著者
長岡 信治 奥野 充 新井 房夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.432-450, 2001-07-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
74
被引用文献数
23 23

100~30 kaにおいて姶良カルデラでは, 日木山降下スコリア堆積物(103~95 ka), 金剛寺火砕サージ堆積物, 福山降下軽石堆積物(95~86 ka), 岩戸テフラ(60 ka, )大塚降下軽石堆積物(32.5 ka), 深港テフラ(31 ka), 毛梨野テフラ(26.5 ka)の7層のテフラが認められる.これらの噴火口は, カルデラの東半部に集中している.これらのテフラの噴出と並行して敷根安山岩などの溶岩も流出しており, 平均噴火間隔は7500年に1回となる.27 kaの姶良火砕噴火直前の32.5~30 kaでは噴火間隔は約1000年と短くなるが, 噴出量は逆に減少する傾向にある.姶良カルデラ火山は100 ka以降は活動期にあたる.この100~30 kaの噴火活動は, 最新の活動期の前半にあたっている.
著者
島田 允堯
出版者
The Society of Resource Geology
雑誌
資源地質 (ISSN:09182454)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.161-172, 2003-12-04 (Released:2009-06-12)
参考文献数
89
被引用文献数
3

In the last decade, arsenic contaminated groundwater (>0.01 mg/L) has frequently been detected from place to place in Japan, and has caused serious social problems. The comprehensive surveys and researches have demonstrated that arsenic of natural origin dissolves from the aquifer to groundwater under specific environmental conditions. Concerning the aquifer geology, the arsenic-bearing groundwater is divided into S-type (sediment hosted type) and M-type (metamorphic rock hosted type). Meanwhile, from the viewpoint of dissociation mechanism, the arsenic contamination is classified into three types; .Type 1: Reductive dissolution of iron oxyhydroxide (goethite) and release of adsorbed arsenic into groundwater; Type 2: Oxidation of arsenic pyrite, and Type 3: Arsenic release by the decomposition of organic matter in an alluvial peat layer under reducing condition of the aquifer.Because arsenic takes various forms as source and sink in nature and is sensitive to the environmental conditions, it is important that we should consider the geochemical cycle of arsenic for elucidating the dissolution mechanism and also for the remediation of groundwater at the contaminated sites.
著者
西岡 龍一朗 黒田 萌 黒田 格
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.78-80, 2023-06-10 (Released:2023-06-24)
参考文献数
9

筆者らは,学生が主体となり医療系学生と患者が語り合い,笑い合う活動を定期的に継続した.2020年6月から2022年9月まで28回実施した.活動を通し,学生と患者の双方から沸き起こった感情,新たな認識,気づきについて反響が得られた.患者が学生に対し語ることが,学生には省察の機会や患者視点による病の理解を生む一助となり,患者自身には自己の有意味感や病の新たな認識を生むことが示唆された.
著者
山本 悦史 中西 純司
出版者
日本スポーツ産業学会
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1_97-1_116, 2022 (Released:2022-01-20)
参考文献数
51

While professional sports clubs in Europe and the U.S. have attained marketability and a public nature simultaneously, many clubs in Japan are struggling to achieve either or both these two values. This study explores the businessization and localization strategies of professional football clubs belonging to the J. League, categorizes the clubs into several types, and examines their marketing dilemmas. A quantitative survey of 35 clubs was conducted from managerial and social marketing perspectives. The findings are as follows: First, through exploratory factor analysis and reliability analysis, three factors were extracted as businessization indexes: stable supply of sport services, rationalization of management, and establishment of a management base. Additionally, two factors were extracted as localization indexes: building a platform for regional cooperation, and promotion of local sports activities. Second, using the geometric means derived from the businessization indexes (three factors, eight items) and the localization indexes (two factors, nine items), a correlation analysis was conducted. The clubs were classified into four types: Advanced club (Type-A), Business-oriented club (Type-B), Community-oriented club (Type-C), and Developing club (Type-D). Finally, from the viewpoint of the ABCD model, an analytical model for professional football club management is proposed. We suggest that there can be both synergies and trade-offs between businessization and localization.
著者
武田 広道 山科 吉弘 田平 一行
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.20-26, 2020 (Released:2020-02-20)
参考文献数
30

【目的】円背姿勢が咳嗽力に与える影響を明らかにすること。【方法】若年男性16 名を対象とし,非円背,軽度,中等度,重度円背の4 条件で咳嗽時最大呼気流量(以下,CPF),肺機能,呼吸筋力,胸郭拡張差,最長発声持続時間(以下,MPT),呼吸抵抗(R5,Fres)を測定した。条件間の比較には一元配置分散分析および多重比較検定(Bonferroni)を行った。また円背程度による各測定項目の変化率を算出し,ピアソンの相関分析を行った。【結果】CPF,肺活量(以下,VC),胸郭拡張差(剣状突起部),MPT は非円背と比較し,中等度以上の円背で,呼吸筋力,Fres は重度円背で有意に低値を示した。また,CPF とVC,呼気筋力,胸郭拡張差(剣状突起部)との間に有意な正の相関を認めた(r=0.27,0.33,0.37,p<0.05)。【結論】円背が中等度以上になると胸郭拡張差,呼吸筋力,VC が低下し,CPF を低下させることが示唆された。
著者
渡辺 哲生 鈴木 正志
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.345-352, 2005-06-01 (Released:2010-06-28)
参考文献数
11
被引用文献数
2

昭和58年10月から平成16年3月まで当科で入院加療した扁桃周囲膿瘍209例の細菌検査について検討した.187例 (89%) から351株の細菌が検出された.約半数の症例が混合感染で, 約70%の症例から好気性菌, 約40%の症例から嫌気性菌, 約20%の症例から両者が検出された.好気性菌は227株で, S.pyogenes, S.milleri groupが, 嫌気性菌は124株で, Prevotella属, Fusobacterium属が多くみられた.薬剤感受性検査の結果をNCCLSの基準からみると扁桃周囲膿瘍においては耐性菌の問題はなかったが, セフェム系抗菌薬に感受性の低いS.milleri groupの増加, クリンダマイシンに対する耐性菌がみられたので抗菌薬の使用に注意を要すると考えた.
著者
山本 安宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.520-523, 2018-11-20 (Released:2019-11-01)
参考文献数
5

日本の硫酸工業は明治初期の貨幣の金属洗浄用から始まり,化学肥料工業の台頭,合成繊維の量産化,無機化学製品の伸長による硫酸需要の増大に合わせて供給体制を確立してきた。当初の硫酸製造法は単体硫黄,硫化鉱を原料とした硝酸式(鉛室法)であったが,非鉄金属製錬ガス,石油精製の回収硫黄およびコークス炉ガス等へと原料が変化し,高濃度,高純度の硫酸を製造する接触式へ変遷してきた。現在,世界では2億7千万t/年以上の硫酸が製造され,今後さらに需給拡大の見通しである。本稿ではその興味深い硫酸工業について紹介する。

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1910年09月30日, 1910-09-30
著者
松井 剛
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.16-26, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
55

本論文の目的は,米国ニューヨーク市(New York City,以下NYC)における日本料理レストラン(Japanese restaurant)の歴史的発展の経緯を明らかにすることにある。主要な発見事実は2つある。第1に,戦後の日本企業の対米進出にともない,接待など法人需要が高まったため,高級日本料理レストランの発展を促した。日本のレストランのNYC進出に日本企業が出資するケースも見られた。第2に,かつて米国人に知られた日本料理は,すき焼き,天ぷら,テリヤキぐらいしかなかったが,企業家の努力を通じて,寿司やラーメンのような未知の日本料理が定着した。さらに近年では,居酒屋,焼き鳥屋,カレー専門店,モツ鍋料理店,お好み焼き屋,洋食レストランなど,日本料理の細分化が進んでいる。この集合的な努力がゆえに,NYCは米国の他の都市には見られない日本料理の多様化が実現している。
著者
渡部 信一
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.217-226, 1987-10-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
30

1健忘失語例の語想起障害に対して, 認知心理学的観点から考察した結果, 以下の点が明らかになった.1) 本症例は再生に著しい障害を示したが, 再認は全く障害されていない.これは言語情報の検索過程に限局した障害であり, 検索過程と再認過程を独立した別の過程であるとする二重過程説を支持していると考えた.2) 語想起困難に陥った場合でもTOT現象が全く出現せず, 本症例の語想起困難時の検索は非常に低い検索レベルにとどまり, かつ部分的検索も行われていないことが明らかになった.3) 「しんかんせ」のヒントで「新幹線」が想起できないことから, 本症例はひとつの単語をひとつのパターンとして記憶していると考えられた.4) 手がかり効果がなかったことなどから, 本症例の語検索は自動的検索が主であり, 語想起困難に陥った場合の制御的検索は非常に困難であることが明らかになった.
著者
馬 雯雯
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.90-105, 2019-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
10

本研究は「女子力」を巡る記述における言語標識に焦点を当て、「女子力」ということばを考察するものである。分析に際し、まず、「女性」「女子」「女の子」に接尾辞の「らしい」「っぽい」が結び付いた言語標識を軸に、「女子力」にみられるジェンダーの要素の分析を試みた。そして、「できる」「優れている」「得意」「上手」といった動詞および形容詞を軸に、「女子力」にみられる能力の要素を探ってみた。その上で、「女子力」の使用の様相について男女別に分析を試みた。「女子力」は「女性らしさ」を構築する動的なプロセスを可視化し、「女性らしさ」のありかを示していることばである一方、「能力」としてその形式の「女子」に表われるジェンダーの境界線を越え、「男性」のジェンダー領域にも入っていることばであること、「女子力」の使用において、女性はそれを「ほめ」の効果のあることばとして同性に使うが、男性はそれを「冗談としてのほめ」の効果のあることばとして同性に使うことを明らかにした。
著者
郡山 貴子 飯島 久美子 小西 史子 佐藤 瑶子 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.174-181, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
32
被引用文献数
5

多収穫を特徴とするムクナ属マメは,L-DOPAを乾燥種子中に3-9%と多く含有するため,食品としての利用は限られている。ムクナ豆の利用として味噌に着目し,種々の条件の組み合わせによる4種類:米麹辛口,米麹甘口,麦麹甘口,および米麹甘味噌を調製し,発酵中の外観及び成分変化を測定した。比較のため同じく4種類の大豆味噌を調製した。pH,酸度Ⅰ・Ⅱ,たんぱく質溶解度,および色測の値より,ムクナ豆味噌はいずれの種類においても大豆味噌と同様な熟成過程を経て味噌になった。ムクナ豆味噌のL-DOPA量は仕込み直後には味噌湿重量 100 g中 0.14-0.26 g残存していたが,発酵開始後は直線的に低下し,味噌完成時には検出されなくなった。官能評価の結果,ムクナ豆味噌の総合評価は大豆味噌に比べて高い傾向を示し,中でも米麹を用いた甘口味噌の評価が高い傾向がみられた。ムクナ豆米麹甘口味噌の抗酸化能は大豆米麹甘口味噌よりも有意に高く,DPPH法では1.7倍,ORAC法では4.5倍高値を示した。これらのことより,ムクナ豆を主原料とした味噌は発酵過程でL-DOPAが消失し,嗜好性が良好で,抗酸化能にも優れることが示された。
著者
笹川 智子 金井 嘉宏 村中 泰子 鈴木 伸一 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.87-98, 2004-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
30

本研究の目的は、日本版Fear of Negative Evaluation Scale(FNE;石川ら,1992)の短縮版を作成し、その測定精度を項目反応理論(IRT)の観点から評価することであった。項目数を削減することによる情報量の損失を、段階反応モデルを用いることで補い、12項目五件法の尺度を構成した。テスト情報関数の形状から、作成された短縮版は幅広い尺度値レベルで安定した測定精度を保つことが示された。特に特性値の高い被検者に対しては30項目二件法の原版よりも有効性が高く、Leary(1983)のBrief Fear of Negative Evaluation Scale(BFNE)との比較においてもすぐれた測定上の特徴をもつものであった。また、簡便なスクリーニングテストとしての有用性や、他の尺度との併用など、臨床・研究場面への応用可能性が論じられた。
著者
栗田 慎也 髙橋 あき 髙橋 忠志 久米 亮一 山崎 健治 尾花 正義
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.69-73, 2021-01-01 (Released:2022-01-15)
参考文献数
15

脳卒中発症早期より長下肢装具(Knee-Ankle-Foot-Orthosis : 以下,KAFO)を使用する報告は増えているが,KAFOの使用や作製に伴う有害事象の報告はない.そこで,急性期病院である当院で,脳卒中発症早期患者に対するKAFOの使用や作製に伴う有害事象を後方視的に調査し,それに対する対策を行った.対象は2017年8月から2019年7月までの間に報告された有害事象データとした.この調査期間内の有害事象は376件あり,そのうちKAFOに関するものは25件(6.6%)であった.有害事象の多くは備品KAFOで生じており,最も多かった内容は医療関連機器圧迫創傷(Medical Device Related Pressure Ulcer : 以下,MDRPU) 6件であった.急性期病院での備品KAFOの使用には,MDRPUの発生予防対策や創傷に対する知識獲得が重要と考える.