著者
福島 拓 吉野 孝 重野 亜久里
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.256-265, 2013-01-15

現在,在日外国人数は年々増加しており,多言語によるコミュニケーションの機会は増加している.医療の分野では医療機関を訪れる外国人患者とのコミュニケーションのために多言語問診票が使用されている.しかし,多言語対応の紙の問診票は種類が少ないため各医療機関の要求を満たすことができていない.また,日本人医療従事者が外国人患者の母語で書かれた紙の問診票を理解することは困難である.そこで我々は,用例対訳や機械翻訳を利用して診察に必要な基本情報である症状の伝達を支援する,多言語問診票作成システムの開発を行い,問診票入力機能についての評価を行った.本研究の貢献は次の2つである.(1)日本人医療従事者と外国人患者との間のコミュニケーションを支援する,多言語問診票作成システムの提案を行い,実現した.(2)用例対訳と機械翻訳を併用することで,病名や症状を含む文の正確性と,状況説明などの付与情報を含む文の網羅性を確保した多言語問診票の記入の可能性を示した.
著者
釜田 壹 島田 秀弥 浅野 昌司
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.129-136, 1979-04-28 (Released:2010-07-01)
参考文献数
19

5齢期のカイコに幼若ホルモン活性化合物の一種である methoprene を投与し, その生理作用を明らかにし, 育蚕への利用の観点から投与時期および投与濃度について検討した。1. Methoprene を蚕体に塗布した場合, 投与時期が遅く, かつ投与濃度が高くなるにしたがって, 幼虫期間の延長→幼虫と蛹の中間体→永続幼虫→過剰脱皮蚕へと変化の移行がみられた。2. 5齢の前期および中期における投与では, methoprene に対する感受性に雌雄差はみられないが, 後期では雄が雌よりも高かった。3. 5齢前期の0.1~1μgの methoprene の投与は, 食桑期間が0.2~1日延長し, 営繭率および健蛹率に低下はなく, 繭重および繭層重が増加する。5齢中期の methoprene 投与は, 繭重および繭層重の増加が最も高いが. 0.1μg以上の投与量は営繭率および健蛹率が低下した。5齢後期では, 営繭に影響しない濃度範囲が狭く. 繭重の増加は少なく繭層重も低下した。4. 5齢36~72時間に2.5ppmの methoprene を散布すると, 食桑期間は0.5~1.3日延長し, 健蛹率の低下もなくて繭重および繭層重が増加し, 繭層歩合も低下しなかった。5. 2.5~10ppmの methoprene の散布は, 健蛹率がやや低下するが, 繭重および繭層重はそれぞれ10~14%および13~20%増加し, 繭層歩合もやや増加した。繭糸長, 繭糸量, 解舒率および生糸量歩合も向上した。
著者
井尻 直志
出版者
日本イスパニヤ学会
雑誌
HISPANICA / HISPÁNICA (ISSN:09107789)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.58, pp.61-83, 2014

ベネディクト・アンダーソンは、マリオ・バルガス=リョサ(Mario Vargas Llosa)の小説『密林の語り部』(El hablador, 1987) について論じた評論「不幸な国」で、「『密林の語り部』がナショナリズム小説であることは疑う余地がない」と述べている。それを受けて、本稿では、『密林の語り部』はアンダーソンのいうような意味におけるナショナリズム小説なのか、という点について論じた。以下がその結論である。『密林の語り部』の語りの構造には複数の解釈が可能であり、それに応じて作品とナショナリズムとの関係も変わってくる。語り部の語る章は小説家〈私〉の書いたものではないと看做す場合、ジョナサン・カラーのように「すべてを包括する語り手はいない」として、「統一性なき共同体を想像しようとする試み」であると解釈することもできるし、アンダーソンのいうように、ネーションへの統合が内包する野蛮の不可避性をパフォーマティヴに表現している「いまの時代のネーションの小説」であると解釈することもできる。また、語り部の語る章を小説家〈私〉の書いたものであると看做した場合も、「超越的視点」が存在しない以上、「旧来型のナショナリズム小説」であると解釈することはできない。とはいえ、『密林の語り部』の語りの構造を入れ子構造と看做した場合、小説家〈私〉は最終的に小説家バルガス=リョサに包摂される、という解釈が可能になる。その場合、『密林の語り部』は、語りの形式において、「均質な空間」の内にネーションを調和的に統合しようとする「旧来型のナショナリズム小説」である、という解釈が可能である。
著者
中村 英夫
出版者
金原出版
雑誌
小児科 (ISSN:00374121)
巻号頁・発行日
vol.56, no.13, pp.2061-2064, 2015-12
著者
田沼 逸夫
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.396-400, 2007 (Released:2007-10-13)
参考文献数
10
被引用文献数
2

我々は電子粉流体®を用いたカラーディスプレイとフレキシブルディスプレイを開発中である.カラーディスプレイは着色した電子粉流体®を用いたものとカラーフィルターを用いたものがある.また,同時にフレキシブル化にも取り組んでおり,ポリエステルフィルム基板を中心に開発を進めている.本誌ではQR-LPD®の可能性に関して実用例を入れて紹介する.加えて,新開発のフレキシブルドライバICを用いたオールフレキシブルディスプレイに関しても紹介する.
著者
槇 智雄
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.471-501, 1924-11

一 緒言二 社會契約論三 契約論の起原四 封建契約五 契約的社會形成の原因六 契約的社會と制限君主制七 結論
著者
松岡 和美
出版者
日本手話学会
雑誌
手話学研究 (ISSN:18843204)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.69-83, 2008-09-14 (Released:2016-07-09)
参考文献数
15

This paper presents an analysis in Matsuoka (1997) of three seemingly unrelated constructions in American Sign Language (ASL): verb final, verb sandwich, and object shift. It is argued here that the three constructions are all derived via verb raising targeting the Asp head, which is assumed to be head-final in ASL. It is also shown that the Copy Theory of Movement (Chomsky 1995) relates the verb final and the verb sandwich constructions. The syntactic analyses in the previous work are presented in a recent framework in the Minimalist Program (Chomsky 1995). Written for the audience who might not be familiar with Minimalist Syntax, the paper includes an introduction of the derivation of sentences in spoken English and French. Braze's (2003) amendment of Matsuoka's model is also presented. In the discussion of the object shift construction, the paper shows that spoken and sign languages both exhibit the abstract syntactic property regarding the availability of verb raising and object shift. Particularly, it is noteworthy that Holmberg's Generalization can be observed in the object shift construction in both spoken Icelandic and ASL. The analysis presented in this paper strongly indicates the possibility that verb raising and its relationship to the availability of object shift are a part of the universal aspects of Human Language.
著者
大貫 啓行
出版者
麗澤大学
雑誌
麗沢大学紀要 (ISSN:02874202)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.147-165, 2003-07

2002年後半、いよいよ小泉内閣の手掛けた各種改革の具体的検討時期に入った。7月、首相が公務員制度改革の柱として、関係閣僚に早期勧奨退職の慣行是正と退職金の見直し指示をきっかけに、全公務員がにわかに改革に無関心ではいられなくなった。改革内容がしだいに自分たちの身に直接影響が出ることが明らかになるにつれ、官僚の本音もより鮮明に聞かれ出した。日本道路公団など特殊法人改革の目玉としてスポットライトを当てられた所ではお定まりのように情報開示を渋ったり、裏で工作するといった改革に対する各種非協力、いわゆる抵抗の動きも激しさを増した。その他の特殊法人職員からも「自分たちの職場がなくなるのではないか」「少なくとも今までとは違った厳しいものとなるだろう」などといった正直な心配が所々に聞かれた。それにしても公務員の側からの自主的改革の動きがほとんど出て来なかったのはどうしたことだろうか。ひたすら受け身に回っての惨めな印象ばかりがあだって情けない。公務員自身が取り巻く時代環境の変化の中に取り残されてしまった存在(抵抗勢力そのもの)となっているとの観が強まった。本稿では02年後半に展開された公務員の早期退職・天下りなどの待遇に直結した改革論議を中心に、外務省・道路公団改革などの検討過程を通して見られた公務員の潜在意識の変化の状況を考察してみたいと思う。
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.920, pp.24-27, 2010-02-22

東京都が1982年にJR大崎駅周辺を副都心と位置づけて約30年、一帯の整備は大詰めを迎えている。 品川区などが描いてきたのは、「工場の街」として発展した大崎をものづくり産業の拠点にする青写真だ。86年に掲げた「大崎駅周辺地区市街地整備構想」(テクノスクエア構想)のコンセプトは2004年に示した「都市再生ビジョン」にも引き継いだ。
著者
鳥谷 一生 TORITANI Kazuo
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.35-53, 2013-12

本論文の目的は、2009年6 月に始まった人民元建貿易取引とその決済勘定の受け皿となった香港金融市場における人民元建オフショア市場の発展について、既発表論文をベースに改めて整理し直すと共に、当時「一国二制度、三通貨」といわれたCNY、NDF、CNHという三つの人民元為替市場の関連について明らかにした。また論文では、人民元建輸出入取引が、人民元先高観を背景に、投機的差益の獲得を目論んだミスインヴォイス(misinvoice)に促される傾向にあったことを明らかにしている。だが、2011年後半以降、中国の国際収支も変調をきたし、これまでの人民元高政策を今後も引き続き推進することは、次第に難しくなってきている。それと共に、人民元「国際化」策も、新たな金融規制緩和を講ぜねばならない段階となってきている。しかし、そのことは人民元を非居住者による投資と投機の波に晒すことを意味している以上、今後の展開についても注視が必要である。The purpose of this paper is to put in place historically and theoretically development of internationalization of Chinese renminbi and renminbi-denominated off-shore market in Hong Kong, initiating from June 2009, while revising the author' s previously published papers. In the paper, relation among CNY, NDF and CNH, named as 'One Country, Two Systems, Three Currencies' , should be taken up in terms of exchange arbitrage. Besides, it should be highlighted that renminbi-denominated trade has been conducted purposefully in 'misinvoiced' manner for speculative exchange arbitrage in the foreign exchange market surrounded with strongly prevailing prospect for appreciating renminbi exchange rate further in future. The balance of payments of China, however, turned away, since the second half of 2011, from one-way 'surplus' as experienced in previous years. With this trend, it becomes difficult to keep policy of making renminbi appreciating straightforwardly. This makes Chinese policy makers set forth new measures for internationalization of renminbi with financial deregulation. On the other, there should be deeply concerning over renminbi facing possible crisis, due to international shortterm capital transaction for arbitrage.