著者
竹内 実
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

受動喫煙による肺の免疫で重要な肺胞マクロファージの染色体異常への影響について、受動喫煙(タバコ副流煙自動喫煙)設備を作成し、マウスにタバコ副流煙を一定量均一に吸入させたCGH法により染色体異常を検討した。染色体異常は有意に増幅した部位116箇所、欠損した部位169箇所であった。この結果をもとに、変動幅が大きかった上位10箇所のゲノム部位を抽出したところ、有意に増幅したおもなゲノム部位は、chr8のqE1,chrXのqF2,chr6のqG1, chr17のqA3であった。逆に有意に欠損したおもなゲノム部位は、chr3のqE3、chr5のqC3.1、chr13のqB3、chr16のqB3であった。
著者
織原 義明
出版者
おりはらよしあき事務所
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

研究の目的)平成20年度科学研究費補助金(奨励研究)による地震予知意識調査で、山形県内の8割以上の中高生が地震前の動物異常行動を少なからず信じていることなどが明らかとなった。本研究では、地震前の動物異常行動などの宏観異常現象を人はなぜ信じるのか、その理由を探る。また、東日本大震災前の宏観異常現象について、三陸海岸における現地調査で証言を得る。さらに、教員を目指す大学生を対象に宏観異常現象や疑似科学に対する意識を調査し、その傾向を明らかにする。研究方法)インターネット上で宏観異常現象(動物異常行動・地震雲・電気製品の異常)に関して、なぜそれを信じるのかを尋ねるアンケート調査を実施した。三陸海岸では、東日本大震災前の宏観異常現象に関する聞き取り調査を実施した。また、教員を目指す大学生を対象に、宏観異常現象や疑似科学に対する意識についてアンケート調査を実施した。研究成果)インターネットによる調査では、動物異常行動・地震雲・電気製品の異常、いずれにおいても「必ずある」と答えた回答者は「あるかもしれない」の回答者より、自らの体験でそれを信じる傾向にあることなどがわかった。また、この3つのなかでは、動物異常行動を信じる割合が最も高く、次いで地震雲、電気製品の異常となった。この傾向は山形県の中高生調査の結果と同じであった。三陸海岸での聞き取り調査では、大船渡市におけるカラスの異常行動の証言や、昭和三陸大津波で異常があったと報告されている井戸で、東日本大震災の前に水位が下がっていた可能性などが明らかとなった。教員を目指す大学生へのアンケート調査では、心霊現象・超能力・血液型占いのいずれについても、肯定的に捉える学生より否定的に捉える学生が多かった。しかし、地震前の動物異常行動を少なからず信じる割合は8割以上であった。
著者
目黒 強
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は、明治から昭和にかけて広く読まれた雑誌である『日本少年』(実業之日本社)を取り上げ、大衆青少年雑誌における不良少年像を検証した。『日本少年』を検証するに際して、二つの理由から、ジャンル小説に注目することにした。第一の理由は、青少年像が典型的に表現されていることが予想されるからである。第二の理由は、「物語」という形式が読者に対する青少年像の伝達を補助していると考えられるからである。そこで、『日本少年』におけるジャンル小説を検証したところ、「立志小説」(「悲哀小説」を含む)・「冒険小説」・「探偵小説」・「滑稽小説」の四つのジャンルにおいて、青少年像の傾向に違いが認められた。とりわけ、上述のジャンル小説のうち、「立志小説」(「悲哀小説」を含む)と「探偵小説」において、本研究の目的である「学歴社会から疎外された青少年像」が提示されていることが判明した。「立志小説」(「悲哀小説」を含む)においては、苦学型の立身出世が描かれる傾向にあった。とりわけ、有本芳水の「悲哀小説」では、主人公の置かれた境遇が学歴社会から疎外された者の悲哀として強調されていたことからもうかがえるように、明治中期までのような楽観的な立身出世物語からの変容を指摘することができる。「探偵小説」においては、犯罪者が成人として描かれることが多いことに加えて、未成年者が犯罪者集団に含まれる場合には外国人として描かれていたことから、日本人の不良少年を描くことに消極的であったことが指摘することができる。
著者
小野澤 正喜 小池 庸生 周東 聡子 泉水 清志 三浦 哲也 伊藤 優子 櫻田 涼子 幸田 麻里子 金子 義隆 藤原 愛 大島 宗哲
出版者
育英短期大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

グローバル化の中で外国人との接触が増え、日本人の異文化に関する意識に大きな変容が生じている。異文化との共生の中、群馬県の青年層が異文化をどのように捉え価値観を見いだしているのか調査を行った。調査では、地域のコミュニティよりも学校生活における友人関係が、異文化に対し強く影響を与えている傾向が見られた。
著者
河西 秀哉
出版者
大阪産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、第一次世界大戦後から1950年代後半までを対象時期として設定し、象徴天皇制の思想的基盤の解明を試みようとしたものである。第一次世界大戦後の世界的君主制の危機を踏まえ、日本でも近代天皇制の再編に関する構想が提起された。昭和戦前期にももちろん断絶した部分もあるが、構想が継続し、敗戦後へと繋がった。それは、大衆化・現代化といった問題への対応だったと考える。
著者
小嶋 恵子
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

談話理解に基づく知識の獲得と改定を調べるために、3系列の実験を行った。第1に、大学生による推理小説の読解過程を検討する実験を4つ行った。推理小説を読むのを途中4ヶ所で止めて、犯人や動機についての推理を述べさせた。解釈の構成と変更を規定する4つの要因に着いて次の事か明らかになった。(1)テキストが与える情報について、テキストを読み進むにつれて推論は正答に達し、あるいは近づいた。一部異なる情報を含むテキストを与えると解釈も異なることが確かめられた。(2)推理小説の筋の運びについての既有知識は正しい推論を促進する場合もあるが、深読みしすぎをまねくこともあった。(3)読み手は自分が一度構成した解釈にこだわれ、変更が困難であることが見られた。(4)解釈の共同見解を2人で作ることを求めると、相手の解釈を採用したり、話し合いによって新しい解釈を生み出したりすることがあった。第2に、多義語(漢字熟語)を含む文章の理解過程を観察し、次の特徴を明らかにした。文章全体についての表象は最新情報にもとづいて変更されたが、多義語の解釈の修正は困難で、生じた矛盾解消のために余分な推論をしていることがみられた。第3に、日本語における辞書的多義性低減の方略について検討し、次の結果を得た。大学生は辞書的多義性に気づいており、辞書的多義性をどうすれば低減できるかについての知識を持っていた。全体として、読み手は談話の中の情報と外の情報との両方を使って知識を構成している。
著者
大坪 舞
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度は、鷹狩にまつわる文化を検討する上で、核となるであろう、西園寺家・持明院家がそれぞれ鷹を家の学芸とし、伝授をおこなった戦国期の様相を中心に検討を行った。両家の鷹書については従来も言及されてきたが、多くが江戸期の書写本であった。これらは伝書という性格上、後世の偽作という可能性が拭いきれず、信頼性に乏しいものもある。これを踏まえ、西園寺家・持明院家の蔵書が収められる文庫の調査を通じて、中世後期の良質な鷹書を選び、これをもとに検討したものである。鎌倉期よりの鷹の家としての由来があった西園寺家については、西園寺家のものの作とされる鷹百首「たかやまに」類のうち、西園寺実宣の書写を示す奥書を持つ伝本と、立命館大学図書館西園寺文庫に残される西園寺家当主が伝授に際して記した手控えと思われる書の検討を通じて戦国期においては門弟を取り、積極的にこれを武家に対して伝授していたことを明らかにした。西園寺家に対し、持明院家には戦国期まで鷹の家として、歴史の表舞台に登場したことはない。持明院家は基春以降、能書・鄙曲など様々な芸道をその家業とする。持明院家旧蔵書が架蔵される前田育徳会尊経閣文庫の調査を通じて、基春の鷹書は、下向先である美濃土岐氏など武家の鷹書をも取り込み、豊富な古典学のもと、他の家業とした芸道である、能書、郵曲を意識しながら構築し直したことを指摘した。同時に、鷹書は、近年着手され始めた領域であり、鷹書そのものの資料紹介や位置づけがなされていないものが多くあった。こうした現状を踏まえ、本年はこれまで調査した資料の紹介を積極的に行った。これらにより、鷹書研究の基盤形成に寄与できたものと考えている。
著者
齋藤 光正 飯田 健一郎 Villanueva Sharon Y. A. M. 麻生 達磨 宮原 敏 尾鶴 亮 金丸 孝昭 瀬川 孝耶 吉村 芳修 池尻 真美 荒牧 夏美 日高 悠介 Chakraborty Antara Widiyanti Dian Muslich Lisa Tenriesa Amran Muhammad Yunus Gloriani Nina G. 小林 好江 福井 貴史 増澤 俊幸 柳原 保武 吉田 眞一
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

レプトスピラ症の感染成立から重症化(とくに黄疸発症)に至るまでの病態メカニズムについて次のような新知見が得られた。レプトスピラは、皮膚の角化層が失われると表皮細胞間(あるいは細胞内)を通過して皮下まで侵入し感染が成立する。感染初期は皮下脂肪組織の血管内に定着し増殖する。やがて増殖の場は肝臓が主体となる。肝臓のディッセ腔に達したレプトスピラは肝細胞間に侵入を始め、細胞間接着を剥がして毛細胆管の構築を破壊する。その結果胆汁排泄障害を来たし、黄疸が生ずる。したがって、血管内定着、肝細胞侵入の際の標的分子が明らかになれば、それらのアナログにより重症化への進展を阻止できることが期待できる。
著者
奥田 統己 田村 すゞ子
出版者
札幌学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

A 北海道千歳市、鵡川町、平取町、静内町で現地調査を1回実施した。B Aで得た新たな資料およびこれまでの現地調査で採録したアイヌ語音声映像資料あわせてDATおよびDV450本のデジタル化と二重化を行った。C 上記資料の内容を確認し、整理用の非公開データベースの作成と公開準備版の作成を行った。D 講演会・ワークショップを研究機関中にあわせて4回開催した。E Dの成果として、以下の論文を得、研究成果報告書に収めた。チュネル・タクサミ:ニブフの口頭文芸の概説と研究・資料管理の現況Tjeerd de Graaf : Voices from the Past : the Use of Sound Archives for the Study of Endange red Languages小川正人:北海道立アイヌ民族文化研究センターにおける資料の公開-アイヌ文化・アイヌ史資料アーカイブズのあり方へ向けた取り組みとして-加藤聖文:フィールドワーク資料の管理・公開をめぐる諸問題-研究者アーカイブズを中心に-韓永學:個人情報保護法制の現状と課題-研究資料アーカイブズ分野を中心に-F 北海道立アイヌ民族文化研究センター研究職員沢井春美氏(研究協力者)と研究分担者田村すゞ子の協同により、田村が1956年に採録したアイヌ語帯広方言の調査ノートを整理した。G Fの成果として、沢井春美・田村すゞ子(共編)『アイヌ語帯広方言の資料 田村すゞ子採録 広野ハルさんの基礎語彙調査資料』を刊行した。
著者
佐藤 直樹 大屋 美那 渡辺 晋輔 山口 惠里子 大屋 美那 渡辺 晋輔 小針 由起隆 萬屋 健司
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ローマで活動した外国人芸術家たちの風景画を中心としたデータベースは、総データ件数が2996点にも達し、今後の美術史研究に有用なツールとなった。3年間にわたる本研究課題の研究成果は、論文集『ローマ-外国人芸術家たちの都』(竹林舎)として2013年秋に刊行予定である。本書以降、「近代都市と芸術」シリーズとして7巻の刊行が続くこととなり、19世紀の都市と芸術に関して新しい視点を美術史学に提供することが期待される。
著者
鳥谷部 輝彦 何 子珺
出版者
東京藝術大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、江戸時代の日本で編集された七絃琴の楽譜『東皐琴譜』の最初期の完成稿を中国の七絃琴の歴史に対して位置付けた。その研究過程で、日本所蔵で中国逸失の明代七絃琴文献の中から一点の孤本と二点の善本を選び、その歴史的価値と資料的価値についても整理した。また、日本の七絃琴の歴史にとって重要な廃絶曲を特に二曲選び、中国人七絃琴奏者によって復元的に解釈して仮録音した。
著者
荻 崇
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、噴霧乾燥法と含浸法を用いて、中空ポーラス構造を持つ白金担持カーボン微粒子の合成を行い、電極触媒性能を測定した結果、開発された触媒が市販の触媒粒子よりも優れた性能を示すことが明らかとなった。さらに、白金がドープされたロッド状の酸化タングステンナノ粒子を合成し、光触媒性能を評価した結果、0.12wt%という少量の白金添加量で優れた性能を持つことを明らかにした。
著者
三輪 眞弘 佐近田 展康 岡野 勇仁 長坂 憲道 山崎 雅史
出版者
情報科学芸術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、MIDIアコーディオンをインターフェースとして用いた実時間「演奏」による人工音声発話システムの開発と、それを前提とする新しい「歌謡」の作曲、そこで生成される「誰のものでもない声」の哲学的考察を統合的に行うものである。その成果として、多言語に対応した音素制御のための規格「兄弟式国際ボタン音素変換標準規格(BBPTSI) 」を発表し、その規格に基づいた楽曲「夢のワルツ」が作曲された。さらに、任意の旋律線(連続的音高変化)を、微分音高制御のために開発された「和音平均化アルゴリズム」を用い、制約プログラミングの手法によってピアノ鍵盤用楽譜として記譜し近似する研究も行われた。
著者
片岡 則之 梶谷 文彦
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

あらかじめ、アクチンフィラメントの重合を可逆的に阻害するサイトカラシンで処理した内皮細胞に単球を投与して浸潤挙動を観察したところ、浸潤した単球が増加した。いっぽう、ざくろに含まれるポリフェノールの代謝物であるエラグ酸はアレルギー等の抑制効果があることが知られている。そこで、培養内皮細胞をIL-1βで活性化、さらには酸化LDLを投与したさせた後にエラグ酸を同時に投与して単球挙動を観察したところ、浸潤した単球数が減少した。単球の内皮下浸潤は、アクチンの構造とともに、酸化ストレスが重要な因子であることが確認された。
著者
上代 圭子
出版者
東京国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

①「婚活」「結婚」「出産」をキーワードとして日本人女性アスリートのキャリアプロセスを明らかにすることと、②Role Exit Theoryの有効性を検証することを目的に実証研究を行った。その結果、トップリーグでプレーする際には不安を抱かず、現役中にも引退後に不安を抱かずに、自主的に引退を迎え、未練も持たない。だが、結婚を意識することによって、キャリアプロセスを決定していた。つまり、彼女たちのキャリアトランジションには、結婚にともなう性役割観が影響を与えると言える。したがって、Role Exit TheoryおよびRole Exit Modelには女性特有の要因を考慮した修正が必要である。
著者
渡部 森哉
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

南米アンデス地域において後800-1000年頃にワリ帝国が台頭した。本研究はワリ帝国の北端に位置する行政センターであるエル・パラシオ遺跡を事例として、アンデスの都市構造の共通性と、エル・パラシオの特殊性を詳らかにすることを目的として遂行した。同遺跡において第3次発掘調査を実施し、発掘データの綿密な分析を行った。ワリ帝国の行政センターは内部が細分される直行構造のタイプと、不規則に建築物が集合するタイプがあり、前者は多くの人々が恒常的に生活する場ではないのに対し、後者は相対的に多くの人々が生活し、墓や水路などの施設が伴う。エル・パラシオは後者に含まれることが判明した。
著者
浅井 武 瀬尾 和哉 酒井 淳 笹瀬 雅史 河野 銀子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、実験風洞と数値流体解析を基にしたスポーツ流体シミュレーターを、パーソナル・スーパーコンピューター上に開発した.さらに,実際のスポーツ科学,スポーツ工学問題の展開事例として、流体工学的観点からスポーツ技術を検討すると共に,スポーツボールやスポーツシューズを代表とするスポーツ用具の空力特性の解析や改良を試みた.サッカーボールの空力解析の場合,スポーツ流体シミュレーターを用いたCFD解析と風洞実験により,無回転のサッカーボールの空力係数を分析すると共に,四塩化チタンを用いた可視化手法により,実際に飛翔するボール後流の動態を検討し,サッカーボールの空力特性を明らかにした.CFDと風洞実験におけるレイノルズ数と抗力係数の関係をみると,亜臨界レンジで0.43程度,超臨界レンジで0.15程度を示し,サッカーボールの臨界レイノルズ数は,約2.2〜3.0×10^5であると考えられた.サッカーボールの抗力係数は,平滑球とゴルフボールの中間的特性を示し,ボールパネルは臨界レイノルズ数を減少させるという意味で,空気抵抗を下げていると考えられる.CFDと可視化実験において,ボールの低速時(5m/s)と高速時(29m/s)のボール周りの流れを比較すると,低速時では,境界層の剥離点が前方岐点より約90deg.に位置していたのに対して,高速時では,剥離点が前方岐点より約120deg.に後退していた.ボール直後の渦リングのような渦塊から発生周波数を計測し,Stを推定すると,平滑球のレイノルズ数4×10^4近傍のハイモード値約1.0と近い値であると考えられた.ボールが飛翔した後,ラージスケールの渦振動(渦塊の蛇行)が観察された.このメカニズムの詳細は不明であるが,渦振動が,サッカーボールの「ナックルエフェクト」に関連している可能性があると思われた.
著者
遠藤 保子 八村 広三郎 小島 一成 崔 雄
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

無文字社会であったアフリカにおける身体芸術(特にダンス)の研究は、舞踊の原点を知る上で重要である。またジャズやブルースの誕生に深くかかわっているため、現在の芸術を知る上でも必要である。そこで本研究は、アフリカの身体芸術とアフリカの今日の社会に焦点をあてて以下を行った。I研究目的:I・1.アフリカ(特にナイジェリアとケニア)における身体芸術と文化社会の現状I・2.身体芸術をモーションキャプチャによる記録・解析I・3.2の動作特性と文化・社会との関連性とその意味・構造を明らかにする。II研究方法:II・1.アフリカに関する文献研究II・2.アフリカにおける文化人類学的フィールドワークII・3.アフリカ人ダンサー(日本へ招聘)によるダンスのデジタル記録・解析である。III研究対象:III・1.ナイジェリアの代表的な舞踊:Kabulu,Bata,Maliki,Swange,Iri-Agha(ナイジェリア国立舞踊団抽出)III・2.ケニアの代表的な舞踊:Gonda,Orutu,Borana,Sukuti,SamburuSengenya,Kikuyu(ボーマス・オブ・ケニア抽出)である。IVモーションキャプチャの記録プロセス:立命館大学アート・リサーチセンターにおける光学式モーションキャプチャを利用してIV・1.カメラ設置IV・2.キャリブレーションIV・3.被験者にマーカー付着IV・4.計測IV・5.データ編集を行った。V研究結果の主な点:V・1.トルソー(肩と腰)の動かし方に特徴が見られるV・2.ダンスの熟練と非熟練者の違いは、トルソーの動かし方にみられる等。本研究は、現地のダンサーやダンス関係者にコンピュータ解析によって新しい見方を可能するなど、有益であると思われる。
著者
千葉 惠
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

『魂論』二巻の「魂」の定義に用いられる「力能(dunamis)」そして「完成(entelecheia)」の概念を、その対となる「実働(energeia)」の概念とともに明確に理解するに至った。従来「可能態」と「現実態(energeia =entelecheia)」等と訳されてきたが、これでは精密な議論の展開を正確に理解できない。アリストテレスはロゴスとエルゴンという二つの視点から魂を把握した。ロゴスにおいて事物の一性を開示する「力能」と「完成」の対により「魂」の定義「力能において生命を持つ自然的物体の第一の完成」が提示される。エルゴンは今ここにおいて捉えられる。二巻は従来と異なる翻訳である。
著者
西園 晃 中島 一敏 山城 哲
出版者
大分医科大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2001

ヘリコバクター・ピロリ菌の外膜蛋白Omp29のN末端アミノ酸配列を決定し、Omp29遺伝子の分離株間での多様性と発現蛋白の抗原性について検討することを今回の目的とした。分離・精製された分子量29KDaの蛋白分画のN末端アミノ酸配列は26695株のHP78及びJ99株のJHP73遺伝子のN末端配列と同一であった。臨床分離株150例から抽出したDNAをPCRを用いて検討した結果、増幅産物は長さにより770bp、770bp以上の2群に分類され150例5例と76例であった。Omp29遺伝子の構造について短い770bp群は互いにほぼ同じ配列であったのに対し、長いサイズ群は保存された配列の間に5'末端から180bpの位置に、762bp〜1264bpと種々の長さで保存性の低い配列が挿入された構造となっていた。挿入された異なる配列の5'及び3'末端には17bpから成る同方向配列が各々確認された。また各遺伝子のORF構造は770bp群では単一ORFであるのに対し、長いサイズ群では数個のORFに分断されていた。組み換えOmp29蛋白に対するウサギ抗血清を用いたimmunoblotでは、単一のORFから成る770bp群では29kDaの位置に反応が見られたが、長いサイズ群ではORFが分断されているために反応は認めなかった。一方、Omp29発現蛋白を抗原として患者血清中の抗体保有の有無を確認したところ、全ての患者に29kDaの反応物を確認できた。Omp29遺伝子配列中には、2箇所の17bpから成る繰り返し配列が存在し、この間に挿入された塩基配列の長さの違いでゲノム全体の長さが変化するような新規の挿入・脱落機序が存在する事が予想された。このようなメカニズムによりH.pyloriゲノムの変異から、抗原性の変化、さらには宿主の免疫監視機構からの回避により持続感染に至ることが予想された。