著者
北畠 尚子
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.59-73, 2002 (Released:2006-06-13)
参考文献数
16

北西太平洋の台風には気象庁 (1990) がSH型としている特異な性質を持つものがある。この一例として、盛夏期に東シナ海で不規則な動きをした台風0006号 (アジア名Bolaven) の解析を行った。この台風はtyphoonの強度には達しなかったもので、背の高い対流雲を南側のみに持ち、北側は中上層に乾燥した空気を伴っていた。そしてこの乾燥空気側の方が湿潤空気側よりも高温のため、この台風は中層で傾圧性を持っていた。しかし地上では典型的な台風に類似した風分布を持っていた。 台風0006号の構造と環境の関連について、気象庁の客観解析データを用いて解析を行った。ライフサイクルの前半には、台風は強いチベット高気圧の南東側に位置し、対流圏上層でチベット高気圧東縁の強い北風が台風の北側で収束し、また台風の南側では西向きの流れにより発散が生じていた。これはチベット高気圧と台風によるジオポテンシャル高度場の曲率と、それに伴う慣性安定度の地域分布によると思われる。また対流圏中層では、大陸上の高温空気により、北西太平洋上空では東西方向の温度傾度が生じていて、それと台風の循環により温度移流が生じていた。これらにより鉛直運動の非対称分布が生じ、また台風の移動も不規則になったと考えられる。 その後、対流圏上層の大規模場は大きく変化したが、台風は中層では南北が逆転した傾圧性擾乱の構造を維持していた。このことは、特定の環境下で組織化した非対称な台風の構造が、中層におけるtiltingによる前線強化によりある程度は維持されうることを示唆している。
著者
中山 有二
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.24-25, 2006-09-01 (Released:2010-11-19)
被引用文献数
1
著者
川岸基成 川渕将太 宮島千代美 北岡教英 武田一哉
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.13, pp.1-6, 2014-02-16

合唱歌唱時に生じる歌声の "引き込み" を利用して歌唱の基本周波数 (F0) を目標とする音高に誘導制御することを試みる.我々はこれまで,他者の歌声を受聴しながら歌唱したときの歌声への影響を歌声の引き込みという観点から分析し,1 つの質点と 2 つのばねで構成されるばね質量系を用いて,歌声の F0 動特性をモデル化した.本稿では,合唱歌唱の F0 動特性を表現するばね質量モデルを利用して歌唱の F0 を制御する手法を提案する.本手法では,合唱歌唱のばね質量モデルに基づき各歌唱者の引き込みの特徴を分析し,引き込みを考慮した誘導音を合成,受聴させることにより,目標音高に近づくように F0 を制御する.評価実験では,目標音高を受聴しながら歌唱した歌声と誘導音高を受聴しながら歌唱した歌声を目標音高との RMSE で評価し,誘導音高を受聴することで被験者 8 人中 5 人の RMSE が減少するという結果を得た.
著者
佐伯 聡史
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

鉄棒運動のけ上がりは、専門的なトレーニングを行えば、6、7歳で習得可能である。しかし、学校教育現場では習得することは非常に難しいとされている。本研究は、鉄棒運動のけ上がりの習得を促す効果があると期待される、筆者によって特許取得済みの「鉄棒練習具」を使用して、初等教育(小学生)、中等教育(中学生)、高等教育(大学生)の各カテゴリーで実験が行われ、その効果と適時性についての検証を行った。初等、中等教育では運動改善が見られたものの、その効果は限定的であり、短期間でのけ上がりの習得には至らなかった。しかし高等教育においてはけ上がりの習得に直結する運動改善が見られたことから、一定の効果が確認された。
著者
梶原 秀一 橋本 幸男 松田 敏彦 土谷 武士
出版者
日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.515-520, 2000-05-15
被引用文献数
8 6

This paper discusses a motion control of horizontal bar gymnast robot with two links and one passive joint on the bar. First, we show that the amplitude of the swing of the first link increases with resonance and parametric excitation by swinging the second link periodically. Next, we propose the control method using entrainment to produce each excitation by swinging the second link 'in phase' with the motion of the first link. In our method, the control input is consisted of periodic solution of van der Pol's equation inputted the angular velocity of the first link. Finally, we present experimental results that swing up control and continuous giant swings can be realized in the real robot.
著者
佐々木 毅志 山本 敦史 小林 勉 設楽 仁 一ノ瀬 剛 下山 大輔 濱野 哲敬 高岸 憲二 大澤 敏久
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.411-413, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
13

夜間痛は肩関節疾患の特徴的な愁訴の一つであるが,その詳細については不明な点が多い.本研究の目的は肩関節疾患における夜間痛について調査を行い,その特徴と背景因子について検討することである.2011年4月1日から2013年3月31日の期間における当科肩外来初診患者232人を対象とした.男性121人,女性111人,平均年齢56.4歳であった.年齢,性別,診断名,罹患側,肩関節痛の症状,肩関節可動域,筋力,夜間痛の頻度,夜間痛の症状,理学所見との関連について調査を行った.対象の58.2%に夜間痛を認め,その64.4%は肩痛のためほとんど毎日夜間に覚醒し,93.3%は体位による疼痛の増減を認めた.夜間痛がある例はない例と比較すると年齢が高く,安静時痛が強い例が多かった.
著者
児玉 望 コダマ ノゾミ Kodama Nozomi
出版者
熊本大学文学部言語学研究室
雑誌
ありあけ 熊本大学言語学論集
巻号頁・発行日
vol.8, pp.27-36, 2009-03-30

本研究では、フィールドワークによっていくつかの言語の音声コーパス資料を作成し、音節声調分析という共通の方法によって音韻論的解釈を施して韻律構造を解析し、これらの表示がどのような声調によって実現されるかのマークアップ付きで公開資料を作成することを目的とする。
著者
内村 圭一 木村 英雄 脇山 慎也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.546-553, 1998-04-25
被引用文献数
29

本研究では, 車両前方の走行環境の認識機能を含めた運転支援システム開発の一環として, 昼間の道路情景カラー画像から規制標識などの円形の道路標識を抽出および認識する手法を提案する.カラー画像における円形道路標識がもつ二つの特徴である.外形が円形, 使用色は赤, 青, 白の3種類, を道路情景カラー画像内から同時に探索するためにクラスタリングを遺伝的アルゴリズムに組み込んだ手法を提案する.また, カラー画像から抽出した領域に対する円形道路標識の認識には, 木構造によって大分類した後に最小逐次検定を用いる.実際の道路情景カラー画像を用いた実験を行い, カラー画像からの複数道路標識の同時抽出および認識が可能であるなど, 提案手法の有効性を確認した.
著者
時崎 久夫
出版者
札幌大学
雑誌
文化と言語 : 札幌大学外国語学部紀要 (ISSN:03891143)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.81-99, 2002-03-29

In this paper I will point out a number of problems with prosodic hierarchy theory (cf. Selkirk 1984 among others) and will propose an alternative theory based on prosodic boundaries.1 I will also show that the boundary-based theory explains phonological data straightforwardly and that it allows us to derive the effects of the strict layer hypothesis (Selkirk 1984) from a simple phrasing rule.
著者
中村 修二 高下 義弘
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュ-タ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.700, pp.58-61, 2008-03-24

青色発光ダイオード(LED)を世界で初めて開発した中村修二氏に、創造の極意を尋ねた。それは「考える体力」と「自由」という。駆け出し技術者の時は、本と学問を捨て製品作りに没頭。知識や推論そして熟考だけではなく、体を動かして結果を出すことの大切さを知った。創業者が自由にやらせてくれたので、自分の信じるところを徹底追求できた。
著者
羽生 浩一
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ノーベル平和賞が創設された背景に、19世紀における欧米の民主主義、民族主義の隆盛が存在した。時代の混乱と新しい価値観への希求が「平和」という概念を醸成した。平和の概念を広く伝える役割(PR)としてのノーベル平和賞の創設であった。ノーベル平和賞は20世紀の2つの世界大戦、およびその後の冷戦を経て、「欧米の平和賞」から「世界の平和賞」へと賞の意味や役割を、戦略的に変えてきた。ノーベル平和賞は、戦争や紛争を解決はしないが、注目すべき問題がそこにあることに人々の関心を集めさせる。武力を行使せずとも、広報外交的な役割で平和に貢献することが可能であることを示してきたのである。
著者
中能 祥太
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

鳥類・爬虫類初期胚の多能性を制御する分子メカニズムの解明を最終目的とした本研究において、DC1二年目である平成25年度は、前年度に得られた実験結果とモデルを元に、多能性の正の制御機構を担う分子を模索し、その結果Jak/Statシグナルを候補として見出した。また、多能性状態のマーカー遺伝子NanogとPouVの発現をタンパク質レベルで解析するためにこれらに対する抗体を作製した。DC1最終年度である平成26年度は、これまでに整備した分子生物学的解析ツールと遺伝学的ツールを組み合わせることで、多能性を正に制御している分子の候補を阻害剤やStat人為活性システムを用いて詳細に検証した。また、自作した抗PouV抗体を用いたウエスタンブロッティング解析に基づき、登録されているPouVのアミノ酸配列が実際に発現しているPouVタンパク質の配列とは異なっていることを発見し、配列を修正する論文を発表するに至った。また、抗体を用いた発現解析と合わせ、Nanogは羊膜類一般に多能性と関与している可能性が高いのに対し、PouVは哺乳類特異的な機能として多能性に関与しているのではないかという仮説も提示した。
著者
谷垣真理子
出版者
東京大学東洋文化研究所
雑誌
東洋文化研究所紀要 (ISSN:05638089)
巻号頁・発行日
vol.155, pp.324-292, 2009-03-27

在香港,民主化只有部分地进行着.而且民主化的过程也被香港特别行政区基本法所控制的.本稿按照香港的情况名之为‘被控制的民主化(controlleddemocracy)'.二战后,中英两方面都警惕在香港进行民主化。但是,随着回归问题的抬头,1980年代香港政府才开始限定性的民主化。中方畏惧过快的民主化有可能破坏香港的繁荣和稳定。中英联合声明和基本法成为控制民主化的框架,特别是基本法载明了第三届立法会选举以前的发展过程,并定下了全部议员由普选产生的最终目标.2003年七一游行以后,所谓泛民主派开始主张实施普选,而香港的民主化再次成为热门话题.2004年4月,全人代常务委否定了2007年·2008年实施普选,但是2007年12月,它做出了2017年导入普通选举到行政长官选举中的決定.2008年立法会选举显示,泛民主派比亲政府派势力还盛.如果这个情况没有改变,2020年立法局选举全面实行普选的话,不可能否认的是,这一傾向将会导致泛民主派占半数以上议会的出现.
著者
三田 一郎
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

B中間子の崩壊における大きなCP対称性の破れの提唱者として次世代のBファクトリー建設の意義を研究した。新しい加速器を建設するには既存している加速器よりも大きな成果を出す可能性を持つことが不可欠である。当初SuperBFactoryは既存するBFactoryの10倍の強度が提案されていたが、わたしは少なくとも100倍必要だと指摘した。現在建設中の加速器は40倍の強度でデザインされている。研究期間中に30年間の共同研究者Bigi氏が脳卒中で倒れ、成果を発表するために氏の回復を待っている.
著者
佐藤 彰一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

この研究は、西洋中世初期における最重要の歴史的存在であったフランク国家がいかにして形成されたかを、西ローマ帝国が体現した後期古代から、初期中世の時代相への移行についての新たな理解を基軸に据えて考察し直したものである。新しい論点として浮上したのは、西暦394年のアルボガストのクーデタの挫折により、フランク人首長層がローマ帝国内で30年間にわたって成し遂げた栄達の時代が終わり、以後約半世紀にわたって断片的な動静しか伝来しておらず、この50年間のフランク史の解明が、この主題にとって決定的に重要であるという点である。これまで注目を集めてこなかった、フン族とフランク人との関係史を深めるのも重要である。