づき2009年から2017年におけるアカガシラカラスバトの個体数と分布の推移を明らかにした.その結果,個体数は夏期/冬期,山域/集落域を問わず,2012年から2013年に大幅な増加が見られた.また分布域は2009年には山域や集落の一部に限られていたが,2017年には集落域の8割および山域の6割まで拡大し,繁殖域は当初の分布面積の2倍に拡大した.これら個体数の増加,分布域と繁殖域の拡大時期は,山域でのネコ個体数が最少となり,また集落域の野外の個体数も減少した時期であった.一方,2014年以後はハト個体数の増加傾向が見られなくなっているが,この時期は山域のネコの個体数が回復傾向にある時期と重なっていた.以上のことから,アカガシラカラスバトの集団の回復にはネコ対策が効果的であると言え,今後トラップシャイ個体の効率的な捕獲手法を開発する必要がある.また,この鳥は頻繁に島間移動するため,他島での対策も進める必要がある.
著者
劉 怡伶
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.153, pp.81-95, 2012 (Released:2017-02-17)
参考文献数
22

本稿では,日本語における動作主認識の副詞的成分の特徴を考察した。考察の結果,動作主認識の副詞的成分は先行研究の指摘のように,動作主が動作の実現中に持った感情・感覚を表すものであるということのほか,次の三つの特徴を持っていることが明らかになった。1)動作主認識の副詞的成分は動詞の表す語彙的意味の層で機能するものである,2)動作主認識の副詞的成分の表す感情・感覚は動作主の制御可能な動作によって生起するもののため,動作の結果でもある,3)動作主認識の副詞的成分の表す感情・感覚はある程度制御可能なものである,ということである。 また,本稿ではコーパスにおける使用実態も調査したが,〈快〉の感情・感覚を表す形容詞連用形が動作主認識の副詞的成分として用いられやすいことが判明した。その理由として語用論的理由によることを説明した。
著者
市岡 正彦
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.129, no.6, pp.432-435, 2007 (Released:2007-06-14)
参考文献数
7
被引用文献数
2 5

睡眠中の呼吸制御系の変化として,上気道抵抗の上昇,呼吸筋,特に肋間筋やその他の補助呼吸筋の活動性低下が特徴であり,換気量の低下,肺気量減少に伴う動脈血酸素分圧の低下がもたらされる.呼吸調節の面では炭酸ガスおよび低酸素換気応答が低下する.これらの変化はレム期において著明であり,健常人でも呼吸は不安定になる.こうした睡眠に伴う呼吸の変化は,睡眠時の体位,性,年齢,アルコール,睡眠薬などの薬物,妊娠の有無,居住地の高さなどさまざまな因子の影響を受ける.健常者にとっては問題にならないこうした変化も,背景に慢性呼吸器疾患や神経筋疾患,肥満や上気道の異常などがある場合には,容易に睡眠呼吸障害の発症に結びつく.睡眠呼吸障害の代表的疾患である閉塞型睡眠時無呼吸症候群も,上気道の形態的・機能的異常を背景に,睡眠中の呼吸制御系の異常が加わって発症し,重症度に応じた治療が施されている.
著者
國分 功一郎 熊谷 晋一郎 千葉 雅也 松本 卓也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

自閉症の医学的研究は、近年、次々と新しい事実・データを明らかにしており、それらの理論化が必要とされている。また近年の研究により、二十世紀フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの思想の自閉症的側面が明らかにされつつある。本研究は両者を融合させ、人間についての新しい理論を作り出すことを目指している。哲学の研究者二人と、病院勤務の経験のある二人の医学研究者が共同で研究を行う点にこの研究課題の特徴がある。二〇世紀、哲学は精神分析学と強く結びついて発展した。それに対し、医学あるいは一般医療と哲学との交流は稀であったと思われる。本研究課題は、文医融合という研究の可能性を探るものでもある。
著者
浅野 大喜 森岡 周
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.361-367, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
30

【目的】脳室周囲白質軟化症(以下,PVL)児,知的障害(以下,MR)児の行動について調査し,健常児と比較した。【方法】PVL児15名(平均月齢55.2 ヵ月;PVL 群),MR児15名(平均月齢53.3 ヵ月;MR 群),定型発達児14 名(平均月齢52.3 ヵ月;Normal 群)を対象とした。行動評価はChild Behavior Checklist(以下,CBCL)を使用し,子どもの行動を母親に評価してもらい,3 群間で比較した。また母親の養育態度についても調査し,CBCL の結果との関連を調べた。【結果】PVL 群は依存分離尺度,MR 群は引きこもり,攻撃,注意集中尺度と内向,外向尺度,総得点でNormal 群よりも有意に高い得点であった。[内向/外向]の値はPVL 群が他の2 群より有意に高い値であった。PVL 群の依存傾向は養育態度や歩行能力とは関係がなかった。【結語】PVL 児は外在化行動よりも内在化行動が高いという特徴を示した。
著者
宮崎 早季
出版者
国立大学法人 琉球大学島嶼地域科学研究所
雑誌
島嶼地域科学 (ISSN:2435757X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.17-37, 2022 (Released:2022-06-30)

本稿では,1989年から2022年にハワイで開催された「追憶の日」イベントを通した,ハワイ日系人の戦争記憶の共有・継承の試みを明らかにする。ハワイでの最初のイベントは,1989年に開催された。90年代から00年代前半は主にアメリカ合衆国本土西海岸の収容の記憶が,2006年以降は,ハワイのホノウリウリ収容所の記憶がイベントのテーマとされた。一方,ハワイから本土の施設に送られた人々や自宅から追い出された人々の経験や,ハワイ日系人のほとんどが経験した戒厳令下の生活は,あまり語られていない。本土西海岸で始まった「追憶の日」イベントを,本土西海岸の影響を受けながらも継続しようとするハワイ日系人のイベントの変容を描く。
著者
鈴木 美穂
出版者
西洋比較演劇研究会
雑誌
西洋比較演劇研究 (ISSN:13472720)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.108-119, 2014-03-31 (Released:2014-04-03)

This paper discusses Caryl Churchill’s Top Girls by focusing on the portrayal of Angie, who is regarded by critics as a comparatively minor character. As symbolically exhibited in the confrontational relationship between Marlene and Joyce, a binary opposition functions as the dominant structure of the play. Marlene, one of the leading characters, is bent on boosting her already successful career and espouses Margaret Thatcher’s monetarist policies. Appearing in almost every scene, she seems to be at the heart of the play, and her presence reinforces various dichotomies, such as winner/loser and centre/margin. Her sister Joyce, a working-class single mother, does not accept Marlene’s point of view. However, Angie, who has been raised by Joyce but is actually Marlene’s sixteen-year-old daughter, has the potential to decentralise Marlene’s position and subvert the rigid binary opposition. First, Angie demonstrates the possibility of fluidising binary relationships at various levels. In Act II scene 2, she and her friend Kit are crammed into a small shelter. Their interdependent relationship is shown through the representation of their bodies, as when Kit shows her menstrual blood to Angie on her finger, and Angie licks it. These representations also symbolize the variable relationship between the inner and outer parts of the body. In that scene, Angie is geographically and socially in the most marginalised position in relation to the centre, London, where Marlene lives. However, Angie decides to visit London because she believes that Marlene is her birth mother. In this manner, Angie is able to break up the rigid relationship between the two. Second, the unrealistic dinner party in the first scene can be thought of as Angie’s dream, which also overthrows Marlene’s centrality within the play. Although the party is held to celebrate Marlene’s promotion, her position is gradually decentralised as guests talk about their painful experiences in childbirth and separation. The separation between mother and child suggests a strong connection to Angie’s search for her biological mother. During the dinner party, verbal language gradually recedes as the characters’ bodies come to the fore. These processes are symbolically represented by the portrayal of the female pope, Joan, whose vomiting in the final scene evokes the story of her horrible childbirth. These images also imply the plasticity of the relationship between the inner and outer parts of the body, as suggested by Angie’s bodily representation in the shelter scene. Thus, Angie implodes the various boundaries and decentralises Marlene’s position in Top Girls.
著者
曽根 信三郎
出版者
公益社団法人 日本木材保存協会
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.160-165, 2007-07-25 (Released:2009-05-22)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1
著者
澤田 佳世
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.400-414, 2016 (Released:2018-03-31)
参考文献数
50
被引用文献数
1

本土復帰後, 沖縄の出生率は日本で最も高い水準を維持している. 高出生力を誇る沖縄は, 家族に価値をおく社会でもある. こうした中, 「少子化」する日本社会で, 相対的に高い出生率を維持する沖縄県に政策的な関心が寄せられる向きもある. 一方, 沖縄は, 出生力と家族の戦後史を日本本土と共有していない. 近代の家族と社会変動の理論的基盤となる人口転換 (とりわけ出生力転換) は, 沖縄では, 本土から切り離された米軍政下で始まった. 当時の沖縄は, 優生保護法も政府主導の家族計画の推進もなく, 中絶と避妊の法的・社会的位置づけが本土とは異なっていた. 加えて, 家族形成の軸となる父系血縁原理が, 女性に男児出産の役割期待を課していた.本稿は, 日本で最も高い水準にある沖縄の出生率を, 人口転換が始まった本土復帰前, すなわち米軍統治下の歴史的・社会的文脈に位置づけて捉えなおす. 戦後, 本土から切り離され米軍統治下におかれた歴史的事実, および厳格な父系血縁原理に依拠する固有の家族形成規範は, 沖縄の出生力と家族形成のあり方にどのような影響を与えたのか. 人口研究における出生力分析の包括的枠組みに依拠しながら, 出生力・家族研究が自明視する国民国家・日本という分析枠組みを相対化し, 沖縄という周辺地域の出生力と家族に投影された人口・生殖をめぐる政治に接近する.
著者
太刀川 喜久男
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会誌 (ISSN:13405551)
巻号頁・発行日
vol.119, no.10, pp.600-603, 1999-10-01 (Released:2008-04-17)
参考文献数
4
著者
舘 充
出版者
The Iron and Steel Institute of Japan
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.2-10, 2005-01-01 (Released:2010-01-19)
参考文献数
35
被引用文献数
5 7

Iron making from iron sand in Chugoku district began soon after the introduction of iron ore smelting by the low shaft box-type furnace in the middle of the sixth century and it rapidly spread all over the country, but Chugoku district continued to be the center of its progress. The process consistently developed throughout the ancient and the medieval times towards more elevated furnace temperature by means of increased furnace volume, improved underground facilities for moisture elimination and increased blowing capacity of bellows. The development resulted in the birth of Tatara as the finally-evolved box-furnace on the one hand and in the change of the chief product of smelting from lumpy mixture of metal with slag or a large metal block involving some slag to molten pig iron (Zuku) on th other hand. The priority production of Zuku led to the invention of the two-stage refining process for its conversion into wrought iron (Ohkaji) in the 17th century. Zuku-making by Tatara and refining by Ohkaji formed Japanese indirect wrought iron making system.Metal block (Kera), which was formed in Zuku making from a sort of iron sand hard to fuse (Masa) compared with another sort of iron sand (Akome), proved to contain about 50% parts of steel high in carbon content, which, naturally, were taken out by hammering after the rough crushing by falling-weight methd.Because of economical disadvantages mainly due to inefficiency of iron sand smelting, Japanese indirect iron making system could not survive after 1923 in spite of several successes in developing new iron making process of blast furnace-type. However Tatara is preserved as a technical heritage and is still operated several times a year for direct steel making through Kera.